おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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タイトル通りに行かないのがこの小説の良い所(悪い所の間違い。寧ろ害悪ですらある)。


許すまじ!VTシステム!いや、この場合はドイツか。どちらにしろ覚えてろ!……束が暴走すると思うから。

えー、今現在VTシステムの背後を取っております。

なんか知らんけどレーダーとかある筈なのに俺に構わず剣をぶん回して隔壁をブチ破ろうとしている。

 

まぁそうだよね。

俺を相手するより隔壁の方が簡単だもんな。

という事は俺の方が厄介だと言っているようなもんだ。

 

嬉しい……

 

 

 

違う違う。

ぶっちゃけなんか色々考えてどんな作戦へ行ってやろうかとか考えてたけど今まで千冬とドンパチやってた時ってそんな小難しい事一切考えずに互いに只々殴り合ってただけなんだよね。

 

 

VTシステムがどうするか分からんけど千冬のコピーってんなら同じなはず。

だから剣を持って居ようと戦い方は同じ。

俺の攻撃に対しての反応もそう変わらない筈。

 

もし自己進化するタイプの人工知能を搭載していたらちょっと不味い。そうなったらもっと素早く仕留めなきゃならん。

 

と、こんなことを考えている内に時間はどんどん無くなる。

取り敢えずは、牽制で銃弾を幾らか叩き込んでやろうか?

ただ馬鹿正直に殴りかかるだけじゃ一発KOされてもおかしくない。

 

今の残り時間は12分。

あんまし余裕は無いな。そりゃそうか。

 

ってなわけで右手に取り出しますはアサルトカノンくん。

構えてさぁぶっ放そう!

 

「ッ!?こっちを向いた!?」

 

どういう訳だか銃を呼び出した瞬間に俺に対して顔を向けてきやがった。

何だあれどういうこった?

まさか俺が銃を取り出したからか?そしたら優先度とかで目標を決めているって事か?

でもそしたらなんでISも何も無い状態の俺をあの時攻撃したのか分からなくなるがまぁいいや。取り敢えず……

 

「鉛玉のプレゼントだオラァ!!」

 

引き金を引いて、当たるかどうか分からない鉛玉をバラ撒く。

しかしそこは千冬のコピー。飛んで来る銃弾を避けるか、剣で叩き落としていく。

この狭い通路内であんな動きが出来る辺り流石は千冬コピーと言った所か。

 

そのままの勢いに任せて俺に斬りかかって来る。

 

「おいおい、お兄ちゃん大好きっ子な所はコピーされてねぇってのか!悲しいね!」

 

真上から振り下ろされたその剣筋は間違い無く千冬のものだ。

腕部に施した増加装甲で右側にいなす。

しかし流石は全盛期の千冬のコピーだ。今の千冬の一撃よりも重い。にも拘らず滅茶苦茶早い。

 

「フッ!ホッ!ヨッ!」

 

必死に右へ左へ受け流したり弾いたりするも、増加装甲が段々と削られていく。

 

「いって……!!」

 

しかも折られた左腕に感じていた違和感が痛みに変わり始めた。

 

束が言ってた痛覚遮断を超えて来てるって事か!?おいおいおい随分と限界が来るの早いじゃないの!

 

痛覚遮断のレベルをこれ以上上げることも出来ない。

MAXにしてある現状ですら痛みを訴えて来るこの腕はどうにもならなさそうだ。

しょうがない、左腕君には今回は犠牲になって貰うしかなさそうだな……!

 

「良いぜチクショウ!!左腕はくれてやらぁ!!!」

 

叫びながら殴り掛かれたら良かったんだが受け流すので精一杯。

つかこいつ機械?AI?だから疲れ知らず。

一向に攻撃の手が緩む気配が無い。

 

このままじゃぁ俺が先にバテちまうぜ。くそー、やっぱり若さっていいなぁ!

 

一夏程とは言わないから箒か鈴ぐらいは欲しいなぁ……と思いながらも無理ですよねー。

剣さえなければ純粋に殴り合いに持ち込めるから何とかなりそうなんだけどこいつの剣ってなんか手から生えてる感すっごいんだけど。

 

取り敢えずはラウラをどうするかって問題なんだけど……

これ確か中に取り込まれてるんだよな?少なくとも発動時はそんな感じだった。

なら引っ張り出しちゃえばいいじゃん?

 

幸いな事にVT千冬(今命名)は千冬と同じ身長だからあれの真ん中にラウラはいると思う。え?体重は知らんけど。もしかしたら全盛期の方が軽い……ッ!?(ゾワァッ!)

 

今物凄い悪寒がしたぞ。千冬か?千冬なのか?千冬だな?千冬じゃん?

女性に対して体重の話は禁物って身をもって体験する事になるとは。

しかも本人は傍に居ないのに。

 

まぁ例の如く話はズレたけど要はだな、中身のラウラを引っ張り出そうって事だ。そんでもって面倒だから引っ張り出したらタコ殴りにしてやろうって算段な訳だ。

 

でも問題があるんだなこれが。

そもそもラウラをどうやって引っ張り出す?って話なんだが、中に取り込まれているから手を突っ込んで、とはいかない。

あんなゲテモノ代表みたいなやつに腕突っ込むとか嫌すぎる。

 

ってのは冗談でもない冗談で。

そもそも手を突っ込んでどうこうなるようなもんじゃないと思うのよ。

そんなズボッ!ガシッ!ズルズルッ!って擬音の様に済ませられないのは確かだ。

 

取り敢えずの目標は攻撃力を奪う事だな。

って事で攻勢に転じちゃおう!

 

右斜め上から振り下ろしてくる。

それをいなし、下にそらした瞬間に俺の脇を狙って斬りかかって来る。

それを一歩前に大きく踏み込んで手首の辺りをガッチリ脇で固定してやる。

 

「はい捕まえたぁ!」

 

引き抜こうと藻掻くがしっかり挟んでガッチリと手でも掴んでいるから早々逃げ出せない。

 

「これで剣を楽しく振り回せねぇだろ!?そんじゃ次は俺の番だなぁ!!」

 

逃げようと身体を離しているのが仇になったな馬鹿野郎。

左腕は捕まえるのに使っちまってるから空いているのは右手だけ。

その右手で思いっ切りストレートを一回二回三回四回五回と叩き込む。

避けようとするがそんなものお構いなし。

 

「しっかり食らっとけ!オラァ!」

 

ゴスッ!ゴスッ!ゴスッ!ゴスッ!

 

鈍い音が連続して響く。

 

……え?妹の姿をしてるのに容赦が無い?

ははっ。こうやって練習試合染みた事をやる時は生身で殴り合うんだぜ?しかもこれは本人じゃないじゃん?手加減する理由がありませんよえぇ。

それに千冬だったらこれぐらい食らっても平然としてるし、束がどん引きするような滅茶苦茶獰猛な笑みを浮かべて反撃して来るからね。

やっぱし機械は機械。コピーはコピーなのだ。

 

あ、そういや一部始終を見てた束がこんなこと言ってたな。

 

「この兄妹おかしいよ……なんで殴り合ってるのにこんなに嬉々としてるの……?」

 

「束も兄さんと一回やり合って見れば分かるさ」

 

「いや束さんはちょっと遠慮しとくよ……というかベクトルが絶対に分かりたくない領域だし。おじさんとはあんなんじゃなくてもっとこう、甘々なイチャイチャをしたいの」

 

「そうかそうか兄さんじゃなくて私と試合がしたいか。そうかそうか今すぐやろうそうしよう」

 

「なんでぇぇぇぇ!?」

 

あいつら本当に仲良いよね。

結局束は逃げ回って千冬はそれを追いかけてを日暮れまでやってたな。

 

 

 

とそんな思い出話してる場合じゃない。

顔面に向けて八回拳を叩き込んだところで顎に向けて一番強いのをお見舞いしてやる。

 

「兄貴からの特大プレゼントォォォ!!!」

 

コ”ス”ッ”!!!

一際鈍い音が響く。

だがそこは機械。人間なら昏倒していてもおかしくはない一撃を入れた筈なんだがやっぱし効果は無いか。

 

VTシステムも左手で殴って来るが一々防御なんてしてられるか。

まぁでも流石に全く防御しないって訳には行かないから幾らか捌いてるんだけどそん時はヘッドバット食らわせたり膝蹴りを脇腹、鳩尾、股間に叩き込む。

男じゃないからって股間への攻撃が通じない訳じゃない。

まぁVTシステムに対して効果はあるかどうかは別として。

 

俺自身には一応SEの上限もあるし、絶対防御もあるにはある。

剣を持っている右手を封じたのにも理由があるし何もかも無策って訳じゃない。

 

千冬の使う剣はなんか知らんがシールド無効化なんて物騒なもんが付いてる。

それを封じるために右腕を取っ捕まえたわけよ。流石でしょ?

まぁこのエネルギー無効化攻撃は流石に常時発動って訳じゃないし、デメリットもある。

 

簡単なデメリットは自身のSEを消費しないと発動が出来ない事、攻撃力が高すぎる故に使い時が難しい事の二つ。

 

SEの上限があるからには常時発動なんてしてたらそれこそ自滅待ったなしだ。

だから攻撃が当たる瞬間のみ発動とか結構細かい操作が必要になって来る。

で、VTシステムも常時発動している訳じゃないから幾らでもやりようがある。

このエネルギー無効化攻撃、シールドだったりバリアだったりには効果絶大なんだが物理障壁、所謂装甲とかには一切効果が無い。

だからこそVTシステムに対してはこれが一番の盲点というか、弱点だ。

千冬本人なら間違い無く装甲をぶった斬れる。

斬鉄なんてお手の物だしな、千冬は。

 

ところが結構ガッツリと腕部装甲で防いでいるのにも関わらず俺の腕は未だに斬り落とされていない。

という事はVTシステムには千冬程の技量は無いという事。

まぁ機械に技量なんてあるのか、という話は別にしといてだ。

 

少なくともこいつには一撃で斬鉄を成し遂げられるほどの力は無い。

隔壁はなんというか無理矢理ぶった切った、耐えきれなくなった隔壁をぶった斬ったって感じだったから確かだと思う。

千冬がやったらそれこそ綺麗な切り口になっている筈だ。

それこそル〇ン三〇の石〇五〇門が車だったり何だったりを斬った時みたいになる。

 

今の千冬が出来るかはどうかは別として。

 

攻撃力云々は今は関係無いか。

だってVTシステム、明らかに俺を殺す気で来てるから一切出し惜しみなんてしてくれないし。寧ろ最初から最後まで全力な気がする。

 

 

って事で幾ら全盛期とは言ってもこういった所で明らかに千冬本人に劣っている面があるのは確か。

でも流石は全盛期の千冬のコピー。

一撃一撃が確かに今の千冬よりずっと重い。

顔面だけじゃなくて鎖骨や脇腹に叩き込まれる一撃は肋骨が圧し折れたと錯覚するほどだし、折れてはいないが物凄く一撃を受けるたびに激痛が走るのは錯覚じゃない。

ここはSEと絶対防御に感謝だな。

これが無かったら今頃、いやもっと早い段階で俺の骨は粉々、内臓はグチャグチャになってた。

 

これからならないって保証は無いんだけどな。

取り敢えずはVTシステムの右手を捕まえたままだからこの超至近距離で片手のみの殴り合いに発展している。

 

しっかしこいつ打たれ強いじゃぁねぇか!?どんだけだよ!

 

千冬でも多分一回か二回はぶっ倒れて立ち上がって来るレベルのダメージを与えた筈なんだが一向にバテる気配はない。

やっぱしスタミナは無制限、タイムリミットは有限ってことだな。

 

なんというクソゲーだ。もしゲームとして発売されていたら絶対に俺は買わないね。

 

 

 

と、それよりも殴る事よりもラウラを引っ張り出さにゃならんのはしんどいな。

正直、搭載してある剣があるからそれで斬ってラウラが見えたら掴んで引きずり出そうって考えてんだがVTシステムの左腕がまだまだ元気なんだよな。

これから弱るなんて気配は全く無いし

 

「ぶっ!?」

 

「グゴッ!?」

 

「ゲフッ!?」

 

無傷で勝てたらそりゃかっこいいだろうけど俺にゃ無理だな。

顔面、腹、脇腹、肩、首、胸に叩き込まれる一撃は重くてしょうがない。

 

一応致命傷になるようなのは確実に防いではいるが、防御した右腕ごと殴り抜いて来ることもある。

 

しかももう防ぎきれなくて何発も良いのを貰っちまってるんだよな……

遅かれ早かれ負けるのは俺だ。

 

ここはいっちょ無理をしてでも右腕を何とかするしかない。

 

「おい束ェ!!」

 

『え!?おじさん!?どうしたの!?』

 

「ラウラが何処に取り込まれているか分かるか!?」

 

『え!?ちょ、ちょっと待ってね!』

 

って事で困った時のタバエモン。

一度回線を開いて束を呼び出しラウラの正確な位置を調べてもらう。流石にラウラごとズバッと斬るわけには行かないし。

 

『おじさん!場所は体の中心線の位置!胸から十センチ下!丸まって取り込まれてる!』

 

「ありがとよ束!」

 

『え!?ちょーーー』

 

なんか最後に言いたそうな感じだったけど切っちゃった。

身体の中心線、胸から下に十センチだな。

 

よし、丸まってるって言ってたから腕を斬り落としても問題無し!

 

そんじゃいくぜぇ!!

 

 

横側から肩よりも少し下、上腕辺りから叩き斬ってやろう。

その間は完全に無防備になるがそこは隙を見て、だ。

顔面目掛けて殴ってきた瞬間、葵を呼び出し振るう。

 

 

ザクッ!!

 

 

よっしゃ良いのが入った!

俺の顔面を殴った左腕は、そのままだらんと力無くぶら下る。

すると思わぬアクシデント。

 

「気持ち悪っ!?」

 

なんか断面がウニョウニョ動いて再生しようとしている。

いやこれは普通に気持ち悪いわ……

 

まぁ再生何てさせないんですけどね。

繋がろうといている腕を完全に斬り落とし、そこから再生しないのを確認。

 

そしたら右腕も斬り落としちゃいましょうね。

 

「よいしょぉーーーー!!!」

 

って事でガッチリ捕まえたVTシステムの右腕を斬り落としましたはい。

まだ足が残ってるがまぁこっちは気にしなくていい。

床に張っ倒してしっかりと両足を両足で挟んで動けない様にしておく。

そんでもって葵をさっき束に教えて貰った場所に、ラウラを傷付けない様に突き刺して斬る。

 

すると小さく丸まったラウラがそこに居た。

なんだか取り込まれる前と違って違和感あるけどまぁいっか。

取り敢えず再生する前に引っ張り出しましょ。もうウニョウニョして再生し始めているしね。これ再生されたら面倒だ。

そいじゃまぁ、腕をしっかり掴んで……

 

「よいしょぉぉぉ!!!」

 

引っ張り出します!

ぬ!?思ったよりも絡みついてるな。

もうちっと力を込めてグイっと引っ張る。

するとなんともまぁ気持ち悪い、こう、ズルズルズルッ……って感じで出て来るラウラ。

せめてもの救いは粘液まみれじゃない事か。

しかしそんな事でも叫ばずにはいられないこの言葉。

 

「とったどぉぉぉぉ!!!!!」

 

黄〇伝説の様に盛大に雄叫びを上げながら引っ張り出す。

そこで気が付くさっきの違和感。

何と驚きラウラは全裸でした。

 

おいおかしいだろ!取り込まれた時はISスーツちゃんと着てただろ!

 

心の中で絶叫するが、余りの驚きによって実際には声に出ない。

いやだって服を着ていると思っていた相手が服を着て居なかったら誰だって驚かない?絶句しない?おじさんは一般人だからね、もう普通に怖いです。

 

取り敢えず此処でボケボケしてられないからラウラを脇に抱えて距離を取る。

見た感じ動き出す気配は無いから今のうちにトンズラしちまおう。

 

ラウラを脇に抱えたままアリーナの方へ向かう。

本当は千冬達と合流する事が出来ればいいんだけど隔壁全部閉じてて外に出られないからね。アリーナの方にしか行けないんだわ。

こっちはVTシステムの野郎が隔壁全部ぶっ壊してくれたおかげで通じてるし。

これって請求何処に行くんかな?

 

日本政府が立て替えといてそっからドイツに請求するのか?

何にせよドイツに矛先が向くのは間違い無いな。

 

つかラウラどうしよう……?

 

「おーいラウラー。起きろー」

 

気を失ってるのか、それとも消耗していて起きないのか分からないが全く起きない。

ペチペチと頬を叩いても起きない。

 

「おーい束ー?聞こえてるかー?」

 

『おじさん!?なんでさっきはいきなり通信切っちゃったの!?というか今どうなってるの!?VTシステムの反応が弱まったんだけど!』

 

束に連絡を取ると大騒ぎしてる。

さっき通信をブツッと切った事に文句があるようだ。

謝っとこ。

 

「通信切った事は謝る。取り敢えずラウラは救出完了。それとVTシステムはなんか知らんが動かないでその場で固まってる」

 

『……展開が早すぎて追い付かないよ』

 

状況の説明をすると本当に訳が分からないといった声で呆れかえる束。

まぁそうだよね。仕方ないね。

 

「それよか壊れてない方のピットの隔壁開けられない?」

 

『さっきも言ったけど無理。回線丸ごと持ってかれちゃったから』

 

「なら早めに助けに来て欲しいんだけどそこんとこどうなってんの?」

 

『取り敢えずシステムの復旧にあと一、二時間ってところ。ただシャットダウンされたなら十秒もあればなんとかなるけどぶっ壊されてるからそもそも物理的に修理をしないといけない段階だからね。しかも複数個所。完全に電源も落ちちゃってるしどんな暴れ方したらこうなるのか』

 

「それじゃ俺は寒空の下、何故か全裸の少女と一緒に震えるしかないって訳ね。理解したわ」

 

取り敢えず此処で待ってることしか出来ないって事ね。理解したわ。

でもそんな事より束は別の事に食いついた。

 

『は?全裸って何?どういう事?まさか……』

 

おぉっとこれは勘違いしていらっしゃる。

ちゃんと弁解せねば。

 

「言っておくが俺は何にもしてないぞ。VTシステムから引っ張り出したら何故か着ていた物が全部剥ぎ取られてました。それだけです。そもそもあんな状況で、自分の左腕がポッキリ逝ってるのにそんなことできません」

 

『……おじさん、女子高生は流石にダメだよ?』

 

「だからちげーって言ってんだろぉぉ!?」

 

なんで理解してくれないのぉぉぉ!?

おじさん何も悪いことしてないよ!?無罪だよ!?冤罪だよ!?

 

『私ならオールオッケーだよ!』

 

「何も良くねぇ!良いから早く助けに来て!?」

 

束に手を出したらそれこそジ・エンドじゃん!?

一緒に雲隠れするしかなくなるじゃん!?

 

『分かってるって。こんな会話しながらもちゃんと作業は進めてるし』

 

「ホント有能だなこいつ……」

 

『でしょ?だから帰ってきたらお説教のついでに沢山褒めてね!』

 

そしてサラッとご褒美をねだってくるあたり流石束。

抜かりないな。

 

「あーはいはい分かった分かった」

 

『あ、それとちーちゃんブチギレモードだから覚悟しておいた方が良いよ』

 

今スッゴイ物騒な言葉が聞こえて来たんだけど気のせいだよね?そうだよね?

千冬は怒ってないよね!?笑ってるよね!?

 

「は?え?おいちょっ」

 

向こう側でちょっと押し問答の様な物音がして、何故か全くの雑音も無く静かになる向こう側。

そして何処か聞き覚えがあるけど恐ろしい声が流れて来る。

 

『ニイサン?アトデオボエテロヨ?』

 

俺は何も聞こえなかった。

妹の声に似た何かの死刑宣告何て聞こえなかった。

だから幻聴だったんだ。そうだだから通信を切っちゃったのは仕方が無い事なんだ。そうだ仕方が無いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

それから救出が来るまでの間、延々とコールサインが鳴り響いていたけどそれも幻聴なんだ。

 

 

 

 

 

 

つか今更だけど左腕の感覚が在りません。どうすればいいでしょうか?

ISを待機状態にする?でもこれでまだ痛覚が残ってたら死ぬほど痛そうだし……

 

よし、このままにしとこ。

それにVTシステムが再起動しないなんて保証はどこにもないんだし。

 

え?コールサイン?幻聴でしょ?

 

 

 

 




(ヤンデレルートは)ないです。

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