おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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皆さんお久しぶりでゲス。
久々の投稿でゲスが読んでくれると嬉しいでゲス。



~お兄ちゃんはどんな時でも辛いよ~ in戦後処理 

例のVTシステム事件から早いもので二週間が過ぎていた。

当たり前だが身体をまともに動かす事も出来ず束の月面秘密基地で俺はリハビリを続けている。束には無茶をしない様に言われている為に一時間リハビリのために身体を動かしたら三十分程の休憩を挟んでまた一時間のリハビリ、三十分の休憩を繰り返していた。

 

最初の二日は本当に動かすのに苦労した。

指先一本動かすのにも一苦労だった。まぁ束の電気治療とかよく分からんので色々と施してもらいながら身体全体を俺の感覚に馴染ませる事に注力して二日目には身体を動かせる様になり日常生活に支障を出さないレベルまで回復した。

 

今じゃ普通に一人で歩けるし箸も使えるようになった。

しかしながらやはり身体の感覚は元の物とは違う。束のお陰で以前の身体の感覚と限りなく近いとは言っても少し感覚が違う所はあった。

 

今は慣れて来たとは言っても試しに色々と型の動きをやってみたが小さい感覚の違いが指先までの動きを集中するとかなり違っていて困りものだ。うーん、以前完璧にと言ったがやはりそう言う訳では無いようだ。日常生活を送る分には問題無いが……まぁそこら辺は追々慣らして行くしかない。

 

それよりも。俺の身体が動かしづらいとかそんな問題よりももっと重要な問題がある。

その問題と言うのは我が妹達の事である。

 

 

 

そう、一番の問題は妹達の事だ。

 

 

 

ちょろっと見た時に皆の綺麗な目はそりゃもうしっかりと濁って重苦しくなっていてハイライト大先輩はとっくの昔に何処かへ逃げ去ってしまわれた。

そんなおっそろしい状態の中に突っ込んで行ける程おじさんに勇気は無かった。一日に一回通信で顔を合わせたりして連絡は取っていたがあんまり思い出したくない。

 

今はマシになってハイライト大先輩も少しづつ様子見的な感じでお戻りになって来てくれているけど何というか事あるごとに即座に逃げて行ってしまう。

 

一週間画面越しにしか会っていないからそろそろ限界が近いそうで明日急遽、皆と会う事になった。

 

いやぁ……心配掛けさせやがってと刺されないか心配でしょうがない。

 

お兄ちゃんは妹達に後ろからブスリとやられたくは無いのだ。そんなのが死因とか嫌すぎる。リア充なのかそうでないのか全く持って分からない。

 

でもお兄ちゃんはとっても頭が良いのでそんな妹達の対処法はばっちりなのです。

 

まず初めに全力でゴマすりをしましょう。

そしておべっかを立てて持ち上げまくって機嫌を良くさせましょう。そうすれば大抵の事は何とかなる筈です。ですがちょっとばかり対処を踏み外すと今までの努力が急降下で無意味になってしまうので注意です。

 

まぁぶっちゃけ最終的に妹達が暗黒面に落ちなければこっちの勝ちなんだよ!誰だって妹がヤンデレになったりするのは何が何でも防ぎたいだろ!?

と言うか何の気配も無く後ろに立たれて片手に包丁とか普通に怖いじゃん。そうじゃなくても現時点で事あるごとに尻に敷かれてひーこらひーこら言ってるんだからそりゃもうそうなってしまったらどんな未来が待ち受けているのかは明らかだ。

 

そう言う訳で今日は久々にお兄ちゃんは妹達の元に行きます。だってこれ以上流石に放っておけないしね。一応画面越しで会話したりはしているがそれじゃ千冬達の抑えが利かなさそうだ。

それに各国に対するまぁその、何というか……やられたらやり返すをしようとしている千冬達のストッパーにならなきゃならん。束は何とか説得して抑えたが説得する前は、

 

「取り敢えず見せしめにドイツとフランス辺りには物理的に海に沈んで貰おうか」

 

なんて言っていたぐらいだし。

しかも口調こそ軽かったが顔も笑っていないし本気の奴だった。だから全力で止めた。正直な話もうあの国には救いは無いとすら思い始めているしどうなったって良いんだがそれはあくまでも国を動かしたりするトップの連中や科学者、軍人の話であって一般市民に関しては全く罪が無い。なのにいきなり祖国をアトランティスの様に海に沈めたらそれこそ反感を買いまくるに決まってる。

国や軍、技術関連のトップや人員の首が全てすげ変わろうが知ったこっちゃないが。自業自得だ。

 

そんな訳で久々にIS学園へとやってきました。

いやー、久々だわー。

 

千冬から聞いた話じゃ事件の後一週間程事情聴取や現場の検証、その他諸々の調査、捜査を行っていたらしくその間は授業は休みで生徒諸君は居室待機を命じられたそうな。外出は勿論出来ない。そりゃあんな事があった後だもんな、安全を考えれば暫くは外出なんて普通は出来やしない。

 

と言っても事情聴取をしたのは各国の代表達、特に派遣されていたドイツの連中をこってりと搾り上げたらしい。それと束からの情報提供でフランスもしっかりと色々と聞かれたらしいがどいつもこいつも知らぬ存ぜぬで話にならずドイツ、フランス両国に関係者の取り調べや事情聴取を打診するもそちらも断られ挙句の果てに白を切った。

 

まぁ千冬本人も言っていた事なのだがどうにもこの学園に見学しに来ていた連中の様子からしてどうにも本当に何も知らなさそうではある、らしい。

隠すのが上手いのかそれとも本当に知らずに巻き込まれただけなのか。どちらにせよ政府が軍組織や科学者の手綱を握ってコントロール出来ていないのだから責任は重く罰もそれ相応になる。

 

しかもどこぞの誰かがマスコミにリークしたのか知らんがそりゃもう世間は大騒ぎになっているらしい。誰の仕業でしょうね?(すっとぼけ)

お陰で何処の国の上層部も顔を青ざめて必死になって弁解したり言い訳したりとそれはそれは大忙しだそうな。

 

 

 

 

と、そこら辺の事は置いておいて。

IS学園に来たは良いがまぁなんつーか……静まり返っている。

聞いただけだがしこたま世間を大騒ぎさせている事件に巻き込まれ、下手すりゃ俺みたいに大怪我をして一歩でも間違えればあの世行き。

そんな所に居たのだからそりゃぁ意気消沈なのは理解できる。

 

実際に何時もなら授業中だろうと賑やかな雰囲気を持って居る廊下も教室も静まり返っている。流石に教室の中は人の気配もあるしその分の賑やかさはあるが存在の賑やかさだけ。話し声だったりは全く聞こえない。

 

ふぅむ……授業中か……

 

これじゃ千冬達には会えそうもないな。

しょうがない、出直すか……

 

 

「ニイサン……?」

 

「うぉえうあおろぉぁ!?」

 

なんて考えていたら後ろから声を掛けられた。

おかしい。俺の後ろは束が付いて来ていたはずなのに……あっ。

束は哀れにも箒に捕まって何故俺に会わせてくれなかったのかと問い詰められ青い顔をしている!これは助けが期待出来ないな!

 

「何をそんなに驚いているんだ?ん?妹の顔を忘れてしまったか?」

 

「い、いやそんな事はねぇよ?いきなり後ろから声を掛けられてビビ……いや、驚いただけだぞ?うん、驚いただけだ」

 

「それならいいが。しかしいきなり現れるな。私達でなければ兄さんの気配や匂いは分からないんだぞ?誰か敵対している人間が傍に居たらどうするんだ」

 

「あ、うんごめん」

 

反射的に謝ったけど、こっわ……うちの妹達こっわ……

お兄ちゃんは敵対している人間よりもお前達の方がよっぽど怖ぇよ。何だよ匂いって。気配ならまだしもこの広い空間で匂いっておかしいでしょ……もう色々な意味で怖いよ。

 

箒は束の襟を掴んで持ち上げている。その細腕でどうやって体重50kg以上ある束を持ち上げているのか。束はジタバタと足と手を動かして必死になって言い訳、もとい説明を必死になってしている。

 

あ、一応言っておくと束の体重の重さのだいたいの原因はそのおっきな胸と安産型のお尻、あとは太腿が原因。腰はしっかりと縊れていて細いのだが出るとこ出てるからしょうがないね。

 

ちょっとばかり恐怖と混乱故に訳の分からない事を考えたりしたが概ね平静を取り戻した。

 

 

 

さてさて、これマジでどうしよう。

千冬は後ろから抱き着いて顔をグリグリと背中に押し付け服越しでも分かるぐらいスーハースーハー深呼吸をしているし一夏は正面から飛びついて足まで使って抱き締めてセシリアは左腕に抱き着て来たかと思ったらそのまま腕の間に顔を潜り込ませ脇の辺りに顔を突っ込んだ。そして千冬と同じく深呼吸を何度も繰り返し。

 

箒は束を締め上げて気が済んだのかこっちに来て右腕をガッツリ胸元に抱き締め文字通り締め付けられてる。

束はぜーはーぜーはー言いながら地面に膝を付いているしこりゃ助けは出来そうも無い。

あ、ちょっと皆さん本格的に離して……

 

「うげげげ!?」

 

千冬さん!握り拳が鳩尾に入ってる入ってる入ってるぅ!?吐いちゃう吐いちゃう!

一夏ァ!背骨がバキバキ変な音出してるから!なんで!?おかしくない!?束謹製の最強骨格骨格&筋肉だぞ!?それが変な音出しているとかおかしいってば!もうちょっと力を緩めて!

あ”あ”ぁ”ぁ”!?箒さん!腕が曲がってます!関節が絶対に曲がらない方向に、段々と嫌な音を出しながら曲がり始めてるから!曲がり始めてるから!

セシリアさん!腕が曲がってます!曲がっちゃいけない方向に曲がってます!ミシミシ言ってます!匂いを嗅いでないで力を緩めてください!スリスリしながら、んはぁ……!なんて恍惚な声を出してないで離して!

 

「あばばばば!?!?」

 

ミシッ!ミシミシミシッ!メキメキッポキポキゴキゴキッ!

そんな音を立てながら身体中の骨や筋肉が変な方向に曲がり、圧縮されて音を立てる。

 

皆お兄ちゃんの事が大好きなのは分かったから!分かったからァ!?お願いだから大好きならもっとお兄ちゃんをソフトに優しく扱って欲しいなぁ!?

 

必至に手だけを動かして箒とセシリアの、太腿を必死にタップする。

えぇいこの際太腿だなんだと言ってられるか!あ!?ちょっと一夏さん首に肩が入ってます苦しいです息が出来ません!離してください!!

 

「タ”イ”ム”!タ”イ”ム”タ”イ”ム”!」

 

その声すら聞こえていないのか必死になって身体をあっちへこっちへ動かし捻りどうにかこうにか抜け出そうとするも敵わず。そんな俺達を見兼ねたのか束が止めに入る。

 

「皆ストップストップ!完全に決まっっちゃってるから!あぁ!!白目剥き始めた!?本格的に不味いって!」

 

「そんな事を言ってお前はまた兄さんを独り占めするんだろう……?そうはさせん」

 

「んな訳無いでしょぉ!?」

 

説得する束に対して千冬はそう言い切った。

束は頭をブンブンと振るって絶叫するもその声が千冬の拘束を解くものにはならない。

 

「姉さんは今の今まで散々洋介兄さんを堪能したんだからこれからは私達に、いや私に譲るべきだ」

 

「だからなんもしてないってばぁ!治療とリハビリしかしてないから!?……ちょっとは団欒したりしたけど」

 

ちょ!?お前今余計な事を最後に言ったな!?

その言葉で箒の抱き締めて来る力は増したァァ!?

 

「いでででで!!!」

 

「暫くの間は姉さんが兄さんに接近するのを禁ずる」

 

「なんでぇ!?」

 

ほらぁ!余計な事言うから事態が更に悪化したじゃねぇか!おまけと言わんばかりに全員の抱き締める力がマシマシになってるぅ!?

 

「篠ノ之博士、確かに小父様の怪我を治療して下さった事には大変感謝しております。ですが暫くの間小父様をずーっと独占して良い思いをしていたのですから少しぐらいは我慢をして下さいな。それともまだ足りないと仰るのですか?」

 

「君も何を言っているのかな!?滅茶苦茶なこと言ってる自覚あるぅ!?」

 

セシリアもセシリアで聞いたことが無い様な低い声で束を威嚇する。

 

「ヘブゥ!?うごごご!?!?」

 

「わぁぁぁ!?本当に潰れちゃうってばぁ!」

 

イヤァ!?また抱き締める力が強くなったぁ!本当に勘弁してぇ!俺はまだぺちゃんこにされたくないんだぁ!しかも潰された理由が嫉妬した妹達に抱き締められてとか嫌すぎる!兄貴冥利には尽きるけど一人の人間としては絶対に御免だ!

 

「いっちゃん!肩が首に入ってる!決まってる!段々顔が青くなってきちゃってるじゃん!?」

 

「……お兄ちゃんはこれぐらいじゃ死なないもん。あぁ、お兄ちゃん久々のお兄ちゃんの体温と匂いだぁ……」

 

「ヒェーーー!!」

 

あ、もうダメ、気絶するわ。

そんな訳で俺は気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幾ら強化人間とは言え呼吸を止められちゃ敵わないのな。割と本気で死ぬかと思った。

そんな俺は意識を取り戻して一日の授業が終わり時間が出来た四人を千冬達を正座させお説教中。千冬はどうにも仕事があったようだが今日中にやらなければならない仕事だけ終わらせてそれ以外は後回しにし、俺の所に飛んできた。

まぁ久々の兄妹の触れ合いなんて無いんですけどね。昼間の件、お兄ちゃんは許してません。

 

「いやね?別にくっつくなとは言わんですよ?だけど限度ってもんがあるでしょーが」

 

「でも兄さんは今日まで束とイチャついてたんだろう?」

 

「イチャついてねぇ!」

 

「「「「…………」」」」

 

「ねぇなんでそんな目で俺を見るの?そんなに信用できないの?」

 

「「「「うん」」」」

 

「頷くんじゃねぇよ。何がそんなに信用出来ないんだよ……」

 

四人は正座させられているのにも関わらずブーブーと文句を言って来る辺りこいつらの神経は随分と太いらしい。

しかしながら当事者である俺と束が幾ら説明しても説得力に欠けるのは確か。どうすれば納得してもらえるの?と思いながら説得するも全部嘘つくんじゃねぇって目で見られてる。ねぇ君達は本当に俺の事信用出来ないの?

 

「どうすりゃ信じてくれんの……もう疲れたよ……」

 

「あぁッ……!おじさんが疲れ切ってぐったりし始めちゃったよぅ!もうこうなったらくーちゃんに説得して貰うしかないね!カモンくーちゃん!」

 

同じく疲れた束は変なテンションでクロエを呼び出す。

 

「おや……?ここはどこでしょうか?あれ、お父様とお母様?するとここはIS学園という事ですか」

 

「くーちゃんここに居る皆に説明してあげて!」

 

「?まぁ説明しろと言うのならば説明しますが……」

 

いきなりの事で少し戸惑っているが納得してくれたらしい。

その手には洗濯をしようとしていたのか洗濯用洗剤のボトルと柔軟剤が握られているけど。

 

そしてクロエの登場と言葉に固まっていた四人の内、千冬が動き出し混乱しながら何かを聞こうとする。まぁお父様呼びの事とかだろうな。

 

「おい、兄さんちょっと待ってくれ。今その、えー……」

 

「クロエ、と申します」

 

「「「「クロエさん?」」」」

 

綺麗なお辞儀を四人に向かってする。

千冬達は困ったようにクロエの事を呼ぶ。

 

「呼び捨てで構いませんよ」

 

「あー、分かった」

 

「それで、私に聞きたい事があったのでは?千冬叔母様」

 

「おばぁ!?」

 

「ぶふッ……」

 

クロエは千冬に向き直り首を傾げながら千冬に質問を促す。その時にしっかりと叔母様、と言いながら。

 

「ニイサン?イマワラッタナ?」

 

「いやいやいや、笑ってない笑ってない」

 

「まぁいい……」

 

いやぁ、千冬の顔と反応が面白すぎて思わず吹き出しちゃったぜ。

だってあの千冬をたった一言の言葉だけでここまで絶望させるって凄い事だ。

 

「千冬叔母様、どうかされましたか?」

 

「お、おば、おばば、おばばばばばば……」

 

「あ、千冬が壊れた」

 

クロエには悪気は無いのだろう。

千冬もそれを分かっているのか問い詰める事はしないが、精神的ダメージはデカい様で壊れた再生機の様になっている。

 

「なぁ、兄さん、私ってそんなに老けて見えるか……?」

 

「ノーコメントで」

 

「死んじゃえ」

 

「おぉっと急に辛辣ゥ!」

 

ノーコメントと言ったら幼児退行した様に幼い感じでドストレートに言われてしまった。まぁ今のはからかった俺が悪いんだけど。

 

「その、クロエ。出来れば私の事は叔母様と呼ぶのは止めてくれ。精神的ダメージが大きすぎる……」

 

「はぁ、分かりました。でしたらなんとお呼びすれば良いのでしょう?千冬お姉様とか?」

 

「なんか一部のイカれたファンを思い出すな……だったら叔母様の方がマシだ」

 

多分イカれたファンってのは明らかに千冬をそういう目で見ている狂信者の事だな。うん、あの人達は本当にヤバい。

 

「では千冬叔母様、とお呼び致しますね」

 

「うん、まぁこの際初対面云々は抜きにしてもうそれでいい。で、何者だ?さっき兄さんと束の事をお父様、お母様なんて呼んでいたが」

 

「そのままの意味ですよ?私はお父様とお母様の娘です」

 

クロエがそう言ったその瞬間、俺と束、クロエ以外の四人の空気が凍り付いた。

それはもう音が付くのならピッキーーーン!!!って言うぐらい。ガチゴチに凍り付いてしまった。

 

「小父様?少々お聞きしたい事があるのですが宜しいですかぁ?」

 

「おいセシリア、落ち着け。落ち着いて話を聞いてくれ」

 

「うふふふ、私は落ち着いていますわ?えぇ、とっーっても落ち着いていますわぁ!?」

 

駄目だぁ!セシリアはもう駄目だぁ!

目が座ってる!決まっちゃってる!これはもうどうしようもねぇ!

 

「洋介兄さん……」

 

「ほ、箒なら分かってくれるよな……?」

 

「えぇ分かってます、分かってますよ」

 

「良かった……」

 

「洋介兄さんがまだ七、八歳の姉さんに手を出して挙句妊娠させたロリコンだって事はよーく分かってます」

 

「そうじゃねぇだろぉ!?」

 

箒もダメだ。

顔が死んで乾いた笑い声を出しながらカタカタ体が震えている。これはあれだ、現実から逃げている時の人間そのものだ。

 

「お兄ちゃん、私今夢でも見てるのかな……」

 

「夢じゃない!夢じゃないから!しれっと俺のベッドに潜り込んで寝ようとしないでくれる!?少しは俺の話を聞いて!?」

 

「あははははッ!お兄ちゃんが夢に出て来るなんてもう私ったら駄目だなぁ!」

 

「イチカァァァァ!!」

 

一夏は死んでから丸々一年ぐらい常温で放置された魚の目をしながら狂ったようにケタケタと笑い狂ってる。怖ぇよぅ、怖ぇよぉ!

 

「兄さんが、兄さんが束と結婚……?夫婦……?ふふ、ふふふ、フフフフ!アハハハハ!」

 

「千冬ー!頼む!頼むからそんな怖い顔と雰囲気で俺の事を抱き締めないで!お願いだから!頼むからァ!」

 

「兄さん、世の中には略奪愛という物があってな?私はそれがどんなものかとっても気になるんだ。そうだ、兄さんを束から奪えば良いんだ。いや、取り返すんだそうだ取り返せばいいんだ……」

 

「アァーーー!!千冬が小声で何かずっとブツブツ言ってる!絶対に聞きたくない様な事をずっと言ってる!」

 

不味い不味い!このままじゃ本格的に不味い!俺の命が危うい!

 

「私、何か変な事でも言ってしまいましたか……?」

 

「くーちゃん、見ちゃ駄目。あれはもう私達の知っている皆じゃない」

 

「おい束ェェ!んな事言ってないで助けろよぉぉ!」

 

もう、滅茶苦茶だった。

束はもう諦め、悟ったような顔と目でクロエの肩に手を置いて話した。

 

あれ?今日ってそもそも何が目的でここに来たんだっけ?

もう当初の目的が何なのか分からなくなってしまっている俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に暫くして、ちょっと荒めの手を使ったりして正気を取り戻させたりしたけどまぁ概ね問題は……無い……と思う。

 

まだちょっとした拍子におかしくなったりするが強めに身体を揺すったりすればまぁ、なんとかなる。あれから鈴も合流して正気に戻すのを手伝ってくれた。いやぁ、あんなに鮮やかで見事な手際は見た事が無い。

 

流石はちっちゃくても大きな度量と心の広さに定評のあるオカンだ。何というか、色々と周りのメンバーと比べると全てのサイズがミニマムなのに一番のオカン具合とバブみを感じるのは何故だろうか。まぁ今そんな事は置いて。

 

俺と束の関係についてはクロエに潔白を証言して貰ったりして誤解は解けた。解けて貰わないと本当に困るので全力で説明してやったぜ。

 

そして次に話すのは俺の身体について。まぁこれに関しては俺から言える事は殆ど無いんだよな。だから最初の話の導入に関しては俺が言うがそれ以降は束に丸投げする。

 

「あー、そんじゃ俺の体調についてな。まぁぶっちゃけて言えば元々の身体じゃぁない」

 

「兄さんの、元々の身体じゃない?どういう事だ?」

 

「お兄ちゃん、それって謎かけ?」

 

「いや、そのままの意味だな。これに関しちゃ束から詳しく話を聞いた方が良いな。細かい事は俺じゃ説明出来ねぇし。束、頼んだ」

 

「はいはーい、頼まれましたー」

 

そして束は以前俺にしたように同じ説明をしていった。

暫く説明に時間を割いている間は俺は話す事も無いから端っこでお茶を啜りながらぼーっとしていた。

 

観察していたがそりゃもう顔色の変化が凄い事凄い事。

青くなったり赤くなったり緑になったり茶色になったりとお前ら信号機かよ、と思うぐらいには変化に富んでいた。

 

「兄さんが改造人間になっちゃった!?」

 

「改造人間というよりはバイオボーグだけどね。機械部品一切使ってないから」

 

千冬は若干のキャラ崩壊を起こしながら事実を飲み込んでいく。

なっちゃった、なんて言葉使い聞いた事無ェぞ。

 

「お兄ちゃんピチピチになったって事!?」

 

「まぁそうなるかな?」

 

「何その最強アンチエイジング!」

 

「え?お前本当に俺の事心配してた?」

 

「当ったり前だよ!」

 

一夏、お前は本当にマイペースだな。

でもあまりアンチエイジングとしちゃお勧め出来ないな。何せ一度死に掛けて身体の機能を失わなくちゃならねぇんだから効率が悪すぎる。

 

「おぉ、確かに洋介兄さんの腕が以前よりも硬いな」

 

「箒、そんなペタペタ触らんでくれん?くすぐったい」

 

「……腕枕として使うにはちょっと硬過ぎるな」

 

どこかズレた感想を言いながら俺の腕を触っている箒。

つーか腕枕ってさてはお前俺の知らない所で勝手にやってるな?

 

「小父様、本格的に人間を辞め始めていますわ。人体の強度がISに用いられる特殊装甲以上の強度があるなんてそれ何処のターミ〇ーターですの?」

 

「俺はまだ人間だからな?ター〇ネーターじゃないからな?」

 

「でしたら改造人間?」

 

「違う。取り敢えずその方向から離れて?俺は人間。おーけー?」

 

セシリアお前、意外と俗世に染まってるじゃねぇか。

言い回し方が2ちゃんねるの連中のそれだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「そんじゃ次はクロエについての説明な。これも束に説明して貰いたいんだが……どうする?」

 

「大丈夫だよ、私がちゃんと説明する」

 

「おう。辛くなったら途中で交代してやるから」

 

そんな訳でクロエに関する諸々の話をした。

結果的にラウラにも繋がる話だからここに居る五人は最初はどんな顔や反応をしていいのか分からないと言った感じだったが段々と怒りと憎悪と言った表情になって行った。まぁしょうがないっちゃしょうがないんだけども。

 

「あの国は本当に何処まで腐っているんだ……ッ!」

 

「まぁ、うちの国だけじゃなくて他の国にも言える事だけどここまで酷いのは無いわよ。有り得ない。こんなのただ命を弄んでるだけじゃない!」

 

「元々、あの国は色々と後ろ暗い事はかなりありますがここまでとは思っていませんでしたわ……」

 

「何処の国も後ろ暗い事とか隠してる事は色々とあるだろうけどさ、幾ら何でも酷すぎるよ……」

 

千冬、鈴、セシリア、一夏は国家代表や代表候補生を務めているだけあって色々とそんな噂を聞いていたりするからガチギレと言った様相ではあるが最低限平静は保っている。

 

ただ箒に関しちゃちょっとヤバいな。

青い顔して震えている。まぁそれもしょうがないのかもしれない。こりゃ最初に注意しておくべきだったか。

 

「箒、大丈夫か?」

 

「あ、あぁ……」

 

「そんな震える手をしてちゃ説得力に欠けるがな……」

 

箒の頭をワシャワシャ、っと撫でておく。

落ち着いてくれるかどうかは分からないがまぁ気休めにはなるだろう。

それから始まった会話はドイツフランス、その他各国をどうやって調理してやろうかという事だった。

事前に釘を刺しておいたからそこまで過激な事はしないと思うけど。端で俺はクロエと箒と共にババ抜きでもやろう。

 

「トランプ配るぜぃ」

 

「お父様、私ババ抜きをやるのは初めてです」

 

「お、マジか。ルール知ってる?」

 

「はい、朧気ながら」

 

「それなら十分。やりながら覚えて理解すりゃいい。箒は?」

 

「ババ抜きのルールぐらいなら知っていますよ」

 

「されじゃぁやろうぜ。向こうはなんか小難しい話してっから関係無い俺らは大人しくババ抜きに興じよう」

 

「お父様とババ抜きですか……!私絶対勝って見せます!」

 

「洋介兄さんとババ抜きをするなんて何年ぶりだろう……」

 

聞き耳立てながらババ抜き。

因みにクロエはJOKERを何度も引き当てるが絶対に最下位にはならないというなにそれイカサマ?と思うような感じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「束、それに関してどうするつもりだ?少なくとも私は放って置けん。置きたくない」

 

「あぁ、研究所とかに関してはもうとっくの昔に潰してあるからこれ以上こんな事が起きることは無いよ」

 

「それだけか」

 

「んな訳無いじゃん?これぐらいじゃ生温い生温い」

 

「ほう、どうするつもりだ?」

 

「まぁVTシステムの件と並行してドイツとフランスに関しては暴露するつもり。こいつら裏でガッツリ繋がってるから共倒れだろうけど。それにコアも取り上げちゃおっかなー、って思ってる」

 

「ですが篠ノ之博士、全部取り上げてしまうと後々の影響が大きすぎるのでは?今現在の世界はISと言う単体の技術に完全に依存しています」

 

「正直言っちゃえばそんな事どうでも良いんだよねー。ドイツやフランスって言う国が消滅しても。私からすれば家の中のゴキブリが殲滅された程度にしか感じないし。皆だって害虫や害獣が駆除されたら普通喜ぶでしょ?」

 

「束、幾ら事実でもやるなよ。それと一般市民を同列に扱うな」

 

「分かってるってば。最初はドイツを物理的に海に沈めちゃおっかなーって考えてたんだけどそんなことしても私やおじさん、ちーちゃん達には一切利益が無いわけじゃん?それどころか世界中の軍隊とかに今の私みたいに追いかけられちゃうかもだし。いや確定事項かも。そうなったら私の隠れ家に行けばいいだけの話なんだけどねー」

 

「全くお前は本当にやる事が一々スケールがデカすぎる。で?実際にどうする気でいたんだ?本気でそんな事を実行すれば今でさえ指名手配と言う形で捜索されているが指名手配人では無く指名手配犯になってしまうぞ。そうなったら私はお前との関係を切るがな」

 

「ちーちゃん最後の酷くない!?」

 

「酷くない」

 

「うぅ、親友だと思ってたのに……裏切られたッ!」

 

「お前、さてはそこまでダメージを受けてないだろ」

 

「えー?だってちーちゃんがそんな事するなんて思ってないもん。多分だけどそうなっても何だかんだで親友続けてくれるんじゃないの?」

 

「…………」

 

「え?ちょっとちーちゃんなんでそこで黙るの?普通そこはニヤッ……って不敵に笑って何か言う所じゃない?」

 

「…………」

 

「ねぇなんでそっぽを向くの?ねぇちーちゃんこっち向いて?こっち向いてよ。こっち向いてってば!?」

 

「おい頭掴むのを止めろ。止めろと言っているじゃないか!おい止めろ!」

 

「じゃぁこっち向いてよ!?なんで頑なに私を見ようとしてくれないの!?泣くよ!?私みっともなく泣くよ!?二十過ぎてそろそろ二十五歳になろうかって言う乙女がみっともなく泣き叫ぶよ!?」

 

「知るか!髪の毛が乱れるから止めろ!」

 

「親友よりも髪の毛の心配!?」

 

「千冬さん!篠ノ之博士!話がズレてます!」

 

「お二人共落ち着いて下さい!本来の話の目的から完全に踏み外してしまってます!」

 

 

 

 

 

 

 

~~~~ 閑話休題 ~~~~

 

 

 

 

 

 

 

「それで、本当にどうする?お前が言っていた通りにドイツフランスをアトランティスの様にするにしてもまさか国民ごとそのまま、とはいかん。一億四千五百万もの人間を殺す気か?事前通告をするにしてもこの数の難民が発生するんだぞ?」

 

「そんなこと私が分かっていないとでも思った?あくまで考えたってだけだよ」

 

「お前はそれを実行出来るだけの力があるから冗談に聞こえんからな」

 

「信用無いなー……」

 

「今までの行いを思い返すんだな。それで、本当にどうするつもりだ?このまま何の罰も無しに野放しにしてはおけまい」

 

「そりゃね。今だって現在進行形で隠蔽工作をしているから。まぁ他の国はコアを奪えるかもしれないから寧ろその逆の動きをしてるんだけど……」

 

「こうやって聞かされると本当に腹が立つ」

 

「ドイツとフランスに対する罰は一応確定事項なのはISコアを私が回収する事と今までの悪事の証拠文書や書類を世界中のありとあらゆるネット上にばら撒いてやる事」

 

「それだけでも国家として最悪立ち行かなくなるぐらいですよ」

 

「まぁ流石に後々の事を考えるとISコアを全部取り上げるわけには行かないんだよね。コアを狙っておじさん達が狙われたら意味無いし。何個か残して後は没収!悪事の証拠は一つ残らず全部ぶちまけてやるけどね」

 

「ま、それが妥当な所かもしれんな。コアを取り上げられても文句は言えん程の事をやらかしているのだからな」

 

「私も賛成かな」

 

「私も賛成ですわ」

 

「姉さん、賛成ですがやり過ぎない様に」

 

「分かってるってば。本当に信用無いな私」

 

「正直外交は全くの専門外だから私はお前がやり過ぎない様に抑えることしか出来ん」

 

「外交なんて私だって興味ないから専門外だもん。ま、おじさんが死んでたら本気で世界を滅ぼしてたかもしれないけど」

 

「絶対にやめてくれよ」

 

「分かってるよー」

 

「他の国にはどうやって牽制するんだ?お前がコアを持って居ると知ったらまた面倒な事になるぞ」

 

「そーだねー、こっちもこっちでコアを停止させちゃおうかなって考えてる」

 

「停止、か。取り上げではないんだな」

 

「うん。あくまで牽制だからね。二、三個停止させちゃえば十分でしょ。元々所持数が少ない国は見逃して所持数が多い国に限定するけどね」

 

「当然、国連の常任理事国は複数個停止させられる事が確定か」

 

「当ったり前じゃん。ついでにほとぼりが冷めたら悪事の証拠も幾らかばら撒いちゃおうかなー」

 

「そっちは好きにしろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

今は神経衰弱をやっているがこれがクロエの運が悪い事悪い事。

面白い様にペアが作れず箒に掻っ攫われて行く。俺は紳士で優しいからね、そんな事はしないのさ。気が付いたら最下位だったけど。

 

何となく終わった気配がしたので顔を向ける。

どうやら話し合いは終わったらしく、晩飯の準備に取り掛かっていた。それぞれ得意料理を作るらしいが千冬は勿論料理なんて出来ない。セシリアは全員に止められ俺と並んで座って待っている。

ついでに今の今まで放置していたラウラも連れて来ようか、ともなったが今現在も最初の頃とは段違いに良い状況になったとはいえ未だに人前に出すのは憚られる状態なので見送ることにした。

 

 

その間俺は話し合いの結果を聞いたりしていた。まぁ何というか予想はしていたが結構重めとも取れる内容だったが俺が今更口を挟んでもしょうがない事だし何より今までのツケを払う機会が来た、と言うだけの話だ。

 

 

 

 

 

晩飯は箒と一夏が和食中心の物をそれぞれ一品ずつ、鈴は中華料理を一品、クロエと束はそれぞれ洋食を一品ずつ。

 

合計で五品と言った何ともまぁ豪華な食卓になった。

金平牛蒡、鯖味噌、麻婆豆腐、ポテトとベーコンのグラタン、チキンと野菜のトマト煮込み。

 

和洋中全部が楽しめる。

それらの食事を食べながら全員でワイワイと騒ぎながら食事を摂りそれが終わったら後片付けの後に俺は束とクロエと共に秘密基地に帰った。

 

ラウラは相変わらずと言うか何と言うか……自室のベットの上でぼーっと座っていた。俺が食事を持ってクロエと共に入ると少しだが反応はする。

最初は一切何に対しても反応しなかった事を考えると大きな前進だ。

 

ただ飯に興味を示さないのはいただけないな。まぁ俺とクロエで食わせるんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言う訳でなんだかんだ大騒ぎした皆との久々の顔合わせはこうして終わって行った。

 

 

 

 

 

 

 




酷い。
久々に書いてこれとか酷い。

でもこれぞ独芋納豆クオリティ。
途中会話文しかない部分があるけど気にしないで。


金髪のフランスの女の子?あぁダイジョブダイジョブ。あとでどうやって登場させるかは分からないけど無理矢理にでも捻じ込むから(おじさんを好きになるとは言ってない)





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