おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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今回は千冬視点をお送りいたします。
次回は一夏視点かな?
いや、主人公視点を進めてもいいんですけど個人的には書きたいかなぁって。
だっておにゃのこ一夏とかロリ千冬とか最高じゃないですか。







私の兄は世界一 (千冬)

ーーー私にとっての兄さん?---

 

ーーーふざけたり冗談言ったりからかったりするのが好きだけどーーー

 

ーーー世界で一番格好良くて、優しくて、強くて、命の恩人でーーー

 

ーーー世界で一番大好きな、愛している人ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑千冬。

その名前を聞けば誰だって顔が浮かんでくるぐらい私は有名人になった。なってしまった。

 

 

 

 

ーーーーーーー別になりたくてなった訳じゃない。

 

 

 

 

ーーーーーーー兄さんの負担を少しでも軽くしたくて。

 

 

 

 

ーーーーーーーもっと私の事を見て欲しくて。

 

 

 

 

ーーーーーーー兄さんが胸を張って自慢の妹だって言えるようになりたくて。

 

 

 

 

-------いままで沢山の物を、形のある物、形のない物関わらずくれた恩返しをしたくて。

 

 

 

ーーーーーーーまた、あの優しい手で「よく頑張ったな!」って言って撫でてもらいたくて。

 

 

 

ーーーーーーーただそれだけの為に、がむしゃらに進んでいたらブリュンヒルデと呼ばれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家族は3人。

いや、正式には私と妹の2人なのだが。

もう1人は、私達姉妹の育て親でもあり、兄でもある佐々木洋介。

この人を説明しろと言われると物凄く困る。何故ならいっつも真面目なのか飄々としているのか分からなくて、ふざけて冗談を言ったり、そして私達をからかったり、なのにとっても優しくて温かくて強くて。

私達に何かあれば、嬉しいことだったら思いっきり喜んで褒めてくれて、悲しいことだったら一緒に泣いて、怒ってくれる。一言では表せない、一緒に生活しないと分からない人、というのが兄さんだった。

 

 

 

 

 

何故苗字が違うのに家族なのか?育て親なのか、兄なのか。

それは私が8歳の頃に遡る。

 

 

 

 

当時私と一夏は親が居なかった。

いや、もっと詳しく言えば私達は自然に生まれた子供ではない。簡単に言えば、人造人間とでもいうべき存在だった。

 

織斑計画〈プロジェクト・モザイカ〉

そう呼ばれていた研究によって私は、一夏は生まれた。

完璧な人間の創造。そんな普通の人間が聞けば馬鹿々々しいと一蹴するような内容。でもそれを本気でやろうとした人間が居た。

そしてその結果私達は生まれた。無数の犠牲の上に。

私と一夏は姉妹として扱われていた。当然私も計画の事を知るまでは一夏の事を本当の妹だと思っていた。

 

 

 

両親は勿論居なかった。研究所で来る日も来る日も実験だった。でも、何故かは知らないが一人の研究者が私達を連れて逃げたのだ。記憶は朧気だが多分、女性だったと思う。

何故私達を逃がしたのか、今も当時も理由は分からないし知る術も無い。

 

その人は何処からかの伝手でボロボロのアパートに私達を置いて、そのまま消えた。

幾らかのお金と手紙を残して。

 

その手紙になんて書いてあったのか、どんな思いが綴ってあったのかもう思い出せないが、それでも生きなければ、一夏を生かさなきゃと強く強く思ったことだけは覚えている。

 

少ないお金を少しずつ、使いながらなんとかやっていたがやはりある物は無くなると言うのだろう。お金はどんどん無くなって行った。

 

そして2か月程経った頃、お金も無くなって来てどうする事も出来ず、一夏の為の粉ミルクだけは何とか買える金額しかなかった。

水道、ガス、電気は既に料金の支払いが出来ていないのだろう止められていて、私は何とか公園の水道の水で飢えをしのいでいたが、そこに現れたというか食べ物を与えてくれたのが兄さんだった。その時は完全に怪しい奴だと思っていたが空腹には勝てずに時折渡してくる弁当を食べていたが、それでもこの体を維持するのには無理があった。

一夏も私も痩せて行って自分でも誰なのか分からないくらいにまでなっていた。

 

そしてとうとう限界が来た。

私は栄養失調で倒れてしまったのだ。それはそうだろう。そもそも公園の水道水と兄さんが偶に持って来てくれる弁当しか口にしていないのだから。

 

その時、偶々兄さんが近くに居た。心配した兄さんは病院に連れて行こうとしてくれたがそもそもそんなお金は無かったから必死に抵抗して病院にだけは行くまいと訴えたが一夏は赤ん坊だったからそうはいかなかった。

 

そして説得された私は一夏ともども兄さんに担がれて近くにある診療所に連れて行かれたらしい。

 

というのもあの時の記憶が全くないのだ。あるのは目を覚ましたら目の前に兄さんが居たことぐらい。

目を覚ましたらまず見たことが無い天井。そして周りを見れば兄さんがベッドの横の椅子に座っていた。それからは今の状況や私達の容体をお爺ちゃん先生に説明された。

 

一夏共々酷い状態でもう少し此処に来るのが遅かったら二人共死んでいたと言われたりして、一夏が助かったことに泣いたりして。

その時、兄さんは私の頭を優しく撫でてくれたのはしっかりと覚えている。

 

それからは何があったのか知らないが兄さんが私達の面倒を見てくれることになった。

学校にも通えることになったし、兄さんも私も平日は居ないから一夏を保育園に預けることにもなった。

休みの日で兄さんが仕事があれば先生の所に預けられていたが、6時にはいつも迎えに来てくれていた。どれだけどれだけ遅い時間になっても必ず迎えに来てくれた。

保護者としては当然なんだろうが私達からすれば、いや、一夏は赤ちゃんだったから分からないが私にとっては当然では無かった。

 

 

因みにだが診療所の先生、今も現役で診療所を開いている。確か今年で91歳だったか?元気な人で偶に顔を出すととても嬉しそうに出迎えてくれる。私達からすればお爺ちゃんなのだ。煎餅をくれるし私達の話を聞く時の顔は孫が可愛くて、そんな孫がいろんな話をしてくれるのが嬉しくて仕方ないと言った顔をする。小さい時、兄さんが休日に仕事でいない時はお爺ちゃんの所に預けられていたが、釣りだったり公園だったり色んな所に連れて行って貰った。

 

今でも休みの日は顔を出す。

多分、今日も笑いながら診療所で患者さんを診察している事だろう。

 

 

 

 

 

 

そして小学校に編入という形で入ると兄さんは更に働くようになった。私達を養うための生活費や食費、その他諸々のお金を稼ぐために。

それでも必ず一夏を迎えに行って、早い時間帯に帰って来る。そして慣れていないであろう料理を作ってくれて、私達の事を思いっきり撫でて、褒めて、優しく抱きしめてくれた。

授業参観があれば必ず有休を取って見に来てくれたし、運動会や持久走と言ったイベントなんかも絶対に見に来てくれた。

そして終わって家に帰ると必ず、

 

「凄かったな!千冬!」

 

そう言って褒めてくれる。

 

寝る時も一緒に寝たいと言えば二つ返事で受け入れてくれた。

悪いことをしても怒鳴ったりしないで、何がいけないのか。どうすればよかったのか、優しく教えて諭してくれた。怒る時もあったが最後には必ず頭を撫でてくれた。

 

 

そんな兄さんが一度だけ本気で怒ったことがある。

 

小学校に通い始めてから一年ほどたった頃、三年生の中頃ぐらいからだろうか?

何が理由かは分からないがいじめられ始めたのだ。その時の私は兄さんに迷惑が掛かると思って我慢していたのだ。

しかし、ある時、何で叩かれたか分からないが大きな痣を作ってしまった事があった。当然一緒に生活している以上隠し通せるものではなく、それを見た兄さんは私の事を問い詰めた。

 

何故そんな痣が出来ているのか。

誰にやられたのか。

何故黙っていたのか。

 

等々。それはもう散々問い詰められて怒られた記憶がある。

そして次の日、朝から何度も電話しているなと思ったら会社を休んでちょっと一緒に学校に行くぞと言われたときは何故だか分からなかったが、それでも一緒に学校に行った。

その前に一夏を保育園に送ってからだが。

 

この人は、何をする気なんだろう?

 

普段と変わらない様子で隣を歩く兄さんは、少し目が怒ったような感じがした。それでも通学路で私と一緒に並んで手を握って歩いて、いつも通り優しく話してくれた。

 

 

学校に着いた私と兄さんは教室ではなく会議室に向かった。

この時私は本当に何をするのか全く分からなかった。でもどこか普段とは違う兄さんを見て何かあるんだろうとは思っていたが……

 

 

それから暫くすると担任の先生や学年主任、校長、教頭が入って来た。

そしてその瞬間、兄さんがブチ切れた。

 

「てめぇらふざけてんのか!?お前ら言ったよなぁ!?九時に会議室に来てくれってよ!?あ”ぁ”!?それが何でお前らは呑気に話しながら一時間も遅刻してやがる!?舐めてんのか!?」

 

「い、いえ……その、こちらにも都合がありましてですね……」

 

「自分達が九時に此処に来いって言ったんだろうが!!それで遅れたら都合があるだぁ!?ふざけんのも大概にしやがれよ!?遅れたんだったら遅れたなりに誠意を見せるのが普通なんじゃねぇの!?ちんたらちんたら呑気に笑いながら歩いてきやがって!」

 

「それは……」

 

「それはなんだよ!?おら言ってみろよ!!あ!?そもそも今日俺が此処にいる理由分かってんのか!?」

 

「ですから……」

 

「ですからじゃねぇ!!俺が!此処に!居る!理由を説明しろっつってんだよ!!」

 

こんな兄さんは見たことが無かった。

その後、暫く怒鳴っていた兄さんは落ち着いたのか本題に入り始めた。

 

「で?なんで俺が電話をしておたくらに集まって貰ってるか理由は分かってんのか?」

 

この時の兄さんは他人と話す時は必ずと言っていいほど敬語を使うのにこの時ばかりは一切使っていなかった。正直今思い出せば思うが校長達の態度は悪かったと言っていい物で、少なくとも私は敬語を使うに値しないと思っている。兄さんがどういう心境で敬語を使わなかったのかは分からないが。

 

「その顔は分かってねぇ、というよりは分かっているけど言いたくねぇって顔だな?」

 

「い、いえ、そのような事は……」

 

「なら言ってみろよ。ほら、どうぞ」

 

そう言って発言を促す兄さんだが校長達は顔を俯かせているばかりで何も話さない。

 

「あー、もういい。時間の無駄だ。いいか、よく聞いとけよ。------」

 

兄さんはそれから、

 

・私がいじめられている事。

・何故気が付いていながら対策を取らなかったのか。

・何かしらの連絡を入れないのは何故か。

 

と色々と言っていたが細かく覚えているのはあまりない。

それよりもどうして此処まで心配してくれるんだろうか?という思いの方が強かったのだ。正直な話、心のどこかでまだ遠慮して、少し警戒していたのかもしれない。

 

「しかし私共はそのような事が起きているとは把握しておりませんし織斑さんから何も聞かされていないものですから……」

 

それでも白を切る校長に、兄さんは呆れてしまったのだろう。というよりも話しても無駄と悟ったのだろうか?

結局校長達に、

 

・該当する生徒に対して聞き取り調査を行う事。そしてその結果を明日までに知らせる事。

・それで解決することが困難だと判断した場合、教員が動こうとしなかった場合、法的措置を取る事。

 

それを認めさせたうえでその日は解散となった。

 

私はそのまま学校に残り、兄さんは家に帰っていった。

その時、

 

「今日は迎えに来てやるから、校門のとこで待っててくれ」

 

そう言って頭をわしゃわしゃと撫でられた。

今思えば過保護な気がするが……それでもとても嬉しかったのは確かだ。

 

 

放課後、私は校門で待っていた。

すると家の方に続く道の方から兄さんが歩いてきた。

なんだか嬉しくなって駆け寄って抱き着いたのはいい思い出だ。

 

そして家に帰って疑問に思っていた事を聞いてみた。

 

 

ーーーどうしてこんなに心配してくれるの?ーーー

 

ーーーどうしていつも私と一夏を撫でてくれるの?---

 

ーーーどうしてそんなに優しいの?---

 

ーーーどうして私達の為に色んなことをやってくれるの?---

 

純粋な疑問であったから聞いてみた。ただただそれだけ。

そして聞かれた兄さんは困ったように笑いながら言った。

 

「そりゃ家族だからに決まってるでしょ。いいか?確かに血は繋がっていない。けどな、家族になったらそんな事関係ねぇの。二人が俺の事を兄として慕ってくれているんだ。だったらしっかりと応えてやんなきゃなんねぇのが兄貴ってもんだ」

 

私の事を抱き上げて、椅子に座ってそう言った。

 

「それに可愛い可愛い妹の為だったら何でも出来ちまうのが兄貴だからな。例え何があっても俺はお前たちを守る。それが相手がどんな奴だろうと関係ねぇ。でも、悪い事をしたらちゃんと怒ったりもするぞ?でも良い事をしたり凄い事をしたら思いっきり褒めてやる。もしかしたら何でも言うこと聞いちゃうかもな?」

 

「だから、もっと思いっ切り甘えて来い。遠慮なんてするな。泣きたかったら思いっきり泣け。笑いたかったら思いっきり笑え。やりたいことがあったらやらせてやる。だから、遠慮なんてするな」

 

笑いながら兄さんは言った。

同時に頭を撫でながら。その時にはもう思いっきり信用していた。がしかし。

まさか数年後にこの兄さんを異性として好きになるなんて思ってもみなかった。

その日から暫くの間、兄さんの布団に潜り込んでいたのは一夏や束、箒には秘密だ。

 

 

 

そしていじめ問題は結局、先生方が色々と奔走して解決した。

後々聞いた話だと兄さんが先生達を脅したとか、相手の生徒を含めた家族をビビらせたという噂が流れたがそれは無いだろう。

と同時に私の兄を怒らせると大変なことになると言う噂が流れていた。

 

 

 

 

そしてなんやかんやあったが小学4年生になった時、唯一無二の親友……いや、悪友と言った方が正しいかもしれんな。篠ノ之束と出会った。

というよりはなんだろう……適切な表現が分からない。本当に、偶然、偶々出会ったのだ。

最初はよく分からん奴だと思っていたがそれは束が天才などと言う言葉では表せない程の頭脳を持っていたからだろう。

それからちょくちょく付き合っていくうちに束は頭脳だけでなく身体能力や全てにおいて超越していることが分かった。

いや、私も身体能力に関しては束と同等ぐらいだったが……

出会って一か月もすれば他の友人よりも遥かに仲が良くなっていた。

 

行動も突飛な物で良く驚かされていたがまぁ楽しかった。

束が話す事、知っている事は私が知らない事ばかりで、特に宇宙に大きな興味を持っている事。

そして家が剣道の道場をやっている事。

 

何故だか分からないがその道場に連れていかれて、その日の内に竹刀を握らされ、師範から筋が良い、天才的だなんだと言われ、剣道をやってみないかと誘われ。

だがこれ以上兄さんに負担をかけるわけにもいかないし……と悩んで悩んで悩んだ挙句、師範が家まで来たのだ。何とか説得しようと言うらしい。

 

そして一度兄さんと相談することになった。

 

兄さんは、やりたい事があるんだったらやっていいと言ってくれたが、小学生ながらも兄さんに負担を掛けているのではないかと思っていたからそれを理由に断ろうとしたのだが兄さんは、

 

「あのな?千冬と一夏を養うために負担が大きくなったのは事実だ。でもな、それは幸せな負担なんだよ。あー、なんて言えばいいんだろうな。別に仕事が辛かろうときつかろうと家に帰れば二人が居るってだけで十分。それに好きな事をやって楽しそうにしている千冬を見るのが一番の楽しみなんだよ。だから、前にも言ったけど遠慮なんてすんな。思いっきり迷惑掛けろ。思いっきり俺の事を困らせろ」

 

そう言って私が剣道をやる事の後押しをしてくれた。

そして私は剣道をやることに決めた。

それを師範に伝えると、事情が事情だから少しだけ月謝を安くしてくれたり、防具や竹刀と言った道具を私にタダでくれたのだ。そして休みの日に兄さんを連れてきて欲しいと言われた。

師範曰くそんなに妹思いの優しい兄さんを見てみたくなったんだそうだ。

 

道場に兄さんを連れて行けば、早速師範と話をし始めた。最初は練習している所を見て貰えるかもと期待したが、話に夢中でそうはならなかった。

その日は家に帰って若干不機嫌だった私だがまぁ、しょうがない。

 

 

そして何がどうしてどうなったのかよく分からないが兄さんまで何かを習い始めたのだ。最初はよく分からなかったが、現在でも武術が使えるのはこれのお陰だ。

 

何時だったか聞いたことがある。

元々篠ノ之流は合戦剣術、殺人剣術だったんだそうだ。しかし戦国時代でもあるまいしそんなものを使う機会など普通は無い。という事で剣道として人を殺すのではなく、武道としての道を歩み始めたのが今の篠ノ之流らしい。

 

そして何故素手を主な攻撃方法に持つものがあるのか。これは元々の剣術だった時に刀が使えなくなっても戦えるように、という事らしい。

その修業は見ているだけでも辛そうな物ばかりだったが元々私達と生活し始めるずっと前から鍛えていた為か身体の方はそれなりに完成していた。ならばそれを実戦で通用する肉体に変えていくだけでよかった。だから肉体を実戦向きにすることと、技を覚えることの2つに絞って行く事が出来た。

しかし途中、仕事が忙しくなってきたりと時間の都合で辞めざるを得なかったがそれでも教えられた事を出来るだけ毎日継続して練習していた。そして出来たのが素手での近接戦闘ならば私でも普通に負ける兄さんという訳だ。

少しばかり剣も使えるが我流で癖が強いため滅多に使わないが。

 

 

 

確かに最初はきつかったけど、それでも続けた。

1年もすれば大会で優勝することが一度。

それからは年を重ねていくごとに優勝する回数は増えていき、中学生になればその年の大会を全て優勝するように。

 

そして当たり前のように試合があれば応援に来る兄さんと一夏。

活躍すれば我が事のように一夏と大喜び。

嬉しかった。

 

 

 

 

あぁ、束の話だったか。かなり脱線してしまった。

その束だが、初めて兄さんに会った時は無関心。でも私の兄だから少しは、という感じの対応だった。流石に社会人として生きてきているから分かったのか家に帰ってから結構凹んでいた。

それから暫くはそんな感じだったのだが、4年生の二学期辺りから急に束の態度が変わり始めた。

理由は知らんが、やたらと仲が良くなっていた。

今じゃ完全に異性として見ている目だぞあれは。本当に何があった?

そして兄さん自身も平然と受け入れてどんどん仲良くなる始末。

 

 

そんな現状を見て中学三年生頃に兄さんの事が好きだと自覚し、頭を抱えて思いっきり悩む。そこで思い出したのが兄さんの

 

「思いっきり迷惑をかけろ」

 

だった。ならばもう止まることはしなくてもいいという事で普通にアピールしたりするが当の本人はそう受け取っていないからどうしたものか。

 

 

 

 

そして高校生。私は藍越学園に進学した。

この高校を選んだ理由は私立高校であるのにも関わらず学費が驚くほど安い事。そして就職するのがとても有利になる事。

 

 

 

しかし、そうはならなかった。

その頃既に束はなにかを開発し、その部品などの製造を開始していた。小学生の頃と変わらず宇宙に魅せられた親友。その為の開発だそうだ。そんな親友を放っておくことも出来ず手伝ったりしていたのだ。

学校が終われば部活か束の手伝い。

そんな毎日を送っていた。

 

 

そしてついに完成したのがIS。

 

 

そして親友の開発したものに喜んでいたらテストパイロットになって欲しいと言われ2つ返事で承諾。

結構軽い気持ちで受けたこの提案がまさか今の自分につながるなんて当時の私は夢にも思っていなかった。

 

 

 

 

 

そしてその直後に起きたのが白騎士事件。

あれのお陰でISは兵器扱い。

束の夢は、潰れてしまった。

それから暫くしてからだった。束が消息を絶ったと世界的にニュースになったのは。

しかしその束は普通に我が家に来ていた。

世界各国の軍隊、警察、捜査機関の目をかいくぐってだ。

しかも我が家に来る理由が兄さんに会いたいと言うのだから。

 

それでも兄さんは束を昔と変わらない態度で接した。

家に来れば食事を一緒に食べて、笑って話をして、何故だか頭を撫でて。

元々兄さんを異性として見ていた束が確実に兄さんを狙い始めたのはこの頃からだろう。

 

 

それを見て私はやっぱり兄さんは兄さんだと安心した。

私としては複雑な心境だったが。

 

 

 

 

そして私はISの操縦者に。

その時既にアラスカ条約という名ばかりの条約によってISの軍事利用は禁止され、スポーツとして普及し始めていた。

推薦してくれたのは束だが適性がSという事もあってあっさりと決まった。

 

訓練なんかで家に帰る事が遅くなることもしばしば。

それでも兄さんは笑って出迎えてくれた。

 

 

 

 

第1回モンド・グロッソに出場が決まった。

本人以上に喜んでいたと思う。

出発する時も笑って

 

「会場に行けねぇけど生中継で見てるからな。怪我すんなよ?」

 

「それじゃ、行ってこい」

 

そう言って送り出してくれた。

大会が始まって順調に勝ち進み、私は優勝した。

 

インタビューの時に、

 

「誰にこの優勝を、プレゼントしたいですか?誰に一番感謝したいですか?」

 

そう聞かれたのだ。

そんなもの決まっている。

 

「私の事を愛情をたくさん注いで育ててくれた兄です」

 

即座に答えた。

その後にどんなお兄さんですかと聞かれ、

 

「どんな時も笑っていて自分の事を後回しにして、生活だって苦しかっただろうけど、それでも私と妹の事をいっつも一番に考えていてくれる、強くて優しくて世界で一番かっこいい兄です」

 

胸を張って答えた。

すると記者の人達は言った。

世界で一番なんですね、と。

そうだとも。

誰よりも、この世界で一番私を笑顔にしてくれて、強くて優しくて温かくて楽しくて。

そんな今見てくれている兄さんに向けて。

今までのどんな笑顔よりも、とびっきりの笑顔と共にこの言葉を贈ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の兄は世界一です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




千冬
24歳

主人公の妹という立場。
だけど思いっきり異性として認識している。
夜、帰りが遅くて次の日仕事な兄が寝ているとき、こっそりと布団に潜り込んだり、抱き締めたりしているけどそれが自分しかやっていないと思っているが実は一夏も同じ事をやっていたりする。
頑張れ千冬。恋のライバルは多いぞ!






第一回モンド・グロッソでの優勝インタビューでとびっきりの笑顔を見せてしまってからそれまでのクールでかっこいいお姉さまというイメージに笑顔のギャップが半端ないプラスされてしまって原作よりも老若男女問わず大人気になってしまった模様。

ついでと言っては何だけど兄は世界中からあんな笑顔を向けられるなんてうらやまけしからんと恨みを買うのでした。




追記
なんか日刊ランキングにランクインしてる……
しかも赤バーだし……
皆様ありがとうございます。

追記の追記
日刊7位になってた……
皆様ありがとうございます。


追記の追記の追記
日刊ランキング2位ってどういう事や……
見た事ないぞ。
おじさん好きすぎじゃない……?
皆様ありがとうございます。

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