おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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超絶お久しぶりィィィ!!


やっぱりサブタイと本文の関係性が分からん。

交信が遅れた理由?

まぁ他の作品投降したり他の作品投降したり他の作品投降したりetc……

なーんて冗談はさて置き、本当はシャルロットちゃんの扱いどうすっかなー、とかなり迷ってたんですね。

セシリアの時もそうだったけど、登場から今の今まで殆ど絡みを持たせなかったって言う大失態を犯しましてね。

いやまぁ、それに関しちゃ本文にも書いてあるんですけどシャルロットがおじさんを避けていたっていう設定なんであれですが……


流石にキツかった。


でもなぁ、設定変えちゃうと最悪初登場から今までの話の内容を変えたり変更したりしなきゃならんしなぁ……

とか色々悩んだ挙句、もういいや、取り敢えず書こう。そうすりゃ何とかなるべ、という事で馬鹿丸出し、計画性皆無で今回書きました。


なのでいつも以上に酷いです。
胸糞発言などあります。そこらへん踏まえた上でお読みください。

あ、本心じゃないからその辺は大丈夫だよ。胸糞ルートなんて存在しないんだよ。

まぁこの作品に限っては作者が割と暴走気味に書いてるので今更感はありますがご了承の上、ご覧ください。
一応謝罪の気持ちみたいなもんで文字数が約2万2千字に届いたんで許してください。






あ、次の話は臨海学校に行く予定だよ。
それまでの間になんか日常回的なの入れられたらいいなぁ、とは思ってますけど。




それでは前書きが長くなりましたがどうぞご覧ください。










サクッと解決、汚物は消毒だァァァ!!! そう言えば転校してきた男子(笑)、女の子になるらしいですよ。

イエァ!

諸君元気かい!? 

おじさん?おじさんはエブリデイ地獄だぜぇい!

 

つーのもな?

束がドイツとかフランスのバラされたくない情報をバラ撒いたじゃん?

そのお陰で汚物の消毒はヒャッハー!って感じで出来たんだけど他の国がやばかった。

 

そりゃ、他の国があんなことやられたら自分達もやられるんじゃ……ってなる訳だ。

 

そうなれば元凶である束を何とかするしかない訳だがとっ捕まえるにも、束の消息は少なくとも隠れ場所を特定出来ないレベルで不明、どこにあるか分からずじまい。

 

そうなりゃどうにかして抑えなきゃならん。

そうすっとだ、親しい人間を人質にしてとか、取り込んで、とか考えるわけだ。

 

そのお陰で束を抑え込む為に俺と言う駒を欲したんだな。

しかも世界唯一の男性操縦者と来たもんだから手に入れられたら一石二鳥なんてレベルの話じゃない。

 

束が一番執着しているのが俺なわけだからな。

束がその気になりゃ師範も華さんも政府の保護下と言う名目上の軟禁状態だが、何時だって誰の目にも映らず、どんな監視下ですら誰にも悟られずに攫える。

 

そんな奴を追っかけて、攫われるかもしれない人質を必死こいて守るよりは俺をどうにかして取り込んだ方が旨みが途轍もなくデカい。

 

他国よりも一歩どころか何十歩も進んだ状況になれるわけだ。

 

 

あんまし自分で言いたか無いけど俺は、どの国どの組織も俺と言う存在は喉から手が出るなんて表現じゃ生温いぐらい欲しい存在だ。

そりゃぁ、他国を出し抜いて取り込もうと必死になるわな。

 

それで増えたのが、学園に対する俺との面会要求だった。

 

毎日毎日毎日毎日毎日、延々と届くその要求は半ば所か完全に脅しの様な文面すらある始末。

 

お陰で千冬に限らず教職員のストレスがえげつない事になっててもう大変よ。

職員室に行きゃ、全員が完全に据わってる目をしてカタカタパソコンのキーボードを叩くその様子は普通に怖い。

 

そんな訳で全部断ってるわけだが、どうやって調べたのか俺の携帯電話にすら電話が架かってくる始末。まぁそこは束に頼んでどうにかして貰っちゃったけど。

 

 

お陰でお外に出れないんですよ!

偶の休日にもお家に帰れないんですよ!

 

マァァァァジでふざけんなよこの野郎!

 

 

そう言う訳で腹立たしい事この上ない毎日。

つっても俺は束の月面秘密基地にいるんで俺自身への直接的な害は皆無。

 

と言うか電話架かってきた時月面なのに!?って驚いた。

まぁ束だし普通か、と二秒後に即納得した。

 

ただ、千冬のイライラが凄い。

まぁそれは置いといて。

 

 

 

そんじゃまぁ、ラウラの件について。

まぁ、毎日毎日しつこいぐらいに絡んでは絡みに絡みまくりあの抜け殻みたいな状態からは脱しました。

 

まぁでもやっぱりあの時のショックと言うか、そういうのは抜けきってないみたいで悩むことはある。

そこは軍人とはいえまだまだ精神的には未熟な十五歳の少女。

当然と言えば当然だからそこは根気良く付き合ってケアをして行くしかない。

 

本人はそこらへんに関して前向きに捉えているからマシだな。まぁ、心の拠り所もあるし。

 

その拠り所ってのが俺なのが首を傾げちゃう所だけど。

まぁ、いいんだけど俺で良いの?と言った感じがする。

 

束がラウラに諸々の事情やらなんやらを全部説明した上で、

 

「私としてはね?ラウラちゃんの事を娘として引き取りたいなって思ってる。あ、だけど君が嫌だと言うのなら、ちゃんと一人で生きていけるようにバックアップはするよ」

 

と聞いた。

ラウラはそれに対して、自分の出生に関する事は薄々本人も感づいていたらしく、その姉であるクロエが束の下にいるし、俺と言う存在もそこにいるから、と二つ返事で快諾。

 

結果的に、束はニ人の娘の母親になりましたとさ。

んで、まぁクロエ同様俺の事をお父さんとして説明した束によってラウラにお父さんと呼ばれる、というなんともまぁは傍から見れば犯罪……?と思わなくも無い状況になった。

 

「父よ、何をしているのだ?」

 

「父よ、今日はこれで遊ぼう!」

 

etc……

ちょこちょこ俺の後ろを雛の様についてくるその光景は、まぁ可愛い事可愛い事。

あんまし言いたかないけど俺はラウラとクロエの娘ズによって骨抜きにされちゃったと言う訳だな。

 

ラウラとクロエは俺の娘。異論は認めん。

 

で、学校はそのままIS学園に通う事になった。

今も机に座って勉強に励んでいるだろうよ。

 

 

 

ラウラには一応護身用として元々の専用機であるシュヴァルツェア・レーゲンを渡してある。

まぁ、束がコアを取り上げたからどうするのかは自由だからね。

 

だけど本人は、VTシステムの事もあってかあんまり乗り気じゃない。

もしまた発動させてしまったら?とか色々考えちゃってる訳だな。まぁ、そりゃしょうがない。

 

これは解決出来るか分からんなぁ……

善処するけど、結局はラウラに掛かってる。

 

 

 

 

 

 

あ、そう言えば俺も無事、授業に復帰しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、今日はと言うとラウラと共に転校してきた金髪男装女子こと、シャルル・デュノア君ちゃんの件についてそろそろ決着付けてやろう、という事で呼び出し&拉致を決行。

 

ちゃんと千冬の許可を頂いております。

 

「あの、急に呼び出してどうかしたんですか……?」

 

「ん、ちょいとばかし野暮用があるから付き合ってくれや」

 

「はぁ……」

 

因みにだがシャルル君ちゃんは本国フランスが束によってブッチッパされたおかげで帰国命令が出てる。二週間後にフランスに帰国予定だ。

ま、当然っちゃ当然だよな。

証拠となる存在だ、放って置くわけがない。

 

帰国後は投獄、刑務所暮らしが妥当な所か。

 

 

 

フランスもドイツも、国際的信用度は0を振り切ってマイナスに突入。

両国の経済から始まりありとあらゆる方面で大打撃なんてレベルじゃないぐらいまでに大打撃。

 

ISコアは全て取り上げ、これだけで経済、軍事両面での損失は計り知れない程に膨れ上がり、加えて数々の汚職や非人道的な行いによって国民の不安は大爆発。

各地で暴動の嵐。バラされたくない事をバラされた政治家、軍人、科学者、女権団、会社の重役連中どころか下っ端に至るまで関与した連中は軒並み逮捕、投獄。

 

 

まぁそんなことをしでかしてくれた奴らを国民が許す訳も無く全員が確定で終身刑が決定している。

 

フランス、ドイツ両国の国民は他国へ移住、という手段を取ろうとしたがそもそも国の信用度がマイナスなのでどこの国も受け入れず不法移民となるケースが多発。

世界各国でそれの摘発が相次いで強制帰還として本国に送り還されるという。

 

各国との国境線では厳重以上の警備が敷かれて、地中海、ドーバー海峡、北海なんかの海にはイギリス、イタリア、スペイン、ノルウェー、スウェーデンなどの各国が共同で海上警備に当たる始末。

 

ISの登場によって旧兵器化した艦隊を派遣して、空母すら派遣される始末。

まぁISコアを所持していない国相手にISは使わんよな、って話だ。

 

お陰かどうかは分からないがIS登場以前の兵器がドイツとフランスに至っては大きく息を吹き返した。

 

まぁ経済面でも大打撃を受けているから戦力増強どころか現状維持すら厳しいようだけど。そんなこと知ったこっちゃない。全部自業自得と言うものだ。

 

 

 

 

 

まぁ、そんなご時世でございますがシャルル君ちゃんを連れて何処に行くのか、と言うとだ。

 

諸々の決着を付ける為に、デュノア社にいる親父の所に殴りこんで色々とケリをつけるのだ。

 

「そんな訳でやってきました、inパリ!」

 

「……」

 

移動手段?

そこは勿論束にお願いしたぜ。

 

ちゃんと不法入国にならない様に手続き済み。

もし俺に手を出したらそれこそ本当にアトランティス案件なので。

 

と言うか束が脅してた。

 

「もし、彼と連れの子に手を出したら今度こそマジで海に沈めるからね」

 

って。

おっかない。

 

そんなわけで手を出してくる奴は誰も居ない。

まぁ、パリは暴動で大騒ぎになっててあちこちボロボロなわけだけど。

 

「Merde Dunois entreprise!!!(くたばれデュノア社!!!)」

 

おーおーやってるねぇ。

 

デュノア社に向かってレンガやらゴミを投げる暴徒達。

警察などの治安組織も混乱によって碌に機能していないから止める人間は誰も居ない。

 

 

デュノア社も一枚どころかかなり噛んでたから怒りの矛先を向けられている。

つっても技術者連中が勝手に暴走したりしないで女権団と繋がりがあった奴がコソコソやってただけ。

重役や社長は関与していない。

だが監督出来ていなかったと言う事で、叩かれているって訳だ。

 

ま、当然と言えば当然なのだが内情を知っていれば別だろう。

 

「なんで、ここに連れて来たんですか……?」

 

シャルル君ちゃんは辛そうな顔をする。

まぁ、今まで受けてきた仕打ちだとか扱いを考えれば来たくない所だろう。

 

だけどそうもいかない。

 

「ここの社長に用件があってな。ちょっとばかし付いて来て頂戴よ」

 

「嫌がらせ、ですか?」

 

「ん?違う違う」

 

そうは言う物の、やっぱり信じてくれない。

うん、当たり前だね。

 

 

ま、いいや。

そんじゃ一丁やってやりますか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんちわー」

 

暴徒が消えるのを待ってからエントランス内に入る。

挨拶をするけど、当然と言えば当然、返事を返す人間は誰一人としていない。

 

そりゃ暴徒に襲われる危険のある所に人なんて誰もいる訳がない。

 

「それじゃ、最上階まで階段使って行きましょうねー」

 

行き本当は俺だってエレベーター使いたいよ?

だけど電気が止まってて使えないんだから諦めて階段上るしかないじゃない。

 

 

だけどこのデュノア社のビル、25階建て。

少なくとも50m以上の高さがあるのだ。それを最上階の社長室まで登るとか割と面倒なんですが。ま、んなこと言ってもエレベーターが動いてないんでしょうがないんだけど。

 

 

 

 

 

 

「はーっ……はーっ……」

 

「流石に疲れたな……ったくよー、なんだってエスカレーターにしなかったんだよ……」

 

シャルル君ちゃんは息切れしてひーひー言ってるし俺は俺でそれなりに疲れて文句を垂れ流す。

 

そんで、息を整えがてら目の前までやってきたデュノア社社長室の扉。

 

「君はちょっと外で待っててな。んで、これを耳につけて、この画面を見て、話を良ーく聞いとくんだぜ」

 

「は、はぁ……」

 

入るのは俺だけ。

シャルル君ちゃんにイヤホンを渡す。

俺の胸ポケットに入っている万年筆型の収音器と小型カメラ。

これでよし。

 

 

それじゃ入りましょう。

 

しっかしでけぇしめっちゃ意匠を凝らして作られているのが分かるような豪華な扉だ。

だがそれも掃除や手入れをしなくなったからか埃と汚れが幾らか溜っている。

 

まぁそんなことはどうだっていい。

それじゃぁ突撃!家庭訪問!始まるよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノックをして扉を開けて入る。

すると中にはシャルル君ちゃんとは似ても似つかない40代ぐらいの男性が一人、社長椅子に座って手を組んで待っていた。

 

……ゲン〇ウさんじゃないですか。

 

いや、似てないけど雰囲気がそっくり。あのとっつきにくさと言うかなんというか。

こりゃたまげたぜ。

 

 

「……初めまして、と言えばいいのかな、私はダニエル・デュノア。デュノア社の社長をしている者だ。まぁ、もう既にデュノア社なんて名前だけになっているがね」

 

「ご丁寧にどうも、一応有名人らしい佐々木洋介と申します」

 

「あぁ、知っているとも。恐らく世界一、有名な男だろうからね」

 

「いやはや、お恥ずかしい話です」

 

俺は、ダニエル氏と挨拶を交わす。

お話開始だ。

 

それじゃ、本音を引き出すために揺さ振りを掛けてやろう。

言いたくない事も言わなきゃならんが、必要な事だ。

 

今回ばかりは哀れなシンデレラの為に私は悪役に成りましょう。

 

「それで、今日は何の用件かな?一応、こんな状況なので忙しいと言えば忙しいのだが」

 

「いや、お時間を取らせてしまって申し訳ない。というのも、貴方の娘さんについてなんですがね」

 

「……煮るなり焼くなり好きにすると良い。所詮はもう使えない駒だ。失った所で痛くも痒くもない」

 

「ほう、それならば彼女がどれだけ拒んでも、私の手元に置いておいていいと。殺すのも、生かして家畜以下の扱いをしても良い、そう仰る訳ですか?」

 

「…………その通りだ」

 

絞り出すような声で言うデュノア氏の顔はどんどん怒りに染まっていく。

 

「ならば、風俗や娼館で身売りでもさせましょうか。あれだけの容姿だ、客なんて幾らでも寄ってくる」

 

俺が、下衆びた笑みを浮かべながらそういうと、デュノア氏は顔を怒りの感情で染めて机を叩きながら立ち上がる。

 

「貴様ッ!!」

 

「おぉっと、好きにしろと言ったのは貴方ですよ。それとも使えない駒相手に情でもお持ちですか?」

 

「ふざけるな!目的は何だ!?金か!?」

 

幾ら大会社の社長と言えども、自分の娘がそんなことをさせられると想像すれば平静は保っていられないだろう、と踏んでの発言だったがここまで効果があるとは。

 

詰め寄られ、今にも胸倉を掴んできそうだ。寸での所で踏みとどまっているのだろう。

束がフランスそのものを海に沈めるという脅しが無ければ今頃は俺の顔面は腫れ上がっていた事だろう。

 

「いえ、金なんて欲しくはありませんよ」

 

「ならば要求何だ!?」

 

「要求は、貴方の本音を聞かせて頂きたい。無論、娘さんに対しての、です」

 

俺がそう言うと、嵌められた事を悟ったのか悔しそうに歯を食いしばる。

 

ま、そりゃそうだろう。

只の交渉術に長けている訳でも無い俺に嵌められたのだから。

 

もしかすると俺ってば演技の才能があるのかもしないな。

 

 

 

 

さて、ここでダニエル・デュノア氏についての説明を少しばかりするとしよう。

まぁ全部束が調べてくれたんだけど。

……俺も手伝ったからな?

 

 

 

 

ダニエル・デュノア。

彼は、デュノア社と言う昔からフランスの国防を担っていた大企業の御曹司だった。

デュノア社と言えば、フランスでも滅茶苦茶有名、軍関係であれば国外でもその名を良く聞くぐらいだ。

 

設計だけでなく、多数の製造工場を持ち他社の設計した兵器を製造したりと。

戦車、軍艦、銃、ありとあらゆる兵器を製造していた。

 

 

まぁ、当然御曹司だから会社を継ぐ訳だ。それも26歳というかなりの若さの時に。

 

がそんな時に彼に縁談が持ち込まれる。

その相手と言うのがシャルル君ちゃんの継母、アニエス・ヴァロワ当時28歳。

 

まぁ、簡単に言えばフランスに昔からある貴族の、それも名家と言われる貴族家の令嬢だった。

 

この女がまたとんでもねぇ曲者だった。

一言で表すならば「典型的な貴族の御令嬢」という人間だった。

それも悪い意味での、だ。傲慢、我儘、他人を見下すなんて当たり前。なんなら使用人に暴力すら振るう始末。

 

彼女の両親は結婚すれば少しはこの性格も治るだろうとの事も目論んでいたが、それ以上の目的があった。

 

それは、デュノア社が持っている金だ。

結婚前、ヴァロワ家は昔からの名家の大貴族と言う肩書はあれどその資金繰りは火の車なんてレベルではない程に追い込まれていた。

 

というのも先代、先々代の無駄金使い、浪費癖と、そこに当時の当主のそれを何とかしようとした無茶な投資によってすっからかんどころかとんでもない金額の借金を抱えていた。

 

しかも父親は、投資によって失敗したが無能と言う訳では無かったが問題があったのは母親の方だった。

 

その母親と言うのが、これまた浪費癖、それも借金してでも、という俺からすれば面倒極まりないタイプの浪費家だった。

それを抜けばまぁ、普通の人間であっただろうがそれが致命的だった。

 

借金をしてまで買い物をする始末。

しかも父親は婿入りと言う立場からか妻に甘かった。というよりは物を、駄目だと言えなかったという方が正しい。

 

それが相まって増々困窮していく。

返済の出来ない借金だけが膨れ上がっていく。

 

そんな時に生まれたのがアニエス・ヴァロワだった。

当然、そんな母親を見て育つわけだから必然的とも言えるだろう、浪費癖を持つことになった。

 

ただでさえ、教育費や食費が増えるのにそこに輪にかけて習い事、持ち物、服、靴、ありとあらゆるものを買いまくり、しかもその殆どが超高級ブランド。

当然、金の消費は二人分に増えた。

余計に家計は辛くなるばかり。

 

 

 

さて、では逆にデュノア家を見てみよう。

この家は古くから武器などの製造を担ってきた大企業、所謂武器商人だ。

 

ダニエル・デュノアの父親の先代、先々代の時に第一次世界大戦、第二次世界大戦が勃発。

お陰で、会社の業績は右肩上がり。現代、ISが登場するまではそれなりの業績だった。

植民地を持っている頃はそこにも輸出をしていた、と言えばその収益がどれほど莫大な物になるか分かるだろうか。

 

歩兵用の各種装備から始まり、戦車、自走砲、迫撃砲、ヘリ、戦闘機だけでなく、造船所では海軍からの発注により軍艦をも建造していた。

その各種兵器や武器の予備部品その他諸々も収めるのだからもっと多いだろう。

 

当然、取引相手は自国なので国そのものが潰れない限りは困らない。

更には民間向けの装甲車両や銃をも開発、販売を行っており収入には困らない。

 

定期的に発注、受注が行われるから早々、業績が下がることは無い。

 

家柄は、大企業とは言えその身分は平民。

ここでヴァロワ家との縁談に繋がってくるわけだ。

 

 

簡単に言えば、

 

「家柄や身分こそあれど金の無いヴァロワ家」

 

「金はあるが格式ある家柄や確固たる身分の無いデュノア家」

 

互いに欲しい物を、持っていた。

当然、近づくわけだ。それで一番手っ取り早いのが政略結婚、と言う訳でそこに丁度年齢が近い男女が居るとなれば一気に話が進む。

 

例えそれが本人達の意向を全て無視してでも。

そんな時にダニエル・デュノア氏はアニエス・ヴァロワとの縁談が来たと言う訳だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、話を戻して。

 

「私の、本心だと……?」

 

「えぇ、貴方の娘さんに対する嘘偽りの無い本心をお聞かせ願いたい」

 

「……………………良いだろう」

 

考えた後に、彼は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

「私の妻であるアニエス・ヴァロワとの縁談が上がる前、私は娘の本当の母親であるカミーユ・ルナールと付き合っていたんだ。付き合い始めたのは19歳の時からでね」

 

7年間のお付き合いだ。余程のことが無ければ結婚すら考える年数だ。

 

「カミーユは、とても綺麗だった。それこそ誰もが振り向くぐらいにはね」

 

「私達の出会いはパン屋を営んでいたカミーユと偶々出会って、私が一目惚れしたのさ。何度も何度もアタックして漸くOKを貰えた時の嬉しさと言ったらどうやったって表せられない表せぐらいだったよ」

 

二人とも、本気で結婚を考えていたぐらいには真剣にお付き合いしていた。

 

「私はカミーユの両親にも挨拶を済ませてね、本当に、本気で結婚を考えていたんだ。彼女の為に指輪も作ろうとして職人と話を進めてもいたんだ」

 

「アニエス・ヴァロワとの縁談が持ち上がったのはそんな時だった」

 

 

「当然、私は猛反発した。両親と大激突を繰り広げてね、なんなら父親と本気の殴り合いに発展して流血沙汰、救急車を呼ぶまでなったぐらいには猛反対したよ。そしてこの際だからとカミーユとの関係を暴露してね。今思えばタイミングが最悪だった。私も両親も頭に血が上った状態だったから、それはただ火に油を注いだだけ。当然両親は言葉で言い表せるかどうか分からないぐらいに怒り狂った。言い表すならばアルプス山脈全域、全てで大噴火を起こしたんじゃないかと勘違いするぐらいには大激怒していたのを良く覚えている。再びの殴り合い掴み合いに発展してしまったぐらいだ」

 

 

 

「父は、『アニエス・ヴァロワと結婚しなければ勘当してやる!』と私に怒鳴ってね。売り言葉に買い言葉とはこのことを言うのだろうか、私も『上等だこのクソ親父!こんな家とっとと出てってカミーユと結婚してやる!』と大声で叫んだよ」

 

まぁここからの話、割と惚気話ばっかなんで重要な所を掻い摘んで説明するとだ。

そんな時、疲れ切っちゃったダニエル氏はカミーユさんに癒しを求めてチョメチョメしちゃったんだなこれが。

 

正直、ここの話を聞かされている時が一番辛かった。

聞いているこっちが辛かった。

恥ずかしくないのかよもうと内心思いながら、赤裸々なお話がバンバン出て来る出て来る……

こっちが恥ずかしくて悶えそうになるのを必死に耐えていた。

 

 

 

まぁ、大体そんな時に限って大当たりするもんで。

カミーユさんの妊娠が分かったのは後日なんだけど、ばっちり妊娠しちゃってて。

 

まぁそれは後々なのでその前の話だがカミーユさんがここで、

 

意訳:ダニエル、私の事は忘れてください。

 

と。

まぁ、うん、ダニエル氏は自分がこんなに頑張って両親説得してるのに!?と怒って喧嘩別れ。で、アニエス・ヴァロワとの政略結婚が成っちゃったと言う訳。

 

 

まぁダニエル氏、相当カミーユさんへの思いを引き摺りに引き摺っていたらしく、こっそり身の安全の確保や自身の父親やヴァロワ家に手出しをされないように身辺警護を行っていた。

ちょこちょこバレない様にカミーユさんの口座に自分のポケットマネーからお金を入れたり……

 

だけどバレてて怒られたらしいけど。

 

「いや、怒ったときの顔も可愛らしくてね。怒られている気分では無かったよ」

 

いや、その話はもういいんで次に移って貰えます?

 

 

 

 

 

 

で、暫くすると段々大きく成るお腹。

報告受けたダニエルさん、

 

「え、どういう事?」

 

とめっちゃ首を傾げた。

そら自分は身に覚えのないんだからな。

記憶を掘り返してみたら、

 

「そう言えばあの時とかあの時とか、やっちゃった様な気が……」

 

と大焦り。

そりゃもうすぐにカミーユさんの所に行くと土下座もびっくりの謝罪をした。

 

まぁ、カミーユさんその辺気にしてなかったらしく普通に許してくれて。

なんなら既婚者が妊婦と一緒にいる所、それも大会社の若社長ともなれば色々と不味いでしょ?

 

と心配までされる始末。

だがそうはいかないとダニエル氏は首を振った。

 

なんあら今すぐに離婚するから結婚してくれとまで言ったのだがカミーユさんに断られる。

 

「貴方にも立場や責任と言う物がある筈です。それともそれら全てを捨てて、奥さんの好きなように会社を運営させて破滅させて社員の人達を路頭に迷わせる気ですか?国の守りは誰が支えるのですか?」

 

と逆にぐうの音も出ないぐらいに宥められた。

 

そこで、ダニエル氏は養育費だけでなく少なくとも生活に不自由のないくらいの金額は支払わせてくれ、身の安全もしっかりと保障させてくれ、と申し出た。

 

まぁ、当然カミーユさんは断る訳だけどそこだけは頑として譲らず、カミーユさんが根負け。

カミーユさんと両親はフランスの片田舎にお引越し。その資金も全部ダニエルさん持ち。

 

更には毎月900ユーロ、日本円にして大体100万円を振り込んだらしい。

毎月のお給料はアニエス・ヴァロワに渡す分以外全てカミーユさん名義の口座に振り込んで、なんならカミーユさんとの結婚やその後の生活の為に、とコツコツ貯めてた貯金も切り崩して。

 

まぁ、傍から見れば奥さん放って置いて愛人にご熱心な若社長と見られちゃう訳だが社員の人達は事情を知っていたのでとやかく言わなかった。

 

しかもこの人、こっそりカミーユさんと会ってたらしい。

 

「まぁ、頻度は月に一度か二カ月に一度の少ない頻度だったが、日々の疲れを全部忘れるものだったよ」

 

そう語るダニエル氏の顔は本当にカミーユさんの事を愛していたんだろうと分かる物だった。

 

「娘が生まれてからはその写真を見せてもらうのが本当に、本当に心の底から楽しみだった。写真越しでしか見られなかったが毎回毎回、すくすくと育って行ってくれる娘の成長は、一番の楽しみでね、入学式や卒業式の写真なんかを見たときは本当に泣いてしまったものだ」

 

「一度だけ、まだシャルロットが赤ん坊の頃に直接会った事があるんだが、本当に可愛かった。だからこそ、本当に悔しかった。カミーユの隣に立って娘の成長を直接見守る事が出来なかったのだから」

 

そう、この言葉から分かる通りダニエル氏はシャルル君ちゃんを……いやもう面倒だからシャルロットでいいや。

 

シャルロットの事を駒として見ていたのではなく見て、一人の娘として心の底から大切に思っていたのだ。

 

「本当に、大切だった。君はカミーユが死んだ原因を知っているかい?」

 

「えぇまぁ。交通事故と聞いておりますがその口振りから察するに裏がありそうですね」

 

「その通りだ。カミーユはアニエス・ヴァロワの指示によって交通事故に見せかけて殺されたんだよ」

 

まぁ知ってましたけど。

この人の口から直接言わせるためにあえて知らないフリをしたんですよ。

あー、やっぱり俺って役者の才能あるかもしれない。

 

「そりゃもう当然、私は怒り狂ったよ。アニエス・ヴァロワを問い詰めたさ」

 

「で、奥さんが放った一言で貴方は娘さんを守る為に一芝居打った、と言う訳ですか」

 

「その通りだ。結果的には一時凌ぎにしかならなかったがね……」

 

ダニエル氏は、アニエス・ヴァロワの魔の手からシャルロットを守るべくあちこちを奔走したがアニエス・ヴァロワの悪い噂はそこら中に転がっており、彼に手を貸そうなんて人間は誰も居なかった。

 

いや、正確言うならば「居た」と表現するべきだろう。

 

協力を申し出た人間の下には軒並み脅迫と同時に何らかの実力行使が行われた。

誘拐の上、拷問を受けたり最悪、カミーユさん同様事故に見せかけて殺害されたりされかけたりする始末。

 

そんな中で手を貸そうなんて酔狂な奴は、だーれも居なかった。

 

どうにかして守ろうとしたけど協力者は誰も居ない。

ならば、確実に守れるであろう自身の直ぐ傍に置いておけばいい。

 

少なくともダニエル氏の傍にいて目がある内は、早々手を出してこないのでは、と踏んだからだった。

 

当然、アニエス・ヴァロワは怒り狂う訳だ。

そりゃ、自分の懐に入ってくる予定だった(アニエス・ヴァロワはそう思っていた)金を奪って行った女の娘だ。許せる訳がなかった。

 

「迎え入れた時、アニエス・ヴァロワがシャルロットの頬を叩いた時は余程殴り倒してやろうかと思ったがね、残念ながらそれは叶わなかった。というのも、下手に庇ってしまえばそれこそアニエス・ヴァロワがどんな手段をとって凶行に及ぶか分からなかったからだ。あの時の私にはそうなっても娘を守れるだけの力が無かった……だからあえて冷遇する事にしたんだ。そうすれば、私は娘に関心が無いと思ってくれれば娘は放置してくれるのではないか、とね。まぁそれでも手を出そうとしたのならばその時はありとあらゆる手段を以て排除してやろうと思っていたが、幸いにもアニエス・ヴァロワは放置してくれたよ」

 

「だが、そのお陰で娘には辛い思いをさせてしまったのもまた事実。本当に謝っても許されない事だ」

 

まぁ、シャルロット自身が冷遇されていた理由はこの通り。

 

ISが発明されてからはデュノア社も元々は兵器製造に携わっていたから先端技術、それこそISの軍事的価値だけではなく全てにおいて革新的である、と判断。

 

直ぐに、とは行かなかったがかなり早い段階で参入。

 

お陰で第二世代機で有名なラファール・リヴァイブを開発するに至った。

だが、その次、具体的には第三世代の機体と兵装開発にかなり難航する事となる。

そもそもイメージインターフェイスを利用してなんちゃらかんちゃら……と開発するが、人間は優秀な物を開発して、それが大成功を収めたともなればそれにしがみついてしまうものだ。

政府の重役連中は第三世代機の開発を渋った。

 

「汎用性が高く、世界規模のシェアを誇る機体を持っているのだから態々急いで第三世代機を開発する必要は無いのでは?」

 

と渋っていた。

だがラファール・リヴァイブは汎用性こそ高い物の、ISは戦闘機などの様に近代化改修を行えば世代が上がると言う訳ではない。

まぁやり方によっては上がるだろう。事実シャルロットのラファールは個人用にカスタムされた機体だから0.5世代くらいはなんとかなった。

 

だがISは発明されてまだ十年も経っていない未熟な分野。

ISコアの仕組みも碌に解明されていないぐらいだ。

 

当然、未熟故の弊害はあるがそれ以上に、未熟だからこそ、その進歩はどんな分野よりもずっと大きかった。

 

一年、二年という年月は技術開発という面から見ればかなり短期間だと言える。

だが世界各国、多数の企業がその有用性を認めてISの研究開発に乗りだしたのだ、一国や一企業で開発するのとはわけが違う。

 

競争は熾烈となる訳だ。

何処の国よりも優秀な機体を、武装を、と日進月歩。

 

それを見て不味いと感じ開発を命じた時には他国より一歩、二歩と出遅れてしまっていた。

 

その一歩二歩の遅れと言う物は技術開発にとってかなり大きな差である場合が多い。

当然、デュノア社にはフランス政府から第三世代機の開発命令と共に補助金として莫大な予算が降りるわけだ。

 

だが莫大な予算とは言ってもそれはISの開発においては少なかった。

少ない予算をどうにかやりくりしながら開発するがそもそもIS開発における各国の平均的な予算、何兆円と言う金額をもってしても開発には何年か掛かるのだ。

 

それよりも少ない予算となれば当然、開発期間は長くなる。

フランスが第三世代機を開発に成功する頃には他の国は第四世代機の開発をしているのではないかとすら馬鹿にされる始末。

 

政府は焦りに焦った。

それが自分達のツケであろうとその責任はデュノア社にあると糾弾。

 

即刻成果を出さなければ予算打ち切り、補助金も出さないという強硬手段をとった。

 

だがそれは一番の悪手であったと言える。

確かにデュノア社は第三世代機の開発こそ難航していたがISが世間に発表された初期の頃から開発や製造に携わっているのだ、そのノウハウは決して馬鹿に出来るものではない。

 

頭の良い、目先の利益に釣られないタイプの人間はそのことを分かっていた。

 

デュノア社への補助金と予算を増額した方が絶対に良い、と。

 

だがそういう人間は少数派、多数派の意見を引っ繰り返せるだけの力は無かった。

追い詰められたデュノア社は何とかしようと奔走、各国の第三世代機の情報収集中にある出来事が起こる。

 

それが、おじさん事、世界で唯一のIS男性操縦者が発見されるという出来事だった。

 

ISはその欠点として女性にしか扱えないという、人的運用面から見ればとんでもない欠点を抱えていた。

 

元々、群の男女比は絶対的に男に傾いている。

それこそ9対1なんて当たり前。良くて8対2かもう少し上程度の割合。

 

幾ら男女平等が叫ばれているとしても軍に関してはそこは変わらなかった。

で、これの何がいけないのか。

 

簡単に言えば、経験豊富な、それこそ実戦経験のある熟練した兵士がISを扱えないという事だ。

 

人材の育成ってのはとんでもなく金と時間が掛かるもんだ。

 

民間企業ですら新入社員が一端の社員になるまで何年も、十年近く勤めて漸く普通、とまで言われる会社だってある。

 

それこそ軍人ともなれば、屈強な肉体だけでなく戦場に出ても折れない心折れないなどを養うのには相当な期間が必要だ。

という事は、本職の元々の軍人である男達が少なくとも今現在兵器としてしか見ていない連中の要求には答えられないという事に他ならない。

 

そこで各国は当然ながらISを扱える女性、それも10代20代前半の若い女性にターゲットを絞ってパイロット養成を開始するんだがこれがまたとんでもなく大変だった。

 

ISコア、機体があってもパイロットが未熟じゃ全くの意味が無い。

恐らくだが、あの最初期の段階でもし戦闘機のパイロットなどがISを操縦する事になればもっと楽ではあっただろう。少なくとも教育に関しては。

 

だがそうはいかない。

誰もがISなんてものに初めて触るんだ、当然事故も多発する。

 

例えるならば全くの操縦訓練、基本的な教育すら受けたことが無い、普通の戦闘機すら乗った事の無い10代の少女がいきなり既存の戦闘機よりも遥かに高性能な戦闘機を扱えるわけも無く。

しかも直角に曲がってもPICやAICによって慣性の法則なんてものは無視できるんだから調子に乗る奴も大勢いる。

シールドバリアや絶対防御が無ければ初期の段階で死者なんぞ今頃は軽く4桁に突入していてもおかしくは無かった。

 

そこで、先ずは基本的な物として戦闘機で行う戦闘機動などを叩き込むわけだ。

でなければそれこそISで行うような戦闘機動をやれない。一部の天才は出来るがそんなのは俺の知る限り千冬しかいない。

 

 

 

 

 

まぁ話が逸れたが何が言いたいのかと言うとだな。

 

俺っていう存在が現れた事によってISを男でも扱えるという小さな、小さすぎる光が差したわけだ。

当然と言えば当然、どうにかして生体サンプル、最上ならば俺と言う人間そのものを手に入れてやろうと躍起になる訳よ。

そうなりゃ男の軍人に乗らせることが出来るから女権団とかいうクソ面倒な奴らや女尊男卑思想の連中も黙らせることが出来る。

 

まぁ、一応俺は日本国籍だから当然と言えば当然だが日本政府は利権を全て独占する為に一切を拒否。

アメリカからの要求すら断ったと言えばどれほどか分かってくれる?

 

俺、こういう感じに大事にされるのはちょっと遠慮したいなぁ、って。

 

 

 

まぁそこには人権云々じゃなくて得られる利権の事しか考えてない訳だけども、そんな日本も束と千冬、主に束によって俺の身体検査なんかは一切禁止された。

 

まぁ、そりゃ所有しているコア全てを停止させるだとか一切の経済を麻痺させて二度と国として立ち行かなくなる様にしてやる、と脅されれば引き下がるしかない。

 

そんなことをすればお隣の赤い旗の国とか元赤い旗の国の元締めがどんな行動を起こすか分かったもんじゃない。

 

で、何処の国も一切俺の情報を知らない訳だ。

 

 

そこに目を付けたのがダニエル氏。

ただ、ダニエル氏は俺と言う人間を生体サンプルとして見たのでは無く、

 

「娘の隠れ蓑にすることが出来るのではないか」

 

そう考えた。

そこでどうやるか。

 

先ずIS学園へ普通に試験を受けての入学。

だがこれは直ぐに無理との結論に至った。そもそも、シャルロットは事実はどうあれ表面上は妾の子、という事になっている。

 

一応本妻であるアニエス・ヴァロワとの間に子供は一人も居なく、なんなら肉体関係すら持っていないと来たもんだ。

そんな中に妾の子をIS学園に普通に入学させるのは無理がある。

 

と言うかアニエス・ヴァロワが絶対に許さない。恐らく夫の保護下にあろうがどんな手段を使ってでも消そうとするだろう。

 

 

 

で、次に編入と言う方法。

まぁこれは実行出来るかに思えた。

 

だが想定外な事が来たんだなこれが。

鈴の存在だった。

 

以前、話したんだが鈴は元々普通にIS学園に入学してくる予定だったんだな。

だがまぁ、中国政府がまさかの土壇場で渋り始めた。お陰で鈴はその上の連中の説得やらなんやらに手間取ってたらまさかの編入扱いで試験受け直し。

 

鈴の分の席が空いていたが編入できるのは空いている一席分、一人だけという事になる。

で、鈴とシャルロットの二人は知らんだろうが編入試験を受けたのは二人だけでその優秀な方を、と当然なる訳だ。

 

幾らデュノア社とはいえIS学園にラファールの部品をもう売らないぞなんて脅しを言えるわけがない。

そんなことをして、じゃぁ別の機体にするから良いですよと言われたらIS学園と言う最大取引相手を失う。そんなリスク、幾ら事情を知っている重役達とは言え許すわけがない。しかももし脅しを掛けたら相手となるのがIS学園と中国政府と言う敵に回せば面倒この上ない連中なわけだ。

 

で、ちゃんと試験を受けたんだが勝ったのが鈴だった。

まぁ、当然負けたシャルロットは編入を断られたわけだな。

で、ダニエル氏はめっちゃ頭を抱えた。そりゃシャルロットだって競争相手である鈴さえ居なければ、合格はするのは滅茶苦茶難しい、と言われているIS学園の編入試験を受かるぐらい優秀だ。

 

知識だけでなくIS適正はA、操縦技術も十分以上に高い。

だが鈴がそのちょっとばかし上を行ったってだけ。

 

普通ならそれで話は終わるだろう。

だが、シャルロットはともかくダニエル氏はそうはいかなかった。

期間限定とはいえ娘の命を守る為の、最後の手段であり頼みの綱だったんだからそれが絶たれてしまったとなれば誰だって焦る。

 

で、焦ったダニエル氏は男性操縦者である俺、では無く「男性操縦者と言う単語」そして「男性操縦者である事の価値」存在に目を付けた。

 

これがシャルロットが男として転校、編入してきたところに繋がる。

ダニエル氏はこう考えた。

 

「世界には一人しか男性操縦者が居ない。だが娘をもし男として扱うのであればIS学園に入れられるのではないか」

 

と。

まぁ、正直言って正気じゃない。

 

だがそれほどにその時のダニエル氏とシャルロットは追い詰められていた。

というのもアニエス・ヴァロワが表立ってでは無いとは言っても余りにもシャルロットにダニエル氏が肩入れしている事に不満なんてもんじゃないぐらいの怒りを覚えた。

 

自分とは子供どころか肉体関係すら無い状況なのに、何故引き取ったとはいえ未だに妾の女をそこまで愛してその女との子供を守るのか!

 

まぁ、ある種の嫉妬の感情もあったんだろう。

アニエス・ヴァロワはシャルロットを消すべく行動を起こし始めていた。

 

元々、何度も言っているがシャルロットを消そうと虎視眈々とその機会を狙っていたのだ、そこで怒りに任せて、だが確実にバレない様に殺すと準備を進めた。

 

だがダニエル氏はアニエス・ヴァロワを警戒して密かに内通者を作ったり人間を送り込んだりして情報収集、妨害を仕掛けていた。

 

当然アニエス・ヴァロワは感づいては居たが特定には至らなかった。

で、その準備が整いつつあった。

 

報告で早ければ数週間の内に実行に移すであろうと聞かされたダニエル氏は途轍もなく焦った。

 

そして焦ったダニエル氏は男としての仕草や振る舞い、話し方などの教育もそこそこ、いや殆ど準備不足で教えただけで実際にやらせるという事はせずに急遽送り込んだと言う訳だ。

 

元々、政府とは太いどころではないパイプがあるから何とかなった。

で、男だという事で送り込めばIS学園にいる俺の生体サンプルを手に入れられるとかなんとか嘘八百を並べて送り込んだという事だ。

 

しかもアニエス・ヴァロワは面倒な事に女権団とも繋がりを持っていたらしく、女権団はアニエス・ヴァロワからシャルロットを消すという話を持ち掛けられた時に大喜びで飛び付いた。

 

何故かというと、ISの機体を製造している会社の社長がダニエル氏と言う事を嫌がったからだ。

もう奴らは本気で地球上から駆逐してやる!!ってした方が良いんじゃないか?

 

で、女権団がアニエス・ヴァロワに要求したのは女権団に対する援助とデュノア社社長、ダニエル・デュノアを社長の座から引き摺り降ろしてアニエス・ヴァロワ、もしくは女権団が指名する人間を社長とすること。

 

アニエス・ヴァロワはその要求を飲んだ。

 

 

……アニエス・ヴァロワとか女権団がデュノア社を継いだらマジで横領やら殺しやらやって潰れると思うんだけど。

女権団って女性の権利を!とか叫んでるけど実際の所は賄賂、脅迫なんて当たり前、それ以上の犯罪も平然とやるような連中だ。

ガン細胞と変わらん。国を任せたらそれこそ独裁国家とは比べ物にならない地獄が繰り広げられるに決まってる。

 

最悪、男は要らないとか言って全員処刑する可能性すらあるぞ。

そうなったらスターリンも毛沢東もポル・ポトも真っ青だな。

 

 

そんな危険性があるからこそISが国そのものを左右するなんてご時世になった今でも、何処の国も表立ってではないが女権団を準テロ組織として警察はマークしているし、なんなら証拠が揃えば摘発もしている。

 

アメリカはFBIだかCIAが秘密裡にテロ組織と認定、どうやって殲滅してやろうかと考えているとか。(これも束に聞いたんだけど)

 

 

それにデュノア社ほどの大企業を率いる才能はアニエス・ヴァロワ達には無いらしいし。

過ぎたる力は身を亡ぼすってな。

 

まぁ、当然送り込む準備なんぞ急ごしらえで碌に整えた訳でも無かったから人間の身体についてまぁそれなりに知っている、俺や千冬にバレる。

 

 

で、シャルロットを消すという計画に失敗したアニエス・ヴァロワ、正確には女権団だが当たり前の様にブチ切れた。

 

で、怒りの矛先はシャルロットをIS学園に逃がしてくれたダニエル氏に向けられた。

今日までダニエル氏は何度も襲撃にあっている。幸いにも命に関わるような大怪我はしていないが。

 

最終的にアニエス・ヴァロアは逮捕された。

そりゃ殺人や脅迫、拷問を指示したんだから当然っちゃ当然だ。

 

 

 

情報収集のために泳がせていたのは事実。

だがまさか裏にそんな話があったとは束から聞かされるまでは思ってもみなかった。

なんなら、

 

まーた俺を狙って来やがったなコンチクショウ!俺ってばやっぱり超人気者だな!

 

なんて考えてたぐらいだ。

 

 

 

 

 

IS学園に入れたはいいけど、そこでまさかのドイツがVTシステムとかいうマジでやらかしてくれた。

お陰でドイツと裏で手を組んでいたフランスも知られたくない色々な話をすっぱ抜かれたわけだ。

 

ISコアは全部取り上げられたし国はこれからどうなるか本気で分からないぐらいにまで堕ちたし。デュノア社もその呷りを食らって国防に携わっているとはいえ倒産寸前。

 

一応、ダニエル氏によるシャルロットを男として送り込んだという犯罪は今日の為に公開を待って貰っている。

 

 

 

 

 

 

「これで全部だ。気は済んだかい」

 

「えぇ。最後に一つだけ改めてお聞きしても宜しいですか?」

 

「あぁ、この際何でも聞いてくれ」

 

「ダニエル・デュノアさん、貴方は娘であるシャルロット・デュノアをどう思っていますか?」

 

「そんなの勿論、この世界で一番に愛しているに決まっているだろう。何があっても、この身に変えてでも守り抜く覚悟があるぐらいにはね」

 

「そうですか」

 

ダニエル氏はそういうと大きく息を吐いた。

 

「ダニエル氏、私は貴方に謝らなければならない」

 

「ふむ、何をだい?」

 

「私は、貴方の本心を聞き出すという目的のために貴方の御息女に対して許されない暴言を吐きました。許されるとは思っておりません。ですが謝らせてほしい。本当に申し訳ありませんでした」

 

これだけは、許されないとしても筋を通して謝らなければならない。

いくら芝居とは言っても俺は普段、俺の人権云々と言っているにも関わらず一人の少女の人権を一切無視した発言をした。

それも実の父親の前で。

 

これはどうやってでも頭を下げて謝って然るべきなのだ。

 

そんな俺を、ダニエル氏は肩を押して顔を上げさせた。

 

「何、気にしなくていい。あれは演技だったんだろう?それに君はシャルロットの身を案じて今回、私の下にやって来てくれたのだろう?」

 

「まぁ、そうですが……」

 

「確かに最初は怒りを覚えたよ。だが本当の事が分かった以上私は君に対しては何も怒る理由も事も無い」

 

彼は俺を許すと言った。

だが、俺はこれから先心の中で負い目になるだろうな。

 

「……ありがとうございます」

 

「さて、これで話は終わりかな。そしたら私は警察に出頭するとしよう。大方、君かDoctorシノノノが私の悪事を公開していないから今こうしてここにいるわけだろう」

 

「その通りです。ですがその前にお会いして頂きたい人がいます。どうか会って頂けないでしょうか?」

 

「会って欲しい人?まぁ、構わないが」

 

「それでは呼んで来るので少々お待ち頂けませんか」

 

「分かった」

 

さて、それじゃぁ感動の親子再開と行こうか。

こんだけ父親が本音をぶちまけたんだ、少しは蟠りが無い会話が出来るだろう。

 

 

 

 

 

「シャルロット」

 

「……グスッ」

 

部屋の扉を開けて出ると、シャルロットは膝に顔を埋めて泣いていた。

 

「ほら、親父さんが待ってるぞ。少し話してこい。千冬には話付けてあるから好きなだけ、気の済むまで話してこい」

 

「……ありがとうございます」

 

シャルロットを連れて部屋に戻る。

俺の後ろに隠れているが直ぐに顔を合わせるのに意味無いだろ。

 

「お父さん……」

 

「なっ!?シャルロット!?どうしてここにいるんだ!?」

 

そう言ったダニエル氏は驚愕の表情と共に俺を見てくる。

軽く笑ってやると、今回は完全にしてやられた!という表情になった。

 

ダニエル氏は少し固まっていたが、溜息を1つ吐くとシャルロットの前に出て頭を下げた。

 

「シャルロット、幾ら君を守るためとはいえ、今まで辛い思いをさせてしまって本当にすまなかった」

 

「私の方こそ、ありがとう。今までずっと私とお母さんの事を守ってくれて」

 

二人は泣きながら手を取り合っている。

それじゃ、俺は部屋の外で待ってるか。ここに居座る程俺は馬鹿じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからたっぷり次の日の朝まで親子水入らずで語り合った二人は、今までの事など無かったかのように笑っていた。

 

「今回は、本当にありがとう。娘と最後に話せて良かったよ」

 

「いえ、こちらこそお時間を態々取って頂きありがとうございます」

 

「それでは、私は今度こそ警察に出頭するよ。どうか、娘の事を宜しく頼む」

 

「はい、お任せください」

 

「お父さん、私待ってるから。罪を償ったら今までの分沢山思い出作ろう」

 

「シャルロット……分かったよ、ありがとう。いつかその日が来る事を心待ちにしているよ」

 

ダニエル氏はそう言ってシャルロットを軽く抱き締めて俺達に背を向けて去って行った。

 

「佐々木さん」

 

「ん?」

 

「今回は、私の為にありがとうございました」

 

「いや、俺の気紛れでやっただけだ。気にするな」

 

「でも、私も二週間後にはフランスに正式に帰国して逮捕されるんですけどね」

 

「あ、その事だけど」

 

「え?」

 

「シャルロットちゃんには今までの話を全部公開して悲劇のヒロインになって貰う予定なので安心して大丈夫だぜぃ」

 

「え、ちょ」

 

「そんじゃ帰るかー!さーすがに徹夜は辛いぜ!」

 

シャルロットが何か言いかけてたがまぁ、良いか。

今日は休みだからな、昨日の分しっかり寝ないとな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園到着後。

まぁぶっちゃけ千冬と束以外に滅茶苦茶問い詰められた。

 

一夏とセシリアは片言で淡々と詰め寄りながら目のハイライトを何処かに追いやって……ちびるかと思った。

 

箒は平静を装っているけどよく見ればカタカタカタカタ小刻みに震えて、気を紛らわせるために飲んだお茶が口の端から零れてたし。

 

鈴はケラケラ笑ってた。

許さん。あとで俺を助けなかった事、後悔するがいい!

 

 

 

まぁなんで詰め寄られたかと言えば俺が朝帰り、しかも相手はシャルロットと来たもんだ。シャルロットは男として学園に通っているからもう、一部の女子が興奮のあまり鼻血を出してサムズアップする有様。

 

知らないって幸せな事だな。

 

まぁ、学生の内はこうやって満喫してなさいな。社会に出たら見たくない所とか汚い所に嫌でも触れなきゃならなくなるんだからな。

 

 

で、予定通り束が一連の話を包み隠さず(多少の美化アリ)世間に公表。

目論み通りシャルロットは悲劇のヒロインとして世間から同情を受けた。

 

ダニエル氏は、娘を守る為に、という事であちこちから同情の声が上がった。

結果、犯罪を犯したことは事実。だがしかし一連の騒ぎとも関係は無く、情状酌量の余地あり、と言う事で刑期は短くなり6年と言う年数を刑務所で過ごす事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十日後。

 

「え、えーと、今日は転校生を紹介しまーす……」

 

HRをする為に教室に入って来た山田先生は、途轍もない困り顔で悩みながらそう言った。

千冬も一緒に入ってくるが、二人の顔には疲労の色が濃く見て取れる。

本当にご迷惑お掛けしました。

 

千冬はあれだね、ちょっとお願い事聞いてあげれば元気満タンになるから良いとして、山田先生にはどんなお詫びとお礼をしようか。

あれかな、食いものが良いんかな?化粧品とか全く分からんからなぁ、後で昼飯か晩飯でも誘って奢るか。

 

 

 

「え、今頃転校生?もう臨海学校も近いのに?」

 

「ねー、何かあったのかな」

 

「うーん、転校生では無いと言いますか、何と言いますか……」

 

クラスメイトの少女諸君は転校生と言う単語にワイワイ騒いでいる。

そりゃこんな7月とかいうめっちゃ中途半端な時期での転校だ。不思議がるわな。普通なら二学期に転校するし。

 

「ねーねーお兄ちゃん」

 

「んぁ?どうした一夏」

 

「シャルル君、今日来てないよね?」

 

「あー、そういやそうだな」

 

「何か知らない?」

 

「いんや、俺は知らないね」

 

嘘です、めっちゃ知ってます。

なんなら居ない原因の主犯格だったりします。

 

でもあれだね、皆知らないのに自分だけ知ってるってなんか優越感あるね。

 

あぁ、何という優・越・感!クックックックック……少女諸君、精々驚いてくれたまえよ?

 

 

「えーっと、それでは入って来てくださーい……」

 

プシュー、と音を立てて自動ドアが開く。

そして入ってくるのは何処か見覚えのある金髪と顔立ち、雰囲気を持ち合わせた十人中十人が美少女と言うような外見の少女。

 

町中に居れば間違いなくナンパの標的にされるであろう。

 

キュッ!っと教壇の真ん中で止まってこっちを向くと、にっこりと笑っていた。

 

「シャルロット・デュノアです!皆さん、これからよろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで終われば良かったんだけどさぁ、おじさん達の事だからそうならなかったんだよねー。

 

 

 

「「「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?!?」」」」」」」」」

 

 

 

「うぎゃぁぁぁぁ!?!?」

 

久々に音響兵器を食らったぜぇ……一瞬意識が飛びかけるぐらい脳みそが揺さぶられた……

 

お前ら、ロックじゃねぇか……

 

 

 

 

 

 

「デュノア君は、デュノアさんでしたー……アハハハハ……」

 

山田先生は、冗談のつもりかそんな事を言って空笑いをするが周りはそれどころじゃない。阿鼻叫喚とは正にこの事。

 

「ど、どどど、どういう事!?」

 

「ウワァァァ!!夏の陣に向けてウス異本が分厚くなると思てったのにぃぃぃぃ!!」

 

「そうじゃねぇだろ!?」

 

思わず突っ込んでしまったぜ。

で、これが俺の運命の尽き。

 

知らないとか言ってた癖にそんな事言っちゃったもんだからさぁ大変。

 

 

 

「お兄ちゃん」

 

「オウフ……」

 

「これ、どういうことか知ってるよね?なんで私達の目の前に巷で話題の悲劇のヒロインさんがいるのかな?」

 

「えっと、いや、えっとですね……?」

 

ラブリーマイエンジェル一夏よ、何故そんな気配も無く後ろに立てるんですか?

なんで俺の首に腕を回してそのちっちゃなお顔を後ろから覗かせてるんですか?怖いです。止めて欲しいです。

 

「洋介兄さん、説明してください。早く。さぁ早く!」

 

「ちょっと待て箒!そんな詰め寄ってくるな!分かった、説明するから!詰め寄って来ないで!!」

 

箒ちゃん、どうしていつもの大和撫子、淑女然とした態度からそんな荒々しくお兄ちゃんの肩を掴んでガクガク揺さ振るんですか?おっきなおっぱいがゆっさゆっさ揺れてて大変な事になっていますよ。

 

「オジサマ、ワタクシハオジサマノコトヲシンジテイマシテヨ……?オホホホホホホホ!!!」

 

「ア”-”ッ!ア”-”ッ!?セシリアさん何故片言で震えながらティーカップ持ってるんですか!?何処から出したんですか!?お紅茶が零れてましてよ!?」

 

セシリアさん、なんでティーカップを持っていその中に紅茶が入っているんです?

何で片言で震えながら喋っているんですか?あと俺は窓の方には居ませんよ?

 

 

 

 

 

まぁ、朝帰りの相手が男だったってだけでも死ぬほど絞られたのに、その相手が本当は女の子でした、となりゃ年頃のお嬢さん達は色恋、男女のあれこれな話が大好きな訳だからやばいのなんの。

 

 

 

 

まぁ、死ぬほど皆から問い詰められて全部ゲロッちまいました。

本気で、VTシステムと戦った時以上の危機を感じたぜぇ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マァジ大変だったぞ……」

 

何とかして逃げ切り、木陰でぐったり座り込んでます。

そんな俺に声を掛ける人が。

 

「佐々木さん」

 

「ウォッ!?」

 

シャルロットちゃんでした。

と言うか君らスニーキング得意なの?なんで俺、君達の接近に気が付けないの?

俺が鈍いだけ?

 

「隣、座っても良いですか?」

 

「ドーゾドーゾ。お好きになさって下さいな」

 

隣に座ると、俺とシャルロットは何か分からないけど互いに無言になった。

いやだって、何話せっていうのさ。

 

ちょっと負い目もあるんだぞ?平然とホイホイ接する事なんぞ出来ない。

 

あー、なんか気不味い……少なくとも俺はすっごく気不味いよ。あとで胃薬飲んどこうかな……

 

 

「佐々木さん、本当にありがとうございました」

 

「……何が?」

 

白を切ろうとしたんだが駄目か。

 

「私の事、父の事。全部です。私をあんな状況から助けてくれた。それだけじゃなくてこうして女の子として学園にまで通わせて貰って。色々あって刑務所に入れられるかもしれない状況で……もう、絶望しかなかったんですよ?」

 

「……偶々だ、偶々。何となく俺が助けてやるか、ってなっただけだ。偶々、俺の助けられる範囲に居ただけの話だ」

 

「それでも、助けてくれたのは事実です」

 

「俺ぁ、そんなことちっとも思っちゃいないんだけどな」

 

「もう、謙遜も過ぎると嫌味になる、でしたっけ?」

 

「うーん、今のはちょっとばかし違うとは思うんだけど、まぁそう言う事にしておくか……」

 

俺がそう言うとなんか嬉しそうに笑う。

なんでだ。

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば佐々木さん、父に私の事宜しくって頼まれていましたよね?」

 

「んえ?あぁ、まぁそうだな。それが?」

 

「責任、ちゃんと取ってくださいね?」

 

「……ん?ぱーどぅん?」

 

ちょっとこの娘、なんか訳分からん事言い始めたんですけど。

思わず英語で聞き返しちゃったじゃん。

 

いや、発音とか覚えてねぇからほぼ日本語だけどさ。

 

「だって佐々木さん、生かして家畜以下の扱いをしても良い、とか風俗や娼館で身売りでもさせましょうか、って。私、すっごい傷付いたなー」

 

「クッ……!傷付いたとか言ってるけど顔は笑っていやがる!だけど事実だからなんも言い返せない……!」

 

「それじゃ、責任取ってくれないと。じゃないと織斑先生達に言いつけちゃいますよ?」

 

「それだけは止めてくれ!マジで!本当に!ぶっ殺される!」

 

「それじゃぁ」

 

「……責任……取らせて頂きます……」

 

俺は、自業自得とはいえ負けた。

 

まぁ、でも多分父親代わりとかそんな感じだと思う。

……いや、俺を玩具にするつもりなのでは?有り得るな……

 

なんかもうめっちゃ怖い。

 

 

 

 

 

 

 

その後、何故かやたらと懐かれて、抱き付いて来たりなんやらかんやらで修羅場が形成されて中心人物になっちゃった俺は、胃薬の飲む量が増えちゃったのは笑い話。

 

……いや、笑えねぇな。一回人間ドック、束の所で受けてみようかな……

 

 

そんな心配をしちゃう俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シリアス展開な筈なのに途中、コミカルな感じになっちゃったのは気のせい。









投稿、遅れて本当に申し訳ありませんでした。




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