おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

35 / 52



読者の皆さぁ……

アンケートに答えてくれるのは嬉しいよ?
でもネタに投票しまくってそれが一番多いとかどういう事よ?
お陰で書くか書かないか分からん。

確かにそんなのを入れた俺も悪い。
でもあれだね、ここにいる人達は皆揃ってそう言うのが大好きなんだって知ってたのに……
結局の所はそんな枠を作った作者が悪いんやなって。





めっちゃすいませんでした。

あ、R‐18編は書くことになりました。
まぁでも本編と他作品の投稿を最優先で書き進めるので、第一話の投稿は何時になるか分かりません。

ちょこちょこ書き進めるつもりではいます。
完成するのは本当に何時になるか分かりませんけど。

それでものんびり気長に待っていてくれると有難いです。

一応言っとくと作者、R‐18書いたこと無いのが心配な所だね……とてもじゃないけど読めたもんじゃないかもしれないから気を付けて。















やっぱり問題が起きるIS学園のイベントォ! おじさんはそろそろ泣きたいぜ!?

 

 

 

さてさて、本日は平和ですよ。

昨日は散々だったぜ本当に。

 

いやね?束と一昨日の夜に色々あったじゃないですか。

それ以降、束からのスキンシップが過激になりまして……

 

抱き着いたり頬擦りなら何時も通りだから良いとしても、それ以外が問題なんだよ。

いやだって、事あるごとに俺の手を握ってそれを見つめながらにぎにぎにぎにぎ……んで、偶にニヘッ、っと嬉しそうっつーか幸せそうっつーかそんな感じで笑ってまたにぎにぎにぎにぎ。

 

これなら可愛い方で座っている俺の頭を特に理由も無く前後左右あっちこっちから抱き締めて撫でてくる。と言うか常にくっついて来ている。

 

お陰で千冬達がもうね……ジェラシーストームだよ。

追い掛けられて逃げて、偶に音速超えてそうなボールを避けてまた逃げて、少しばかりおちょくりながらまた逃げる。

 

そんな事を一日中続けてたもんだから、千冬は午後から仕事で居なかったから良かったけど一夏達がぶっ倒れた。

 

千冬も去り際に、

 

「束ェ!!兄さんに手を出したら冗談抜きで許さんからな!?細切れにして魚の餌にする!」

 

とか物騒な事を言っていた。

そんなことしなくてもお兄ちゃんは傍にいるよー……

 

まぁ皆、軽い熱中症という事で水分摂って休んでれば問題無い、との事だったので旅館の自室で大人しく待機する事に。

ぶつくさ文句言いながら引っ込んでいったけどさ、ちょっとばかし言わせて貰うとだな。

 

そら、朝の九時から昼一二時過ぎまで走ってたらそうなるよ。

お陰で俺も熱中症とかにはならなかったけど疲れちったよ。

 

お部屋で待機中のその間、一夏、箒、セシリア、シャルロットはのんびりトランプやらUNOだったりをやっていたらしい。

旅館に常設されていたリバーシやらもやったとか。

将棋もあったけどやり方分からないからって挟み将棋とかばっかりやってたらしい。

 

おじさん?おじさんはそりゃ娘達の相手に決まってるじゃないですか。

鈴は追っかけっこに参加しないでアイスバーを食ったり泳いだりしてたから午後からは一緒に遊んでた。

 

束は、

 

「チャイニーズガールの一人勝ち……貴様、謀ったな!?」

 

とかなんとか言ってた。

なんだかんだ言って全員が全員思い思いに楽しんで遊んでいたのは良かった。

 

待機組も部屋で楽しくやってたらしいし俺は嬉しいよ。

 

 

 

 

 

 

でだ、今日は何をするかってーとだな。

先ずはIS適正の確認。

これは問題無く午前中までに終了。

 

適正が変化した者は居なかった。

 

 

午後からは操縦者志望の生徒と整備士志望の生徒で別れてそれぞれ授業と言うか実際に模擬戦や整備を行う。

 

俺は問答無用で操縦者側に放り込まれましたよ、えぇ。

操縦者を志望するのは、以前にも話した通りIS適正がAのお嬢ちゃん達ばかり。

今回はBとかの子は居ないらしく、全員合わせて二十三名。

 

専用機持ちは一夏、鈴、セシリアと四組の子の計四名のみでそっちはそっちで別の事、まぁ機体の開発元から送られてきた各種武装やらシステムやらなんやらのインストールとその試験などを主に行っている。

 

本当ならシャルロット、ラウラも専用機持ちなんだが、二人とも既に母国は束によってISを取り上げられているし、そもそもの話ラウラに関してはドイツ国籍ですらない。

と言う訳なのでそっちには参加していない。

千冬と山田先生はそっちに付いているのでここにはいない。

 

 

で、操縦者志望の二十三人+俺とシャルロット、箒の計二十五人は模擬戦を行う。

その中には代表候補生の子もいるにはいるが、やはり専用機持ちではないので操縦訓練は学園からISを借りるしかないがそれも倍率が高く早々に順番は回ってこない。

整備士志望の皆も一年生の内は整備をさせて貰えないので絶好の機会と言う訳だ。

 

箒も意外かもしれないがIS適正がAと高い。

本人は別に整備士でも良いって言ってたんだが、俺がこっちにいるのと、俺と戦いたいからとかいう理由で操縦者の方に来た。

 

……なんか一瞬背筋に悪寒が走ったんだけど気のせいよな。

 

 

そう言う訳で今日明日明後日の三日間は全員が全員とんでもないやる気に満ちている。

 

見りゃすーぐに分かるよ。

だって目が爛々と光ってんだもん。

ラウラは未だ、VTシステムの時のトラウマが抜けていないからかISの展開を嫌がっており理由が理由だから無理にやらせる、と言う訳にもいかず見学だ。

 

で、整備士志望の子達は束を筆頭に学園で機体の整備を行っている先輩方や先生達の指導の下、整備を実施する予定だ。

 

と言っても最初は少し見学。

俺達が動かした機体を最初だけ整備する予定だから模擬戦を見ておきましょう、って訳だ。

幾ら整備士とは言え、実際に動かしているISを見れば色々と得られるものはあるからね、って言う事らしい。

 

 

そんなわけで行われる模擬戦なんだけど、俺が全員の相手をするんだよ。

シャルロットを入れた二十五人全員を交代交代で延々と対戦ループとかいう、俺からすると地獄の様に忙しくて大変なお仕事だ。

理由としてはここでもおじさんが強すぎるからって言うね……

 

 

と言ってもシャルロットはまだしもそれ以外のお嬢さん達はまだまだ。

一応、二十分の制限時間を設けたが実際には最初の一週目はそれよりもずっと短い二分程度で全員を叩き落としてやった。

当然、俺は全力なんか出しちゃいねぇよ?だって出したら一瞬だもん。

最初の一周は取り敢えず慣らしと、俺が全力を出していないとはいえ、「二分間食らいついた」、と言う自信を付けさせる事にある。

正直な話、心を叩き折ろうと思えば一撃で沈めるなんて事はしない。

 

それこそ徹底的に心理的に追い詰めるように、嬲り殺しにしてやれば良いだけの話だ。

それが通用するのは、精神的に強靭、反骨精神が強ければ尚更良い。

そう言うやつだけにしか通用しない。

 

 

だが心を折るなんて、そんなことする必要はどこにも無い訳で、寧ろ、

 

「自分達も専用機持ちじゃないけど十分やれる!」

 

って言う自信を付けさせてやることが重要だ。

お陰でお嬢さん達は最初に、俺が対戦相手だと知らされた時の絶望しきった顔じゃなくて自信を付けた、立派な顔立ちになっている。

 

良きかな良きかな。

 

こういうのを見ているとどうにも嬉しくなってくるのは俺だけじゃない筈だ。

 

 

 

 

シャルロットだけは射撃を主体としてるから手古摺ったが中距離での射撃武器を扱っているから遠距離で突いてくるセシリアに比べればなんて事は無い。こっちも三分で終了。

俺の癖を理解している一夏や鈴、完全に遠距離主体のセシリアと比べるとどうしても見劣りする。

 

そんでもってラウラ、シャルロットを除いた面々のISを整備士志望の子達に渡して別の機体に乗り込んで二周目、三周目とやっていく。

 

 

 

「ホラホラお嬢さん方ァ!若いってのに情けねぇぞ!?」

 

「クッ!なんだでこんなに強いんですか!?」

 

「お喋りしてる暇があるってんならもういっちょ行くぜぇ!」

 

「きゃぁぁぁ!?」

 

「一丁上がりってな。次誰だァ!?」

 

「はい!」

 

「よっしゃ、来い!」

 

「行きます!」

 

 

 

やっぱりと言うか、戦闘技術に関して言えば最低。

それでも自信を付けさせたから諦めずに最後まで食いついてくる。

 

ま、シャルロットと箒は俺が本気じゃないってことを理解しているようだが二人も全力で掛かってくる。

一番脅威度が高いのはシャルロットじゃない。

 

俺の癖を理解していて、次に何をしてくるかある程度把握している箒だ。

シャルロットもシャルロットで厄介っちゃ厄介だがそれでも俺の戦い方に驚いて対処が遅れる事が屡々。

 

それを考えれば冷静に対処してくる箒の方が厄介だ。

 

 

「はぁッ!!」

 

「おっとあぶねぇ!」

 

「平然と避けて反撃してくる事の何が危ないですか!?」

 

「ほらほらおしゃべりする余裕があんならしっかりと集中しろよ!」

 

 

 

少しばかり集中力に欠けるのが全体的に問題だな。

今も少し集中力を乱した箒に一発くれてやったところだしな。

まぁ、それでも良くやってる方じゃねぇの?

なんの技術も無しにこれだけやれれば十分以上だろうよ。

 

そんじゃ、次からはただ戦うだけじゃなくて色々と、勝つための方法なんかを教えながらやってやるか。

 

 

 

 

 

「そうだ!良いぞ、そのまま突っ込め!」

 

「はい!」

 

ある子は少しばかり思い切りが足りなかったから突っ込むときは突っ込むように教えた。

 

 

 

 

 

「相手の考えを読め!相手の裏を掻け!相手が考え付かないようなこと、相手が嫌がる事を徹底してやってやれ!そうすりゃ勝てる!」

 

「ハァッ!」

 

ある子は少しばかり馬鹿正直に攻め過ぎていたから小細工をするように教えた。

 

 

 

 

 

「俺みたいに力でゴリ押しなんて真似、しようとすんじゃねぇぞ!そりゃ自分が全てにおいて絶対的に相手より優れている時だけしか通用しねぇ!セコくても何でもいい、小技を使え!」

 

「佐々木さんのアレが、力でゴリ押しだったら私達は何なの、って話になるんだけど!!」

 

「はっはー!言ってくれるじゃねぇの!そんじゃ次から何も考えずにただ殴る蹴るだけで攻めてやるよ!行くぜェ!?」

 

「え!?ちょーーーー」

 

シャルロットはゴリ押しで叩き落とした。

 

 

 

束?まぁ、特に問題無く先生やってたよ。

時々暴走しかけて先生方が必死になって止めるって一面はあったらしいけど。

 

第二世代機を改造して第三、第四世代機にしようとするんじゃありません。

と言うか、気に入らないからってコア以外全くの別物に改造しかけるとか、もう本当にすいませんでした。

 

先生方の顔、すっごく疲れた、って顔でやつれてたよ?一日でなる様な顔じゃねぇ。

 

そんなこんなでこれと言って問題らしい問題は起こらずに一日目は終了。

 

 

 

 

 

ってなわけで本日、臨海学校四日目に突入って訳だったんだが、そう大人しく平穏無事に行事が終わらないのがIS学園。

 

昨日と同じ様にお嬢さん方をボコボコって程でも無いけどシバキ倒して、色々と教えていたそんな時。

なんか急に束が慌てて俺の手をひっ掴んで千冬の所に。

 

「なんだなんだ!?急にどうしたってんだよ!?」

 

「良いから早く!」

 

何時に無く慌ててドタバタと走っている束の顔は切羽詰まったという感じだ。

 

「ちーちゃん!お仕事中断!集合!」

 

「はぁ?束、お前何を言っているんだ。そうか、元々頭がおかしかったが遂に脳細胞が死滅したか」

 

束が余りにも唐突に訳の分からない事を言うもんだから千冬だって呆れた顔して辛辣な事を言っている。

 

「そんなこと無いよ!?と言うかちーちゃん一昨日から当たり強くない!?」

 

「それは兄さんを私から奪う可能性のある天敵だからだ」

 

「あーもー!!いやいやそうじゃなくて!早く来てってば!」

 

「おい待て引っ張るーーーいだだだだだ!?」

 

「あー、皆は山田先生の指示に従っててくれや。なんか急にごめんな……」

 

「束さんの突発的な行動はもう慣れてるから大丈夫だよー」

 

慌てながら千冬の手を無理矢理引っ張って行って、旅館の俺と束、クロエの部屋に連れて行かれる。

そこで、束は俺達に何の説明も無くいきなり空中投影ディスプレイやらキーボードやらなんやらを幾つも展開させてカタカとタキーボードを叩いて何やら画像や動画?を引っ張り出してくる。

 

「おい束、そろそろ引っ張ってきた理由を話せ」

 

「ちょっと待っててー……よし、これで準備完了」

 

「なぁ、俺も連れてくる必要ある?先生達だけで良くない?」

 

「何言ってんのおじさん。寧ろおじさんが中心人物なんだから知っておかないとダメでしょ。それに、今回対応出来るのって多分おじさんか、ちーちゃんぐらいしかいないし」

 

あ、俺分かっちゃったぞ。

多分、今までのVTシステム関連クラスの面倒事だ。

このメンツってのが何よりの証拠の気がする。

 

「はぁ?私か兄さんしか対応出来ないってどういうことだ?」

 

「なぁ束?」

 

「ん?」

 

「何となくだけど、すっげぇ面倒臭い案件の予感しかしないんだけど。それもとんでもなく厄介なやつ」

 

「流石おじさん、大当たり。二人とも、これ見てくれる?」

 

そう言って束は展開していた空中投影ディスプレイの一つを引っ張ってくる。

 

「これは、なんの資料だ?」

 

「亡国企業(ファントム・タスク)、って知ってる?」

 

「いや、聞いたことも無いな……なんだそのあからさまに物騒な名前の組織は」

 

束の問いに千冬は少し考えてから覚えが無いと言った。

俺?俺だってある訳ねぇだろ。こんなんでもお天道様に顔向けできないような生き方はしてないんだぞ、そんなあからさまに裏の世界の住人です、みたいな連中と繋がりなんてあるわきゃねぇ。

 

「VTシステムの時に、幾つか消されてたデータがあった、って話したでしょ?」

 

「あぁ、それについてはお前に調査を一任していたはずだが」

 

確かあの時に束がVTシステムの証拠集めなんかをしていた時に意図的に消去されていたデータが幾つかあったと話していた。

しかもご丁寧にサルベージ出来ない様に処置を施されていたとも言っていたな。

 

まぁ束からすれば時間は掛かるけどサルベージ出来るって事だったから学園側と千冬が調査を依頼していた。

 

「この亡国企業って組織、VTシステムの開発に大きく関わってたんだよ。それも中核レベルで」

 

「何!?だが、ドイツにもフランスにもそんな情報は一切無かったはずだ。尋問に関してもそんな事を言った人間は誰も居なかったと聞いているが」

 

「それは仕方が無いね。だって、そっちに関しては紙媒体で全部焼却処分済み、人間に関しては薬物か何かの投与で記憶を消したらしいから」

 

「書類の焼却処分に薬物投与による記憶の消去……随分とまぁ、物騒なもんだな」

 

「それで、その亡国企業とやらがどうした?」

 

「ついさっき、米国のホワイトハウスが秘密裏にデフコン1を発令したんだよ」

 

「はぁ!?デフコン1だと!?」

 

「ちーちゃんは、アメリカのデフコンがISの登場によっていくつか変わった点があるのは知ってるよね?」

 

「勿論だ。デフコン1に核兵器の通じないISに対しての文面が追加されているからな」

 

「今回のデフコン1発令はそれが原因だよ」

 

なんか二人して知らん話してるけど何それ。

デフコン?どっかの戦争映画かなんかで聞いたことがあるぐらいで何にも知らんのだけど。

 

「ちょい待ちちょい待ち。俺にも分かるように説明してくれる?」

 

「あぁ、ごめんね、おじさん。ちゃんと説明するとアメリカにはデフコンって呼ばれる戦争に対する準備態勢を五段階に分けた規定があるんだ。で、その中で一番最高度の準備状態を示すのがデフコン1。今まで公式には一度も用いられた事は無いんだけど、今回これが非公式に、それも秘密裡に発令されたの」

 

「ってことはアメリカ軍だけで考えるなら戦争の準備をしてるってことか」

 

「うーん、それに関しても説明すると、ISの登場と言うか、私が発表してから幾つか変更された点がるんだよね。その一つがISが暴走状態に陥った時なんだけど、基本的にアメリカはIS関連の事故が重大事故なんかに繋がる、または発生したってなった場合デフコン1に分類しているんだ」

 

「そりゃまたどうして?」

 

「ISって、宇宙空間での活動を想定してたから、ありとあらゆる防護性能を付けているのは知っているでしょ?」

 

「お前と一緒に少しだけだがISを開発している時にいじってたんだぞ、そりゃ勿論知ってるに決まってる」

 

こんな阿呆でも、一応ISの開発に少しばかり関わっているんだ、知らないわけがない。

そのために色々と調べたこともあるし、宇宙空間ってのがどれだけ過酷なのかも知識としてならば知っている。

 

「で、そこが加えられた理由の一つなんだけどISには、化学兵器(NBC兵器)、生物兵器、核兵器、放射能兵器も効果が無い。局所的にはあるかもしれないけどそこは何が起こるか分からない宇宙だからね、徹底してあるから少なくとも搭乗者に関しては一切効果が無いってことは保証するよ。だから、基本的にISを相手取るにはISをぶつけるしかないって言うのがデフコン1に加えられた理由なんだ」

 

「そりゃ確かにISを除いた既存の全ての兵器が無力ってのは知ってる。だが完全に無力って訳でも無いだろうが」

 

ISは、既存の兵器では倒せない。

 

これは周知の事実だろう。

だが絶対じゃない。事実、ISのシールドエネルギーは通常兵器である戦車砲や、それこそ歩兵が持つような小銃でも削る事は可能だ。

 

「そりゃね。確かに通常兵器でも、ISのシ-ルドエネルギーを減らす事は出来る。だけどそうすると、戦術なんかも限定されるし何よりも使用する兵器や弾薬、砲弾、ミサイルの数が馬鹿にならないんだよ」

 

「兄さん、ISは機動力が戦闘機なんかよりもずっと高い。それは分かっているな?」

 

「あぁ、高負荷、高機動下で直角方向に進路変更できるなんざISぐらいだろうよ。それにISは簡単に音速を突破出来る」

 

「それをミサイルや、対空砲、対空機銃で普通の数で撃墜出来ると思うか?」

 

「……いや、完全にとは行かないがほぼほぼ不可能だろうな」

 

「それを何発、なんて数じゃなく何百発何千発単位で直撃させなければならないんだ、IS一機を落とそうとしたら対空機関砲なんて何百と数を揃えて漸く命中させられるという次元だ。それこそ撃墜ともなればどれだけの数が必要になるか分からん。アメリカですら出来ない戦術だ」

 

「だからこそ、世界はISに依存してるって訳か」

 

「ま、その通りだね。だからその対抗手段がISしかないってなるんだけどそれ故にアメリカはデフコン1に入れたんだよ」

 

「それで、今回の話とどう繋がる?」

 

千冬が話を戻すためにそう切り出すと束は一枚の画像を俺達に見せてきた。

そこに映っていたのはISと思わしきもの。

 

「これは、ISだろうが見たことが無い機体だな……」

 

「アメリカとイスラエルが共同開発してた第三世代の軍用ISだよ。共同開発って言ってもイスラエルが開発していた所にアメリカが無理矢理横入りして、かなり幅を利かせてたらしいけどね」

 

「……軍用か。やってくれるな」

 

ISは、その特性上軍事利用が一切禁止されている。

IS運用協定、通称アラスカ条約によって禁じられている。

内容は開発したISの情報開示及び共有、研究及び運用のための超国家機関設立、軍事利用禁止などが定められているが実際の所は有名無実化、形骸化も良い所。

 

一応、一夏や鈴、セシリア達が使用している専用機や量産機、訓練機は全てリミッターを掛けられている状態なのでそれを解除することが出来れば軍用と同程度の性能を発揮することは出来る。

だがその解除コードは、最低でも五十桁の数字及びローマ字で組まれており当然と言えば当然だが暗号化もされている。

しかも国によってまちまちだが、厳しい国だと三十分に一度、解除コードが変更される。

 

何故三十分と言う時間なのか。

それに関しては、少なくともこの暗号を解読するのにこの倍の時間、六十分以上は掛かるとされているからだ。

 

そんなもの、どうやったって手を出そうとは思えない。

しかもそのコードを知っているのは国家元首只一人。しかも解除をするのに国家元首だけでは無く五人以上の大臣の許可を得ないとならない。

 

ただ、束の前では無力なんだがその辺は気にしてはいけない。

 

 

 

 

アラスカ条約が締結された実際の所の理由は日本がそれらの技術を独占する事を防ぐ為に世界中が圧力を掛けて、って訳なんだが恐らくはこっちが主目的だったろう。

 

一応、超国家機関設立に関しては「国際IS委員会」が挙げられる。

IS学園もその内の一つだ。

 

IS学園は、最初期はIS搭乗者及び技術者の育成及び研究開発が目的で男の技術者も居たんだがそこにいちゃもんを付けて来たのが女性権利団体とかいう国によっては準テロ組織認定されている害獣。

 

「神聖なISに男が触れる、携わるなど言語道断!」

 

とかなんとか騒いで、その当時絶大な権力を誇っていたわけだし国際IS委員会にも数多くが在籍していた。

そんなものだから圧力を滅茶苦茶に掛けてくるわけだ。

当然、設立されて間もないIS学園にはその圧力を跳ね返すだけの力は無い。

 

設立半年で男性技術者達はIS学園を追われましたとさ、ちゃんちゃん。

 

傍迷惑な被害を被った男性技術者達には同情するがそれは置いておいて。

 

「で、このISがどうしたってんだ?」

 

 

 

「アメリカ本土で開発が進められていたんだけど、ついさっき、丁度十分前に暴走したの」

 

 

 

「軍用ISの暴走だと!?」

 

「それが、俺達と何の関係がある?確かに軍用ISの開発をしていたというだけで公表すればアメリカとイスラエルには大打撃だろうが……」

 

「確かに普通なら関係無いね。このISの針路が、日本、それもピンポイントでここじゃなければ無視出来たんだけどね」

 

「おい、今何て言った?軍用ISの針路がここだと?」

 

「そう。正確には、おじさんがいる場所になるんだけど」

 

「それと、亡国機業とやらに何の関係がある?」

 

「この暴走を手掛けたのが、亡国機業だって言ったら?」

 

束がそう言って、千冬は表情を今まで以上に強張らせて、俺は訳が分からず阿呆面を晒した。

 

 

 

 

 

 

 

束の説明によれば、亡国機業は所謂武器商人、死の商人と言われる連中らしい。

設立された時期は不明、前身となる組織は中世以前から存在するとも言われている。

 

と言うかそこまで来たらもう秘密結社の類になると思うんですけど……

 

ほぼ確実にその存在が明らかになり始めたのは第一次世界大戦よりもずっと前、1800年代、植民地支配が全盛期だった頃からだ。

各国の軍隊に他国の情報や新兵器を売りさばき、各地の反乱軍にも武器を提供していた。

 

それにより世界を裏から支配して莫大な利益を得ていた。

一番有名と言うか、聞いたことのあるのはインドで起きたイギリスに対する反乱の「インド大反乱」だろう。

 

これも裏で武器を反乱軍に売り渡したりして暗躍していたのが亡国機業と言うから驚きだ。

 

 

 

「簡単に言っちゃえば今回の暴走は亡国機業の奴らが手引きした、と言うか工作したんだよ」

 

「目的は?」

 

「当然、おじさんに決まってるよ。おじさんの情報は絶対に漏らしてないからね。ありとあらゆるものを私が漏らさない様にしてるからね。勿論、生体情報とか遺伝情報に至るまで。だから私以外はおじさんの生体データとか持ってない。これは断言出来る」

 

ん?それってどういう事?

……俺が切った爪とか全部回収済みって事ですか。ちょっと恐ろしい。

 

良かった、丸めたティッシュを生成してなくて本当に良かった……!

そもそも千冬と同室だからそんなこと出来ないんだけどさ。

 

「目的は二つ。おじさんの誘拐、と言うか拉致をする事と、IS学園が保有するISコアの強奪」

 

「臨海学校と言うタイミングを狙ったのは、兄さんとISコアを同時に確保出来るからか」

 

「その通り。暴走は囮で別部隊がおじさんとISコアの強奪を狙ってる」

 

「……投入される敵の規模は?」

 

「まずは暴走状態の軍用IS、名前は〔シルバリオ・ゴスペル〕って言うんだけどこいつと本命が歩兵を最低一個小隊五十人かそれ以上。ISを最低でも2~3機」

 

「たかが裏組織がISを持っているのか!?」

 

「ちーちゃん、たかが裏組織なんて言葉じゃ片付けられないよ。調査途中だけど亡国機業は各国上層部にまで食い込んでる。じゃなきゃ今回みたいな事が起こせるわけがない。どうやったって普通のテロリスト共とは絶対的に違うよ」

 

「そこまで、なのか」

 

「うん、少なくともISを保有していたドイツ、フランスを含めた欧州諸国は確実。アメリカ、カナダ、ロシア、オーストラリア、中国、日本の主要国も軒並みかな。正確な規模はまだ分からないけどね。一応連中が持っている二機分のISの名前も分かってる。〔サイレント・ゼフィルス〕〔アラクネ〕」

 

相当、組織力や実行力を持っているらしい。

少なくとも、今名前が挙げられた国はテロ関係にかなり敏感な国が殆どだ。

アメリカやイギリス、フランスは実際にテロに遭った事があるぐらいだし、CIAだがFBIだかMI6だかなんだか知らんが少なくともこれらの国の操作能力が低いわけがない。

 

という事は、亡国機業はそれ以上に潜入能力の高い工作員が多数存在するという事に他ならない。

そんなの、そこらのテロリストに出来る芸当じゃない。

ただ、それ以上に大きな問題がある。

 

「と言うか、連中は何故ISを所持している?どこから持って来た?」

 

千冬が聞いた通りの疑問と大問題がある。

そもそも、ISコアは個人間、企業間、国家間を問わずありとあらゆる取引を禁止している。もしそれが取引によって手に入れられたものだとするならば大問題なんて話じゃなくなる。

 

「これも強奪だね。アメリカ、イギリスの機体だよ」

 

「だが、そんな知らせは……あぁいや、私達が聞いていない理由は察しがついたから構わん」

 

千冬は諦めたような顔でそう言った。

恐らく、各国にISを強奪されたという事が通達されていないのは単純に面子の問題だろう。

考えてもみろ、IS保有国家がISを裏組織に奪われたとなったらどうなるか分からない。最悪、IS委員会に保有数を減らされる可能性だってあるんだからな。

 

どうやったってその情報は秘匿するだろうよ。

 

「問題なのはサイレント・ゼフィルスの方なんだよね」

 

束はそう言いながらまた画像を引っ張ってきた。

 

「何が問題なんだ?」

 

「この機体、第三世代機なんだよ」

 

「第三世代機?タイプは?」

 

「イギリスの開発した機体で、ちーちゃんの所にもイギリスの子がいるでしょ?」

 

「あぁ」

 

「その子の機体の姉妹機で遠距離特化型、しかもBT兵器まで搭載済み」

 

「それは……兄さんが相手するとなると厳しいな……」

 

セシリアと戦った時はアリーナの中と言う限られた空間での出来事だ。

だからこそ接近して殴り合いに持ち込めたからこそ俺は勝てた訳だが、今回はそんな決められた範囲での戦いじゃない。

それこそ相手は俺が接近しようとしたら後退して離れて遠距離での射撃に専念すれば良いだけの話だ。

 

しかも二機は確実に出張ってくる事から、もう一機は恐らく近接型だろうからそいつが俺を引き付けてその間に狙撃をすればいい。

別に、俺と正面からぶつかり合う必要は無い、俺が消耗するまで耐えればいいだけの話だからな。そうすりゃ俺を被害無く仕留めて、連れ去ることが出来る。

 

「で、操縦者の方は?正直、機体が高性能だろうが操縦者がお粗末なら何とでもなるんだが」

 

「そうだね、確かにおじさん相手ならちーちゃんか私じゃなきゃ勝てない。良い勝負をするって言うのなら国家代表クラスでも問題無い。だけど、今回は総一筋縄じゃ行かないと思う」

 

「どういうことだ?兄さんとどっこいどっこいなんて私か束、お前ぐらいしか知らないぞ?それか師範ならば兄さんを完封出来るだろうが……」

 

「うーん、確かにお父さんならおじさんにも勝てるだろうけど、それはあくまでも同じ戦い方をしたら、っていう前提条件が付くんだ。私がおじさんを助ける為に施した手術とか色々理由はあるけど、それを差し引いても多分、力任せの殴り合いならおじさんは誰にも負けない」

 

「その言い方からすると、今回は相手が相当悪いみたいだな」

 

「うん、かなり悪い」

 

俺がそう言って束に説明を求めると、二枚の写真と二つの映像をディスプレイに投影した。

 

「こりゃぁ、なんだ……?」

 

「今回、確実に出張ってくるアラクネとサイレント・ゼフィルスの搭乗者が映った写真とそれが戦ってる動画」

 

「顔は、隠れてて分からないけどね。一応、アラクネの搭乗者は大体二十代前半から半ばぐらいの年齢で、サイレント・ゼフィルスの搭乗者は恐らく中学生か、高校生ぐらいのかなり若い年齢だと思う」

 

「まぁ、それぐらいの年齢だろうが、もう一人が中高生ぐらいとはどういうことだ?そんな裏組織に普通属する年齢ではないだろう」

 

「それに関してはまだ調査中。多分だけど、結構な訳アリだと思うからもう少しで調べが付くと思うよ」

 

「まぁ、取り敢えずその事は置いておこうや。目下の問題は二人の実力なんだが……この動画を見る限りかなり高いと思うんだが、千冬と束から見たらどう思う?」

 

俺は、はっきり言ってISの搭乗者に関してはそこまで詳しいって訳じゃないから二人に聞いてみる。

 

「そうだな……どちらとも直接見たわけでは無いからはっきりとは断言出来ないが、アラクネは最低代表候補生、それもかなり強い部類に入るだろう。下手をすると上位に食い込んで国家代表目前なんて実力も有り得る。サイレント・ゼフィルスの方も最低でも国家代表レベルと見て間違いない。動きが段違いだからな。モンド・グロッソの時の各国代表を参考にすれば、こいつはその中でも相当強いぞ。多分、上位3位には食い込めるだろうな」

 

「ってことは?」

 

「最悪、私と渡り合える程度の実力者、と考えておいた方が良いだろう。全盛期の私ならば問題無く勝てただろうが今じゃ機体の性能も、武装の性能も比べ物にならないほどに進歩しているからな、それに最近じゃ私も教職にかまけて碌に鍛錬などしていなかったからな、負ける可能性すらある」

 

「ちーちゃんの言う通りだね。アラクネの方はおじさんなら問題無く勝てると思う。と言うか、おじさんに殴り合いを仕掛けるとか只の馬鹿だよ。ただ、サイレント・ゼフィルスは超至近距離での殴り合いなら勝てるだろうけど遠距離に徹して戦われると厳しいかな。おじさんでも負けちゃうかも」

 

二人が口々にそう言う。

簡単に言えば、アラクネは問題無い。サイレント・ゼフィルス相手はキツイ。

 

こんな所だろう。

 

「今回、ちーちゃんじゃなくておじさんに戦ってもらいたいって言う理由も今のちーちゃんだと苦戦する相手がいるから。それと、もっと嫌な情報あるんだけど……」

 

「なら早くその情報を教えろ」

 

すると、束は何やらキーボードを叩くとまた別の画像を引っ張ってきた。

なんだこりゃ?四十か五十センチぐらいの、筒状のナニカが映っている。

 

「束、これなんだ?トンファーか?」

 

「これ、剝離剤〔リムーバー〕って言うんだけど、ちーちゃんは知ってる?」

 

「いや、知らんな……聞いた感じ、何かを剝離させる為に使うようだが、まさか……」

 

「そう、そのまさか。この乖離剤はISを強制的に解除させてコアのみの状態にする装置だよ。ただし、一度使われた機体は耐性が出来ちゃうから使えなくなるけど、剥離剤を使われたコアは遠隔コールが可能になる。操縦者がコア、まぁISの待機状態の物を身に着けていなくても展開とかが出来るようになるていう利点もあるけどね」

 

「なんだそれは……どこから持って来た?まさか奴らが開発したのか」

 

「元々は〔存在しない兵器〕、国家最重要機密の一つでこれを一番最初に開発したのは日本とアメリカだよ。それぞれが独自に開発を進めて完成していたものを横取りして、二つの良いとこどりしたのがこれ。一応形状はアメリカのものだけど、性能は高くなっている筈」

 

束はそう言った。

という事は、亡国機業の工作員は各国政府の深い位置、それもかなり深い、下手をすると日本で言えば各省の大臣や長官級、自衛隊の開発関係の責任者クラス、アメリカも大統領とは行かないまでも、その側近や国防総省のトップに近い場所にまで入り込んでいるという事に他ならない。

 

でなければ、相当管理や警備が厳しいだろう、国家最重要機密の物を持ち出すなり見るなり出来るわけがない。

 

まぁ、そんなものは今の俺達には関係無い話だから放っておくとしてももっと直近の問題がある。

 

それは乖離剤に対しての対抗手段やそれに準ずる何かはあるのか、という点だ。

はっきり言えば、もし乖離剤と言うやつが束が説明した通りの効力を発揮するのだとしたら、かなり厄介極まりない。

 

学園の機体やクラリッサ達の機体からコアを取られては溜ったもんじゃない。

 

「対抗手段は何か無いのか?こう、無効化するとかそんな感じの」

 

当然聞いてみたんだが束は苦々しい顔をした。

 

「現時点では無いね。ただ、使用するには有効範囲内の一メートル以内確実に接近して、五秒以上相手に貼り付けないといけないって言う欠点もあるからまだ何とかなると思う」

 

「ってことは継続しての接近戦、とりわけ俺みたいに殴り合いは厳禁ってことか」

 

「そうだね。乖離剤を五秒以上貼り付けられないって自信があるんだったら別だけど……」

 

「安全策を取るならそれは止めた方が良い。兄さんが拉致されたとなったら私もだが、束も一夏達他の皆も何をするか分からないぞ?」

 

千冬がさも当然の様に言うが、そんな恐ろしい展開になんてなって溜るか。

乖離剤とやらは、五秒以上対象に貼り付けなければならないらしい。

まぁ、正直言ってしまえば貼り付けられないと言う自信はあるが一応の保険ってことで出来れば避けたい。

ただし、五秒以上とは言っているが格闘戦になっても即座に貼り付けられると言う訳ではない。

多めに見持っても十秒か、十五秒程度の短時間ならば格闘戦が可能という事だ。

という事は、俺は方針としては多めに見積もっても十五秒以上の接近戦、格闘戦は絶対に避けなければならない。

 

と言うか、俺が拉致られた後に主に千冬や束がどんな行動をするか、どれだけ暴走するか分からない。

下手すると、どこかの国が以前言ったアトランティス案件や北〇の拳状態になり兼ねない。

そんなの嫌過ぎる。

 

だってドイツとフランスでさえあのザマなんだぞ?

それ以上って、想像出来ないって言うか、したくない。皆だってしたくないでしょ?

 

日本沈没ならぬ、アメリカ沈没とかロシア沈没って。

どれだけ海抜が下がるのか、上がるのか……いや、海抜上がったらWAT〇RWORLD状態じゃん。

何処の国も、それこそ島国や沿岸国とかは軒並み海の下よ?精々内陸のチベットとかそれぐらいしか残らなさそう……

 

それだけは色々と嫌だ。

 

ってなわけで安全策で行きます。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、これからどうするかって話をしよう」

 

束はこの辺り一帯の精密な、それこそ石ころ一つにまで再現されている地図をこれまた投影した。

 

「シルバリオ・ゴスペル、これからは銀の福音って呼ぶけどこいつは海側からここに真っ直ぐ飛んできてる。超音速巡行が可能で最高速度は大体、マッハ2。今から三時間後にここに到着する」

 

「米軍は何をやっていた?」

 

「何もしなかった」

 

「何もしなかった!?自分達の尻拭いの一つも出来ないのか!?」

 

「いや、正確には何も出来なかったって言う方が正しいと思う」

 

「どういうことだ?」

 

「考えてみてよ、軍用で最高速度マッハ2だよ?アメリカ軍で一番早いラプターと張り合えるぐらい速いんだから表向き軍用じゃない、制限が掛けられた量産機のISでなんて何にも出来る訳無いじゃん」

 

「それでも何かするのが通りってものだろう」

 

「まぁ、一応空軍のラプターが迎撃に出たみたいだけど完全に無視されて迎撃をすり抜けられたよ。でも実際は最重要機密の一つだからね、情報漏洩を恐れたのかそれとも突かれたくない事を突かれない為になのか分からないけど小規模だからね、当然と言えば当然だろうけど」

 

「ここに来てまで面子やらに拘るというのか……!こっちは一学年生徒全員の命に兄さんの命が掛かっていると言うのに!」

 

千冬が机を思いっ切り叩く。

確かに、千冬の言う通りだ。

はっきり言おう、俺だって腹が立ってる。

 

考えてもみろ、こんな非常事態なのに大した対策や対応すら取っていないのが本当にむかつく。

束が居たからこうして早めに情報を得られたから良かったものの束が居なかったら奴らに好き放題させた後で漸く事態を把握し始めた頃だろうよ。

 

そうなったら俺は勿論拉致られてるだろうしISコアも奪われていた。

最悪、生徒に死人が出ていたかもしれない。

 

それが、一夏や箒達だったとしたら?

 

そう考えるだけで、殺意が込み上げてくる。

 

「アメリカも、運が良ければおじさんの情報か何かを手に入れられるって考えてるから手に負えないよ。日本にだって大した情報を与えずに放り投げたし。今頃大混乱で自衛隊に命令が出た頃には、碌に何も出来ずに終わるよ」

 

「銀の福音の詳細なスペックは分かるか?」

 

「射撃特化型で時速2450kmを発揮可能。主武装は36門同時展開可能なシルバー・ベル〔銀の鐘〕。分類するなら広域殲滅特化型とでも言うべき機体かな?」

 

「主武装の威力と射程は?」

 

「上下させられるけど、一番威力を高くした状態だとラウラちゃんのレールカノン以上の威力を発揮するね。射程は最高出力で大体1000m~1500mってところかな。威力によって上下するから最高出力だと門数が減る代わりに射程は伸びるし、最低出力だとその逆になる。しかも、試験運転中だったからまだ詳細なデータが無いからこれもあくまでも予測値でしかないってのが辛い所だね」

 

「となると、接近することは避けた方が良いな」

 

「接近したらやめた方が良いかな?これ、死角が無いらしいから」

 

「そうなれば、射程外からの射撃、ないしは砲撃での攻撃が主となるか……」

 

「……厄介だな」

 

千冬も頭を抱えて策は無いかと考えているが思うような案は出ない。

そもそも、銀の福音だけでなく山側から迫っている亡国機業の連中も相手しなければならないのだから、用意しなければならない策は二つだ。

 

「一応、私にも案があるんだけど聞く?」

 

「勿体振るな。さっさと話せ。時間が無いんだ」

 

「そうだね」

 

束はそう言うと、地図に幾つかのグリッドを表示した。

恐らく海側から迫っている銀の福音と、山側から迫っている亡国機業の連中を表しているのだろう。

 

「まず銀の福音だけど、こっちはクラリッサを除いた皆で当たって貰う。皆には遠距離用の武装が施されてるからそれで叩いてもらうんだ。十一人だから、射撃五人とその護衛五人で分けても五方向はカバー出来る。残りの一人には自由に動いて貰ってあちこちのカバーに回ってもらうんだ。これで五人の火力で封殺する」

 

「それで、山側の亡国機業はどうする?放置する訳じゃあるまい?」

 

「当たり前でしょ。こっちは、おじさんとクラリッサにお願いする」

 

「本気か!?兄さんを狙ってきているのに態々目の前に出すのか!?」

 

「うん。確かにその気持ちは分かるけどそうでもしないと止められないし追い返せないんだよ」

 

「だからって……」

 

「ちーちゃん、じゃぁ聞くけど国家代表ほどの腕を持つ、しかも上位三人に入り込めるぐらいの奴を誰が相手出来るっていうのさ?」

 

「それなら私が出れば良い」

 

「駄目だよ、ちーちゃんにはここに残って指揮を執って貰わなきゃならないしそれに、万が一突破された時の保険として残って皆に心理的安心感を与えて貰う役割があるんだから」

 

確かに、千冬が一番重要な役割だろう。

そりゃ、指揮系統が無いというのは一番の問題に成り兼ねない。

 

それに俺達がやられないなんて保障はどこにも無い。

そうなったら、他の生徒達は丸腰で、先生方は居るとしても訓練機である打鉄やラファールが敵うわけがない。

 

先生方も決して弱いって訳じゃない。

だがもし、束の話が本当だとしたら、銀の福音にしろ亡国機業にしろ到底太刀打ち出来るような代物じゃないという事だ。

数で押せなくもないが、乖離剤でコアを剥ぎ取られたらそれこそ不味い。亡国機業の戦力を増やすだけに成り兼ねない。

 

そうなれば悪夢なんてもんじゃない。

恐らく銀の福音の開発データなんかも手に入れているだろうから、あれが万が一亡国機業内で量産されたとなれば太刀打ち出来る国家があるかどうかも怪しい。

 

今現在、専用機として第二世代または第三世代機として実戦配備状態にあるISは全体の凡そ三分の一かそれ以下。

要は、ISの殆どが訓練機もしくは量産機であってしかもリミッターを掛けられている。それを解除したとしても、元々軍用として設計及び製造されている機体相手に何処まで立ち回れるか……

 

だからこそ、今ここで相手のISを奪う事は出来なくとも、奪われるという事だけは絶対に避けなければならない。

 

 

 

 

 

「……分かった」

 

千冬はかなり不満そうな顔をしながらも頷いた。

まぁ、気持ちは分からなくもない。

 

そりゃ家族がテロリストと戦うってんだから気が気じゃない筈だ。

 

「大丈夫、おじさん一人で戦ってもらう訳じゃないから。クラリッサと一緒に戦ってもらう。と言ってもクラリッサはサイレント・ゼフィルスの牽制が主目的だからアラクネとの戦いに手を貸せる訳じゃないから、その辺は気を付けて」

 

「分かった」

 

「それで、あとどれぐらいで来る?」

 

「そうだね……シルバリオ・ゴスペルは二時間半、亡国機業は二時間って所かな?同時に攻撃を仕掛けようとしてたみたいだけど亡国機業の方が少し速いみたいだね」

 

「準備をする時間は、無いか……」

 

千冬はそう言いつつも指示を飛ばす。

 

「生徒全員と旅館の従業員は旅館へ、近辺の民間人はこの旅館か近くの安全な場所に、近海の民間船舶には即座に退避命令を出してくれ。この際、形振り構っていられん、付近の自衛隊の駐屯地に連絡してその指示を出すように言っておいてくれ。でなければ巻き込まれた時にどれだけの被害が出るか分からん」

 

「りょーかい」

 

「先生方を集める。束、そっちはそっちで頼むぞ」

 

「あいあいさー!」

 

そうして、準備とは到底言えないようなものだが準備は進められた。

 

 

 

 

先生方は訓練機である打鉄とラファールを纏い、万が一に備えて臨戦態勢で待機。

千冬も念の為にISスーツに着替えての指示。

 

それだけじゃなく、一夏達専用機持ちですら戦闘準備態勢で待機中だ。

しかしながらそれでもシルバリオ・ゴスペルと亡国機業相手に勝てるか分からない。

 

となれば俺と、クラリッサ達が勝たなければならない。

いや、勝たなくていい。相手に退けさせれば俺達の勝ちだ。

 

 

 

 

 

 

クソッ垂れ共の好き勝手やらせて妹達に手出しさせてたまるか。

 

 

 

 

 

 

 

 








今回も割と長めですけど、なんかグダグダしてる様な、してないような……


まぁ、次の話はあれです、戦闘シーンです。
会話は少ないかもしれないけど我慢してね。







  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。