おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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寮生活なんて一言も聞いてないんですけど!?

あ”ぁ”……やっと一日が終わったって感じだぜ全く……

こんなに長く一日を感じた事なんて初めてだ。

 

昼飯の後は一般教養科目、所謂普通の学校で習うような数学や国語と言った教科の授業だった。偏差値70越えだからどんな高レベルな授業かと思っていたが意外と何とかなった。それでもレベルが高い授業なのは確かだ。

 

 

 

「ぐ”ぉ”ぉ”ぉ”……」

 

伸びをすれば情けないことに身体中がボキボキと音が鳴る。そりゃ一日中座っていたんだから当然っちゃ当然なんだけども。

仕事でもこんなに疲れることなんてここ最近じゃ滅多にないってのに。

女子に囲まれてるって環境もあるんだろうが、やっぱり慣れてない環境は普段の数倍は疲れるもんなんだね。やっぱり年取ったなぁ……

 

「それじゃ、帰るか」

 

のんびりと、だけども少し急いで帰る支度をする。

流石に送り迎えしてくれてる人達を待たせるのも悪い。

 

 

ふと外を見てみれば夕焼けで空は綺麗な茜色になっていた。

そう言えばこの学園は海の上にあるんだっけな……

なんだって俺はこんな所に居るのか。あのままサラリーマンとして人生を送って、千冬や一夏の事を見守って生きていくつもりが気が付けば世界で一人しか存在しない、ISの男性操縦者という絶滅危惧種になっちまった。いや、これからも見つからないと断言はできないがそう易々と見つからないだろう。下手をすればその男性操縦者に成りえる人物はもう死んでるとかで存在しないのかもしれないし。

 

なーんて柄にもないことを考えたりしてみたりするが、待たせている事を忘れていた。とっとと行くか。

 

軽く一夏と箒と挨拶を交わして学園大橋と呼ばれる片側5車線のでっかい橋の所に向かう。道中、少しばかり敵意を感じたりしたけど、特に何かされる訳でも無く。

まぁ襲ってきても返り討ちもいい所だな。小娘達に負ける程弱くはない。寧ろ蹂躙してくれるわ!

 

 

 

 

 

「あれぇ……?誰も居ないんだけど?」

 

学園大橋に到着。したのはいいんだけどだーれも居ねぇの。居るのは守衛の女性だけ。確か帰りは此処で待ち合わせのはずなんだけどな……なんかあったんかな?

 

ま、ここで待ってるか。その内来るだろ。

 

 

 

 

 

 

 

「誰も来ねぇ!!」

 

なんでや!?三十分も遅れるとか嘘だろ!?社会人としてダメじゃないですかねそれは!?もしかして忘れられてる?おじさん忘れられてるの?

いくら待っても来ないお迎え。

 

まだ春先だから日が沈み始めて暗くなり始めると寒くなって来る。

しかしここで待つ以外に選択肢は無いから沈んでいく太陽をボーっと眺める。

 

 

 

 

 

 

「あ!お兄ちゃん!やっと見つけた!」

 

「んぉ?」

 

ふと聞き慣れた声がした。その声の方を見てみると我が妹の一夏が。

なんだ?なんかあったのか?

 

「どうしたよ?そんなでっかい声出して」

 

「千冬姉が呼んでるからずっと探してたんだよ!」

 

「千冬が呼んでる?どういう事?」

 

「分かんない!でも取り敢えず千冬姉の所に行こう!」

 

「おぉぉぉ……分かったからそんなに引っ張るなって」

 

千冬が俺を探す理由?

……………………駄目だ。分かんない。駄目な兄ちゃんでごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

道中、千冬に連絡した一夏に連れられてやって来たのは、何故でしょう?IS学園の生徒寮でした。

 

「ここってどう見ても寮だよな」

 

「そうだよ?それがどうかした?」

 

「いや、どうかした?じゃねぇって。なんで俺をこんな所に連れて来るのさ?」

 

「分かんない。千冬姉が此処に連れて来いって」

 

「千冬さん……俺にもわかるように説明してよ……」

 

訳も分からず一夏に引っ張られて寮に入るとそこはとんでもなく場違いな場所だった。

なんだここ?めっちゃええ匂いするやんけ。

 

こんなとこに俺が居ても犯罪者とかにならないですよね!?

あ、今は一夏に連れられてるから加害者じゃなくて被害者か?

 

いやそんなことはどうでもいい。いや、どうでもよくはねぇけど。そもそも千冬は、なんで俺をここに呼び出したし。

 

 

 

 

 

一夏について行くと、寮長室と書かれた部屋の前に連れてこられた。

 

「失礼します。織斑先生、お兄ちゃんを連れてきました」

 

「あぁ、すまんな」

 

「妹に連れてこられましたー」

 

そう言って中に入るとそこに居るのは千冬ではありませんか。

 

「さて兄さん。なんでここに連れてこられたか分かるか?」

 

「全く持って分からんね。てか俺が此処に入ってよかったのかすら分からんし」

 

「それは大丈夫だ。寮長である私の許可があるし、それにこれからここで生活していくことになるんだからな」

 

うん。千冬は寮長。それは納得。でもその後になんか物騒な事を言ったように聞こえたけど気のせいだよね。おじさんの耳が遠くなったから聞こえた空耳だよね。

 

「ほー。千冬寮長なんてやってたのか。だから土日とかもあんまし帰って来なかったのね。で、肝心の用件は?」

 

そんなことはない、ありえへんやろ……

と心の中で思いながら改めて用件を聞いてみる。どうか居るかもわからない神様仏様千冬様。私めに祝福を。

 

「今ポロっと言っただろう」

 

「俺はそんな事聞こえなかったけどな」

 

「よし。ならばその耳元で言ってやろうではないか」

 

ゆっくりと、しかし確実に俺に近づいてくる千冬。

恐ろしくなり、聞きたくないからドアを開けて逃走を図るも何故か開いてくれないドア。

 

「アレ!?ナンデ!?ドアサン、ナンデアイテクレナインデスカ!?」

 

ガチャガチャと虚しい音が響くだけ。

そして俺の耳元に口を寄せてくる千冬!絶体絶命!助けて一夏!

 

「いやいい!言わなくていい!ちょ、やめ、やめろーー!!」

 

逃げようとするもがっちりと肩を掴まれ、どっからそんな力が出て来るのか分からんぐらいの馬力で抑えられる。

ジタバタと身体を動かして脱出を試みるも虚しく。

 

「兄さんは、今日から、このIS学園の、寮で、生活するんだ」

 

「ウソダァァァァァァ!!!!」

 

その日、IS学園の寮におっさんの絶叫が響き渡った……

ちょっとばかり千冬の声と息が耳に当たってこそばゆかったです。

 

 

 

 

 

 

 

「あー!あー!聞こえねぇなぁ!なんにも聞こえねぇよ!」

 

耳を手で覆って抗議をするおじさん。

傍から見れば何とも見苦しく、きったないもんかは俺が一番よく分かってる。そりゃもうよーく分かってる。でも、男にはプライドや恥や外聞を全て殴り捨ててでもやらなければならない時があるのだ。

 

そう!今この瞬間こそ!革命を起こすのだ!!

 

 

 

 

そもそもなんでこんな俺みたいなおっさんが女子高生しかいないこんな所で生活しなければならないのか。どう考えても事案でしょうよ。

 

おいこら。「千冬と一夏と一緒に暮らしてたやんけ」って思った奴、オジサン怒らないから正直に手を上げなさい。

 

 

…………よろしい。素直な子にはおじさん飴玉あげちゃう。

 

 

 

いやいやいや。そうじゃねぇ。一人でコントやってる場合じゃない。

まず千冬と一夏は別なのだ。そもそも家族だし妹だし。俺は妹に欲情するようなフレンズではない。世界は広いからそんなフレンズが居るけども。

 

少なくとも俺はそうでない。

…………そうでないと信じたい。

 

 

「千冬!俺は家に帰る!それが駄目ならホテルでもいい!だから頼む!女子高生と同じ場所に住まわせるのだけは勘弁してくれ!」

 

土下座をしながら必死に懇願するも無情にも千冬は、

 

「駄目だ。それに私ではなく国とIS委員会が決めた事だ。文句があるならそっちに言ってくれ」

 

笑顔で一蹴されましたよ。えぇ。

 

「それに安全上の関係もあってそう易々と学園の外に出すわけには行かないんだ。それに比べて此処にいる人間は最低限の情報があるし、もし敵対する人間だとしても対策や対応を取りやすい。それに比べて外は不特定多数が多すぎて対処するのも大変なんだ。だからどうか納得してほしい」

 

そう言って頭を下げる千冬。

そこまでされては流石に納得せざるを得ない。というか千冬が頭を下げているのに此処で納得しなかったら俺はクソ兄貴になってしまう。男としてもいかがなものか、という訳で。いや、散々駄々を捏ねて今更、と言われると耳が痛いんだが。

 

「分かった分かった。そう易々と頭を下げるな」

 

「そうか。良かった」

 

「おう。で?俺は何処の部屋で寝泊まりすんの?まさか一夏とかが一緒って言わねぇよな?」

 

流石に妹とは言え一緒の部屋ってのはかなりキツイ。身体的に。あいつ何度注意しても飛びついてくるし普通に腰やら膝に負担が掛かるのだ。

別に一夏が嫌いとかではない。寧ろ最高に愛している。ただ俺の年を考えて欲しいのだ。軽いとは言え40、50kgの物体が飛んで来てそれを受け止めるとなるとなぁ……

 

「その辺りは心配しなくていい。私と同じ部屋だからな」

 

「………………ん?今なんつった?」

 

「私と同じ部屋だ」

 

「悪い。俺は空耳が聞こえる様になっちまったらしい。もしくは難聴になった」

 

「そうか。なら耳元で大きい声で言ってやろう」

 

現実から逃れようとすると再び俺に近づいてくる千冬。

 

「すいませんでした。だから取り敢えず許してください」

 

「なら私の言ったことがわかるな?」

 

「イエス」

 

「よろしい。荷物は既に詰めて送って貰っている。今週末には一応の外出許可が出るはずだからそれまでは私が最低限持って来た荷物があるからそれで我慢してくれ」

 

流石俺の妹。やる事きっちりですな。

 

「準備が宜しい事で。因みにここに住むって決まったの何時?」

 

「昨日の夜に急に通達された。だから今日迎えに行くのが少し遅れたのは兄さんの荷物を取りに行っていたからだ。流石に女子生徒と同じ部屋にするのも不味いからそこは私と同じ部屋に無理矢理ねじ込んだ。向こうには警護云々言って無理矢理納得させた。それに兄さんも下手に一人部屋になるよりは気が楽だろう?」

 

「わぁお。委員会のこっちの事を全く考えない行動に惚れ惚れするね。ま、確かに家族が居るって安心感あるから多少はな。でも俺と一緒でよかったのか?一人で部屋を広々使えた方がいいんじゃねぇの?」

 

「いや?私は兄さんと一緒に居る事が出来て嬉しいからそんなことはない。それに狭くても兄さんが居れば関係ないさ。それに教職についてからは兄さんと会う機会がめっきり減ってしまったから。それはその分だと思ってくれ」

 

まぁ確かにここ数年は千冬は忙しくて家に帰って来ることも珍しくなっていたしな。

月に2回帰って来られればいい方で帰って来られない、なんて時もままあった。

それを考えればそれもそうなのか。

 

「おぉう、そうかい。そりゃ兄貴としちゃ嬉しいね。ま、これからよろしく頼むよ。つっても家と大して変わらんだろうけど」

 

「ん。よろしく、兄さん。それじゃ夕食に行くとしよう。明日から本格的に授業が始まるし、慣れない環境だろうから早めに休んだ方がいいだろうからな」

 

「了解。因みに食堂は何時まで?」

 

「六時から九時までだ。そうだ、ついでだから今説明してしまおう。朝は五時から七時まで食堂はやっている。その後は昼休みまで今日と大して変わらないが、夜はさっき言った通り六時から九時まで。大浴場があるが今の所兄さんは使用不可だ。すまんが部屋のシャワーで我慢してくれ。十一時には消灯だ」

 

「結構時間の余裕はあるのな。もっとこう、カツカツかと思ってたぜ」

 

「ここは軍隊じゃないんだ。まぁ不本意とは言えISを兵器として扱っている以上はしっかりと規律は守ってもらうがな」

 

「それもそうか」

 

話ながら歩いていると食堂に到着する。

晩飯は何にするか。あ、あの日替わり定食っての美味そう。決めた。今日は日替わり定食だな。

注文して食事を受け取って席を探す。

 

運良く空いている席があった。

 

「お、あそこ空いてるからあそこにするか」

 

「私は何処でも構わない」

 

2人で席について合掌。

 

「「頂きます」」

 

そして食べ始める。

うん、うめぇ。ここは無駄に金掛けてる所が多すぎだが。

でも一夏の作る飯もうめぇんだよな。そうだ、今度作って貰うか。

なんか知らんけど部屋にキッチン台もあったし。

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

「ん?おぉ、一夏と箒。二人も飯か?」

 

「うん。席を探してたところ」

 

「ならここに座るか?千冬が良けりゃだけど」

 

「ん……私は構わんぞ。座るといい」

 

そして一夏と箒は同じ席に座って飯を食べ始める。

 

 

 

 

「お兄ちゃん、今日1日どうだった?」

 

「クッソ疲れた」

 

「そうなの?」

 

「そうなんだよ。訳も分からず女子高生に、いや自分以外が女な状況だぞ?普通に疲れる。お前達元気良すぎ」

 

今日1日の感想を言ったり。

 

 

 

 

「洋介兄さんは結局どこの部屋に住むんですか?」

 

「寮長室」

 

「え!?何それ千冬姉!聞いてないんだけど!?」

 

「言ってないからな」

 

「ずーるーいー!私も箒もお兄ちゃんと同じ部屋が良かった!」

 

「お、おい一夏。勝手に私の名前も上げるな」

 

「え?箒お兄ちゃんの事大好きでしょ?」

 

「いや、そうなんだが……」

 

「そんな事しなくてもくればいいでしょうに。俺目的だったら一々許可取る必要無いんじゃねぇの?」

 

「ん?まぁそうだな。別に来ても構わないぞ」

 

「ホントに!?やったー!」

 

一夏と箒に同じ部屋が良かったと文句を言われ、部屋に好きな時に来ていいとなったり。

つか一夏食いつきすぎじゃね?そんな嬉しいの?あ、そうすか。

4人で食事を済ませその後は部屋に戻って風呂に入るなりなんなり。

千冬は仕事があるって言ってどっかに行っちまったけど。

 

 

そうなると部屋には俺一人。

そして予想されるのは一夏と箒の来訪ってなわけで。

なんて考えているとドアを叩く音。

こりゃ早速来たな。

 

「あーい」

 

「お兄ちゃん、入っていい?」

 

「おーう。いいぞー」

 

「失礼しまーす!」

 

「お、お邪魔します」

 

そう言って入って来たのは堂々とした一夏と、それとは反対におずおずとした箒。いや、ホントにお前ら性格入れ替わったんじゃねぇの?と思ってしまうぐらい昔見た時とは大違い。

 

「何となく予想してたけど早速来たか」

 

「そりゃ来るに決まってるよ」

 

「すみません、いきなり……」

 

「何、気にすんな。許可を出したのはこっちだしな。千冬に怒られない程度なら許す」

 

「やったー!」

 

そう言って俺の座っているベッドに飛び込んでくる。

ドフン!という音と共に俺の身体が浮き上がる。

 

「あんまし暴れんな。千冬にバレたら怒られんぞ?」

 

「えー?でもお兄ちゃんはそんなことしないでしょ?」

 

「まぁな。別に怒ったりなんざしねぇよ」

 

「だったらお兄ちゃん限定って事で」

 

俺限定ってそれどうなん?

千冬との対応と大して変わらんじゃないの。

 

「洋介兄さんすみません……荷物とか整理することも沢山あるだろうから直ぐに行くのは流石にどうなんだと言ったのですが……」

 

箒は申し訳なさそうに言う。

本当に変わったな……昔だったらいの一番に突っ込んできたのは箒だったのに。

昔を懐かしんじまうのは、歳を取った証拠だな……

 

「ん?あぁ別に気にするような事はないって。箒も寛いでくれ」

 

「……はい。それじゃぁ失礼します……」

 

「おう。で、何故に俺の隣に?」

 

「寛げと言ったのは洋介兄さんじゃないですか」

 

「それが何故俺の隣になるのさ」

 

「私にとって一番落ち着いて寛げると言ったら洋介兄さんの隣ですから」

 

「……そうかい」

 

「ふふ、そうなんです」

 

どうしてだか嬉しそうに笑いながら俺の隣に座る箒。

ま、慕われてんのは嬉しい事だがね。

 

「あ!お兄ちゃんと箒がイチャついてる!ずるい!」

 

「何言ってんだ一夏」

 

「ふふん、良いだろう?」

 

「箒は何故煽った?頼むから止めてくれ」

 

そう言った俺の言葉も虚しく、俺挟んでの言い合いに。と言っても俺からすれば微笑ましいもんだが、抱き着いてきたりするのはなんでや?おじさん、この状況をどうすりゃいいの?誰か教えて。

 

 

 

 

 

 

箒と一夏の言い合い(笑)から暫くすると落ち着いたのかそれぞれ今まで何をやっていたのか、などと昔語りが始まった。

 

箒は要人保護プログラムという事で各地を転々としていたんだそうだ。

引っ越す前に聞いた説明と変わらず、しかし結構な苦労もあったようだ。

基本的に短い期間しかその場所に留まる事が出来ず、友人は出来たが、親しくなることは無かった。親しくなる前に国から別の場所への移動命令が出てしまうからだ。

しかしその間も一夏とは会える事が出来たらしい。それでも頻度は数年に一度程度だったが。そう言えば2年ぐらい前に会ったとか言っていたな。

俺、そんなこと知らなかったんだけど。

箒が言うには何故か俺は国に信用されていなかったらしい。

その辺の理由はよく分からんが、恐らく不特定多数の一人として見られていたんだろう。どういう基準なのかは知らんが……それにおいそれと国にとっての最重要人物の妹にホイホイ誰かを会わせることは避けたかったんだろう。しょうがないと言ってしまえばそうなのだろうが、個人的には小学生をそう言った環境に置くことが信じられん。普通だったら性格の1つや2つ、捻じ曲がってしまっても可笑しくはないだろうに、よくもまぁこんなに立派に育ったもんだ。

 

ついでに言っておくと束とは一応連絡は取っているらしい。

監視の目があるから堂々とは行かずにコソコソと言った感じらしい。仲が悪いという訳でもなく、良いという訳でもないだそうだ。

 

一夏は言わずもがな、と言った所だろう。

日常は俺と暮らしていたし、学校にも普通に通っていた。友人も沢山居たし、その中でも特に親友というような人間が居た事も知っている。

変わったと言えば代表候補生ぐらい。

まぁそう簡単になったわけじゃない。確かに才能はあるだろう。でもそれだけで慣れる程簡単なものではないはずだ。その為にして来た努力は知っているからな。

 

 

 

そうこう話しているとそろそろ就寝時間。

 

「ほら、そろそろ良い子は寝る時間だぞ」

 

「まだお兄ちゃんと話したい!」

 

「そう言ってもよ、時計見てみ?」

 

「………………」

 

「千冬に怒られんのが嫌だったら部屋に戻った方がいいぜ?」

 

「そうだぞ、一夏」

 

俺と箒に説得されて頷く一夏。

しかしどこか残念そうにしているのは気のせいじゃないんだろうが……

 

「分かった」

 

「そう気落ちする必要ないだろうよ。また明日にでも来ればいいだけの話だろ?」

 

そう言ってやると嬉しそうに笑って部屋を後にした。

あぁいう所はまだまだ子供だな。それもその内見られなくなるんだろうけどな。

……さて、そんな辛気臭いこと考えてないで俺も寝ないとな。千冬に何言われるか分からんからね。

 

 

 

 

 

 

 

「ねみぃ……」

 

大きな欠伸をしながら起きる。

時計を見れば四時半。随分と早く起きたな……

 

 

ん?腕ってこんな重いもんだっけ?

思わずそう思うほど腕が重く感じた。しかもなんか掛け布団が膨らんでるし。

捲ってみると……

 

 

「なんで千冬が居んの……?」

 

そこには腕に抱き付いて寝ている千冬の姿があった。

いや、自分のベッドあるやんけ。どうして態々俺のベッドに、しかも俺に抱き付いてまで寝ているんです?

 

そうしてせめて腕を抜こうとすると抱き締める力が強くなる。

 

「んぅ……」

 

いや、離してくださいよ……

 

何度か試して何とか腕を引き抜くことには成功したがそれ以上はどうにもならなかった。いや、千冬を引きはがすとなると結構本気にならないといけないが、そうすると起こしてしまう訳で。

千冬を見てみると、幸せそうな顔で寝ている。時折腕に頬ずりをしてくる。

こんな顔で寝てる奴を起こせるわけがない。

 

ま、いいか。

教職に就いてから今まではそう簡単に会えなくなっていたから、こんぐらいは許してやるか。

 

そう思いながら頭を撫でると我が妹は嬉しそうに抱きしめる力を強めるのだった。

 

 

 

 




いやもう驚くほどの評価が付いてて怖い……
あんなん見た事ねぇですはい。

皆さんのお陰です。ありがとうございます。
てかお気に入り4000件って何?
友人にも日間ランキングどころか月間ランキングにも名前が載っていると言われ、

( ゚Д゚)ハァ??ナニヲイッテイルンデスカ?

となっってしまいました。

なんでこんな適当に書いてるのが評価高いんや。
皆さんオジサン好き?それとも妹好き?




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