おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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おう、夏休み話だぞ。
現実は世間一般は夏休みじゃないけどな。


今回は日常回みたいな感じ。













夏休み?そりゃもう身体を鍛えるしかないでしょ!

 

 

 

 

本日から、IS学園は短いながらも夏休みに突入するでゴザルよ!

でも俺ってば!万が一の事があるからってお家に帰れないんだよ!帰してくれないんだよ!

 

まぁ、そんなわけで夏休みだ。

こんな長い夏休みって何年ぶりだ?高三以来だから……十七年ぶりですね。

いやー……年取ったな俺……

一夏達と出会う前から大学行かないで働いてたからもうめっちゃウキウキしちゃうぜ!

 

何しよっかなー!三週間、IS学園内とはいえ楽しんじゃうぞー!

お勉強しなくても、おじさん天才だからさぁ、学期末テストとか赤点余裕で回避しちゃってるから宿題だけやっとけばあとは自由な訳よ。

高校の時は赤点あったり宿題終わってなかったりガッツリ運動部やってたから徹夜とか出来んかったしやってみるのもアリだな。

 

……運動するっつっても一人じゃ限度があるしなぁ。

気絶するまで走ってみるのもアリかもしれんけどそれはそれで一夏達にしこたま怒られそうだしやりたくても出来ない。

 

千冬はこんな時にも二学期の準備やら意外や意外、茶道部の顧問としての仕事とかで忙しいらしくお仕事中だし。

千冬が茶道を?と聞かれると確かに驚くよな。

ぶっちゃけ千冬って茶道ってタイプじゃねぇもん。

バリバリ運動部って感じだし文化部どうこうって感じはしない。

 

だけども、千冬ってば華さんに茶道華道を教えられていたから、それこそ師範とかそんなレベルじゃないけどそれなりに出来る。

今まではそれなりに顔を出してたらしいんだけど今年に入ってから忙しいのなんので全く顔を出せていないんだそうな。だからこの機会に顔を出して一つ、先生面でもしてこよう、ってことらしい。

 

確かにこのIS学園って、ほぼ女子高なのにそう言った方面に精通している先生が皆無なんだよ。

なんて言えばいいのか、女子力が足りない系の女子が多すぎる学校。

まぁISばっかって感じだからあれだけどもさ。

俺でも多少炊事洗濯は出来るんだぞ?

 

と言っても男飯に洗濯物全部纏めて洗うとかそんなレベルの雑さだけど。

え?靴下もパンツも何もかも全部一緒に決まってんだろ?一回で済ませた方が楽じゃん。

師範たちと知り合ってからはその辺も割と気を使ったけど、面倒だからといっぺんに突っ込んで洗う事の方が多かったのは秘密だ。知られたら間違い無く俺、怒られる。

 

一応、華道に関しては別の先生がやってくれてるらしい。

 

俺?はっはー、俺がそんな繊細な事出来るとでも思うてか?

茶道とか全く分からん。

 

 

 

それだけ忙しくても十日ぐらいは休みを取れるらしいからその時に三人で家に帰ろう、って話してる。

千冬が学生の時までは俺が仕事してる立場だったんだけど、今は真逆だしなぁ。

世の中何が起こるか本当に分からないもんだぜ。

 

 

あー、何しよっかなー。

 

朝飯はもう食ったし。

今は朝の七時だから、そろそろ運動始めるかな。

 

なんて考えていると、部屋のドアを叩く音が聞こえてくる。

 

「はーい」

 

『お兄ちゃん?入っていい?』

 

「おー、いいぞー」

 

一夏だった。

と言うか、俺と千冬の部屋を訪ねてくる奴なんて一夏達しかおらんわ。

 

とか思っていると、一夏だけじゃなくて箒や鈴、セシリア、シャルロットも一緒に来ていた。

因みにラウラは束のとこで夏休みを満喫しています。

 

なんでも毎日、俺の所と束の所を日替わりで過ごすらしい。

昨日の夜、うっきうきのテンション高めで束の手を握って行く様子はもうほんと高校生かどうか疑わしく思えた。

ちっこいから小学生にしか見えねぇんだもん。

 

多分、俺が若いうちに結婚して子供居たらあれぐらいだからそりゃぁ、可愛くてしょうがない訳よ。

こうやって男親ってやっぱ娘に甘くなるんだな……

 

 

 

 

 

「お邪魔します」

 

「邪魔するわよ」

 

口々にそう言って入ってくる面々はなんか普段とは違った顔をしていた。

ただ、服装はそれぞれ私服だ。なにせ夏休みなんだから態々制服を着る必要なんてありゃしないんだからな。

取り敢えず、冷蔵庫の中から昨日作っといた麦茶を皆に出す。

 

「どうした?こんな朝っぱらから。しかもそんな神妙そうな顔して」

 

何時も通り、寝起きのまま半袖短パンのだっらしない恰好でベッドに胡坐をかいて聞く。

 

「お兄ちゃん、私達の事鍛えてくれない?」

 

「パードゥン?」

 

あんまりにも唐突過ぎてそんな返しをしちゃったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、めっちゃ簡単に言ってくれん?」

 

「えっと、私達ってこの前の事件の時、お兄ちゃんが戦ってる所をただ見てることしか出来なかったでしょ?」

 

「まぁ、ありゃぁ仕方無ェよ。お前らが戦っても殺されるのがオチだしなぁ」

 

「それ!」

 

「ウェイ!?」

 

俺がそう言うと、一夏は掴みかかってきた。

と言うか胸倉掴まれた。ガックガック揺さ振られる。

 

あー止めてください!脳みそがシェイクされてしまいます!ただでさえ馬鹿な事しか考えられない脳みそが余計に馬鹿な事しか考えられなくなってしまいます!

 

「それが嫌なの!もうお兄ちゃんがただ戦ってる所を見て、ボロボロになるのを見ているだけなのは嫌なの!」

 

一夏は、恥も外聞もクソも無く、そう言い切った。

その目尻には、涙が溜っていて悔しそうに歯を食いしばって口をグッと結んでいる。

 

あの時、相当こいつらは我慢して、色々と溜め込んだんだろう。

多分、俺が頷かない限りはここから出て行かないだろうし今日どころか明日も明後日もこうして頼み込んでくるに違いない。

 

うーん……こりゃ早々に俺の負けだぁな。

 

「よし分かった。鍛えてやる。ただ言っとくが、俺ぁ近接戦闘特化だからな。そっち方面にしか稽古は付けてやれんぜ?」

 

「それで構いませんわ。小父様のその技術は、射撃特化の私が見たとしても凄まじいものです。それをご教授頂けると言うのであれば光栄な事です」

 

「……そう言われると恥ずかしいね」

 

「それじゃぁさ、早速始めようよ」

 

「え?今日からやんの?」

 

「そりゃ勿論。早い方が良いでしょ?それに今は夏休みだし絶好の機会でしょ」

 

鈴が何言ってんのよ、と言わんばかり。

いやね?まさか今日からやるなんて思う訳無いじゃん。

確かに夏休み、三週間を丸々使えるってことだもんな。誰だってやれることはやるわな。

 

「あー、そりゃそうか……。ま、そしたらやるか」

 

俺がそう頷くと、五人はやってやるぞ、と意気込んだ。

 

「それで?何やんの?」

 

「まぁ、取り敢えず、運動出来る格好に着替えてこい。着替え終わったら、飲み物持って玄関に集合な」

 

「それってISスーツにってこと?」

 

「違う違う。体操着とか、そんな感じのやつ」

 

「え?」

 

「まぁ、取り敢えず言う通りにしとけって。多分すっげぇ事になっから」

 

俺は取り敢えず、全員に運動着を着て、飲み物持って、集合するように言った。

 

俺も、一応念のためにスポドリ2リットルを何本か持ってっとくか。

多分、あいつらが持って来る量じゃ絶対に足りないはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にいる五人は、それぞれ運動出来る格好で立っている。

うん、まぁ確かに運動出来る格好でって言ったよ?言ったけどさぁ……

 

「ねぇ、なんで全員揃いも揃って体育着なの?」

 

「え、だって運動出来る格好って言われるとこれでしょ?」

 

「別に俺は体育着に限定してないんだけど!?」

 

「でもお兄ちゃん的には嬉しくない?」

 

「余計な事を言う口はこれだな?」

 

「ん”ん”む”ぅ”ぅ”ぅ”!!」

 

一夏の顎をむんず、と掴んでこれ以上余計な事を言わせない様に黙らせる。

いやね?確かに眼福ではあるよ?

 

IS学園、どういう訳か体育着というよりブルマなんだよ……。

そりゃぁ、もうね?そう言う訳ですよ。

 

普通の体育着と比べると太ももの露出面積とか尋常じゃ無い訳でして。

しかも鈴を除いて全員が平均以上のお胸をお持ちでして……。

 

上も下もむっちむちだぞ?ぱっつぱつなんだぞ?

 

お前、目の前に居るのが美少女揃いのIS学園の中でもトップクラスの美人さん達なんだからさ、嬉しいんだけど、それを口に出す馬鹿がどこにいると思う?

 

ここ、俺以外女しか、それも十代半ばの少女諸君しか居らんのだぜ?そんな中で変態認定されてみ?

もう地獄への直行便待った無しですよ。

 

 

「はぁ……まぁ、いいや。そんじゃ始めるとするか」

 

「結局何するんですか?」

 

「ん?普通に走って筋トレ」

 

「え?」

 

「いやさ、君ら確かに代表候補生に選ばれるぐらいにはISの扱いとかうまいじゃん?」

 

「「「「「えへへへ……」」」」」

 

俺がそう言うと、嬉しそうにするけど。

言いたいのはそう言う事じゃねぇんだよ。

 

「ISって、確かに機体性能も重要だしIS適正も重要なんだけど結局のところ、と言うか最終的に搭乗者の身体能力とか体力がものを言うんだわ」

 

「それってどういう……」

 

「んー……なんて言えば良いんかな、こう、ISって搭乗者の身体能力に、機体性能とかIS適正を足していく、足し算方式じゃなくて掛け算方式なんだよ」

 

ISってのは、確かに高性能な機体があれば強いし、高いIS適正があればよりISを自分の手足の如く扱える。

だけども、それを支えるのは結局のところ搭乗者の身体能力が高ければ高い程にそれらをより扱いやすくなる。

考えてみ?運動出来ないけど高性能な機体を持っていてIS適正が高い。

 

これ、機体とIS適正だけを頼りにしている時点で負け確なんだよね。

さっき言った掛け算方式で考えるのが一番分かりやすいんだけど、

 

それぞれを十段階、それも極端なもので表すとすると、

 

身体能力 1

体力   1

機体性能 10

IS適正 10

 

掛け算すると、答えは100になる。

……なるよね?

 

これ、身体能力、体力がどちらも10だったとすると答えが10000になる。ってことは100倍の差が出てるんだよ。

これが身体能力が2だとしても3だとしても少なくとも1よりかは全然勝てるんだよね。

 

これ、幾らIS適正高かろうが機体性能が良かろうがどうやったって勝ち目が無い。

 

そんなわけで身体能力や体力って滅茶苦茶大事なんだよ。

しかも、国家代表とかを目指すってんなら身体能力もそうだが、体力、特に持久力が必須になってくる。

と言うのも、国家代表同士の試合なんて普通に一、二時間なんて当たり前だからだ。

 

サッカーや野球、ラグビーみたいなスポーツと違ってISってのはそう言う特別ルールが無い限りは選手の交代ってのが無い。

一対一でやるのが基本だからな。

 

そうなると、誰かを頼って休憩が出来ない。

最初から最後まで自分だけで戦い抜かなくちゃならない訳だ。

 

そうすっと、必然的に体力、特に持久力が多くなければ戦い抜けない。

それらを全部ひっくるめて考えると、絶対に体力はあった方が良い。

もし、箒とシャルロットを除いた三人が国家代表を目指すと言うのならば。

 

目指さないにしても、体力があった方が何かと都合が良いからな。

 

 

 

 

 

 

 

「そうなんですか?」

 

「うん。で、掛け算って掛ける数が多いほど答えの数は多くなるだろ?」

 

「まぁ、そりゃぁ……」

 

「とすると、機体性能とIS適正は俺達じゃどうやったって上げようもない。そうなったらどこの数を増やせばいい?」

 

「搭乗者の身体能力の向上、って訳ね」

 

「そう言う訳よ。だから体力付けようぜってこと」

 

「なるほど……」

 

「そういやさ、鍛えてくれって言われたけどメニューは俺が考えていいんだよな?」

 

「うん」

 

「なら、最初は走り込みと筋トレから初めて、その次にISを使うから」

 

「え、どっちかだけじゃないの?」

 

 

 

「どっちもに決まってんだろ。言っとくけどそんな甘ちゃんな事言ってても強くなれねぇぜ?」

 

 

 

ニヤッと笑いながら、言ってやるとどうしてだか五人ともやべぇ……って顔をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで、準備運動後に始まった走り込み。

因みに俺はリュックに五人分のスポドリ入れて走ってます。

 

理由?いや、だって多分、こまめに水分補給させないと皆途中で力尽きますよ。

水分補給させとかないとこの炎天下じゃぶっ倒れちまうって。

 

今はとっくに八月だかんね、太陽の光は朝方っつっても結構厳しい。

俺は別に慣れてっから問題無ェけども。一応、自分用の飲み物も持って走ってる。

 

 

 

 

 

 

走り始めてからの感想。

まぁ、代表候補生ってだけあってそれなりに体力はあるらしく、四分の一ぐらいは俺のペースに付いて来ていた。

俺のペース、50kmを凡そ2時間程度で走り切るスピードで走ってる。

ってことは、自分で言うのもあれだけど結構速い。

それに最初だけとはいえ付いてこれるってんだから大したもんだよ。

 

この学園の直径は凡そ8km。

IS学園には外周含めたランニングコースがあるんだがそのランニングコースの長さ、まさかの約50km。

いやもう、普通の学校と比べるまでも無いデカさなんだけど、俺は最近いつもこのコースを一周と三分の一ぐらい走ってる。

ただ最近は体力上がって来たから少しづつ距離を伸ばしてるんだけどな。目指せ100km。

と言うかこれ以外にコースが無い。

 

それよりも短い距離を走りたいってなると、1km事にある折り返し地点で折り返せばいい。

ただ、今回はどれぐらいの体力があるのかを見極めたいからマックス50kmを走って貰う事にした。

 

12kmぐらいまでは全員付いて来てたんだよ。

意外だったのが箒も付いてこれてた事だな。

 

まぁ、昔っから剣道やってるし今もやってるから体力はあると思ってたが途中までとは言え付いてこれるとは思ってなかった。

 

「おー、どうしたどうした、バッテバテじゃねぇかよ」

 

「い、や、あん、た、がおか、しいッ!」

 

「喋れるんならまだ走れるな。ほれこれやるから頑張れ」

 

鈴にスポドリを渡して(と言うより出した瞬間にひったくられた)飲ませた後、返してきたペットボトルにマジックペンで鈴、と書いてリュックに放り込む。

 

……舐めたりしないからな?俺はそんな変態さんじゃないからな?

 

鈴の背中を軽く叩き激励しつつ、最後尾を走っているセシリアの元に行く。

今の所、鈴は大丈夫と。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい……!」

 

「一回水入れるか。あ、止まるなよ。止まったら余計辛くなるからな」

 

そう言いつつ、リュックからスポドリを取り出して蓋を開けて手渡してやる。

ゴクゴクと、勢いよく飲み進めていくセシリアは、息が出来なかったらしく咽せた。

 

「大丈夫か?」

 

「ゲホッ!だ、だいじょ、ぶです、わ!」

 

「よし、やばかったら言えよ。取り敢えず、一夏達見て来るからそれが終わったら戻ってくる」

 

「は、はい!」

 

それから、後ろから順番に箒、一夏、シャルロットと様子を見る。

思いの外、シャルロットが体力があるのが予想外だったな。一夏との距離は200mぐらいしか離れてなかったし。

 

先頭のシャルロットから最後尾のセシリアの距離は大体3kmぐらい離れてたから、相当早い。

 

シャルロットの所に行ってからセシリアの所に戻ってその隣を走る。

定期的に全員の所に回って水分補給をさせる。

 

まぁでも全員相当キツイらしく、走り終わる頃にはフラフラで死にそうな顔してたな。

全員が走り終わるのに掛かった時間はマラソン選手でも何でもないから五時間ちょい。

 

シャルロットが4時間ぐらいで走って、

セシリアが5時間ちょい。

まぁ、最初なら上出来だな。

 

俺が運動部で体力錬成を始めた頃は10km走るのもやっとだったし。

ある程度の体力があるとはいえ、50kmもの距離を走り切れた事は凄い。

 

正直、途中で誰かが脱落する事も考えてたから素直に驚きだ。

 

本当はもっと距離は短くてもよかったんだけど、こうやってあえて最初に長い距離を走らせて辛い思いをさせておくことで、今後走る距離での辛さと比べて楽だ、と思わせて、その距離を走り切れたって自信を付けさせる事も狙いなんだよな。

走り切れずとも、ある程度の距離を走ることが出来さえすればそれなりに自信に繋がってくる。

 

本来、このやり方は一定の人間にしか通用しないんだけど少なくとも代表候補生に選ばれるぐらいの辛い訓練をしてきたから反骨精神とかは人一倍どころか十倍はあると思う。しかも割とポジティブな連中ばっかだからな。

それを考えると、結構このやり方に適性がある。

 

全員に、水に濡らしたタオルを渡して取り敢えず、腋や太ももなんかを冷やさせる。

 

「よし、取り敢えずはご苦労さん。まぁ、炎天下ってことを考慮したとしても予想以上に走れてたな。取り敢えず目標としちゃ最初の俺のペースで50kmを走り切れるようにって感じだな」

 

「なんで……そん、な、よゆ、うそう、にしてんのよ……」

 

「元々の体力の違いだろ。それに普段は俺、最初のペースで普通に最後まで走り切るしこの速さなら多分もう二周か三周ぐらいなら余裕だぞ」

 

「やっぱり、すご、いなぁ」

 

木の下にある日陰に全員を取り敢えず放り込んで軽く見ていた感想を言ってやる。

 

実際、思っていたよりも走れていた。

俺の予想としては先頭が五時間、最後尾が六時間半ぐらいで走れれば良いかな、ぐらいに考えていた。

それがどうだ、実際に走らせてみたら全体的に予想の一時間も速く走り切ってるじゃねぇか。

 

十分に驚きだよ。

 

 

でもこの様子じゃぁ、IS使うのは今日は厳しいかもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーし、そんじゃシャワー浴びるなら浴びて食えそうだったら昼飯食って休憩してろ」

 

「え……おじ、さまは……どこに……?」

 

セシリアは不思議そうな顔をして聞いてくる。

 

「俺?もう一回走ってくる。何時もの距離に足りてねぇから。一夏、リュック頼む。俺の部屋に適当に置いといてくれればいいから」

 

そう言ってリュックを一夏に預けて走り始める。

うーむ、やっぱしみんなの速度に合わせてると物足りないな。

 

このまま、12km地点まで行って折り返して来るか。

本当は一周走っても良いんだけどそうすると二時間くらい掛かっちまうし、待たせるのも悪いからな。

 

24kmぐらいなら一時間もあれば十分帰って来れる。

 

そう、頭の中で計算しながら走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side セシリア ----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小父様に頼み込んで、鍛えてもらう事になりました。

 

最初、走ると言われたとき何を言っているのか訳が分かりませんでしたが理由を説明されて納得。

確かに国家代表の方々は別次元なのでは?と思うぐらいの体力の持ち主でしたし、小父様の言う事には百理あります。

 

そして、着替えて走る。

 

と言っても私、運動出来る服なんてテニスウェアと体操着ぐらいしか持っていないので体操着に。

それ以外の服もあるにはあるのですがどれもこれも運動には向きません。

 

 

 

 

 

 

走り始めて、改めて思い知らされた小父様の凄さ。

最初は付いていけたのに、ドンドン一夏さんからも鈴さんからも引き離されて行って、遂には一番後ろを無様に走ることに。

 

その間、小父様は私達のそれぞれの元を行ったり来たりしながら随分補給をさせつつ、アドバイスやら励ましやらを話しながら平然と走り続ける。

私なんか、最初から最後までずっと小父様に隣に付いて励ましてもらっていた。

小父様の合計した走った距離なら、優に10kmはプラスで走っていそうなのに汗は掻いていても呼吸は殆ど乱していない。

 

 

 

 

 

終わるころには私達は全身汗でびしょびしょなんてレベルでは無く、絞ったら雑巾の様に絞れそうなほど汗を掻いて木陰で五人揃って引っ繰り返っていると言うのに、それでも小父様は何でも無かったかのように平然としている。

 

あまつさえ、走り足りないからとリュックを置いて再び走りに行ってしまう。

 

 

どんどん遠くなって見えなくなる背中を見ていると、ふとした瞬間に私だけ置いて行かれそうな気持ちに襲われてしまう。

 

 

何時も、そう。

お父様もお母様もとっくに私を置いて行ってしまったし、小父様だって何時もたった一人で戦いに行ってしまうんじゃないか。

 

 

そう考えると小父様は、そのうち本当に私を、私達を置いて帰って来なくなってしまうんじゃないか、と考えてしまう。

だけど、そうならないようにするには私が小父様の隣に立って、同じ歩みを進められるようになるしかない。

小父様に足並みを揃えて貰っていては力不足の私では邪魔になってしまうから。

 

 

 

 

 

 

 

「あ”ぁ”~”……めっちゃ涼しー……」

 

「はぁ”~”……ちょーてんごくぅー……」

 

一夏さんと鈴さんが寮の中にある長椅子にぐったりと座りこむ。

何時もなら自分の口から、

 

だらしがないですわ、捲れてお腹や背中が出てしまっているじゃありませんか。

 

なんて出て来るのだろうに、今日ばかりは全く言葉が出てこない。

私も椅子に座ってぐったりして、体操着が捲れているのに直す気力さえ湧かない。

 

箒さんもシャルロットさんも同じようにぐったりと座り込んで、何時もなら絶対に出さないであろう声を出す。

 

「流石に、疲れたね……」

 

「洋介兄さん、あれを毎日やっているのか……。それに加えて筋トレもこなすって……」

 

長椅子に腰掛けていると直ぐにエアコンに冷やされた空気が私達を包む。

本当に、文明の利器って最高ですわ。

 

 

 

 

「うわ、五人共どうしたの?そんな汗びしょびしょでぐったりしてさ」

 

「……お兄ちゃんにきたえてもらってたー……」

 

偶々通りかかったクラスメイトの鷹月さんに声を掛けられて、ぼーっっとしていた意識を戻す。

 

「佐々木さんに?」

 

「学園の外周丸々走らされてたんです……」

 

「え、学園の外周って50kmあるよ?それ丸々?この炎天下の中?」

 

「そうよ……。あの人やっぱ普通じゃないわ。私達と一緒に走って全員分の二リットルのスポドリ五本も入れたリュック背負って私達の所を行ったり来たりしてんのにぜんっぜん息乱してないんだもん……。しかも走り足りないって言ってまた走りに行っちゃったし……」

 

「あはは、お疲れ様。でもそのままだと風邪引くよ?」

 

「分かってますわー……」

 

そうやって会話していると、段々と身体が冷えていくのが分かる。

流石にそろそろシャワーを浴びないと。

 

でも、こうしていると気付かされる。

 

私達は、どれだけ甘い世界にいたのか、という事を。

 

ともかく、それを考えるのはあと。

本当に早く汗を拭くなり流すなりしなければ風邪を引いてしまいます。

 

「ほら、自分の部屋に行ってシャワーを浴びてきなさいな……このままだと風邪を引きますわよ……」

 

「わーかってるわよー……」

 

「それじゃ、シャワー浴び終わったらホールに集合ねー……」

 

「分かった……」

 

動こうとしない鈴さんを、どうにかこうにか立たせてそれぞれの自室に戻る。

 

 

 

 

 

今はルームメイトの如月さんも実家に帰省しておりませんし少しだけ寂しい。

 

殆どの人が実家に帰省している中、私達専用機持ちは帰っていない。

と言うのも、帰るには帰るのですが来週中に五日間ほど帰国するのです。

この三日間で、ブルー・ティアーズのメンテナンスだったりシステムアップデートを行ったりする。

 

そして実家にも帰ってオルコット家が経営しているホテルなどの状況を聞いて書類を片付けたりとかなり詰め詰めの日程ですが致し方ありません。それよりも小父様に会えない事などの方が辛いと言えば辛い。

チェルシー達に会いたい気持ちもあります。だけど……。

 

それを考えると、一夏さんと鈴さんはズルい。

だって一夏さんは母国が日本だからここから通う事だって出来るし、鈴さんだってそこまで遠くはないから戻ってくるのはイギリスからよりもずっと楽。

と言うか、一番の勝ち組って織斑先生だと思う。

 

だって、同じ部屋で寝起きして、休みの間も仕事があるとはいえなんだかんだで一緒に居る時間は長いしご実家にも一夏さん込みとはいえ一緒に帰る事が出来るし。

 

はぁ……。

いいなぁ、羨ましい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

直ぐに、体操着を脱いで洗濯機に放り込み、乾燥機も掛けて置く設定をして洗剤と柔軟剤を入れて回す。

体操着は替えを入れて三着あるのですが、この汗まみれの体操着を洗濯機の中に放置しておくのはちょっと……

 

思えば、ここに来た時は本当に洗濯機の使い方も分からなかったのですよね。如月さんに教えて貰っていなければどうしていたんでしょうか。

 

そしてシャワーを浴びる。

バスタブもあるにはあるのですが、今は取り敢えず汗を流してお昼ご飯を食べたい。

あれだけ動いたんですもの、お腹も空きます。

 

走り終わったときは何も食べたくありませんでしたけど、今は寧ろお腹が空いてしょうがない。

 

 

 

 

シャワーから出て、身体を拭いて、すぐに着替える。

特に服装は指定されていませんから何でもいいでしょう。

 

洗濯と乾燥が終わっている体操着を取り出して、皺を伸ばして畳んでおく。

 

そして集合場所の、各階にある円形のホールと呼ばれている場所に向かうと既に一夏さんと鈴さんがそこに。

 

「随分とお早いのですね」

 

「私って結構お風呂とか早いんだよねー。お兄ちゃんもすっごい早いからその影響かも」

 

「私も、あんまり長湯ってタイプじゃないしね。ぱっぱと済ませちゃうのよ」

 

「どれぐらい早いんですの?」

 

「私はシャワーだけなら十分ぐらいね」

 

「んー、私はシャワーだけなら十五分くらいだけどお兄ちゃん、お風呂もご飯も本気出すとどっちも五分くらいで済ませちゃうよ」

 

「……それ、本当にちゃんと洗えているのでしょうか?」

 

私なんか、温まるとなると普通に一時間以上掛かるのですが。

今日はただ汗を流すだけだったので短めにしましたがそれでも四十分は掛かっていると言うのに。

 

「あー、その気持ち分かる。私も疑った事あるもん。だから何度かコッソリ監視したことあるんだけどさ、お兄ちゃん、シャンプー使わないで頭も身体用の固形石鹸でゴッシャゴッシャ洗ってたんだよね。あれは流石にびっくりしたなぁ」

 

「何と言うか、小父様らしい、としか言えませんわ」

 

「でしょー?」

 

「でも、どうしてそこまで早く済ませられんの?軍人かなんかじゃないでしょうに」

 

「あー、私達がいたからかな。私達が小さい頃ってお兄ちゃん、仕事から帰って来て私達のご飯作ってお風呂に入れてくれてさ。それ以外にも洗濯したり食器洗ったりしなきゃならないから、出来るだけ自分に使える時間を削ってたんだ。だからだと思う。一番簡単に削れるのがお風呂とご飯の時間だし。睡眠時間は仕事に影響出ちゃうから削れないだろうし。って言っても私、その時まだ赤ちゃんだったりすっごい小さかったから殆ど覚えてないんだけどね」

 

そうやって、一夏さんと世間話していると、本当に私がどれだけ恵まれていたのか分かる。

私には両親が居て、メイドや執事の皆が居て、待っていれば食事は出て来るしお風呂も沸かされていた。

 

少なくとも、鈴さんも箒さんもシャルロットさんも同じだったはず。

ラウラさんは、どうか分かりませんけど……。

 

確かに、小父様は今でも十分に若々しいし三十代半ばとは思えない方ですけど、顔や背中には織斑先生と一夏さんを育ててきた苦労が滲み出ているのが、私でも何となく分かります。

親として、兄として必死に働いて家事をやって。

 

そうやって生きて来たからこそ今の小父様がある。

 

 

 

そうやって、昔の小父様の話に花を咲かせていると箒さんとシャルロットさんが合流。

箒さんが思いの外、遅いのが意外でした。

 

一夏さんと鈴さんは、まぁ性格を考えると速いだろうなとは思っていましたけど。

それじゃぁ食堂に、となったところで小父様が帰ってきました。

汗で顔もTシャツもびしょびしょですが、こう、何と言うか艶めかしいと言うか。

 

これは、激レア小父様ですわ!

 

 

「ありゃ?お前らまだ飯食ってないのか?」

 

「今の今まで集合待ちしてたから」

 

「そうなのか。あ、この後IS動かせるか?無理そうだったら筋トレだけにするから正直に言ってくれていいぞ。無理して事故でも起こったらそれこそ大事だしな」

 

小父様は、嘘だけは付くなよ、と釘を刺してくる。

本当は即答でやれる、と言いたいのですがそれで怪我をして小父様に心配を掛けてしまう事を考えると正直に答えた方が良いですわね。

 

「うーん……、私はやれないことも無いけど、どうかなって感じ」

 

「足がガクガクです……」

 

「私も、少し厳しいかと……」

 

「私も流石にキツイよ」

 

「厳しいです……」

 

「ん、分かった。そんじゃ今日は取り敢えずIS使うのは無しだな。まぁ、筋トレはするからそのつもりで」

 

そう言うと、小父様は部屋に戻ろうとする。

あれだけ走ったのに、どうしてあんなに元気なんでしょうか。

やっぱり、基礎体力の違いってことですか。

 

「佐々木さんも一緒に行きませんか?」

 

「んぁ?いやでも、腹減ってるだろ」

 

「大丈夫ですわ。小父様ならば何時までもお待ちしますもの」

 

「そんならご一緒させて貰うかね。まぁ、十分ぐらい待ってくれれば終わるから待っててくれや」

 

そう言うと、小父様は部屋に戻りました。

 

 

 

 

「あれ、絶対に五分ルートだよ」

 

一夏さんがぽそりとそう言った通り、ものの十分で戻って来た小父様。

 

 

「いやぁ、待たせちゃって悪いな」

 

小父様が来て、一緒に食堂に行く。

既に寮には私達を含めて極々少ない人数の生徒しか残っていない。

普段は賑やかな食堂も、私達以外には数人の生徒と昼食を食べに来た先生が何人かしか居らず閑散としている。

 

「いやぁ、なんか静かだな」

 

「そりゃ私達入れても十人ちょっとしかいないんだから静かに決まってんでしょ」

 

「何時もは騒がしいと思うけど、こう、静かだと寂しいもんだ」

 

「それよりも僕お腹空いたなぁ。早くご飯食べようよ」

 

シャルロットさんのその一言で、皆で券売機に並ぶ。

夏休み中は生徒が少ないから、料理は頼んでから作られる。

何時もはたくさん作って置いて、それをよそる形だけれど、それだとこの少ない人数じゃ無駄になってしまう。

 

「そうですわね。さて、何にしましょうか」

 

「おばちゃん、俺スタミナ定食特盛りと冷やしうどん山盛り、麺固めで」

 

「あいよ~」

 

小父様はとっくに決まっていたのか、すぐに注文を終える。

 

「私は何にしましょう……」

 

「体力使って、この後も体力使うからしっかり食っとけよ。じゃねぇと持たねぇからな」

 

そう言う小父様は、コップに水を注いで行ってそれを六人分、トレーに乗せ近くの席に座る。

結局、私は鶏肉の甘酢ネギ炒め定食を普段は絶対にしない大盛で注文した。

 

小父様は受け取った食事を前にのんびり座っていますけど、私達の中では小父様の隣を奪い合う熾烈な戦いが始まっているのです!

 

 

どうにかこうにか小父様の隣の席を獲得したのは私と鈴さんでした。

 

悔しそうにしている箒さんや、ぶーぶー言っている一夏さん、黒い笑顔を浮かべているシャルロットさん相手にふふんと自慢してみるとより一層に悔しそうにする。

 

でも一夏さんはご実家に帰るとき、ずっと一緒なのですから良いじゃないですか。

 

 

 

 

 

 

「「「「「「頂きます」」」」」」

 

声を揃えて挨拶をした後に、ようやく慣れ始めたお箸で食べる。

 

「ん~……!美味しいですわ!」

 

「はっはっは、しこたま運動して腹減った状態で食う飯は旨いだろ?」

 

「はい!」

 

「あー、なんかすっごい体に染み渡る感じがする……」

 

今まで食べた事が無いほど美味しい食事を摂りました。

お陰でお腹が少し膨れて苦しいですけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼飯を食った後。

一時間ちょい休憩して、再び体操着に着替えて寮の前に集合する。

 

時刻は三時。

丁度一日で最も暑くなる時間帯だ。

流石に日向でやる訳にもいかず、全員で日陰に移動して筋トレをする。

 

「取り敢えず、もう一回準備運動からだな」

 

全員でもう一度準備運動から始める。

筋トレと言っても、今日は腕立て腹筋背筋と言った基本的な物しかやらない。

スクワットやっても良いんだけど多分、皆長距離走って足使ったから今日は無し。

 

それはそうと、全員髪の毛が長いんだけどそれを地面に付かない様に短く結んできているのがすっごい新鮮だった。

お陰でうなじとか丸見えです。ごちそうさまでした。

 

 

 

 

 

 

 

「準備運動終わったな。そんじゃぁ、今回も取り敢えずどれぐらい出来るかを見極めるんだけど……」

 

「だけど?」

 

「最初にやり方とか正しい姿勢を教えとく」

 

腕立て伏せ、腹筋、背筋のそれぞれの正しいやり方を教えてから回数を計り始める。

 

「まぁ、取り敢えず自分のペースで限界までやってみてくれ。二人一組で交代で回数図るから。そんじゃ準備開始」

 

その一言で、ぱっぱと腕立て伏せの姿勢を取り始める。

で、ここで予想外の出来事が。

 

一夏、箒、セシリア、シャルロットの四人って巨乳さんじゃん?

で、腕立て伏せしようとするとだな。

 

お胸様がとんでもない事になりやがるんです……!!

 

重力に従って地面に向かって行く胸は、そりゃぁもう柔らかそうな訳よ。

箒なんか地面に付いちゃってるし!

 

ん?あぁっ!?鈴の顔が!

絶望に染まって、目だけは怨念を放つような感じになっている!?

 

「鈴!正気を取り戻せ!」

 

「ハッ……。胸がなんだ……。脂肪の塊がどうしたって言うのよ……。あんなん浮き輪にすらなりゃしないわ……」

 

「止せ!それ以上自分で傷を抉り込むのは止めろ!」

 

「クソォ……!何で私だけちんちくりんとかロ鈴とか言われなきゃならないのよ……!」

 

「駄目だ!思ったより重症だ!」

 

鈴は、自分で言って自分で死ぬほど傷口を抉り広げている。

そして遂にはぽろぽろと泣き出す始末。

 

あぁもうこれ分かんねぇな!

 

 

 

 

「元気出せよ。世の中胸が全てじゃねぇだろ」

 

「グスっ……!そう言う洋介さんだって巨乳大好きじゃん……」

 

「あれ、なんで断定口調なの?おかしくない?」

 

「……違うの?」

 

「……いやまぁ、そうだけども」

 

「ほぉ”ー”らぁ”ー”!!!」

 

「すまんすまんすまんすまん!今のは俺が絶対的に悪かった!悪かったから鼻水垂れ流しで殴り掛かってくんな!」

 

必死に鈴を慰める。

と言うか、こいつ相当ため込んでたんだな……。

 

「でも鈴には胸無くても沢山色々持ってんじゃん。気にしなくても大丈夫だと思うんだけど」

 

「……例えば?」

 

「一番小さいのに一番かーちゃんみたい」

 

「ぶっ殺すわよ」

 

「なんで!?」

 

褒めたはずなのに、寧ろ機嫌悪くなっちゃったんですけど。

 

「私、洋介さんの母親になるつもりなんて更々無いんだけど」

 

「そう言われるとそれはそれでなんか悲しいわ」

 

「まぁ、奥さんなら良いけど」

 

「何言ってんだお前」

 

結局三十分に渡って鈴をひたすら褒め殺した。

お陰で鈴のご機嫌取りは大成功したんだけど代わりに他四人がむすっ、とし始めた。

いやもう、俺達何してんだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

で、漸く始める訳なんだけども。

改めて見ても凄い。何と言うか、凄い。

 

自然と目線を向けちゃうんだよ。

 

おぉ……凄い光景だ……。

 

「小父様、その、あまり見ないでいただけると……」

 

「洋介兄さん、見過ぎです……」

 

「すいませんでしたァ!!」

 

恥ずかしそうに、顔を赤くしてそう言ってくる箒とセシリアに取り敢えず土下座しておいた。

一夏とシャルロットはどういう訳かまぁお兄ちゃんなら良いよ、とか言い始めやがったので無視しておきました。

 

因みにこの光景は俺の脳裏にしっかりと刻まれてしまったのは言うまでもない。

寧ろこんなん忘れろって方が無理あるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、色々あったけど始めるぞ」

 

俺のペアはじゃんけんによりセシリアになりました。

 

「そんじゃ、よーい始め」

 

その合図で腕立てが始まる。

俺の予想としては全員連続で多分、40回出来れば良いかな、と思ってる。

 

いや、腕立てってちゃんとした姿勢でやるとマジで負荷が尋常じゃないぐらい掛かってやべぇんだよ。

 

 

 

まぁ、案の定俺の予想通りになった訳で。

 

「ん”ー”!!」

 

「ふぅ”っ……!くぅ……!」

 

「うぁ”ぁ”ぁ”ぁ”……!」

 

三十回を過ぎた辺りでだんだんと上がらなくなってきた一夏、セシリア、シャルロット。

顔を真っ赤にしながら必死に下げて、上げようとするけどピクリとも上がらなくなっている。

あー、これは全員終わりですね。

 

「はい終わり。見た感じもう無理そうだ」

 

「っはぁぁぁ!なにこれ!?腕立てってこんなにきつかったっけ!?」

 

「あぁぁぁ……。もう腕が上がらないよぉ……」

 

「うぅ、二の腕が……」

 

「いやぁ、まだまだですなぁ」

 

それぞれ引っ繰り返って呻いている。

それでも一夏は42回、セシリアは45回、シャルロット43回を記録。

 

うん、まぁ上出来っちゃ上出来だな。

取り敢えず、その回数をメモ帳に書き込んでおく。

 

いやもう、そんなことより全員普段と髪型違うし走ってた時とは違ってなんかやたらとエロく感じるんですけど。

これ、俺が居ていい空間じゃない気がするんだけどもう気にしない事に決めた。

 

「あーい、お疲れさん。そんじゃ交代してちゃっちゃとやるぞ」

 

「小父様もおやりになるのですか?」

 

「そりゃな。お前達にだけやらせといて俺だけやらんって訳にもいかんだろ。取り敢えず、見本見せてやるから見とけ」

 

肩と手頸をグリグリ回して、何時も通り腕立て伏せの姿勢を取る。

その両隣では鈴と箒がそれぞれ同じように姿勢を取っている。

 

「準備出来たか?」

 

「大丈夫です」

 

「行けるわ」

 

「よし、それじゃ限界来たらその時点で終了な。よーい、スタート」

 

俺の合図で一斉に始める。

何時もならセットで百回を五セットやってからまた腕立ての別メニューやるんだけど、今回はひたすら黙々と限界まで腕立てをすれば良いだけだから楽だ。

 

 

 

 

 

 

「ッァ”ア”!!」

 

あと十回で四百!!

どうにかして超えたい!

 

あと五回!

 

「ン”ヌ”ァ”ッ”!!」

 

あと二回!!!

 

 

「ウォ”ァ”ァ”!?!?ッシャァ!400回達成!!!」

 

どうにかこうにか、400回を記録。

 

「だぁぁぁぁ……」

 

「……ねぇ、アンタって何者なの?」

 

鈴がヤベェ奴を見る目で俺を見てくる。

え、腕立てしただけなのに酷くない?俺めっちゃ頑張ったよ?ちょっと褒めてくれてもよくね?

 

結果として箒が48回、鈴が47回。

意外や意外、箒がトップだった。

 

 

 

 

そのあとは腹筋と背筋をそれぞれ同じように俺がやり方や姿勢を教えてから実施。

 

腹筋

 

一夏     64回

箒      62回

鈴      76回

セシリア   61回 

シャルロット 69回

 

俺      340回

 

 

 

 

背筋

 

一夏     124回

箒      119回 

鈴      130回 

セシリア   110回 

シャルロット 112回

 

俺      520回

 

 

 

背筋は運動をしている奴なら意外と皆100回を超えられるんだがそこからが辛い。

腹筋に関しちゃ、千冬みたいにうっすらと割れている訳じゃ無いからしょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

「よし、今日は取り敢えず終わりだ。ストレッチやって解散するか」

 

ストレッチを全員でしっかり、全身くまなくやっていると一時間近く経っていた。

気が付いてみれば、三時間近く経っている。

既に六時を過ぎていて空は夕日でオレンジ色。

 

「あー、すっごい疲れた……今日すっごく気持ちよく寝れそう……」

 

「そうだな……。こんなに運動したのは初めてだ」

 

「私も、全身プルプル震えていますわ……」

 

「と言うか、佐々木さん凄いよね」

 

「あんだけ私達以上にやって平然としてる洋介さんがおかしいのよ。凹む必要無いわよ」

 

口々に疲れただの、俺がおかしいだの言っている。

ひでぇなぁ。俺、皆にかっちょいいとこ見せる為に頑張ったってのにさ。

 

 

 

そのあと、それぞれ汗でびしょびしょになったからシャワーを浴びて。

まぁ、一夏達は大浴場に行ったんだけど俺は使えないからシャワーだ。

 

また、ホールに全員で集合して晩飯。

 

「美味しかったー!」

 

一夏はさっきまでの様子が嘘みたいに元気そうにしているが多分、明日になれば筋肉痛で地獄を見る事になる。

いやぁ、楽しみだぁ!

 

ここに居る五人が筋肉痛でヨタヨタ歩いてるのを想像するとなんか、笑える。

 

「よし、明日から本格的に始めるけど今日はさっさと寝る事。じゃねぇと冗談抜きで明日、起き上がれなくなるからな」

 

「「「「「はい」」」」」

 

「そんじゃ解散」

 

「ねーねーお兄ちゃん、後で部屋に行って良い?」

 

「お前俺の話ぜってぇ聞いてなかっただろ。今日はサッサと寝ろって言ったじゃん」

 

「えー、でも寝れないよ?」

 

「いや、絶対布団に入ったらスマホ弄ることも無く寝れる。断言するぞ」

 

多分、今日の一夏達の疲れって言うのは本人達は自覚していないが所要量を絶対に超えている筈だ。

寧ろ超えていてらわないと困る。

 

「一回ぐらいトランプとかやろうよ。そしたら大人しく帰るから」

 

「……一回だけだぞ」

 

こうやって、OKしちゃう辺り俺って甘いんだろうな。

多分、トランプ一回すら出来ずに寝落ちすんじゃねぇかな?

 

「それじゃ、皆お兄ちゃんの部屋に集合ね!」

 

そんなわけで全員俺の部屋に集合したんだけど。

 

 

 

 

 

「こいつら全員寝落ちしやがって……」

 

案の定、俺の予想通り五人共ぐっすりとトランプを手に持ったまま爆睡している。

マジどうしようかな……。

しかもまだ八時なんだよな。これ、下手に部屋に送り届けたら要らぬ噂が立つぞ。

だけどこのままにしておいてもそれはそれで、帰って来た千冬に何言われるか分かんないしな。

 

「まぁ、そん時に考えりゃいいか」

 

取り敢えず、全員に毛布掛けといて俺はトランプの片づけをする。

すると、ドアを開けて入って来たのはお仕事が終わった千冬だった。

 

「お、お帰り」

 

「あぁ、ただいま……待て、何故そいつらが居るんだ?」

 

「朝早くから鍛えてくれって言うから扱いて、一夏がトランプやろうって言うからやってたら終わる前に全員寝落ちした」

 

「……一夏ならまだしも、箒やオルコット達もか」

 

「まぁ、今日は相当追い込んだからな。しょうがないっちゃしょうがない。で、問題なんだけどさ」

 

「言わなくても分かる。どうやって部屋に送るか、だろう?」

 

「さっすが千冬、良く分かっていらっしゃる」

 

「まぁ、二十年近く一緒に生活しているから。それで、どうする?」

 

「どうする、とは?」

 

「送り届けるか、このままここで寝かせておくか。どちらかだろう?送り届けるとなったら兄さんはこいつらを抱えて行かなければならないしここで寝かせておくとなるとベッドは全部占有される事になる。ま、兄さんとしては美人に囲まれて嬉しいだけだろうが」

 

「それ言う必要ある?」

 

「それで、どっちにする?」

 

千冬さん、なんか楽しそうな顔でニヤニヤ笑っておられる。

何が楽しいのか分からんけども、まぁ楽しいのならそれはそれでいっか。

 

「どっちも何も、送るしか無いだろうよ。流石に床で寝るのは俺としちゃ勘弁願いたいからな」

 

「それなら、手伝おう。部屋番号は分かるか?」

 

「分かりません」

 

「だろうと思った。付いて行くから兄さんは運んでくれ」

 

「りょーかい」

 

千冬はマスターキーを持って、俺は一人ずつ運んで行く。

千冬には鍵を開けて貰わにゃならんし、人一人を抱えている状態じゃ流石に無理だろう。

 

五往復程度余裕に決まってんじゃん?おじさんだぞ?

 

 

 

因みに鈴は片手で十分でした。

 

 

 

 

運び終えた俺達はそのあと、自室でのんびりとしながら今日の話をした。

すると、どうやら千冬の闘争本能と言うか、何と言うか、久々に思いっ切り運動したいって欲が膨れちゃったらしく、今度千冬と一緒に運動する事になりましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







……なんでただ走って筋トレやるだけの話がこんなに文字数多いんですかねぇ。
汗だく美少女、エロいからだね、仕方ないね。





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