おじさん、今年で36歳になるんだけれども 作:ジャーマンポテトin納豆
ほんと、マジ最近サブタイ思い付かなくなってきたぞ……。
サブタイにイベントあるとか言ってるけど、多分次回になる、かも?しれない。
早いもので、夏休みに入ってから十三日が経った。
今日はセシリアが日本に戻って来る日で鈴が中国に帰る日だ。
朝早くにセシリアが空港に戻って来て、すぐに連絡が来た。
今日か明日にでも、会いませんか?と。
イギリス土産を買って来てくれているらしく、それを渡したいのだそうだ。
勿論俺としては断る理由も無いから、そんじゃ昼飯食ったら学園で会おう、ってことになった。
それまでは俺は相も変わらず自宅でのんびりしつつ、好きなように過ごしていた。
今日も今日とて、旧友?と言うか一夏の同級生と言うか悪友のガキンチョに会いに行く予定なのだ!
っつっても連絡が出来ないからサプライズみたいな感じになっちゃうけど。
まぁ、五反田食堂って言うこの辺りじゃ有名な大衆食堂があってですね。
そこに昼飯食いに行くだけなんだけどさ。
そこの長男が一夏と鈴と同級生で、小中とまぁ手を焼かされたもんだ。
今じゃ結構落ち着いてるんだが、こう、ちょーっとばかしモテようと必死過ぎて逆にそれが空回りしてんだよなぁ……。
あいつ、おじさんと違って顔は良いんだから普通にしてちょっとばかし落ち着きゃモテると思うんだけどどうにも無駄な努力をしちまうらしい。
もう一人、御手洗数馬って言うやつもいるんだけど、どうにもこいつはこいつで世俗から離れた爺さんみたいな感じだな。
弾ほどじゃぁないがそこそこ整った顔してて落ち着いているから意外とモテる。
あと、弾の妹の蘭だな。
こっちもこっちで容姿に関しては弾とよく似てる。もっと言えば弾よりも整っているんだけど。
たーだな、ちょっとばかし男勝りと言うか、兄貴に対して後ろから手加減しているとはいえドロップキックやら飛び蹴りを食らわせるぐらいのワイルドガールだ。
目上に対してはちゃんと礼儀を持って接するんだけどね。
それを言ったら我が家の千冬と束も相当なワイルドガールってことなんだけどそこは気にしてはいけない。
女に対してがつがつしてる兄貴の事が嫌らしい。
妹とはいえ女視点から見るとやっぱりそう見えるってことだ。
弾よ、妹にアドバイス聞いてみたら?……いや、キモイと言われて終わりそう。
「二人とも元気かな?」
「あいつらが元気じゃないところを想像する方が難しいだろ。どうせ高校でも中学と変わらずバカ騒ぎしてんだろうさ」
「そっかなー?厳さんは多分元気だろうし」
「あの人なぁ……。なんであんな元気なんだろうな……」
五反田厳。
御年87歳を数えるお年寄りなのだが、見た目は20歳ぐらい若く感じる。
浅黒く焼けた肌に、中華鍋やでっかいフライパンをぶん回しているから筋肉モリモリ。
ただ礼儀とかにはめっぽう厳しくて食事中に話そうものなら黙って食え!と怒鳴られる。
本人的にはお玉とかぶん投げたいらしいが流石にやらない。
ぶん投げる用のお玉があって弾にはやるけども。
ただし、弾の妹の蘭には滅茶苦茶甘い。
喋っても多少なら許されるし。
俺の周りのお年寄りは無駄にエネルギッシュで元気過ぎる人達ばっかりなのは気のせいじゃないと思うんだよなぁ。
取り敢えず、行くとしますか。
久々に業火野菜炒めでも食べたい気分ですしね。
因みに千冬は篠ノ之道場の方に顔を出して来ると言って朝早くから出掛けてった。
今頃、門下生達相手に百人組手やってんじゃねぇかな?
「こんちわー」
「いらっしゃい!……おぉ!?兄貴じゃないっすか!」」
「その兄貴呼び止めてくんないかなぁ。なんか小っ恥ずかしい」
「いや、兄貴は兄貴でしょ?」
「今に始まったことじゃねぇからもういいけどさ」
「それにしても急に来たんですね。どうしたんです?」
「いや、あの騒ぎ以来連絡取れてなかったしな。家にも諸々の事情で帰れないし、夏休みってことで良い機会だから知り合い達に顔出ししてんのよ」
「あー、確かIS学園って夏休みと冬休みしか長期休暇無いんしたっけ」
「おう、土日とかの休みはあるけど殆どISの貸し出し申請通ったら乗り回したり次の授業の予習したりしてる子も多いからな。実質的な休みは夏休みと冬休みぐらいなもんだ」
「はぇー、俺だったら絶対無理っすわ。兄貴は大丈夫なんすか?」
「お前、これでも一応ISの開発手伝ったりしてたんだぞ?ISの知識はそこそこある。問題は普通の勉強の方だな」
「IS開発に携わったとか初耳なんすけど……。まぁいいや。下手に聞くとどうなるか分かんねぇし。IS学園、偏差値めちゃめちゃ高いっすもんね。75越えとかどうしたらそんな勉強出来るのか俺には不思議でしょうがないっす」
「分かる。高校の時はそんなもんなんだよ。でもマジ勉強しといて損する奴は絶対に居ねぇから弾もやっとけよ」
「これでも学年30位には入ってるんすけどね」
久しぶりの男同士の会話とあって弾む弾む。
IS学園に入ってから、男同士で会話した記憶って殆どない。
と言うか、一回も会話してないんじゃないか?
それを考えると、やっぱし妹達との会話も楽しいんだが気兼ね無く会話出来るのはやっぱり男同士だな。
「そんで、厳さん達は?」
「今は厨房に居ますよ。今日は休みってのもあって客入りはまばらなんで多分手隙だとは思うっすけど」
「おい弾!なにやってる!こっち来て手伝え!」
「……お呼びがかかったんで、ついでに呼んできます」
「なんか悪いな」
「いや、もう我が家での肩身の狭さが半端無いっす。早く一人暮らししたい……」
そう言いながら厨房に入っていく弾の背中はどこか煤けていた。
もう、俺は強く生きろよ、としか言えなかった。
やっぱり俺って家庭環境恵まれてるんやなって……。
ちょっと、最近マジ千冬達の目が怖いんだけどさ。完全に獲物を狙ってる目だ。そしてビビる俺は狙われるウサギか。
……おっさんのバニーとか最悪やんけ。こんなこと考えるんじゃなかった。
と言うか冗談抜きで最近、どうにかして外堀を埋めに掛かって来てる気がすんのは気のせいじゃないと思うんだよなぁ。
大坂夏の陣みたいに堀全部埋められた後じゃ洒落になんねぇぞ。どうにかして防がないと……。
最悪本丸さえ落とされなきゃ大丈夫なはずなんだよな……。
いや、ISで殴り込んでくるから意味無ぇわ。
俺なんて刀と槍、火縄銃しか持ってないんだから勝てる訳ねぇじゃん。蹂躙されるのがオチだな。
目指せ大阪城(俺)近代化。
目標はデス・〇ターとかイゼ〇ローン要塞だな。
弾に俺が来ていると言われて、厳さんが食堂から顔を出す。
俺の顔を見ると、驚いたような表情をするがそれも直ぐに嬉しそうに笑って俺の座っている席の対面にドカッ、と腰を下ろす。
「おう、二人とも久しぶりだな」
「こんにちわー」
「元気そうだな」
「そりゃ勿論!あ、蘭居ます?」
「おう、二階に居るぞ」
「ありがとうございます」
そう言うと、一夏は慣れたように五反田家の階段を駆け上がっていった。
「お久しぶりです。連絡も何も入れずにすいませんでした」
「なーに、気にすんな。ISってのがどれぐらい凄いのか分からんが、ニュースになるぐらいの事だったんなら仕方ねぇさ」
この人は、食堂で朝から晩まで腕を振るっているもんだからあんまりニュースとかを見ない。
だから世俗に割と疎い面もあるんだが、そんな厳さんでも知っているぐらい俺の起こした騒ぎは大事だったらしい。
「そう言ってもらえると有難いです」
「それで、今日はどうした?学校に通わせられてるとかなんとか聞いたが、学校辞めたんか?」
「違いますよ。連絡出来なかったから夏休みなんで顔でも出そうかと思いまして」
「それなら電話の一本でも寄こせばいいだろう」
「まぁ、それも色々と事情がありまして。こちらから電話を掛けられないと言うか、政府から掛けるなって言われてまして」
「ほーん……。それなら仕方ねぇな。飯、食ってくんだろ?」
厳さんはそう言うならそうなんだろう、と頷いてくれる。
今現在、俺の連絡手段と言うのはスマホなどがあるんだが、誰彼好きに電話を架けたりできる訳じゃ無い。
機密保持とか、要人保護の観点から。
下手に知り合いがバレると、最悪その人を人質に取られたり、何を要求されるか分かったもんじゃないからだ。
まぁ、今日ここに来たのは近所の食堂ってことで、知り合いだとは勘付かれにくいだろうし、精々顔見知り程度にしか思われないだろうと思ったからだ。
しかも好都合な事に昼時だと言うのに今日は休みってのもあって客は俺と一夏しかいないから、普通に話しても問題無い。
つけられたりもしていないようだし、もしそうだったら俺の護衛に就いている誰かさん達がとっくに対処済みだろうさ。
「はい、食べていきます」
「それじゃ、何時もので良いか?」
「はい、お願いします」
「よし、任せとけ。久々に顔出したからな、今日は俺の奢りだ」
「ありがとうございます」
「一夏も何時もので良いか?」
「はい、大丈夫です」
「そんじゃ少し待ってろ。今作るからよ」
そう言って厳さんは厨房に入っていく。
相変わらず、元気そうで何よりだ。あんなに背筋が伸びててハキハキ喋って歩ける87歳なんてそう居ないだろ。
一夏は多分、二階にいるであろう蘭の所に行っちまったし食堂に居るのは俺だけってことだ。
うーん、なんか久々で凄く懐かしいと言うか。
こうして五体満足で今まで日常を送っていた所に戻って来られると言うのは物凄く感慨深い。
だってさ?IS動かしちゃって解剖されんのかな!?とかビビってたら、そっから怒涛の学生生活よ?しかも2回ぐらい命懸けと言うか死にかけたような出来事すらあったし。
半年で2回も死にかけるとか、平和な日常で有り得んだろ。
いやもう平和な日常とか言えないけども。
それを周りの手助けアリで乗り越えて、顔馴染み達に再び会えるってのはなんとも言えない感じだ。
暫くすると、一夏が蘭を連れて降りてくる。
「お久しぶりです、洋介さん」
「おう、元気してたか?」
「はい、そりゃもう元気です」
「そんならいい」
「それにしても、色々と大変でしたね」
「んー?なんのこっちゃ?」
「ほら、VTシステム関連の事件とか色々。連日ニュースで大騒ぎしてて。つい最近もまた死にかけたってニュースになってましたよ?」
この子はこの子で優秀だからな。
ニュースなんかで得た情報を自分なりに分析したりしたんだろう。
兄貴は家が近いっつう理由で藍越学園に通ってるが、蘭は遠くの女子校に通ってる。中高大一貫のお嬢様学校らしいんだがそんな学校で生徒会長を務めてる。
中等部と高等部で生徒会が分かれて、それぞれ自治組織としてやってるってんだからスゲェよ。
俺は集会とか話聞かないで寝てるタイプだったからね。
しょっちゅう先生に怒られてましたよ。
いやだって、どいつもこいつも同じ話ばっかしやがるから飽きるんだもん。
校長の話とか最初の1分すらまともに聞いたこと無いわ。20分ぐらいエンドレスで同じ話を繰り返すんだぞ?正気の沙汰じゃねぇ。
「あー、あれなぁ……。いや、マジこの年齢のおっさんに起きる出来事じゃねぇよ」
「お兄ちゃん、無茶ばっかりするんだもん。気が気じゃないよ」
「しょうがない。戦える奴が限られてんだからあの学園で最年長の俺が出るしかねぇだろうよ。子供に戦わせられるか」
「それで怪我したら元も子も無いと思うんですけど……」
「ま、五体満足で生きてんだから良しとしようや。やらかしてくれた奴らは絶許だけど」
なんて会話しつつ、昼飯が出来るのを待つ。
すると、厳さんの腕を振るった最高に旨い業火野菜炒め定食と、一夏の大好きなカボチャの甘煮定食を持って来る。
「お待ちどう!」
特盛のご飯と、これまた多めの野菜炒め、それと味噌汁に漬物。
野菜炒めの中には肉が一欠けらも入っていないんだけど……。
「っあ”ぁ”!旨い!」
これだよこれ!これが最高に旨いんだな!
野菜しか入っていないけど、炒めているのにシャキシャキだし、良い感じにコショウと醤油が効いている。
厳さんの作る野菜炒めは塩じゃなくて醤油を使って、ついでにちょっとばかしとろみがあるタレがかかっているもんだから最高よ。
「んまー!やっぱりこのカボチャの甘煮が一番だよ!」
一夏も一夏で、カボチャの甘煮を口に放り込みながらご飯と共に食べ進めていく。
この五反田家のカボチャの甘煮って、普通のと比べると滅茶苦茶甘いんだよな。
チョコレートとかの菓子を食ってんじゃないかってぐらい甘い。
嫌いって訳じゃないんだけどさ、ご飯に合わねぇんだよなぁ……。
単品ならヒョイパクヒョイパク行けるんだけどね。
それから昼飯を食い終わって。
「IS学園に行きたい?」
「はい」
「ほーん……。まぁ好きにしたらええんでねぇの?」
「……えっ!?止めないんですか!?」
「いやまぁ蘭が行きたいってんなら、止めはしない。別に止める権利は親でも無いから俺には無いからな」
態々聞いてくるってことは、一連の事件の事を聞いてどうすべきか迷っているんだろう。
俺だったら絶対に行きたくないもんだけど、どうしても行きたいっつうんなら、止めはしない。
「そもそも蘭はIS適正とかあんのか?」
「えぇまぁ、一応Aでした」
「凄いじゃん!」
「それで、適正Aだとどうなりますか?」
「そうだね、国家代表目指したいって言うなら今から死ぬ気で勉強して国家代表候補生教育課程を受験して合格すればまぁ、ギリギリ国家代表候補生になれる、かな?って感じかな?専用機は貰えないと思うけど」
確か、一夏が国家代表候補生教育課程を受けて合格したのって中学一年夏だったな。
そんで一発合格して、必死こいて訓練して三年生に上がった頃に専用機を渡されたんだったな。
「今から、ISの勉強をして受かれば、って相当厳しくないですか?」
「そうだね。もしIS学園に行かないんならエスカレーター式?だから受験勉強時間はあると思うけどIS学園に行きたいならどっちかになると思うよ。流石にどっちもは無理かな。まぁどっちも受かりそうな人は何人か知ってるけど」
「えっと、因みに受かりそうなのって……?」
「千冬姉と束さん」
「あー……」
その辺の話は俺よりも一夏の方が詳しいから説明を全部任せた。
で、国家代表候補生教育課程とIS学園の受験をどっちも合格しそうなのが居るって話で、千冬と束の名前が出て来た瞬間に蘭の顔がそりゃ受からねぇわ、って顔になった。
うん、俺もそう思う。
束が凄すぎるから忘れがちだけど、千冬も身体能力は言うに及ばず、勉強の面でもチートなんだよ。
束がチートを軽々飛び越えてるってだけで千冬だってその気になりゃ大学は私立公立国立問わずどこでも選び放題だったんだ。
ISの登場でパイロットになって国家代表にまで上り詰めたから進学はしなかったんだけど。
「とにかく、どっちを取るか、だな。束ならまだしも千冬でも勉強せんとどっちも受からんだろうからな。あんまし言いたくねぇけど蘭は受からん。断言出来る。どっちかなら多分、受かるだろうけど」
「やっぱりそうですよね。あ、国家代表候補生教育課程を受けて普通の高校に進学してからIS学園の編入試験を受けるって言うのは?」
「いや、これも断言すっけど編入試験とか受からんと思うぞ」
「うん、私も受からないと思うよ。と言うか編入試験受けて合格するんだったらめっちゃ勉強して両方合格をワンチャン狙えばいいと思う」
「え、そんなに難しいんですか?」
「そりゃぁお前、難しいに決まってんだろ。鈴居るだろ?」
「えぇまぁ」
「あいつが、しこたま勉強キメて漸く受かるぐらい難しい」
「そんなに!?」
蘭の中での鈴と言うのは天才のイメージがあるんだろう。
事実、鈴は相当頭が良い。
俺の妹×2がぶっ飛んだぐらい頭良い奴ってだけで、世間一般で言うと俺の周りは頭良い奴で溢れてんだよ。
シャルロットも編入試験を受けて僅差で落ちてるとはいえ、鈴が居なければ受かっていたぐらいには頭が良い。
その二人が、編入の為にだけ勉強をしたってんだから、どれだけ難しいかよく分かってもらえるだろうか?
IS学園の試験が難しいのは当然だ。
IS学園ってのは各国の代表候補生が集まっているもんだから、当然と言えば当然だけど国家機密がISの機体、情報、などありとあらゆるものが集まってくるんだ、入学試験も厳しくなるのは当たり前、編入試験がもっと厳しくなるのはもっと当たり前という事である。
入学試験の中には、当然身辺調査と言うものが入っている。
スパイしようとしていると、はい君駄目ねー、ってことでどれだけ成績が優秀だったとしても速攻で弾かれる。
あの学園、内側からするとそう感じたりしないんだけど、外側から見るとマージで警備がガチガチなのだ。
そりゃ警備システムを構築したのが束なんだから、束自身じゃなきゃ突破出来ないぐらいの固さである。
国ぐるみで挑んだとしてもお手上げな訳である。
そうなると内側から探るしかないんだけど、これまた突破が気が遠くなるぐらい難しい。
IS学園は、その性質上諜報能力が高い。
政治能力は国家相手にうーん、まぁやり様によっては何とかなるかな?ってぐらいでそこそこなんだけどな。
諜報能力だけは高い。
個人的意見としては時折俺の護衛に就いてくれているあの、生徒会長さんが怪しいと思う。
なんかよく分からんけど、あの子多分堅気の、表側の人間じゃないと思うんだよね。いやだって、気配の消し方とかそう言うのが全然違うんだもん。
身のこなしも、相当だぞ。
暗殺関係?それとも諜報関係?のどちらかに特化した人間であることは間違い無い、と思う。
もしかすっと、両方かもしれない。
まぁどうせ機密だろうから俺には知りえない事なんでね、どうでも良いけど。
と言うか今は俺が居るってことで束がガッチリガードしてるもんだから、百%潜入とか無理だからなぁ。
特に編入ともなると、十中八九疑われる。
しかも俺の知り合いってことで、普通ならそれで済ませるんだけどそう言う職業の人間は裏があったりすんじゃねぇかって疑って掛かるもんなんだよ。
そうなったら蘭は普通よりも書類審査だけでも難易度が爆上がりする。
まぁ、ちょとばかしワイルドな所を除けば、良い子なんだけどね。
俺が幾ら言っても、審査する側が千冬と束込みだもんなぁ、千冬は蘭の事知ってるしそれなりに仲良いけど兄さんの事だ、それは別問題だろ、っつって厳しいだろうしな。
そうなったら俺には、もうどうしようもない。
世の中、どうにもならない事って割と結構あるもんなんだよ……。
ついでに言うと、女尊男卑思想を持った奴も弾かれる。
IS学園って思ったよりも女尊男卑思想が全く入って来ていないんだよね。
女尊男卑思考の奴って、下手な右翼とか左翼よりも過激なんだもんな、ISなんて持たせたらマジでどうなるか分からんぞ。
下手すると、女権団+それに迎合する連中VS世界各国、みたいな第3次世界大戦始まり兼ねないんだよ。
なまじっか、地味に権力あるやつが女権団には数いるから厄介なんだよ。
国が内部分裂したりして内戦起きかねないし。アメリカロシア、中国でもその危険性があるんだからね。
ロシアには、ウクライナとかその辺の問題で不満抱えている連中も多いし、アメリカはアフガニスタンとかその辺で火種抱えてて今でもドンパチ中、中国はウイグル自治区とかあの辺りがヤバイからな。
裏で色々糸を引いて、争わせればいいだけ。
ロシア、中国は強引な手段も反発アリとはいえ取れちゃうけど、アメリカはそれなりに面倒な輩も多いからな。日本なんかは特にそうだぞ?内戦起きてんのに平和主義(笑)とか人道(笑)を叫んでとかで政権奪取されかねんし。
そうなると、実質的に女尊男卑が政権を握るってことだ。
どうなるかは丸わかり。
黒人奴隷とか、でも真っ青なレベルの極悪非道な所業が横行すんぞ。
男は問答無用で処刑、女も従わないんなら処刑、みたいなレベルの法律しかなくなる可能性すらあるんだぞ?
そりゃCIAとかMI6が裏でテロリスト認定するわ。
こんな世の中だから、大手を振ってテロリストって言えないけどな。
機会さえありゃ、虎視眈々と女権団消そうぜ、ってなってるらしいし、そう遠くない内に女権団とそれに関わる連中が軒並みとっ捕まるだろ。滅茶苦茶ヤベェし。
シャルロットの継母もそうだけど、自分の意見が通らないと何でもやって良いって言う、幼児でも真っ青の思考してっからな。
特に、俺が入学してから今までも厳しかったけどもっと厳しくなった。
今までは女尊男卑思考だろ?カエレ!ニドトクルナ!ってだけだったけど、今じゃ警察、それも公安警察に渡しちゃうからね。
ま、そんな話は全部捨てといて。
とにかくIS学園ってのはその辺の審査とか警備を丸っきり全部抜きにして、試験だけで考えても編入試験を合格するのは相当厳しいとしか言えないな。
それ考えると鈴ってよく編入試験なんざ受かったよな。
中国政府から絶対俺の情報持ってこいとか言われてたはずなのに。
んー、でもその辺割と嫌がりそうではあるよな、鈴って。
「もし受けるってんならどっちかに注力した方がいいぞ。ま、俺が生きてる内はIS業界は物騒だからあんまし勧めらんねぇけど。実際俺、二回死にかけたし。それに巻き込まれて、千冬ですら一歩間違えれば良くて大怪我、最悪死んでたからな。正直言っちゃうとあんまり行ってほしくないし。そんな状況に巻き込まれかねないけど、それでもどうしてもISに乗りたいってんなら止めんけどね」
俺がそう言って締めると、蘭は考えるように黙った。
「その辺しっかりと考えた方が、後悔したり絶望しないと思うぜ。結局は蘭の意思次第だけどな」
「分かりました。ちゃんと考えます」
「おう、そうしろそうしろ」
なんか、重い雰囲気になっちゃった空気を吹き飛ばす様にケラケラ笑ってやる。
幾らか明るそうな雰囲気になったところで、俺はセシリアとの約束があるもんでね、そろそろ帰りますかね。
「それじゃ、俺はこの後用事あっからそろそろ帰るわ」
「あ、それじゃ送ります。お兄!洋介さん帰るってー!」
「えー!?もう帰るんすか!?」
弾は厨房からドタドタと騒がしく出て来る。
「もう少しゆっくりしてってくださいよ」
「いやね、ちょっとばかし約束あるもんでね。相手が女性なもんだから遅れちゃ申し訳ないだろ?」
「え!?兄貴遂に千冬さん達を説得して彼女作ったんすか!?」
「違う違う違う!あんまし一夏の前で下手な事言うな馬鹿!」
「あ、すんません」
「IS学園での、同級生?クラスメイト?」
「なんすかそのフワフワした感じは」
「いや、なんて言えば良いのかよー分からんのさ。小父様小父様って言って懐かれてるっちゃ懐かれてるんだけど、懐かれてるとはなんか方向性が違う慕われ方してる気がすんだよなぁ」
束レベルでドストレートに好意をぶつけて来てくれると、そっちの方が分かり易くていいんだけど。
鈍感って訳じゃないんだけど、こう、俺の中で女性関係は兎に角ホイホイしちゃ駄目、慎重に行け、って言う鉄則があるんだもん、そりゃそうよ。
この女性関係はホイホイしちゃ駄目って鉄則を得たのが、妹達による教訓ってのが悲しいところだけども。
それは別にいいや。
「ってことで、俺は一旦家に帰ってIS学園に行かにゃならんからこれでお暇させて貰うよ」
「そう言う事なら、しょうがないっす」
「最後に厳さんに挨拶だけして帰るか」
本当は弾と蘭の母親の蓮さんにも挨拶したいんだが、今日はどうやら居ないようなのでまた来た時だな。
一通り挨拶を済ませてから、一夏はまだ色々話したいっつって五反田家に残った。
その時、
『お兄ちゃん、ちゃーんとあとで話聞かせて貰うからね?』
と脅されたのは何時もの事なのでもう気にしないったら気にしない。
それから、五反田食堂を後にしてIS学園に向かう。
と言っても、自家用車とかじゃなくて普通に護衛付きの送迎車で駅まで送って貰ってIS学園行きのモノレールを使うんだけど。
IS学園って、レゾナンス駅って言う、レゾナンスにある駅とIS学園を結ぶモノレールが通ってんのよ。
勿論、使用するのはIS学園生徒と教員だけで、それ以外の機材搬入とかは全部搬入用の片側5車線とかいうアメリカのハイウェイみたいな馬鹿デカい橋を通るんだけど。
俺はこの橋をISハイウェイと呼んでいる。
そう言う訳で、モノレールを使えるのは生徒と教員だけ。
セキュリティも束印のガチガチ固め。
生徒それぞれにIDカードが渡されてて、そのIDカードを駅の改札みたいなのにピッ、とタッチするのだ。
そうする事で乗ることが出来る。
このカード、偽造出来ねぇし改札には明らかに只の警備員じゃないだろ、って感じのガチムチの男数名が警備してっから侵入しようもんならアッサリお縄につくことになる。
ISハイウェイもしっかり警備員に加えて監視カメラとかもあるから侵入するってなると、警備員の詰め所を吹き飛ばして突破しなけりゃならん。
けども目の前にあるのはISを扱う事に特化した学園で、当然先生方はそう言った非常時の際はISを装備し、鎮圧する事が許可されている。
ただし、内部での問題に関してはISの使用は一切禁止。例外として武器を扱った相手である場合のみ。
と言う訳で二週間?ぶりぐらいのIS学園。
やっぱりと言うか、みーんな里帰り中だからガランとしてる。
取り敢えず、セシリアとの待ち合わせ場所であるセシリアの部屋に向かおう。
ガッツリ半袖短パンの私服だけど、別に平日の授業がある日でもなけりゃ怒られたりはしないからな。
外は相変わらずクッソ暑いもんでね、一日外で立ってるだけで痩せられるんじゃないかと思うぐらいには暑い。
で、そんなこんなで一年生寮のセシリアの部屋の前に。
「セシリア、来たぞー」
『入って下さいな』
その声がしてから、ドアノブを捻って入る。
すると、セシリアのほかに何故かもう一人、赤髪のメイド服を着た女性が。
おや?おやおやおや?おやおや?
誰ですかい、あーたは。
「えーっと、久しぶりだな、セシリア」
「はい、お久しぶりです小父様」
「んで、そちらはどちら様?」
「彼女はチェルシー。我がオルコット家の筆頭メイドです。私からすると姉の様な存在でもありますわ」
「ご紹介に預かりました、オルコット家で筆頭メイドをしております、チェルシー・ブランケット、と申します」
「あー、なるほど理解した」
「お早いご理解、ありがとうございます」
あれだな、セシリアん家はイギリスでも有数の貴族様だからな。執事やメイドの10人20人居るのは普通だろ。
でっかい屋敷とか庭を持ってそうだし。
んで、件のブランケットさんはと言うと。
物腰は柔らかいかんじ、ただ隙が無いって感じだな。
多分、護衛とかそう言うのも兼ねてんのかな?戦闘メイドみたいな?
え、何それかっこよくね!?ちょっと憧れちゃう……。
「あー、でそのブランケットさんはどうしてここに?」
「チェルシー、で結構です。佐々木様含めたご学友、ご友人の方々の為にお嬢様がご購入されたお土産を運ぶのをお手伝いしておりました」
「そんなに買ったんか」
「自家用ジェットが割と詰め詰めになるぐらいには」
「さっすがお金持ち、自家用ジェットってとこの方が驚きだぜぇ……」
「それと、お嬢様の恋心に発破をかけよムグッ」
「おほほほほ!チェルシーったら変な事を言いますのね!」
何か言いかけたチェルシーさんの口を慌てて塞いで何やら部屋の隅、と言うかお土産で溢れた部屋の影でコソコソなにやらお話中。
「ちょっとチェルシー!」
「なんでしょうか?」
「下手な事言わないで下さいまし!」
「え?佐々木様の事をお慕いしているのでは?」
「な、ななな!?」
「だって電話でも、今回の帰省中も延々と佐々木様のお話を聞かされていた使用人一同、気が付いていない者は居ないかと。と言うか、寧ろあれで気が付かない方がおかしいのでは、とすら思います」
「いやー!?全員に気が付かれていましたのー!?」
「見た感じ、想いをお伝えする勇気も無さそうでしたのでこの際もう延々と聞かされるぐらいならば発破を掛けてしまってそのまま一発かまして、かっ飛ばしてゴールイン!となってくれた方が我々としてはお見合いの話を断る口上を一々考えなくて済むので楽なのですが」
「このメイド、主人の恋心をそんな言い方しやがりましたわ!」
あんまりよく聞こえないけどなんか結構盛り上がってるね。
いやそれよりも、さらっと自家用ジェットって言ってるけど凄すぎない?
この感じだとクルーザーの一隻二隻持っててもおかしくなさそう。
セシリアマジパナイ。
「それなら、今度小父様も一緒に乗りましょう?冬休みにでも遊覧飛行すればいいですわ」
「おっほう、お誘いが庶民感覚からするとぶっ飛んでやがるぜ」
「お嫌ですか?」
「いんや、そん時は喜んで行くよ」
自家用ジェットで遊覧飛行しましょう、とかいうとんでもすんごいお誘いされたけど、まぁ断る理由は無い。
俺としては、別にやばそうとか危険そうじゃ無けりゃ大丈夫。セシリアの事は信頼してるしねぇ。変な事はしないだろ。
「チェルシー、ありがとう。それじゃぁ、また冬休みに」
「はい。それでは佐々木様、失礼致します」
そう言って、チェルシーさんは帰って行った。
そんでもって、二人きりになった訳だけども。
なにやらセシリアさんのご様子がちょーっと何時もと違うっつうか、こう、色々考えてなんか決意して、やっぱり萎えて、を繰り返しているような?
あれだ、エロ本初めて買う男子中学生みたいな感じ。
女性にこの例えは失礼だとは思うけど、一番しっくりくるんだよ。
はてさて、どんなお話される事やら。
鈴ちゃん、中国政府におじさんの情報取って来て、あわよくば子供とか作っちゃっても良いよ!
って言われてたけど、鈴ちゃんは内心中指立ててこいつらぶっ〇そうかな、とか考えて居たりした。
子供作っちゃっても良いよ、ってとこに関しては満更でも無かった。
因みにだけど、蘭ちゃんは無いよ。
色々な意味で、作中では蘭ちゃんは無いよ。
明言しとくからね。
これで感想で蘭ちゃんルートが……!ハスハスとか言い始めたやつは、マジ許さん。
もっと別の事書いてくれ。