おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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次回、束さんとセシリアさん修羅場不可避。(嘘です)










セシリアサン”!?ドウシテソウナッチャッタンデス!? 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side セシリア ----

 

 

 

 

 

 

 

イギリスの実家で、経営する会社や系列のホテルなどの仕事に加えて代表候補生としての報告だったりと言う仕事も済ませてきた。

経営するそれぞれの会社では、やはりフランスとドイツの件の大事件のせいもあってかそれぞれ大小影響を受けていた。

 

株価など相当影響を受けていたり、両国に進出している会社やホテルや飲食店などは打撃を受けたものの、治安が戻りつつあるのでそちらも直に回復するでしょう。

倒産するとか社員、従業員達を解雇しなければならないと言う事態にはならないので幸いでした。

 

代表候補生としての仕事、と言うのはまぁ、色々あります。

例えば自分と機体の状況や状態などを報告書に纏めて政府と研究機関に提出したり。

これに関しては、偏光射撃が出来るようになったことなど、書くことが数多く苦労しました。

 

それに、研究所に出向いて機体の整備や調整、調査などもやりましたし。

 

あとは、言ってしまえばモデルです。

早い話が、代表候補生、それも専用機持ちは相当注目を浴びます。

何処の国でも変わらない事ですが、モデルをするかしないかは当人の意思なので強制ではありません。

 

私の場合は、まぁ良いかな、と。

 

そんなわけでたった五日間とは思えないぐらいに忙しい日々でした。

 

 

 

 

 

 

イギリスから、自家用機に乗って再び日本に戻って来て直ぐに、空港に着いた瞬間に小父様に電話を架けた。

久しぶりに小父様の声を聞くことができてとても嬉しかった。

 

思わず、頬が緩んでしまったのですが、それをチェルシーに見られてしまいました。

恥ずかしい……。

 

飛行機に、小父様や皆さんへのお土産を沢山載せていて、それをチャーターした車に載せて。

学園の、自分の部屋に全部運び込んで。

 

それから暫くすると、小父様が訪ねてきました。

少々、お土産で手狭なのでどうぞ、と一言声を掛けて入ってもらう。

 

久しぶりに見る小父様の顔は、最後に会った時よりも顔色が良いです。

ご実家に帰ることが出来たので、存分にリフレッシュ出来たのでしょう。

 

確かに織斑先生や一夏さんと言ったご家族と一緒にIS学園で過ごしてはいますが、それでも入学から一度も家に帰る事が出来ないと言うのは知らず知らずの内に大きく精神に来ていたのでしょう。私だって久しぶりの実家は、仕事で忙しかったとはいえとても心地良いものでしたから。

 

部屋の中に山積みにされているお土産をみて驚き、プライベートジェットを持っていると聞いてさらに驚き。

プライベートジェットと言ってもジャンボジェット機ほど大きくなく、小型機ですからそこまで驚く事でしょうか?アラブの富豪なんかは豪華客船と見間違えるほどのクルーザーを持っていますし。プライベートジェットだってまんまジャンボジェットだったりするのに。

 

 

ともかく、久しぶりの小父様との会話を楽しむ。

 

「あー、でそのブランケットさんはどうしてここに?」

 

「チェルシー、で結構です。佐々木様含めたご学友、ご友人の方々の為にお嬢様がご購入されたお土産を運ぶのをお手伝いしておりました」

 

「そんなに買ったんか」

 

「自家用ジェットが割と詰め詰めになるぐらいには」

 

「さっすがお金持ち、自家用ジェットってとこの方が驚きだぜぇ……」

 

「それと、お嬢様の佐々木様に対する恋心に発破をかけよムグッ」

 

「おほほほほ!チェルシーったら変な事を言いますのね!」

 

 

なにやらチェルシーがとんでもない事を口走ったので慌てて口を塞いでお土産の影に連れて行く。

 

 

「ちょっとチェルシー!」

 

「なんでしょうか?」

 

「下手な事言わないで下さいまし!」

 

「え?佐々木様の事をお慕いしているのでは?」

 

「な、ななな!?」

 

「だって電話越しでも、今回の帰省中も延々と佐々木様のお話を聞かされていた使用人一同、気が付いていない者は居ないかと。と言うか、寧ろあれで気が付かない方がおかしいのでは、とすら思います。気が付かない人はとことん他人に興味無いか人の感情にあまりにも無関心過ぎる人間だけだかと」

 

「いーやー!?全員に気が付かれていましたのー!?」

 

まさか、私の話だけで気が付かれていたとは……。

思えば確かに、電話をしたときとか喋り過ぎたな、とは思います。

 

「見た感じ、想いをお伝えする勇気も無さそうでしたのでこの際もう延々と聞かされるぐらいならば発破を掛けてしまってそのまま一発かまして、かっ飛ばしてゴールイン!となってくれた方が我々としてはお見合いの話を断る口上を一々考えなくて済むので楽なのですが」

 

「このメイド、主人の恋心をそんな言い方しやがりましたわ!」

 

チェルシーって割と結構こういう感じなんですよね。

何と言うか、意見を言葉は選びますが殆ど遠慮無くズバズバ言ってくるんです。

 

私の中では彼女は姉の様な、と言うか姉として認識しているので貴族界だと同年代とかでも結構腹の探り合いとかあるので、寧ろこういう感じの方が気が楽で良いですわ。

 

それでも今のはぶっ飛ばしすぎです!

確かに小父様とお付き合いすることが出来て、そのまま色々あって今すぐ子供を授かっちゃったりしても構いませんし。

なんならバッチコイ!ですわ。

 

流石にまだ学生で、代表候補生だったりと色々と立場と責任があるのでそう簡単にはいかないし確定で国際問題になるでしょうけれど。

そう考えると、やっぱり小父様の立場って複雑なんですね。

 

しかも良い方向に転んでも悪い方に転んでも、小父様の苦労が絶える事は無いと言う訳ですわ。

 

 

 

 

 

「ですが、使用人一同、お嬢様の初恋が成就されて、そのままご結婚される事を望んでおります。他貴族の良く分からない変な男よりも、佐々木様は信頼することが出来ます」

 

「……貴女がそこまで言うなんて珍しいですわ」

 

基本的に、貴族の結婚と言うのは貴族同士でお見合いをして、が今でも殆ど、普通です。

お見合い結婚という名の政略結婚、と言った方が正しいですけれどね。

 

貴族同士の結び付きを強くする為とか、自家の力を強くする為とか色々な理由はありますが、私に申し込まれるお見合いの理由の殆どはオルコット家の財力や地位目当てでしょう。

これでも貴族の中での地位は上から数えた方が早いですし、他貴族と比べると様々な会社経営などで財力もやはり上から数えた方が早い。

そう言う訳で狙ってくるんですのよ、他の貴族達が。

 

お父様とお母様が亡くなった時なんかは、親戚が三十人ぐらい増えたのは笑い話ですわ。

 

よくある様な、身分違いの結婚と言うのもありますが少数でしょうし。

 

それに、貴族と言うのは潔白な貴族もいますがやはり後ろ暗い事がある貴族も多いんです。

本当に裏で何をやっているか分からない、怪しすぎる貴族家や貴族もいますしね。

 

そう言う連中と私が結婚すると婿入りという事になるのでしょうが、それらが表沙汰になるとオルコット家の名にも傷が付きますし、事と次第によってはとことん没落する可能性も大いに有り得ます。

それらの様な出来事から家を守るのが私の役目であり、IS学園に私が居る間に留守を任せた彼女達使用人の大事な仕事の一つでもあるんです。

 

まぁ、私はお見合い結婚とかそう言うのは嫌なので全部お断りしているんですけれど、私がイギリスに今回帰った時に普段よりも数十倍増えたのがもうなんとも言えません。

 

 

確かにその貴族達などと比べると、小父様はそんなことありませんからねぇ。

 

 

「まぁ、今までの報道もありましたが、本日お会いして目を見て分かりました。多少、精神性が歪な気がしますがそれを差し引いても理想的な殿方ではないでしょうか?」

 

「それはそうですけども……」

 

人と言うのは、目が何よりもその人の性格や生き様を語るんです。

小父様の目は、疲れてはいますけど汚れて居たり濁っていたりはしていません。

 

「あまり、尻込みしていると他の女性に盗られてしまいますよ?織斑千冬、篠ノ之束博士もライバルなのでしょう?」

 

「もっといますわ。同級生に少なくとも四人。私やさっきの二人を入れて七人から狙われています」

 

「そこまでくると、なんだか凄まじいですね」

 

「ご本人は、私達の好意に気が付いているのか、それとも気が付いていないのか、曖昧な感じですけれどね。ですが恐らく、妹四人は確実に気が付いている筈ですわ」

 

「……とんだプレイボーイじゃないですか」

 

「それでも、織斑先生と一夏さんと暮らし始めてからは女性とお付き合いしたことは一度も無いそうですわ。二人を最優先にしていたそうですから」

 

「誠実なのか、不誠実なのか本当に良く分からないお方ですね。情報を集めようにも篠ノ之博士が全てシャットダウンしていますからそう言った事は全く知りませんでした。ですが、信用に足る人物であることは間違い無いかと思いますよ」

 

ほんっとうに、小父様は女性に好かれているので気が気でないんですよ?

それになんとなくですけれど、臨海学校の時に篠ノ之博士と小父様がなーんか、ちょっと怪しい?ような気がしました。

気が付いたら二人とも居なかったりしましたし。

 

それでも小父様をお慕いする気持ちに変わりはありません。

なんなら篠ノ之博士から分捕って差し上げますわ。

 

あ、でもその辺どうなんでしょう?

男性操縦者の研究において、本人のみなのか、それともその子供である男の子にもISに搭乗する能力はあるのか、と言う議題が持ち上がっています。

 

それにおいて、それらの事を確かめる為に、未確定ではありますが佐々木洋介個人とその妻と成りえる女性にのみ適用される一夫多妻法を可決しよう、と言う動きが国連などであるらしいのです。

あくまでも本人達の意思に委ねる、と言うことにはなりそうですが、それでも圧力とか凄まじい事になるでしょうね……。

そうなったらそうなったで篠ノ之博士達が動くのでしょうけど。

 

 

 

 

 

 

 

そして、チェルシーが帰った後。

小父様と二人きり。

 

なんだかんだと、二人きりでお話するのは私が孤立していて、その時に小父様とお話したあの時以来。

 

緊張しますわ……!

 

あぁでも、この気持ちを伝えないと後で絶対に後悔するだろうし……。

でも断られて今までの様に小父様と一緒に居られなくなったりするのも怖い。

 

 

だけど、このまま自分の想いも伝えられずに小父様がどこかに行ってしまう方が、ずっとずっと怖い。

何と言うか、小父様の生き方だと本当にいつか生き急いで死んでしまわないか心配で仕方が無いのです。幾ら織斑先生と一夏さん、箒さんや篠ノ之博士と言う妹達が居たとしても、その人達を守れれば別に死んでもいい、とか考えて居そうな節が時々感じられるんです。

本人はそんなこと無いと否定するでしょうが、いざと言う時になったら冗談抜きで命を捨てに行ってしまいそう。

 

VT事件の時もそうでしたが、臨海学校の時もそうでしたから。

あくまでも私がそう感じていると言うだけであって本当にそう思っているかどうかは分かりませんけれど。

 

 

でもあれですね。

下手に死んでしまうと人類滅亡とか、地球そのものがこの世から消える可能性が極大なので死ぬに死ねないような気もしますけど。

織斑先生はまだしも、篠ノ之博士がとんでもなく危ない。

 

一人で人類滅ぼせるだけの力があるのだから馬鹿に出来ない。

あの人ならジャパニーズアニメとかの中にある兵器とか普通に再現出来るだろうし、なんならグレードアップしそうな所がまた現実味があるんですもの。

 

とにかく、何とかして勇気を出して想い伝えないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十分ぐらいなんだかんだと尻込みしつつ漸く。

 

「小父様!」

 

「うぉっ。どうした急に」

 

「その、お話があるのですが……」

 

「あぁ、まぁそう言われてきたから話が無かったら俺何しに来たの?って話だし」

 

「う……。そうですけれど……」

 

「それで?話ってなんぞや?」

 

「えっと、その……」

 

伝えようとしても、やっぱり少しだけ勇気が足りない。

 

「ま、セシリアのペースで良いぜ。別にこの後なんか用がある訳でも無いからな。のんびり待つよ」

 

小父様は、今の私の気持ちを知ってか知らずか何時も通り。

チェルシーが出した紅茶を飲みつつそう言う。

 

何となく、ムッとしましたけど何処か落ち着けたような気もします。

小父様が何時も通りならば、私も何時も通りの方が良いという事でしょう。

 

 

 

 

「はー……」

 

一息吐いて、また一度息を吸い込む。

 

「小父様、お話宜しいですか?」

 

「おう」

 

「小父様……。いえ、佐々木洋介さん」

 

「どうした」

 

意を決して。

 

 

 

「私、セシリア・オルコットは貴方の事が好きです。一人の男性として、愛しております」

 

 

 

 

そう言った私の顔は、紅潮している筈。

だってとっても熱いんですもの。

 

あー!!ついに言っちゃいました!言っちゃいましたわ!?

どうしましょう!?どうしましょう!?

 

頭の中でお祭り騒ぎの私は、小父様をチラリと見てみると驚いた顔でそのまま固まっておられました。

 

えーっと……?

 

「あの、小父様?」

 

「はぅぁ”!?」

 

軽く肩を揺すると変な声と共に気を取り戻す。

 

「大丈夫ですか?何か、気に障る事を言いましたか……?」

 

私が、小父様に想いを伝えたことを不快に思われたのかと、不安になる。

小父様はそんなこと考えもしないのだろうけれど、それでも凄く不安になる。

 

「いや、いや気にするな。あんまりにも驚きっつうか、度肝を抜かれたから思考がフリーズしちまった……」

 

「その、そんなに衝撃的でしたか?」

 

「そりゃぁ、お前、なんとなーく、薄々怪しいなー、とか思ってたけど、三十五のオヤジが十五の女子高生、それも金髪碧眼の外人美少女にいきなり告白されたら誰だって頭をハンマーで殴られるよりも衝撃受けるわ」

 

「そんなものですか?」

 

「そんなもんだよ」

 

それよりも、小父様に美少女、と言ってもらえたことがとても嬉しい。

という事は取り付く島もないぐらいに、バッサリと振られてしまうという事は無いという事です。

少なからず、私の事を一人の女性として、異性として意識しているということ。

 

普段なら男性にそんな視線を向けられるのはとても嫌な事ですけれど、好きな人、それも今すぐにでも繋がりたい人にそう見られていると知るととても嬉しいものなのですね。

 

 

 

 

「それで、その、出来ればお返事をお聞かせ頂きたいのですが……」

 

顔がとても熱くて、緊張のあまり落ち着かないから手をずっともじもじさせる。

私が返事を聞きたい、と言うと小父様は何時もの顔では無く、とても真面目な顔で椅子に座り直した。

 

「そう、だな。ふざける事じゃないからちゃんと答える」

 

「はい」

 

「まぁ、正直言っちゃうとすげぇ嬉しい」

 

小父様は、少し照れながら頭をポリポリと掻きながらそう言ってくれた。

その瞬間に、表には出さないけれど頭の中も心も嬉しさで一杯になりました。

自分の想い人に、自分の告白が嬉しいと言われたら誰だって嬉しいに決まってます。

 

「だけどなぁ……」

 

「?」

 

「セシリアの想いに応えてやるのは……。正直に言って難しい」

 

「そんな……。どうしてですか?」

 

「まず、お前さんはまだ学生で、しかも十五歳だろ?」

 

「はい」

 

「そうすっと、まだ未成年って訳だ。今の俺は何処の国にも属していない、無国籍状態な訳なんだが日本の常識で考えると結婚出来るのは十六歳から。成人するには二十歳にならなきゃならない」

 

「それならば、私が十六歳に、いえ、二十歳になったら……」

 

私がそう言いかけた時、小父様は遮ってまた話し始めた。

 

「他にも年齢差って問題がある。俺は三十五、セシリアは十五、丸々ニ十歳差がある訳だ。セシリアが二十歳になった時、俺はもう四十だぞ?」

 

「年齢なんて関係ありません!」

 

「そうは言うが実際は簡単じゃないんだよ。俺ァ、別に気にしないが、いやちょっとは気にするが外聞ってもんがある。俺はあんまり自分で言いたかねぇけど世界でたった一人のIS男性操縦者。セシリアはイギリスでも有数の貴族。これが二十歳差の歳の差婚をしたとなったらどうなると思う?」

 

「……」

 

「現実を突きつけるようで悪いが、世間からは死ぬほど批判される。俺には自分の立場を良い事に若い少女手を出した。セシリアは俺を誘惑して堕とした、とかなんとか言われるに決まってるんだよ。そうなったら一番傷付くのは誰だ?セシリアだろ?」

 

「そんな言葉、気にしません。私の小父様への想いは変わりません」

 

「そうは言っても、その時にならないと分からないもんなんだよ。そんなことでセシリアに傷付いて欲しくないし人生を無駄にしてほしくねぇんだ」

 

そう言って、小父様は力無く笑った。

その笑顔は、何処かとても寂しそうで。

 

普通に生きていれば、手に入れられる筈だった自分の人生における幸せも手放さざるを得ない今の立場は、一般人として生きてきた小父様からすればとても辛い事なのでしょう。

普段は絶対に表に出さないけれど、本人はそう思っていないと言うかもしれないけれど。

 

辛いに決まっている。

 

私の想いに応えられそうにない、と言った理由には確かに自分の保身もあるだろうけれど、それは人間として当然の考え。

小父様は、それよりも私の事を考えて言ってくれている。

 

多分、割合的には9.9:0.1とかそれぐらい。

 

だけど、この想いはどうしても諦めるには余りにも強くなり過ぎていた。

 

どうやっても、何を言われても変わらない。

 

今の私は駄々を捏ねる子供とそう大して変わらないかもしれない。

だけどそれでもかまわない。

 

「……小父様」

 

「ん?」

 

「私は、小父様や、周りにどのように言われても決してこの想いが変わる事はありません」

 

私がそう言うと、小父様は険しい顔で私を見る。

確かに小父様の言う通りでしょう。どんな幸せなことにも世間が、全員が全員必ずしも祝福してくれるわけでは無い。

 

 

 

 

妬み僻みは当たり前。

しかも私は貴族だから、普通の人みたいに付き合って別れて、また別の人と付き合って、という事は早々出来ない。

貴族と言う立場において、単純に交際する、付き合うという事は結婚を前提にしている。

 

だから私がもし今、小父様とお付き合いする、交際するとなるとほぼ確定で結婚する事になる。

特に世界でたった一人のIS男性操縦者だからイギリス政府が猛烈に後押しするだろうし、破局となったら国そのものの面子に関わってきます。

 

理由は軍事面でも外交面でも、他国に圧倒的優位を付ける事が出来るから。

何故小父様がISに乗れるのか?そして操縦できるのか?と言う事を解明しなければならないと言う前提があるので本当に優位に立てるかどうかは未知数ですけれど。

 

そうなると、小父様には国から命令、若しくは命令に近い要請、と言う形で調査協力が来る。

多分、断る事は難しい。

 

私と結婚するという事は、私が嫁入りするのではなく小父様がオルコット家に婿入りするという事。

私はオルコット家のただ一人の後継者で当主だから嫁入りするという事は出来ない。多分、王室が許さない。

特に我がオルコット家は、歴史が旧く長い間王室に仕えてきた上から数えた方が早い名門貴族。

 

上に居るのは、多分王室と血縁関係がある家が三つか四つぐらい。

だからこそ、そのオルコット家現当主で唯一の正当な継承者である私が嫁入りする事が許されない。

もし、嫁入りを許してしまえば前例を作ったという事で同じような事が起きかねない。

 

別に、長子で無ければ他家に行くという事は別段珍しくもなんともないですけれど。

 

では長々と説明しましたが何が問題か、と言うと。

 

私が長子である事と私の両親、オルコット夫妻に子供が私しかいないと言う事が問題なのです。

 

私に弟か妹がいれば家督を譲って、当主の座を退いてしまえば嫁入りも出来なくはないのでしょうけれど……。

でも現実には私一人だけ。

 

 

 

他にも色々と問題や面倒事は山積み。

 

小父様が婿入りするという事は、小父様もイギリス貴族の一員になる訳だからイギリス政府に国籍を置いていなくとも、イギリス王室>オルコット家と言う主従関係に与する事に変わりはない。

だから先程も言ったように、調査協力と言うのを断りずらい、場合によっては断れない。

 

国籍に関しては、無国籍のままかイギリス国籍になると思いますがどちらにせよ、です。

 

 

 

 

 

でも、私は小父様を好きでいる事を、愛する事を諦めたくないのです。

 

お母様とお父様が、亡くなってからチェルシー達は居たけれど、心の中では、私は一人ぼっちなんだ、と思っていた。

おまけに他貴族達と嫌な腹の探り合いをしたり、チェルシー達の手伝いや補佐があったとはいえ会社や家の事もやらなければならなくて。今思えば、心が荒んでいったのは明らか。

 

必死に家を、チェルシー達を、会社を守ろうとして生きてきて。

それでも力が足りなくて。

 

そしたら、IS適性がある事が分かって。

操縦者になって、代表候補生にまで血反吐を吐きながら上り詰めて。

 

その時には、自分の弱った心を隠すために、誰かに見せないために必死に取り繕っていたら、気が付けば女尊男卑思想や民族に優劣をつける様な考えまでして。

 

IS学園に来た時、クラスメイトの前で、小父様に面と向かってあれだけの侮辱をして。

とても一人の人間として、貴族としてあるまじきもの。

 

誰も彼も、私から遠ざかって陰口や軽い嫌がらせを受けて。

でも自分はそれほどの事をしたのだと、そう考えて耐えて耐えて耐えて、耐え続けて。

 

でも本当は、辛くて辛くて仕方が無かった。

だけれど、私への罰なんだと、必死に言い聞かせて。

 

相談相手なんて居る筈も無く、チェルシーには勿論話す事なんてできない。

自分の仕える当主が、そんな愚かな事をしたなんて言えるわけがない。

 

もう、どうすればいいのかも分からなくて考える事もやめて。

泣くこともとっくに出来なくなっていて、ただただ毎日を無意味に送っている時に、小父様が私に声を掛けて来てくれた。

 

少々強引だったような気もしますけれど、あの時に私が救われたのは確か。

 

ずっと誰にも頼ってはいけない、一人で何とかしなければならない、そう思っていたのに。

 

小父様は周りに頼っていいんだ、と教えてくれた。

泣きたい時には泣いて良いのだ、と教えてくれた。

頭を撫でてくれて、久しぶりに温かさを思い出させてくれた。

 

 

今の今まで溜め込んでいたものが一気に溢れ出したけど小父様は黙って受け止めてくれた。

 

そんな、私の事を救ってくれた人を好きになるな、と言う方が私には無理だった。

 

 

だからこそ、小父様が教えてくれたように、我儘を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私と小父様が初めてお話ししたとき、最後に私が言った事を覚えていらっしゃいますか?」

 

「なんだっけ……。なんか英語でなんか言ってたのは覚えてんだけど何言ってんのかは全く分からんかったアレな」

 

「それです。【Aⅼⅼ is fair in love and war】です」

 

「それそれ。で、意味はなんなん?」

 

「直訳すると【恋と戦争は手段を選ばない】です」

 

「ほー、なんつーかイギリスらしい諺だな」

 

「だから、私も手段を選ばない事にします」

 

「うぇ?」

 

ポカン、と何を言っているんだ?と言うような顔の小父様。

立ち上がって、椅子に座る小父様の顔に、顔を近付けて。

 

そのまま小父様の唇に、自分の唇を重ねる。

 

 

 

 

「宣言しますわ。私は何が何でも小父様と添い遂げます!」

 

 

 

 

胸を張って、そう宣言する事にしましょう。

途轍もなく強大なライバルは多いけれど、絶対に負けない。

負けてやるもんですか。

 

 

小父様は、凄い顔で固まっていらっしゃるけれど知るもんですか。

私は小父様のもので、小父様は私のもの。

 

絶対に、絶対に誰にも渡しませんから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小父様が部屋を出て行かれたあと。

 

 

今更だけれど、すごく恥ずかしい。

勢いでキスなんてしなければよかった……!

 

でも、小父様とキスしてしまいましたわ!

……んへへへ、嬉しいです。

 

 

自分の勢いに任せた行動に猛烈に後悔すると同時にその幸せを噛み締める事になるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









因みに前書きのやつ、次の話で書こうかなって思ってるよ。

修羅場になるかどうか?
おじさんの胃が滅茶苦茶痛くなるってなる意味では、ある意味修羅場なのかな?


因みに、R-18への分岐は次話になる予定。





長子

その家において、男女合わせた中の一番上の子供の事。
長男、長女でも先に生まれている方が長子となる。

昔なら長男であることが重要で長男、若しくは次男と言った感じに男が家督を継ぐ、と言うのが一般的でなんならそう言う法律もあったけどこの作品においては長子である事の方が重要視される。

家によってはまだまだ男じゃないと駄目!とかお堅い考えの所もあるだろうけど。

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