おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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投稿遅れてほんっとうにすいませんでした。






セッシー、やっぱりチョロインだったのね……。

 

 

 

 

 

 

ーーーー Side セシリア ーーーー

 

 

 

 

小父様に、自分の想いを伝えて小父様が帰られた後。

自分の部屋で皆さんへのお土産に囲まれつつ、小父様を想って悶えたりしていると、どこか聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」

 

「……篠ノ之博士!?どうしてここに!?」

 

振り向いてみると、そこに立っていたのは世界にその名を轟かせるISを開発した篠ノ之束博士が。

突っ込むとすれば、呼んでいないとか、どうやってここに現れたのかとか色々あるんですけれど、まぁとにかく。

 

「あの、篠ノ之博士?」

 

「うん?何かな?」

 

「その、どう言った御用でしょうか?」

 

「え?そりゃぁ心当たりあるでしょ?」

 

何の用で私を訪ねてきたのか、聞いてみるとさも当たり前のようにそう返してくる。

このタイミングでの来訪ともなると、もう一つしかない。

 

寧ろそれ以外に考えられる理由がないと言うか。

篠ノ之博士の小父様への入れ込み具合、というかもう完全に意中の男性に対する接し方をしているから私が告白した事に一言物申したい、と言ったところでしょうか

 

「……小父様の件ですか」

 

「そうそう。あ、別に君が想像してる様な事じゃないよ」

 

「それでは、本当にどう言ったご用件なのですか?」

 

「まぁ、とりあえず君はおじさんの事が大好き、愛してるでおーけー?」

 

「ッ!はい、その通りです。私は小父様の事を心から愛しています」

 

私がそう言うと、篠ノ之博士は目を細めて表情を無くして言った。

 

「そうなると、私とは恋のライバルって訳だ。実を言うと臨海学校の時に私、おじさんに告白してるんだよね」

 

「!!」

 

「あ、別にそのへんでどうこう争う気は無いよ。それとは別に一つ提案があるんだけどちょっと協力してくれない?」

 

「は、はぁ、提案ですか」

 

「うん。単刀直入に行っちゃうと束さんと君、二人ともおじさんのお嫁さんにならない?って言う提案なんだけどさ」

 

「はぁ!?それどんなぶっ飛んだ相談かお分かりですか!?」

 

「そりゃ分かってるよ?」

 

思わず結構大声で聞いてしまいました。

いやだって、恋敵だと思っていた相手から実は告白してましたとか言われたあとに両者の意中の男性を取り合うのではなくハーレム作っちゃおうとか言われたら誰だって驚きますし大声の一つやふたつ出ると言うものです。

 

まぁ、ですが篠ノ之博士がそう提案してくるのだから何か理由がある筈。

寧ろ無意味な訳が無いと言いますか。

しかもそれが小父様の事だったらより一層意味の無い提案はしない筈なんです。

 

「ごほん、声を荒らげて失礼しました」

 

「別に良いよ〜」

 

「それで、どんな理由があっての事なのですか?流石に意味も無くそんな提案されてもはいそうですかと頷けるものではないのですが……」

 

私がそう聞いてみると、篠ノ之博士は真面目な顔をして理由を語り始めた。

 

「正直言っておじさんってなんか私達を守れるんなら別に死んでもいいとか思ってるんだよね。表層心理じゃそうじゃ無いんだけど深層心理だとそう思ってる節があるからさ。それでおじさんが死んじゃったら私世界を滅ぼす自信があるんだよね。私はおじさんに死んでほしくもないし、なんなら怪我もしてほしくないから一生安全なところにいて欲しいぐらいなんだけど」

 

「小父様の性格上、それは無理だと思いますが」

 

「うん。私達がピンチになったら多分、お風呂に入ってて全裸だったとしても飛んでくると思う。だから、安全な所にいてもらうって言うのは無理。それなら絶対に無事に帰ってきて貰えば良いじゃん?」

 

「はぁ」

 

「そうするとさ、妹ってだけの存在がいるだけじゃ駄目なんだよね。一応私もちーちゃんも稼ぎはあるし箒ちゃんといっちゃんの事を十分以上に養っていけるし、あとは任せたとか言って死なれるかもしれない。そうなると他にどんな手があると思う?」

 

「……結婚して子供でもいれば変わるとは思いますが」

 

「ビンゴ!」

 

「はい?」

 

「だから、私達がおじさんのお嫁さんになっておじさんを繋ぎ止める杭というか縄になれば良いんだよ!奥さんがいれば必ず帰ってくると思うし子供が出来たりしたらそれこそ死ぬ気で帰って来るでしょ?」

 

なるほど、下手に死に急ぐかもしれない小父様をそうさせないようにするために私達で囲んでしまおう、という訳ですか。

 

「ですがそれなら一人でも良いのでは?」

 

「いやさ、それが一人だけだと周りに頼れる人がいるからそれはそれであまり意味無さそうなんだよねぇ……。それならもういっその事おじさんのことが好きな子たち、私も含めて周りをガッチガチに固めちゃおうってわけ。それにそうすれば変な虫も寄ってこないでしょ?」

 

なるほど、一人だけでは意味が無いと。

それならば、納得が出来る理由ではありますが……

 

「理由に関しては納得しました。ですがそれですぐに頷けるわけではありません。少しだけお時間を頂いても宜しいですか?」

 

ふぅむ……。

このまま、小父様の隣に立つ女を一人になるまで争っても勝てる保証は無い。

 

女としての魅力では自信が無いわけではありませんが私以上に女の魅力が優れている方々が小父様の周りには多いですからね。

 

私だって、自慢の金髪に碧眼とそれなりのスタイルもありますし小父様と、子供数人を余裕で養えるぐらいの財産はある。

容姿だってモデルを務められるぐらいには、整っている。

ただ、胸の大きさに関して言えば余り大きくないので巨乳好きが多い男性に対してはあまりアドバンテージにはならないかも。

 

 

 

篠ノ之博士は若干性格面において難があるとは思いますが、見た目もスタイルも抜群、資産も個人では世界一。

織斑先生も胸の大きさは篠ノ之博士には劣りますがそれ以外は万能。十分以上に小父様を養うことは可能。

 

一夏さんは確かに未成年ではあるけれど、代表候補生としてトップクラスの実力を持っていて今後日本の国家代表になる可能性に最も近い。見た目も可愛らしいし男性からすれば魅力溢れる女性に違いありません。

箒さんも箒さんで代表候補生などと言った、収入は無いというハンデはありつつも妻になる上で必要なスキルは多分、一夏さんと同等。大和撫子を体現するようなタイプの和風美人でこれまた小父様をあっさりと掻っ攫っていきそう。

 

鈴さんは、小父様に一番気兼ね無く接しているから、小父様も心許していますし多分誰よりもボディタッチ出来る。まぁスタイルはその、何というか、あれですけれど。

それにしても鈴さんって小父様に抱き付いたりしれっとしてる事が多い割に、あまり小父様に相手されていない……?

何というか、女性としてでは無く戯れてくる子供みたいな接し方をされてるのでは?

あれ、もしかして鈴さんって女性として見られていないんじゃ……。

ま、まぁそういう特殊な性癖の方からすれば魅力的なのでしょうけれど。

 

 

 

シャルロットさんは、小父様を手玉に取っている。

普段は割と自由人と言うか飄々としてケラケラ楽しそうにしている小父様ですが、シャルロットさん相手だとタジタジになってる時が多いですわね。

鬼嫁ってわけでは無いんですけれど、こう、何と言うか、やり手の女社長と言う感じでしょうか。

それに礼儀作法もしっかりしてますし。

プラチナブロンドの髪も素敵ですし、スタイルも良い。

今は可愛い系美人ですが、あれは将来絶対に化けますわ。可愛い系が取れた美人になると断言出来ます。

 

 

 

 

 

それらを考えると、争っても私が勝ち残れる可能性が無いとは言いませんが……。

そう考えると、確実に小父様の隣に立つ事が出来る篠ノ之博士の提案は願ってもないものなのでは?

 

「……決めました」

 

「おっ、どうするどうする?」

 

「篠ノ之博士のご提案を飲ませて頂きます」

 

「そうくると思ってたよ。だって断る理由なんて無いもんねー」

 

「ですが、織斑先生や一夏さん、箒さんはどうするのですか?」

 

「え?そりゃ勿論加わってもらうよ?」

 

「それではこの話をこれからすると言うわけですか」

 

「いや、皆には暫く話さないよ」

 

「え?」

 

「私が話したのは君だけ。おじさんに自分の想いをちゃんと自分の口で伝えたら話そうと思ってるんだ。だってそうじゃなきゃフェアじゃないでしょ?」

 

「なるほど、そう言うことですか。分かりました、私も皆さんには黙っておきますね」

 

と言うわけで、小父様ハーレムが作られることが小父様の知らないうちに決定したわけです。

まぁ、そうなったらなったでその中での小父様の一番になれば良いわけですし、これからも小父様へのアタックは止めません。

寧ろ今まで以上に苛烈に行きましょう。

 

……篠ノ之博士と小父様って肉体関係はあるのでしょうか?

もし無いのだとしたら今ここで私が小父様とそうなれば、他の皆さんを大きく引き離せるんじゃ?

 

決めましたわ!

明日、また小父様とお会いしましょう!

 

 

 

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか、家に帰ってる途中でセシリアから明日また会えないかって連絡が来ました。

断る理由が無いのでOKしました。

 

さっき言えば良かったのに、なんでやろな?

まぁ別にそれに関しちゃ良いんだけどさ、俺に用事って他に何があるんだ?

ともかく、家に帰って運動して風呂入って飯食って寝るか。

 

 

 

 

 

「おかえりお兄ちゃん」

 

「ただいま帰りましたー」

 

「……お兄ちゃん、セシリアのとこで何してたの?」

 

「いや、別に何もしてねぇけど」

 

「ふーん……?」

 

ウチの妹はどうしてこう、こうなの?

お兄ちゃん怖いよ?

 

 

 

 

 

 

 

翌日、朝起きて飯食って歯磨いて運動して風呂入って着替えて昼頃までのんびりしてから、セシリアと待ち合わせしたレゾナンス駅の改札前に取り敢えず向かう。

服装は、特に考えずに白のポロシャツと半ズボン。あとは暑いからサンダル。

うーん、別になんかするわけでも無いと思うからこれで大丈夫だと思うんだけどな。

 

あとは財布と携帯、家の鍵さえ持ってきゃ大丈夫だろ。

車は近いから乗らんでも歩いていけるからな、車の鍵も要らんし。

 

レゾナンス駅の改札前について、取り敢えずそこで待つ。

IS学園に行くためには前にも説明したと思うけど学生証とか教員証が必要なんだよ。

その学生証とかにはICチップとかよー分からんけどそう言うのが入ってるらしくて、それを翳して尚且つ顔認証とかの生体認証をパスしないとならない。

顔認証に関しては単純に監視カメラで見てるらしい。

束が作ったシステムだから難しすぎて説明されたけど全く分からんかった。

 

んでもって、駅の改札とは別にもう一つ、IS学園生徒用の改札が奥にあって二つの改札を通らにゃならんのだ。

まぁ一般用の改札も学生証とか教員証で通れる様になってんだけどね。

因みに、今日も今日とて俺の護衛に生徒会長さんが着いて来てる。

昨日の内に連絡入れといたのもあるけど、さっきからジロジロ見られてるけどそれとは別種の視線感じるからな。

ちゃんと私は見てますよ、と言わんばかりの視線だもんね。

 

あ、居たわ。ウィッグ被ってっけどあの顔は見た事あるぞ。

あと美人だからナンパされてる。ごめんな、俺は助けらんねぇんだわ。ヤバそうになったら助けに入るけどあしらい方が慣れてるから多分大丈夫だな。

 

「小父様!」

 

その様子をぼーっと眺めながら突っ立っていると後ろから声を掛けられる。

そこにはワンピースを着込んでその上からカーディガンを羽織ったセシリアが。

足元は高めのヒールが付いたサンダルで、ネックレスも着けてる。

あれだな、全部お高いやつだわ。ネックレスにあしらわれてる青い宝石、あれって多分サファイアとかその辺じゃねぇの?あとセシリアの周り1mぐらい完全に世界が違うし。

 

え、俺これからこの子と一緒になって歩くの?

……うん、場違い感凄いけどもう何時もの事だからいいや。

 

そもそも論だけど、おっさんが高校生の中に制服着て混じって勉強してる時点でおかしいもんな!

 

俺を見つけたセシリアは、小走り気味に俺の方に駆け寄って来て嬉しそうに微笑む。

いやぁ、ほんと滅茶苦茶絵になるな。

 

これで会話してんのが俺じゃなきゃぁなぁ、映画のワンシーンだよ?

 

「お待たせしてしまい、申し訳ありません」

 

「いやいや、今来たばっかだかんな、問題無ぇよ」

 

うーん、こう、どうしてこんなに嬉しそうにすんだろうか。

あ、いや理由は分かるんだぜ?

 

一応昨日、目の前にいるセシリアに告白受けた身ですからね、好きな人と一緒にいれて嬉しいんだろうよ?だけどなんかそれに俺が耐えらんないっつうかさ、セシリアから発せられている雰囲気が甘いから完全ブラックノンシュガーコーヒーが飲みたくなる。

 

くそぅ、こんなに純粋に好意を向けて来やがって!そう言うのに慣れてないおっちゃんにはキツいんだぞ!

 

「その、これから昼食でも一緒に如何ですか?もし既に済ませて来ていらっしゃるのなら構わないのですが……」

 

セシリアと合流して、少し世間話をした後にどんな用件なんだろ、と思ってたら昼飯のお誘いが。

しかも、上目遣いだと!?クッ、これで断れとか無理に決まってんだろ!昼飯食ってたとしても行きますと言うしかねぇじゃねぇか!まぁ食ってないんだけど!

 

「まだだから行くか。どこ行きたい?」

 

「えっと、レゾナンスの中にあるレストランに行きませんか?」

 

「がってん承知。そんじゃ早速行くか」

 

「あ、でも小父様の服装だとちょっと浮いてしまうかも……」

 

「え?」

 

と言うことでセシリアに連れられてスーツ買いに行きました。

 

 

 

 

 

 

「おぉう、メッチャお高そうなお店じゃないっすかやだー」

 

「お気に召しませんでしたか?」

 

「いや、そうじゃねぇんだけども、こう、一庶民なおじさんとしちゃぁこういう店にはまるで馴染みが無くて」

 

「あら、それなら大丈夫ですわ。小父様はどこからどう見ても立派な紳士ですもの」

 

「そっかなぁ?」

 

「そうです」

 

嬉しそうにそう言ってくれんのは良いんだけどさ、待ち合わせ当初からずっと腕組まれてて大きくて柔らかいものとか色々あったってたり良い匂いがしたりセシリアの金髪が綺麗だったりと男としては物凄い幸せなんですけども、周りの目が完全に怪しい奴を見る目なんだよ。

嫌じゃ無いんですよ?そりゃ美人さんに好かれるってのは何度も言うけど男としちゃ幸せだし嬉しいし。

だけどね?俺って束にも告白されてんだなぁ。

それで、十五の外人高校生に告白された次の日に腕組んでる。側から見たら明らかにデートしてるんですよ。

 

これ、もしかしなくても普通にド底辺クソ野郎じゃん。

 

「セシリア」

 

「はい?」

 

「言ってなかったんだけどさ、俺ってば束にも告白されてんだわ。んでもって今セシリアともこうしてる訳でして」

 

「その事ですか?篠ノ之博士から既に昨日の内に聞いていますわ」

 

「えっなにそれおじさん初耳なんだけど」

 

「小父様、私はその件については了承済みですし、それでも構わないと思っております。ですから小父様もお気になさらなくてもよろしいですわ」

 

セシリアはそう言ってこれまた嬉しそうに俺の腕をぎゅっと抱きしめてくる。

俺はそうもいかんだろ、と言いかけたけどセシリアの嬉しそうな顔を見ちゃったらなんか言えなくなった。

 

まぁ、この件に関しては後々男として始末付けないとならん。何があってもだ。

本当は、告白された時にちゃんとしとかなきゃならないんだけどなぁなぁにしちまったから。

 

と言うか、セシリア気にしないのか。

最近の子って凄いんだね。

 

「んふふ」

 

「さっきから笑ってっけどどうしたんだよ」

 

「何時もは織斑先生や一夏さん達がいて中々二人きりになれないのに今日は、小父様と二人きりでデート出来て触れ合えて食事も出来るんですもの。これで嬉しく無いわけがありませんわ。それに……」

 

「それに?」

 

「いえ、なんでもありませんわ。兎も角、小父様と二人きりでデート出来る事がとても幸せだから笑っているんです」

 

「そりゃぁ、嬉しいけどもさ」

 

そこまで言われると嬉しいけど俺の方が恥ずかしくなってくるわ。

うんまぁ、取り敢えず腕組むのは良いけど更に手まで握って来られると更に密着して俺の左半身が無駄に柔らかい感触で覆われてて大変なんだわ。

 

だけども嬉しそうにするセシリアを見てると、離れろなんて言えんわ。

 

 

 

 

 

 

 

んでもって、セシリアと昼飯を食った後。

お高過ぎておじさんのお財布じゃ無理だったんだよ。そしたらセシリアが奢ってくれるって言って大人しく奢られときました。

まさかそんな高いとこに行くなんて思ってなかったから一万しか持って来てなかったんだもん。まぁ映画とかそこらのファミレスぐらいなら余裕で奢れるし問題無いと思ってたのに。

 

ヘソクリがあるから切り崩せば良いんだけど。

つってもヘソクリ十万有るか無いかってレベルなんだけど。

毎月百円ずつちょこちょこ貯めてたんだよ。

 

と言うか千冬もだったけど、一夏も大学進学する気が無いらしくて俺が必死に貯めてきたお金ってどうすりゃいいんだろ。私立とかじゃなけりゃまぁ、問題無く通わせられるだけの貯金はあるからなぁ……。

結婚資金とかに使って貰えばいいか。

 

 

 

 

 

レストランを出た後、再びセシリアと腕組んで手を繋いでレゾナンス内を二人で歩き回り、下着が欲しいから付き合ってくれと訳分からん事言われて流石に無理です、って断ってなんだかんだ。

 

三時ごろに、用事は終わったからとセシリアは帰ろうと言う。

 

「随分とお早いことで。もっと夜まで付き合わされるかと思ってたわ」

 

「女の買い物は長くて当然ですわ。こうして外をデートするのも良いんですけれど今日は普段からお世話になっている小父様をおもてなししたくて。それに、あの時私を助けてくれた恩も一度で返せるものでは無いとは言え何も返せていませんもの」

 

「昼飯を奢ってくれたのも、スーツを見繕って買ってくれたのもそれってことか」

 

「はい。本当はオーダーメイドでスーツや礼服を仕立てたかったのですけれど小父様のサイズなどを存じ上げていませんでしたから、既製品になってしまいましたけど」

 

「いやね、それでうん十万もするスーツは貰えねぇよ。オーダーメイドになったら幾らしちゃうんだか」

 

「えっと、私は服飾店も経営してますからそこに頼めばタダ、とは言いませんが他で数百万するものも数十万ぐらいに抑えられますわ」

 

「おっほう、まさかの返答来ちゃったぜ」

 

「そうですわ!今度小父様のスーツなどを私の経営する服飾店で仕立てましょう!」

 

「発想が違い過ぎて一庶民なおじさん頭が追い付かない」

 

「ちゃんと私のポケットマネーで支払いは済ませますからご安心下さい」

 

どんどんとんでもない事を言い出すこのお嬢様。

いやね?サラリーマン時代のやつが店で一番とは言わなくともかなり安いやつで、確か二万したかな?ってぐらいなんだぞ?

俺が今着てるスーツ、一四万もすんだぞ!?これ買って貰っただけでも恐縮ものなのに更にオーダーメイドで本来なら数百万するスーツなんて貰えないって。

 

飯も奢ってもらった挙句スーツまで買ってもらったんだから、これでもう十分だろうに。

 

「いやいやいやいや、流石にそこまでして貰う訳にゃいかんだろ。お前さんが働いて稼いだ金なんだ、俺なんかに使う必要なんざこれっぽっちもありゃしない」

 

「いいえ、駄目です。私の人生は小父様に救われたのですから。あのまま行っていたら道を踏み外したりしていたかもしれないし自業自得とは言え心が耐え切れなくなっていたかもしれない。そんな私を引っ張り上げてくれたんですもの。これ程の恩を受けたままと言うのは私自身としてもオルコット家当主としても許せません。それに、貴族に恩を売ったんですのよ?これぐらいで済む訳がありませんわ!」

 

「いやそんな自信満々に言われても」

 

「それに、私は小父様の事を愛していて何がなんでも我オルコット家に迎えたいと思っているんですもの。これぐらいで止まるわけには行きません!」

 

どうやらこの子、悪いホストとかに引っかかっちゃうタイプかもしれない。

 

「いいかセシリア。好きだからってなんでもかんでも与えたり贈ったりすりゃ良いってもんじゃねぇんだ。それじゃお前、駄目だろ」

 

「……はい」

 

「あーあー、しょぼくれんなって。別に怒ってる訳じゃねぇんだからさ。ただの年長者からのお節介だ。ほら、顔上げろ」

 

俺に怒られたと勘違いした、させてしまったセシリアの俯いた顔を上げさせる。

それでも腕を離さないのはご愛嬌、ってところか。

うん、本当になんで俺を好きになったんだろうね?ってぐらい美人で、普通ならお近づきにすらなれないぐらいの美人なんだ。

 

「お前さんは美人なんだから笑っとけ。男ってのは善人悪人問わず美人には媚び諂うもんなんだ。それが笑ってたらもっとだ。自分を好きだって言ってくれる女がそんなしょぼくれてる顔してたって男はいい気分にはならないからな」

 

「ッッ〜〜〜!!小父様!」

 

「ほわっつ!?」

 

俺が言い終わると飛びついてくるセシリア。

それをどうにか抱き止めると、嬉しそうな声を上げながら擦り寄ってくる。

 

「セシリアさん、ここ往来だから!人めっちゃ見てるから!」

 

「絶対離れませんわ!」

 

「ナンデェェッ!?!?」

 

結局セシリアを引き剥がす事どころか抱き締める力を少しばかり緩めて貰うことすら出来なかったおじさんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一緒にIS学園に向い、セシリアの部屋へ。

お招きされたんだから断る理由もなけりゃ行くしかないわな。

 

「どうぞ」

 

「あんがと」

 

セシリアはどうやら料理は出来ないらしいが、紅茶を淹れる事は上手いのか美味しい。

まぁ紅茶の銘柄なんてのはまるで分からんけども。

 

「うん、美味い美味い」

 

「良かったですわ、練習した甲斐があったと言うものです」

 

「ほー、練習してたのか」

 

「はい。その、サンドイッチ事件の後に本国のメイドや執事達に聞いて教えて貰ったのです。それで、イギリスに帰った時に合格を貰えたので小父様に飲んで頂きたいな、と」

 

「そりゃぁ、嬉しいね。こんだけしてもらっといて何も返さないって訳にはいかないな。なんかして欲しい事とか欲しい物とかあるか?」

 

「なんでもいいのですか?」

 

「おう、なんでもいいぞ」

 

この時、俺は常識の範囲内で、とか付けて言うのをすっかり忘れていた。

なんでもお願いを聞いてくれる、なんて言われたセシリアは顔を赤くしながら即答。

 

「それなら、小父様とその、寝たいです!」

 

「はぇ?」

 

思わずアホな声を出しちゃったおじさんは悪くないと思うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「待て待て待て待て!お前さん何言ってんのか分かってんの!?」

 

「もも、ももも、ももも勿論ですわ!分かっていなかったらこんな事言いません!」

 

「駄目に決まってんだろ!年頃の女の子がそんな事言うんじゃありません!」

 

「どうしてですか!?小父様はなんでも言うことを聞いてくれるって仰ったではありませんか!」

 

「それとこれとは話が別だ!」

 

それから、顔を赤くして必死に俺に詰め寄るセシリアとそれをどうにか宥めて押し留めようとする俺の攻防は凡そ二十分に渡って続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのなぁ、お願いでそんな事言うんじゃねぇって。しかも寝るってただ昼寝するって意味で言ってんじゃないんだろ?」

 

「はい。勿論意味は十分以上に理解しているつもりです」

 

「そんじゃなんでそんな事お願いしようなんて考えたんだ?」

 

落ち着きを取り戻した俺とセシリアは、取り敢えず座って紅茶を飲みながら話をする事に。

未だにセシリアは頰どころか、耳もまだ若干赤いが落ち着いてはいるらしい。

 

俺?内心大パニックよ?それがなにか?

 

「その、はっきり申し上げますと小父様を慕っている女性は多くて、その誰もが私以上に魅力ある方々です。料理の腕でも劣っていますし……」

 

「だから、誘ったって訳か?」

 

「その、はい……」

 

そう肯定するセシリアに対して、なんというか取り敢えず怒りが込み上げてくる。

さぁて、説教タイムと行こうじゃないか。

 

 

 

 

「馬鹿なんじゃねぇのお前」

 

「ッ!」

 

「あんま上手く言えねぇけどよ、取り敢えず言わせてもらうわ」

 

「はい……」

 

「束にも告白されてセシリアからも告白されてそれをなぁなぁでこんな状況になってる俺がいうのも正直説得力無いけど、セシリアが俺の事をどう見てるのかは知らんけどさ、俺はセックスしたらとかそう言うんで誰と付き合うとか結婚するとか決める訳ねぇだろ!好きな男の為だからって身体使おうなんて考えるんじゃねぇ!俺を舐めんな!」

 

怒鳴って、萎縮したセシリアを前にして少しばかり冷静さを取り戻して一息吐いてから続ける。

 

「本当に、俺が言っても説得力もなんも欠片も無いのは分かってる。だけど俺のことが好きだから、だけど他の女より自分の魅力が負けてるからとかそんな理由だけで身体でどうにかしようとか考えてほしく無いんだよ、俺は」

 

「それに、セシリアが自分に魅力が無いってんなら俺が幾らでも言ってやるよ。

セシリアが孤立してる時、自分の非を認めてちゃんと皆に謝っただろ。あれはそう簡単に出来る事じゃねぇ。相当勇気がいる事だ。

周りにいつも気配りしてるじゃねぇか。お前さん達の年齢なら周りよりも自分って奴の方が多いのにだぞ?

俺の訓練にも付き合ってくれるし、頭良いから、専用機貰ってるからって努力するのを止めないし、自分が弱いからって俺のとこに鍛えてくれって頼みに来たりもするぐらい向上心ある。

確かにセシリアは料理が下手クソだけど、それを補おうと紅茶の入れ方練習してきて美味い紅茶をご馳走してくれたじゃんか。

 

それに見た目に自信無いんなら言ってやるけど、セシリアは滅茶苦茶美人だろ。これで美人じゃ無いとかただの嫌味だわ」

 

取り敢えず、何言ってんのか俺もよく分からんけど言ってやったわ。

満足した。

 

それで、目の前のセシリアは俯いている。

なんつーか、怒ったことに後悔は無いけどやっちまったな、とは思う。

 

そりゃセシリアからすればお誘いを断られた挙句に怒鳴られて説教されたんだ、普通だったら嫌われて当然。

こりゃぁ嫌われただろうな。

でも俺は謝らんぞ。だって謝ったらセシリアのやり方が正しいって言っているようなもんだからだ。

 

「小父様、ごめんなさい……!」

 

そう言って、泣き出すセシリアは必死に涙を手で拭っている。

流石にここまで泣かれちゃ幾らセシリアが間違っていて説教したとしても罪悪感の方が強くなってくるわけで。

 

「ほら、顔上げろ」

 

「えぐっ、ぐすっ」

 

「いいかセシリア」

 

「はい“……」

 

顔を両手で掴んで上げさせて、しっかりと目を見て言ってやる。

 

「二度と、こんな馬鹿な真似すんじゃねぇぞ。分かったか?」

 

「ぐすっ、はい、わがりまじた“」

 

「ん、それならいい。ほら、泣き止めって」

 

「だきし“め“て“くれ“たら“なきや“み“ます」

 

「しょうがねぇなぁ」

 

ちゃっかりそんな注文してくるセシリアを、抱き締めて背中を摩ってやると何故か泣き止むと言ったのに更に泣き出す始末。

もう俺にはどうしようもないから、大人しくセシリアが泣き止むまでそのままでいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分ほどしてから、ようやく泣き止んだセシリアを椅子に座らせて取り敢えず一息。

 

「その、本当に申し訳ありませんでした」

 

「うん、まぁ次からはこんな事しないようにな」

 

ちゃっかり椅子を隣に持ってきて、引っ付いてきてるのはなんなんでしょうね?

嫌われたもんだと思ってたから驚きだよ。

 

「それにしても、小父様はあんなに私の事を褒めて下さるとは思ってもいませんでしたわ」

 

「まぁ事実だしな。別に隠すようなことでもないだろ。今までだって散々美人さんだって言ってきたんだから」

 

「それで、小父様?」

 

「ん?」

 

「なんでもしてくれる、と言う約束ですわよね?」

 

「まぁそうだけど、さっきみたいなのは無しだぞ」

 

「大丈夫です」

 

「それで、何がご所望で?」

 

俺がそう聞くとセシリアは言った。

 

「小父様から、私にキスをして欲しいです」

 

「よぉし、拳骨喰らわせてやるから頭出せ」

 

「違います!別に身体を使ってだとか考えていませんわ!」

 

「それじゃなんだって言うんだね?セシリア君。訳を聞いてやろうじゃないか」

 

さっきの今でんなお願いされたんだから誰だって相手が女だろうと拳骨の一発ぐらいは食らわせてやろうと思うのは当然だろうさ。

 

「その、昨日私は小父様にキスをしたでしょう?」

 

「あぁうん、そうだな」

 

「それで、その、あの時凄く幸せだったので次は小父様からしてくれたら嬉しいな、と思いまして……」

 

「なるほどねぇ……」

 

と頷いたは良いものの、それでうん分かったと頷く訳にはいかんだろ。

 

「あのねぇ……」

 

「あら、小父様ともあろうお方がレディーとの約束を違える筈などありませんでしょう?」

 

そう言って俺に寄り掛かってくるセシリアは、確かにさっき怒られた時の少しばかりの仕返しを、と言う顔をしてやがる。

 

「………………」

 

「小父様、早く早く」

 

既に目を瞑って強請ってくるんだから、手に負えない。

どうすりゃいいんだ、と頭を抱えるしかない。

 

まぁ別にセシリアの事は嫌いじゃないよ?

だけどさぁ、今更だけどセシリアってまだ一五歳なんだよな。

別に年齢関係無く恋愛はしてもいいと思うけど流石にねぇ……。

 

せめて一六だったらまぁ、一応日本の法律上結婚出来る年齢だからうん、まぁ、うん……。って感じだろうけどそれでも渋らざるを得ないと言うか。

そりゃ慕ってくれんのも嬉しいよ?でもそれで手を出すのは別問題だろう。

 

「小父様、まだですか?」

 

「あー、ったくしょうがねぇ、今回だけだからな?」

 

「はいっ」

 

急かされて、どうすりゃいいのか分からなくなった俺は目を瞑って俺の手を握り唇を差し出すセシリアと、軽くキスをした。

 

「んっ……」

 

「ほら、これで十分だろ」

 

「むぅ、もっとして欲しいのですけれどこれ以上要求するのもアレですし、これで我慢しましょう」

 

そう言ってこれまた嬉しそうに、笑いながら擦り寄ってくるセシリアは本当に幸せそうにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、暫くの間セシリアに引っ付かれて七時頃まで一緒に過ごし、その後は特に何事も無く家に帰る事にした。

 

「たでーまー」

 

「おかえりー。晩御飯丁度出来たから一緒に食べよ」

 

「おう、手ぇ洗ってくっから待っててくれや」

 

「うん。……ねぇ、セシリアと何してたの?」

 

「え?」

 

「お兄ちゃんからセシリアの匂いがする」

 

そう言って距離を詰めて来てふんふん、と俺の匂いを嗅いでくる一夏は、なんというか、怖いです。

 

「ねぇ、何してたの?」

 

「いや、普通に飯食って買い物しただけだって」

 

「ふーん……?それで、その荷物がそうなんだ」

 

「おう」

 

出来るだけ平静を保ちつつそう答えた。

 

どうにか納得してくれた一夏を尻目に自室に向かって荷物を置きながら大きなため息を吐いちゃったよ。

いやもう、背中の冷や汗とか凄まじいったらありゃしない。

 

取り敢えずスーツを脱いでハンガーに掛け、チャチャっと着替えて晩飯を食いにリビングに降りるのだった。

 

 

 

 








セッシーの株がどんどん上昇してますよっ!!
やっぱりセッシー可愛いもんな、仕方ないよな。





R-18編でげす。

https://syosetu.org/novel/227721/



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