おじさん、今年で36歳になるんだけれども 作:ジャーマンポテトin納豆
3ヶ月も投稿しなくて久々に投稿したかと思えば本編が進まない小説があるらしい。
リアルが忙しかったり他の小説やら新しい小説書き始めたらそっちが筆乗っちゃったり色々とあったんです。
許して。
何故か書いてるうちにシリアステイストマシマシになっちゃった……。
まぁ、うん、仕方ないね。
おじさんに出会ったのは小学4年生の夏。
ものすごーく暑くて暑くて、雲ひとつ無い馬鹿みたいな青空が広がってしょうがなかった日のこと。
空を眺めてあの空の遥か向こうには一体どんな物があって、どんな生物がいて、どんな言葉を話しているのだろう、と想像して早く飛び立ちたいと思っていたある日。
おじさんに出会った話をする前にそのおじさんと出会うきっかけになった話をちょっとだけ。
小学校で、なにやらすごい奴がいるって風の噂を聞いた私は、偶然を装いつつも今思えば相当強引に殆ど拉致と言っても良いぐらいの勢いで教室から件の人物をかっぱらっていった。
まぁ、この頃の私って学校中からハブられてたから私を差し置いても何も無いんだけど。
とにかく驚きやらなんやらで目を見開いていたその子は、言葉で言っても止まらない私を無理矢理力でもって止めると問いただして来た。今思い出すだけでも末恐ろしい眼力と迫力で。
それがおじさんと出会うきっかけになった、そして私の生涯で唯一無二、ただ1人の親友であるちーちゃんだった。
そのちーちゃんと妹のいっちゃんが、今でこそ想像も出来ないだろうけどちーちゃんですらお兄ちゃん、と言って心の底から慕っていたのがおじさん。
そのおじさんが、皆から拒絶されて世界に絶望しかけていた私を救ってくれた。
今は私が世界で一番、両親や箒ちゃん、ちーちゃんいっちゃんよりも、誰よりもずっとずっと、愛している人。
初めておじさんと会ったのは、そんなちーちゃんと知り合ってから3ヶ月後のこと。
夏休みに入る前、私の家がやっている剣道の道場に連れていった時のことだ。(千冬本人の同意無し)
お父さんに言われてちーちゃんが竹刀を初めて握って幾らか練習をした後。
無理矢理引っ張っていったものだからちーちゃんは自分の家に帰る道が分からず、電話を貸して迎えにきて欲しいってちーちゃんが。
迎えに来た時にあったのが初めての出会い。
まぁ、その時は顔を見たってだけで碌に挨拶もなんにもしないで、おじさんはちーちゃんと手を繋いで帰っちゃったけど。
それから、ちーちゃんの才能を見抜いたお父さんが、態々家に行っておじさんを説得してちーちゃんが剣道を始めたり、なんて色々あったけど本格的に関わり始めたのは、ちーちゃんが剣道を習い始めてから二週間ぐらい経ってからのことだった。
ちーちゃんと一緒に来て、何やらお父さんにボコボコに扱かれているのを尻目にしながらちーちゃんと稽古していた。
お父さんにボコボコにされ終わった後、私に挨拶をしてきたのだ。
「初めまして、か?」
「初めまして」
「千冬と、仲良くしてくれてるんだってな。毎日楽しそうに話してるよ。ありがとう」
「いえ」
特に興味も無かった私は、一応ちーちゃんのお兄さんだし、と言うことで適当に返答していた。
後々ちーちゃんに聞いた話じゃおじさんは、子供にそんな塩対応と言うか、友達の兄貴だし仕方無く応答されてるって分かったから相当落ち込んでいたらしい。
うぅん、今考えてみるとメンタルが強いのか弱いのか分かんないね。
まぁ、ともかく私とおじさんの出会いは多分最悪なものだったと思う。
で、そこからどうして関わりが出来たのか。
それは、何ヶ月か道場で扱かれている様子を見てなんとなく、
「あ、こいつ多分普通じゃないな」
って感じたから。
最初は本当に酷いもんだったよ?泣きながら吐くわ気絶するわ鼻水垂らして顔や身体中に青痣作ったりしてて見てられなかったし私自身も心の中でさっさと辞めればいいのに、馬鹿だ馬鹿だと思っていた。
それでも普通じゃ無いと思ったのは、お父さんからの直接の扱きを耐え続けるだけでなく、ほんの数ヶ月後には別人クラスにまで変化していたから。
剣道もそうだけど、何よりも無手ノ型を教えられていたのに、決して弱音を吐くこともなく、ボコボコにされて泣いて吐いてても絶対に弱音は吐かないし辛そうな顔さえしたことがなかった。
そりゃ人間数ヶ月もあれば十分に変わると思うよ?でもあの変わり方はおかしい。早過ぎる、と言うよりは成長速度が異常過ぎだった。
それを見て。
「ねぇ」
「んぇ?おぉ、束ちゃん、だっけか。どうした?」
「おじさん何者?」
「おじっ……、俺、そんなに老けて見える……?」
そう声を掛けた。
おじさんは割とおじさんって言われたのがショックだったのか凹んでたけど。
確かにあの時っておじさん、まだ20代半ばなんだよねぇ。
確かにおじさんって言うにはちょーっと若すぎたかもしれないけど。
「いいから答えて。何者?」
「えー、何者って言われてもなぁ……」
そんな事は露知らず、私は答えを催促する様に急かした。
おじさんは、腕を組んでうんうん考えて。
「サラリーマンやってて、2人の妹養ってて現在進行形で師範にボコられてる男?」
「いやそう言う事じゃなくて」
うん、聞きたかった事とはまるで違う返答が返ってきた。
でも、嘘発見器は反応していなかったから本当のことなんだろう。
一応、この時すでに簡易的な嘘発見機をウサミミカチューシャ型にして作っていた。
今のものとは精度は比べるまでも無いけど、表層意識は確実に真偽を見分けられる性能はあった。
いやでも故障してるかもしれないし……。
そう思って適当にいくつか質問してみる事に。
「……ちーちゃん達の事、どう思ってる?」
「え?そりゃぁ、めちゃんこ死ぬほど愛してるに決まってるべ」
「命賭けられる?」
「勿論」
「世界を敵に回せる?」
「余裕」
「……もしアメリカ大統領を殺さないとちーちゃん達を殺すって言われたら?」
「もし本当にそれしか助ける方法が無いってんならぶっ殺す」
全部嘘じゃなかった。
この人、血が繋がってない、詳しい素性も何も分からない、分かっていない、見捨てても誰も文句を言わないのに。
それでも、ちーちゃんといっちゃんの事を助けたんだ。
それで、これほどまでに愛してるんだ。
でも、もしかしたら嘘発見機が壊れてるかもしれないから適当に嘘をつかせてみよう。
「ちょっとなにか嘘ついてみて」
「えっ、えー、うーん……。今日は師範に勝てたぜ?」
あ、反応した。
って事は今までの事は全部本当。
ちーちゃん達を馬鹿みたいに愛してるのも本当なんだ。
そしたら、私のことどう思ってるのか、ちょっと聞いてみたい。
他の大人は、適当な嘘を並べるばかりで本当は、私をいつも化け物扱いしてる。
だけど、もしかしたら。
「……私のこと、どう思ってる?」
「えっなにその唐突な質問」
「いいから早く答えて」
「あぁ、うん分かった。どう思ってる、かぁ……。千冬の友達で、なんか賢そうでめっちゃ可愛い子だなぁ、ぐらい?というかそれしか知らん。あといきなり質問攻めしてくる変なやつ」
これも全部本心らしい。
「……ロリコン?」
「ち、ちがわい!」
あ、ロリコンでは無いんだな。
いきなり可愛いとか言うもんだからもしかしてとも思ったけど。
でも変なやつ、か。
「ねぇ、なんで変な奴って思ったの?」
「そりゃお前、初対面の時あんだけ塩対応されて今の今まで喋らなかった子供が急に話しかけて質問攻めにしてきたらそう思うだろ。逆にわーい子供に質問攻めにされた!嬉しい!もっとカモン!って思えるか?思われたとしたらキモいだろ」
「確かに」
「だろ?」
なるほど、と言うことは私の態度が大きく変わっていて変なやつ、と思ったのか。
確かに私でもおかしな奴だなと思うしなんなら二度と近づかない。
ってことは、この人は私の事を恐れていたりするわけじゃないらしい。
……もしかしたら、あれを見せても怖がらないでいてくれるかな?
あれ、と言うのはInfinite・Stratos〔インフィニット・ストラトス〕の基礎理論とそれをもとに描いた設計図。のこと。
この時既に私は宇宙へ向かうために多くの技術の構想を練っていて、既に資金と資材、設備さえあれば実現可能な技術もいくつかあった。
その中には具体的な紙の上ではなく、立体化して設計図を練るために必要な投影型ディスプレイや粒子化技術、といったISそのものを開発するために予め必要な技術が多く存在していた。
これをまずは作って問題点を洗い出して、改良していかないととてもじゃないけどISそのものを開発することは出来ない。
それを実現するためにその図面や論文を学校の先生に見せたら、それこそ本当に化け物扱いされた。
その噂は学校中に広まって、保護者達も。
お父さんとお母さんはそうじゃなかったけど、やっぱり理解はしてくれなかった。
でも、もしかしたらこの人は……
そう、考えた私は無理矢理手を引っ張って自分の部屋に連れて行った。
「ちょ、何いきなり!?」
「いいから付いてきて」
困惑するおじさんを尻目にズルズルと手を引いて。
設計図やらなんやらが堆く積まれている私の部屋ドアを開ける。
そして、それをみておじさんが開口一番に放った言葉は、
「部屋汚ったな!!」
だった。
「ねぇ、それ女の子の部屋を見て言う言葉じゃ無いと思うよ」
「いや、でもこれはァ……、汚ねぇとしか言いようがないぐらい散らかってるじゃん……。しかも小学生の部屋だぞ?その何処にトキメキを感じればいいんだ俺は」
そんなこと言われても、と困り顔でそうおじさんは言っていた。
まぁ、確かにちょっとばかり散らかっていたかな、とは思うけど。それでも酷くない!?乙女の部屋を見て一言目が部屋汚いって!いや、私じゃなかったらビンタだよ、ビンタ。
「え、なにこの汚い部屋を態々見せるためだけに俺を連れてきたと?……師範になんて言やいいんだ……。あれか?片付けさせた方が良いですよ、とでも言えばいいの?……俺が殺されるわ!」
「んなわけ無いでしょ。見て欲しいのは、もっと別の物」
「ゴキブリとか可燃ゴミ出されても困るんだけど」
「そんなもの態々手で掴んではいどうぞ、なんてするわけないじゃん。これを、見て欲しいの」
おじさんと、会話しつつ部屋の中に入って一番大事にしておいたISの基礎理論、設計図を唯一綺麗にしておいた机の上から持っていく。
そして、ファイルに入れられたそれを、心臓の音が自分でも聞こえるほどにドクンドクンと鼓動して震える手で突き出す。
「……なんだ、これ?なんかの設計図か?」
「私が、考えたマルチフォームスーツ。宇宙空間での使用を前提に一から基礎理論の論文とその設計図なんだけど……」
「ほー」
私が説明すると、なんとも気の抜けた返事が返ってくる。
「え、それだけ?」
「いや、うん、俺馬鹿だし、んな難しいこと言われても……。自慢じゃ無いけど中高六年間数学赤点だったし、こんな計算式とか見せられると、うへぇ、数字だぁ……って思っちゃうわけでして」
「……他に、何か思わない?気持ち悪いとか、怖いとか」
「は?なんで?これ、お前が必死になって考えたんだろ?それを馬鹿にしたりはしねぇよ。ただ、凄すぎるのと俺の知能じゃこれがこうなっててあぁなってんのね、って理解できないからすげぇなぁ、としか感想が出ないだけ」
私が思い切って聞いてみるとそんな、何馬鹿な事言ってんの?って顔で当たり前のようにそう言った。
自分の耳が信じられなかった。
そう鼓膜から脳に伝達されていることが信じられなかった。
だって、その言葉は私がずっと待ち望んでいたものだったから。
嘘発見機は、反応していない。
さっき、壊れていない事はちゃんと証明されているから尚更信じられない。
本人は、当たり前だと、そう答えてそう思っているのが普通だと思っているんだろう。
でも。
わたしには違った。
誰も理解してくれなくて。
誰も理解しようとしてくれなくて。
誰も受け入れようとしてくれなくて。
皆が拒絶して。
皆が否定して。
皆が怖がった。
でも。
この人は、自分が馬鹿だから分かんないけど、って言っても理解しようとしてくれた。
今も、設計図を縦やら斜めやらに回して眺めて、論文を眉間に皺寄せながら、
「何書いてあるか分かんねぇ、俺社会とか歴史なら得意なんだけど理系はからっきしだからな……。何これ浮くの?飛ぶ?はー、すげー」
なんて言いながら読んでいる。
論文なんて誰も読んでくれなかったし、こんなものを書く暇があるなら漢字の書き取りとかやったらどうだ、って言われてゴミ箱に捨てられた事もあった。
本人は、何が書いてあってとか何を表しているのかとか分からないんだろう。
でも、それを置いたりしないで、ちゃんと1ページ1ページを丁寧に、丁寧に捲って時間を掛けて一字一句読んでくれている。
この世界には、私の夢を馬鹿にしないでちゃんと聞いてくれる人が、理解しようとしてくれる人がいるんだ!!!
そう私が理解するまでに、たっぷり三十分。
理解したら、それはもう堪らなく嬉しかった。
身体の奥の方から、喜びだったり色々な感情とかが出てきて収まらな
い。
「ぐすっ、うぇぇぇ……!」
「えっ、ちょっ、なんで泣いてんの!?俺なんかした!?」
「ち"か"う“よ"ぉ“ぉ“ぉ“!!」
産まれて初めて、涙を流した。
あれだけ理解してくれなかったりしても、絶望するばかりで泣いたりしなかったのに。
初めて流した涙は、とっても温かかった。
「いやもう、いきなり泣くの勘弁な……。マジ焦るから」
「うん、分かった」
「しっかしよく考えたなぁ。正直全体の設計図だけなら誰かが思い付きで書いたぐらいにしか受け止めんけど、内部構造とかの設計図だけじゃなくて論文まであんだから凄ェ。しかも小学4年生でか。凄いなんてもんじゃねぇな、こりゃ」
この時私が設計した機体は全身装甲型のもので後々白騎士となる設計図だ。
だから、確かに普通に全体像を書いた設計図だけを見たらそう思う。
「いや、素人が見ても明らかに技術革新なんてレベルじゃ無い技術ばっかじゃん。シールドバリアとか量子化って完全SFじゃん」
私が引っ張り出した椅子に座って、読みながら感想を漏らすおじさんは、目を輝かせていた。
その様子を見て、ふと疑問に思った。
「その、なんで嘘じゃ無いって信じてくれたの?なんで、怖かったりしなかったの?」
私が、目を見て言ったからか、設計図や論文を一度机に置いて真面目に話し始めた。
「俺の知ってる名言にな?
他人のものさし
自分のものさし
それぞれ寸法がちがうんだな
ってのがあるんだ。それで考えると俺の中での常識やら出来る事のものさしと、えー、なんて呼べばいい?」
おじさんは、そう聞いてきていた。
今思えば真面目に話し始めたのに、こんな事聞いてくるなんてなんともおじさんらしい。
「束でいいよ」
「そっか、それじゃ束。俺の中での常識やら出来る事のものさしと、お前さんの中にある常識やらのものさしは全くの別物なんだよ」
「例えば?」
「俺にはこんな難しい計算は出来ないけど、束には出来る。な?違うだろ?人間ってのは、そのものさしを無理矢理他人と同じ長さに、大きさに近付けて生きてんのさ。だから、そう合わせようとしないやつを、こいつはおかしいやつだって言って馬鹿にしたり仲間外れにすんだよ。だけど本当に馬鹿なのは合わせてる奴らだ。だってそうだろ?自分の本当の価値観とかを全く口に出さないんだから。んなもん損じゃねえか。まぁ、でも、そうしないと社会が回らなかったりすんのは事実なんだけどな」
そう話すおじさんの言葉は、どこか説得力があった。
社会人として働いて、ちーちゃんといっちゃんを養って生きていく中で、おじさん自身がそうしてきたからだろうか。
「でもなぁ、束。別に1人か2人ぐらいはそんな事しなくてもいいと思うんだよ」
「で、だいたいそうやって自分のものさしを他人に合わせる事なく生きてる、生きていた人間は世の中の常識をぶち壊して、前にガンガン進んでいって大抵、変人だって呼ばれて後々時代や世界を変えちまう奴が多い。ニコラ・テスラやスティーブ・ジョブズ。マジモンの変人だぜ?一回調べてみ、幾らでも逸話は出てくる。だけどな、今じゃ俺達の生活に必要不可欠な物を生み出したのも、この人達なんだ。それが無かったら、今ごろ人類の生活は中世以前だろうよ」
おじさんは、そう言った。
確かに、その先人達の偉業があってこそ今の生活がある。
少なからず私だって恩恵は受けているし、それこそ山奥に自給自足で大昔と同じような生活をしない限りは現代文明に全く触れないなんて事は無い。
その生活を送ったとしても、何かしらの恩恵は受ける。
「束、俺の勘でしかないんだろうけど、お前は世界を引っ繰り返すなんてレベルじゃ無いぐらいに世の中を変える人間になる。それが、良い方向なのか悪い方向になのかなんて俺には分からない。束にだって分からない筈だ。だけどそんな事気にすんな。未来の束や誰かがなんとかすんだろ。やりたいようにやりゃいい」
そう言って語るおじさんは、未来の自分に放り投げるなんて大人としていいのか、と思うようなことまで言っていた。
でも、そうやって私を諭してくれるその言葉一つ一つは、全部嘘偽り無くて私の事をちゃんと考えてくれているって、嘘発見機を使わなくてもすぐに分かった。
「それに、お前あれだろ。学校とかでイジメっつーかハブられたりしてるだろ」
「うっ、それは、まぁ、そうだけど……」
唐突にそんな、割と気にしてる事を言われた。
「まぁ、他人と違う奴を、ってのは昔からよくあるもんだ。遊びに誘っても来ない、とかそんぐらいでいじめられる事だってある。千冬だって昔いじめられてたからな。まぁ、そん時は俺が出てって解決したけど」
「何が言いたいの?」
「束がいじめられている理由は、周りとは全く別の次元にいるんじゃないかってぐらい頭がいいからだ。自分達と違う、違う様に見える奴を排斥しようってのは、ある種の本能だ。野生動物で考えると分かりやすい。見た目が違うって事は何かしらの病気を抱えている可能性がある。それを考えると、野生の中で生きなきゃならない動物からしたら、群れが全滅する可能性すらあるから死活問題だ。人間にも、本能として備わっているからな。だけど人間はそれらを抑えて生きていける生物だ。束がそうされている理由は、相手もまだ子供で自分の感情や本能をコントロール出来ないから」
「先生達だって怖がってお前の話をまともに聞きやしねぇから大人を簡単に信用しないんだろ?俺が初めて束と会った時の態度見りゃ誰だって分かる。でもなぁ、束。大人にだって怖いもんはあるしこんな子供に負けてたまるかってプライドもある。多分、恐怖ってのもあるんだろうが大部分は負けを認めたくないってだけなのさ」
「でも……」
それだと、私は、私の夢はいつまで経っても叶えられなくなっちゃう。
「あぁ、そうだ。お前が思ってる通りこれじゃ夢なんて叶いやしねぇ。俺から言わせればそんなプライドなんざドブにでも捨てちまえ、犬にでも喰わせとけって思ってるがな。だけどそうもいかねぇのが人間なんだな」
「じゃぁ、なんでおじさんは捨てられるの?」
「だって、そうやって子供を見てやんないと育たねぇだろ?」
なんでこの人はそんな当たり前に言えるんだろう。
普通だったら、自分だってそうなる筈なのに。
「プライド、無いの?」
「俺、面倒くさがり屋だからさ、ガキの頃から面倒の一言で色々と諦めてきたんだよ。勉強なんて好きな科目以外碌すっぽしてこなかった。就職活動だって適当にやってたら、偶々俺みたいな奴を雇ってくれためちゃくちゃ良い会社があったってだけ。要は運が良かったんだな。碌にやる事やらないで生きていた分、苦労もしたし手取りの給料少なくて千冬達に我慢させてばっかで賃上げしてくんねぇかな、ってボヤく時もある」
「でも、俺にちゃんとプライドはあるぜ?妹の前でカッコ悪いとこ見せたくないとか、沢山幸せにしてやりたいとか。俺がポカした時、怒るけど尻拭いを手伝ってくれる先輩とか上司の人達に恩返ししなきゃ、とか。でもさ、このプライドって人間なら当たり前に持ってなきゃおかしいんだよ。だってそうだろ?家族には幸せになってほしい、幸せにしてやりたい。恩を受けたら恩返しをしなきゃ。カッコよくいえば俺は、持ってても得しない、仕方がないプライドを捨てただけ。ただそんだけのことなんだよ。俺のプライドなんて、どうでもいいんだ。だって千冬と一夏が笑ってくれてんだ、それで俺のちっぽけなプライドなんて溢れるぐらい満たされてんだから十分だろ」
プライドを捨てるってことは、簡単なことじゃない。
誰だって、一度持ってしまったプライドを簡単に捨てることはできないし、諦めることもできない。
だけどこの人は簡単に捨てている。
「だけどな、束。お前はそのプライドを捨てなくても良い。なにせ数億人分の才能を全部固めたんじゃねぇかってぐらい、それでも足りないんじゃ無いかってぐらいに恵まれてる」
「でも、それでまた馬鹿にされたら?」
「はっ、他人の夢を馬鹿にして、踏み躙る事しか出来ない奴の事なんて気にすんな。どうせ、そいつらには束ほどの努力をする気も無いし自分の夢を胸張って語る勇気すら無ぇんだからほっとけほっとけ。気にするだけ無駄だ無駄。だからな、お前の凄さに気がついた時、馬鹿にした連中に、あん時束と仲良くなっておけば良かった!!って死ぬほど後悔するぐらいになってやんのさ。そうすりゃ見返せるだろ」
簡単に、おじさんはそう言ってくれちゃって。
それがどれだけ難しいことか。自分で言うのもあれだけど、小さい頃の私は承認欲求が誰よりも強かった。
まわりから認められていなかった、理解されていなかった分、周りから認められたくて仕方が無くて。
それでも認めてもらえなくて更に頑張って。それでも、理解してくれないし認めてくれない。
せめて、理解して欲しいとは言わないから、認めて欲しかった。
だけど、そんな私の思いを知ってか知らずか、鼻で笑いながらそう言い切って見せたおじさんの顔は悪そうな顔だった。
なるほど、確かにこの顔を見せたのは多分この時だけだったかもしれない。
「そしたらさ、そこまで行ける様に、私が夢を叶えたいって言ったら応援してくれる……?もし、私が別の夢を見つけるまで応援してくれる……?」
「まぁなんで俺なのかってのは置いといて、そりゃ勿論幾らでも応援してやるさ。手伝って欲しいってんなら、手伝ってやる。それが大人ってもんだ。仕事とかあっから毎日とは行かんけども」
「それに小学生だろ?好きにやりゃいい。今の内だぜ、自由気ままにやりたい事やって馬鹿な事やって、失敗したり怪我したりしても笑っていられるのは」
最後にそう言って笑い掛けてくれた。
流石に今みたいに頭を撫でてくれたりはしなかったけど、それでも誰にも認めて貰えなかった、応援して貰えなかった、自分の夢を。
この人は、応援してくれるって、手伝ってくれるって言ってくれた。
何度も言うけど、世界に絶望しかけて殻に閉じこもりそうだった私に大き過ぎる希望を見せてくれた。
それは、おじさんからしたら極々当たり前の考えで、答えだったのかもしれない。
だけど、それによって私が、篠ノ之束っていう1人の女の子の心が、未来が救われたのは紛れもない、変えようもない事実だった。
「ねぇ!」
「うおっ、いきなりどうした」
「もっと意見聞かせて!これを見た感想とかなんでもいいから!」
「俺さっき馬鹿だよって自己紹介したんだけど、君はそんな俺に死ねと申すか」
「いいからはやく!」
「えー……」
嬉しくてしょうがなくて。
座ってるおじさんに強請ってその日はいつまで経っても帰って来ないおじさんを探しにきたちーちゃんに見つかるまで、ずーっと意見を貰っていた。
「えっと、その……」
「何だよ、束。そんな改って」
「お兄ちゃん達以外に、私の夢を理解してもらいたいとは言わないけど、話を聞いてもらったりするにはどうしたら良いですか!!」
おじさんと仲良くなってから暫く。
私の中にはもっと沢山の人に私の夢を、理解してもらいたいなー、とかせめて話を聞いてもらいたいなー、って欲が出てき始めた。
と言うのも、おじさんと出会ってからも今までのことがあったりで誰かに自分の夢の話をしたりするのが怖かった。
いや、隠さずに言うなら私は元々人とコミュニケーションを取るのが苦手だった。
だから、自分から声をかけるのも物凄く勇気がいるし、話し掛けられたとしてもネガティブな感情が収まらなかった。
おじさんは、多分どんな人相手でも分け隔てなく接することができるタイプで、その才能は天性のものだ。
しかも、聞き上手ときたもんだから私ですら、夢を理解してくれるかもってのを抜きにしても話しかけやすい、簡単に話しかけられた。
だからおじさんと仲良くなれたし、一日中飽きる事なく、おじさん相手に宇宙の話とかをすることが出来たんだと思う。
いつも楽しそうに笑っていて、悪戯好きで、何考えてんの?って事をしようとしたり飄々としてたり、なんか掴みどころが無いような、あるような変な人だけど。
相手が悩んでいたら、話を聞いて欲しかったら、真面目に真摯に答えてくれる。
自分の意見を押し付けるわけじゃなく、相手の意見がどう言うものなのかをちゃんと聞いて、その問題点を相手の癇に障る様な言い方じゃなくて、優しく諭すように指摘してくれる。
多分、相当話し上手なんだろう。
しかも年上に可愛がられる愛嬌というか馬鹿さ加減もある。
それでいて礼節はしっかりしていて責任感も強いし常識もある。
おじさんは、コミュニケーション能力にステータスを全振りしたような人だと思う。
じゃなきゃ初対面の人相手にあれだけ話せないし、仲良くなることも出来ない。
私は、そんなおじさんに相談が一つあった。
と言うのもさっきも言ったけど、おじさんやちーちゃん達以外の人達にも、理解されなくてもいいから、話を聞いて貰いたかった。
私は、コミュニケーション能力がないから皆に話を聞いて貰えないんじゃないかって、おじさんと接していて分かったというか自覚した。
だから、それをどうにかしたくて。
少なくとも自分よりは圧倒的にそう言うのに優れているおじさんに相談してみたのだ。
「他の人に、話を聞いてもらうにはどうしたら良いか?」
「うん」
おじさんはうーん、と言って頭を捻る。
今思えば、変えなきゃいけないところだらけでどう言い出せば良いのか、切り出せば良いのか悩んでいたんだろう。
「そうだな、まずは身なりに気を遣ってみたらどうだ」
「身なり?」
「おう。はっきり言えば束、お前はだらしがない!」
「んなぁっ!?」
「服はヨレヨレ、髪は碌に手入れしてないから伸び放題でボサボサ!毎日夜更かし徹夜ばっかだから隈はすごいし肌も荒れている!爪も手入れされていない!」
「あ、あ、あ……」
「人間、中身が大事だと言うが実際は見た目で殆どの印象が決まるのだ。その点、束の第一印象は宜しくない!なんなら最悪だと言ってもいい!」
おじさんは、ズビシィッ!とその事実を突き付けてきた。
酷くない?自分を慕ってくれてる女の子相手にそこまで言うとか酷くない?普通なら泣くよ?号泣からのお父さん報告案件だよ?
だけどそれが事実だから何も言い返せない。
確かに、髪の毛なんて床屋に行くのも面倒だったから適当に伸ばして、自分で切ってを繰り返してたし研究の方が睡眠時間とかごはんよりも天秤傾いてたし爪も適当にハサミとか、最悪自分で噛み切って終わり。
肌の手入れなんて考えたことすらなかった。
服だって別に着れさえすればいいからおんなじ服ばっか着回してた。
大人になった今でこそ、確かに身なりとかそう言うのに物凄く気を遣ってるけど。
恋する乙女は最強になれるのだ!と言うわけでして。多分おじさんの存在がなかったら今も碌な事になっていなかったと思う。
「束なぁ、元は美人だから適当にしてないでちゃんとすりゃ絶対良いと思うんだよなぁ。そしたら話ぐらい聞いてくれる様にはなるんじゃねぇの?見てくれがよけりゃ大体の奴は話聞いてくれっからなぁ。そもそも自分の管理ができない奴が宇宙に行きたいなんて言語道断だぞ!」
「うわぁぁぁん!お兄ちゃんサイテーだよー!」
「事実を述べたまでですー、悪いことは言ってませーん」
「こんにゃろー!!」
「はっはっはっは、マトモになってから出直したまえよ」
おじさんの言ってることは事実だったから、尚更心にグサグサッと突き刺さった。
掴みかかっても、確かに私だって強いけどおじさんはこの頃から馬鹿みたいに強くなり始めていたから片手で頭を抑えられて終わり。
そんな私は思った。
くそぅ、絶対お兄ちゃんをギャフンと言わせてやるんだから!
1ヶ月後。
髪の毛もちゃんと床屋で切ってもらって、服装にも気を遣って、早寝早起き3食キチッと食べて。
爪も噛み切ったりしないで爪切りで切って揃えて。
肌の手入れとかも面倒だったけどちゃんとやって。
そしたら1ヶ月前の自分と見比べると今でも別人なんじゃないか、って女の子が鏡の前に立っていた。
「ふふん!お兄ちゃんどーよ!私は!かわいいでしょ?」
「おー、可愛い可愛い」
「リアクション薄くない!?」
私の身なりを指摘した当の本人が、こんなんって、私どうすればいいの?
なに、ほっぺをビンタしつつ引っ掻いてやればいいの?
「もうちょっとなんかないの!?リアクションが薄過ぎるんだけど!」
「えっ」
「流石の私でも傷付くよ!」
そう訴える私の願いを聞き入れてか、腕を組んで私をまじまじと見る。
「うん、服装もしっかり整えられてるしちゃんと髪の毛とかも手入れしたみたいだな。元から美人だとは分かってたけども、うーん、こりゃたまげたなぁ。よく頑張ったじゃないの」
「んへへへへ、そうでしょそうでしょ?」
自慢げに胸を張ってドヤ顔する私を見て、笑うおじさんはとても嬉しそうにしていた。
今思えば、もうこの時にはとっくにおじさんの事が好きになっていたんだろう。
もっと自分を見て欲しくて。
お母さんに頼んで自分磨きを本格的に始めた。
もちろんISの開発もしてたから忙しいといえば忙しかったけど、それでもその度におじさんが褒めてくれるのが嬉しくて、その時にはもう、周りの事なんてどうでも良くなっていた。
確かに、私が身なりに気を使い始めたりしてから周りは私に寄ってきたけど、あからさまな下心だったりが丸見えで寧ろ近付かないで欲しいなぁ、って思う様になっていた。
だから、おじさんだけが私を見てくれれば、見ていてくれれば良かった。
「そーいえばさ」
「ん?」
「お兄ちゃんって宇宙に行ったら何したい?」
「んー……。火星で芋育てたい」
「えっ何そのピンポイントな夢」
「いやさ、俺が高校生ぐらいの時かなぁ、火星の人っていう小説があったんだよ」
「へー」
「火星探査で、火星に何十日か行って嵐に遭遇して、それがとんでもなくでかくて。で、緊急離陸するんだけど吹っ飛んだアンテナが主人公にぶつかって死んだって思われて、火星に取り残されちまうんだよ」
「で、次のミッションまで生き残って生きて地球に帰るってストーリーなんだけど、これの作中に自分達のウンコ使ってジャガイモ育てる描写があってさぁ。なんか知らんけど、スッゲェ憧れたんだよなぁ」
おじさんは、キラキラした目でそう言ってた。
確かに、火星とかで農耕するのも楽しそうだ。私の他の惑星に行ったらやりたいことリストに書き加えておいた。
それから数年の月日が流れて中学生に。
背も伸びて、おじさんの持っているパソコンの中に入っていたえっちな画像で髪が長い女の人が好きだって分かってから伸ばしている。それも限度はあるけど大体腰を少し超えたぐらいにまで伸ばしていた。今もそうだけど。
その髪を三つ編みにしたり、頭の上辺りで軽く結んで垂らしたり。ポニーテールやサイドテール、いろんな髪型を毎日日替わりでセットしていた。
毎日おじさんのところに見せに行って。
この頃はすでにちーちゃんもおじさんが好きだって自覚し始めたのか、取り合いになっていたから特に部活に入っていなかった私は、土日はおじさんと一緒に過ごしていた。
ちーちゃんは剣道部に所属して、小学生の習い始めた時から既に頭角を表していて有名な超強い選手だったから土日も毎日練習でいなかったし、箒ちゃんといっちゃんも、この頃はとっくにうちの道場に通い始めていたから、その送り迎えで来ていたおじさんと土日は限られた時間だけど2人きり。
ちーちゃん、強豪校に行かないで一番近くの私と同じ公立中学校に進学したもんだからそりゃもう皆驚いてた。
だってあっちこっちの中学からお誘いがあるぐらいには強かったし。
でも本人曰く、
「そんなのどこも遠いじゃないか。兄さんと一夏と離れ離れになるのは嫌だからな。それに、全国に行くと言うのなら別に、強豪校でなければならないなんて訳でも無い」
って言っていた。
簡単に言えば、家族と離れたくないってだけ。
後々に言ってた全国云々の話は一応それらしい理由を付けておこうっていう見栄だと思う。じゃなきゃ勧誘が凄過ぎて断り切れなかったらしいし。
まぁ、結果的に言えばちーちゃんは剣道の全国大会で優勝をあっさりと掻っ攫って行った。
すでに同年代じゃ負け無しだったし、当然と言えば当然かな。
そりゃ毎日、うちの道場の大人達相手に稽古してたんだから当たり前だよね。
なんならお父さんやお母さんには誰にも敵わないぐらいには強いから家から近い学校の方がより強い相手と戦えるからその方が良かった。
でも、部活と道場の両方で剣道をやってたもんだからお兄ちゃんと過ごす時間は減った、って学校でぶつくさ文句言ってたっけ。
私はおじさんを独り占め出来る時間が増えるから良かったんだけどねー。
土日は基本、朝からの稽古に参加する箒ちゃんといっちゃんを送り届けて家に帰って1週間分の溜まった家事をこなす。
そんなおじさんのところに私は通ったり、私の部屋に招いて研究の手伝いをしてもらったりしていた。
思えばあの時が一番幸せだったのかもしれない。
今も十分以上に幸せだけど。
時折ちーちゃんも一緒になって研究していた日々は、何者にも変え難い日々で。
あぁ、それと念願のパソコンを手に入れた。
おじさんが、家にあったもう使っていない古いデスクトップパソコンを譲ってくれたんだ。
売るにしても型が古すぎたらしい。
それでもいいんなら、って。ちゃんとインターネットとかには接続出来たから問題無いんだけど、流石に設計したり私が開発したソフトとかを入れるには性能が低くて、自分でパーツを買いに行ったりして改造はしたけど、未だにそのパソコンは改造増設やらなんやら繰り返し行って使い続けている。
おじさんに頼み込んで、資金を得るための元手となるお金を1万円貸してもらって、あとはお父さん名義で色々な手を使って稼ぎまくった。研究資金はいくらあっても足りないから。
お年玉とかは貰っていたんだけど、設計図や論文を書く為の道具を揃えたりしたらすぐに底をついちゃっていた。
パソコンも買えるほど貰えなかったし持っていなかったし。
増やしたお金は、借りた分をおじさんに返してあとは研究資金に注ぎ込んでた。
そして、パソコンに触れて様々なことを知った。
良いこともたくさんあった。おじさんのパソコンを覗き見して性癖をゲットしたのもそうだし、おじさん攻略に一役買ってくれてる。
でも、それ以上に世の中が、子供だった私にはどうしても受け入れ難い悪意に満ちている事を知った。
ある日のことだった。
パソコンを使って、色々と調べ物をしつつ拡張した画面やキーボードを叩き続けていた時のこと。
不審なアクセスを受けた。
いわゆるサイバー攻撃ってやつ。
私が構築した防御プログラムは常人にはどうやったって抜くことはできないから諦めたらしいけど、私はカウンターを食らわせてやった。
最初は、単純に情報やお金狙いかと思っていたけど行き着いたのはドイツのある研究だった。
それは、人間のクローンを研究し、そして作り出していた、今思い出すだけでも吐き気や震えが止まらなくなるぐらいに悍ましくて悲惨な研究所。所謂試験管ベビーを作り出していた。
人工的に最強の兵士を作り出す事が目的で、その作られた命の殆どが女の子。
理由は簡単。女の子なら前線で戦いながら他の兵士の慰安もできるから。
そう言う目的で、ここは命を作ってはいじって、殺して廃棄していた。
ただし軍隊全てを置き換える気は無かったらしい。
と言うのも、軍隊というのは昔から貧困層の職場、受け皿として機能していたから。
それを全て人造兵士に置き換えたら、国によるけど最低でも数十万人の失業者が国内に溢れる事になる。アメリカみたいに大きな軍事力を保持している国だと、最低でも100〜200万人の失業者を生み出すことになる。
これは単純に失業者を増やす、と言う問題に直結するだけじゃなくて国内の治安悪化は免れないしそうなると犯罪率の増加など上げるだけでキリがない。
行政、司法、経済全てに小さくない影響を及ぼして最悪、国が立ち行かなくなる。
特に今の時代、グローバル化が進みに進んで多くの国同士が結びついて成り立っていたりするから、世界規模で見れば世界恐慌やリーマンショックなんて比にならない。
と言ったけど、単純に技術的な問題が大きかったんだろう。
私からすればどうってことはないけど、人造人間を作るのは簡単な事じゃない。
ホルモンバランスなどの調整だって常人からすれば難しい。
さらに言えばクローンと言うのは普通に生まれてきた生物と違って寿命が極端に短かったりする。
人間をクローンで作った場合、普通ならば100年生きられると仮定してもクローンはその三分の一を生きられるかどうか。
人間の寿命というのは、事故や病気などの要因が無ければ細胞分裂の回数で決まる。
クローンはその細胞分裂の数が少ないのだ。
それに国際条約でも禁じられている。
ついでに言っておくと、クローン人間禁止宣言っていう宣言を国連は昔採択していたことがあるが、これ、一番に発案したのはドイツとフランスだった。
にも関わらず、ドイツは……。
後々になって、VTシステムの時に詳しく調べたから分かったことだけど、これにはフランスも一枚どころか数百枚は噛んでいた。
沢山の命がここで作られて、命を弄ばれてそして殺された。
それを見た時、私は一日中トイレに篭って吐き続けて、胃酸もなにもかも吐いて胃の中身が無くなってもずっと。
そしてずーっと考えていた。
私には、何が出来るのかを。
本当は目を逸らして逃げたかった。
でも、それをしたら私は人として終わる。何よりも、おじさんの隣に立てなくなると思ったから。
どうせ国に訴えても子供の戯言で終わりだし、そうするとそれを知った私が目を逸らさないでどうにかしなきゃならない。
そして決めた。
こんな事が繰り返されないようにその研究も、研究所も何もかもをこの世から欠片一つ塵一つ、分子量子何一つ残らず消し去ることを。
決して褒められたことじゃないのはわかってる。向こうだって大罪人だけど私だって研究データも何もかもを消し去ったらそれはそれで犯罪だ。
だけどそれでも私はやると決心した。
決めてからは早かった。
1週間ほど学校を休んで下準備を整えた。
この時にはもう資金的な問題なんて全く無かったし、作りたいものを作りたいだけ作ることが出来た。
私が今も使っている転移装置もその一つ。
これも使った。だって、電子上にだけデータを残しているはずがない。もし紙に書いてあってそれを持ち出されたらアウト。
だから私が直接出向いて全て電子上のデータを消した上でそれらも全て手段を問わずに消す。
ただし、万が一のためにそれらのデータはコピーを取っておく。関わった全ての人間のリストも。
そして。
全ての準備が整って。
「さぁ、これで終わりだ……」
エンターキーを押した。
エンターキーを押した瞬間、全ての記録やデータが抹消されていく。
初めから、この世に無かったかのように。
それと同時に転移装置でドイツにある研究所に飛んだ。
山を掘り進めて作られた、その研究所はなんでもないかのように佇んでいた。
扉なんかは全部電子ロックだったから、簡単に入れる。
中の雰囲気は、とても怖かった。心霊スポットとかそういう感じだけど次元が違う。
空調設備で最適な温度にされていたはずなのに、私にはとても寒く感じて体が震えていた。
足を進めて書類も何もかも消す。痕跡一つ残らず。
誰にも気付かれる事無く、ただ心を無にして感情を押し殺して。
そして、私はクーちゃんにであった。
全部消し去った後。
消し忘れが無いか確認しつつ最深部に進んだ時の事だった。
役立たずとして処分された子達の遺体を見つけた。遺体が積み重なっていた。ただただそこに放置されていた。
吐き気が込み上げて。身体が震えて。
また吐いて、吐いて。
足が震えて、へたり込んで。
体に鞭打って立ち上がる。
ちゃんと弔ってあげないと。
せめて、それが罪を犯した私達の贖罪なのだから。
遺体を外に運んで一人一人火葬をしていた時。
最後の子を抱き上げた時、ピクリと身体が動いた。
「え……?」
また、ピクリと動いた。
「!!!頑張って!」
その瞬間、私は直ぐに秘密基地に連れて行ってありとあらゆる治療を施した。
せめて、この子だけは!
その一心だった。
どうにか、ギリギリ助けられた。
だけど、細い細い蜘蛛の糸を綱渡りしているようなぐらいに不安定で今にも切れてしまいそうなぐらいギリギリの所で生きている。
助ける為に一心不乱に治療を施して。
そしてくーちゃんを助ける為にやり忘れていたけど研究所を事故に見せかけて吹っ飛ばした。
一年後。
くーちゃんの容態が安定した。
色々と手を尽くして施した甲斐あって普通の人間と同じ寿命を生きられるようになった。
「私は、篠ノ之束って言うんだ。えっと……」
自己紹介は酷いもんだったよ。
私はどう接すればいいか分からないしくーちゃんはくーちゃんで私を警戒してるし。
そして考えに考えた末に口から出た言葉は。
「私の事はお母さんって呼んで!」
だった。
(うわぁぁぁ!!やらかしたァァ!!)
内心パニックパニック大パニック。
幾ら何でも、いきなりこれはない。酷すぎる。
と言うか中学生でお母さんって、馬鹿なのかな?
そもそも年齢6〜7歳ぐらいしか変わらないし。
冷や汗流しつつ、自然な感じで笑顔を浮かべておく。
「あ……、その……」
「うんうんうんうん!いきなりじゃなくても大丈夫!ゆっくり、焦らず自分のペースで言ってくれれば、慣れてくれれば良いよ」
怯えながら何か言おうとするくーちゃん。
それを見てなんとも居心地の悪さを感じて良い感じで纏めつつ。
頭をおじさんがしてくれるように、優しく撫でた。
それからまた暫くして。
おじさん達と引き合わせてなんやかんやあっておじさんがお父さんになったりしたけど。
結局、一連の騒動で犯人探しをしていたドイツから逃げるべく皆の記憶を消させてもらった。
どこから足が付くか分からないし、申し訳ないけどね。
まぁでも、くーちゃんがおじさんに最初警戒してたのに何回か会ったら懐きまくってまさかお父さん認定するなんて思っても見なかった。
まぁ、原因というか発端になった発言は私なんだけど。
って事で、私には義理の娘が出来たのでした。
この頃には、ISの開発もかなり機動に乗り始めていた。
機体の設計も全て終えていたしそれに必要な技術も一つを除いて完成していた。
あとは、実際に起動して問題が無いか確認をして調整を行うだけ。
ただ、残った一つの技術っていうのが問題だった。
って言うのも、これら全てを稼働させるための電力をどうするか、っていう一番重要な部分がまるで完成の見込みが立っていなかった。
ってなると新しく開発するか、既存の技術を組み合わせるなりしてどうにかするしかない。
既存の技術を組み合わせたりするのは全部試した。
どれも駄目。どうやっても必要量を満たせなかった。
そうなったら、新しく開発するしかない。
さて、どうしたものか、と物凄く頭を抱えた。
って事で、色々とシュミュレーションしてみたんだけどどーにも決定的なものが足りない。
「新しい素材、探すしかないかぁ……」
夜、パソコンの前で頭の後ろで手を組みつつ、そう結論を出した。
そこからは取り敢えず一年間、世界中探して探して探して探して探しまくった。
ある国の、ある洞窟の奥深く、最深部を少し進んだ辺りでそれをようやく見つけることが出来た。
本当に、あの時何でもかんでも試してなかったら見つかってなかったかも、っていうぐらい偶然発見したんだけど。
私はこれを時結晶、タイムクリスタルって名付けたんだけど、これ相当特殊な物質で。
本当にただのなんの変哲もない石ころみたいだったりするんだけどある特定の加工方法を行うと、核分裂や核融合なんて目じゃないぐらいの莫大なエネルギーを発するようになる。
それに応じて純度100%、冗談抜きで透明の鉱物に変わるんだけど、ちょーっと問題があった。
っていうのも発生させるエネルギーがあまりにも膨大過ぎて、莫大過ぎて純度100%の状態で使うことが出来なかった。
だって、たったの数gだけのタイムクリスタルで、水素爆弾数百個分の爆発しかけたんだもん。
いやぁ、ほんとあの時ほど焦ったことはないよ。
後々の白騎士事件の時ですらそこまで焦らなかったし。
慌てて遥か遠くの何もない宇宙空間に放り出してなかったら今頃日本の周辺全部消えてたし、なんなら地球が消えてたかも。
観測したりして色々とデータを集めて。
どうすれば制御出来るか必死に考え続けた。
おじさんも、毎日とはいかないけど暇な時とか手伝ってくれていたし。
この事件のこと?そんなの言えるわけないじゃん。
そこで出来たのが、ISコア。
説明すると色々と長くなるから省くけど、色々と混ぜたら丁度良い感じになった。コア自体の色は個体差があって黒だったり白だったり虹色だったりもう機体ごとに使っているコアの色はバラバラというか滅茶苦茶。
その辺は別にまぁ、良いかな、って。
いやぁ、これがものすっごく良かったんだな!
お陰でISは完全とはいかないけど形になった。
コアの制御用の機械を取り付けようとしたんだけどどーも上手くいかないしなんならものすっごくダサい。
って事でコアそのものに制御用の基盤を書き込みました。
ついでに人工知能もぶっ込んで自動的に出力を制御出来るようにして。
搭載してみたらあらびっくり、形が色々変わるスライムと言うか、メタ○ンみたいな感じになったけどその辺は気にしないったら気にしない。
問題無いし。
搭載するまでは固体だったんだけどなぁ。
色々確かめてみた結果、どうやら搭載する前から人工知能やら制御機構を組み込んだときに既に自我が芽生えていたらしい。
と言っても、生物で見れば初期も初期のものなんだけどね。
それでも、すごいことだ。
ただ人工知能を搭載しただけじゃ自我が芽生えたりはしない。
多分、私が気合入れ過ぎたからかな。
これが後々コアに人工知能だけでなく人格、いわゆる知識欲などを付与することになるんだけどその話はまた今度。
いゃ、転移装置作っといてよかった。
お陰で素材探しとか捗ったし。無かったらもっと時間が掛かってたけど、最初に作っといて良かった。
それからはおじさんとちーちゃんに協力してもらいながらありとあらゆる実験をしながら修正、改良の連続。
ちーちゃんはテストパイロットとしてずーっと協力してくれておじさんは力仕事だったり色んな雑事だったりを引き受けてくれてた。
ある時はシールドバリアや絶対防御の実験で石を念のため一応、ゆっくり投げてみたら防がれなくてちーちゃんの顔面にクリティカルヒット。
ゴスッ、っと鈍くて痛そうな音が頭の中で響いた。おじさんもoh……、って言ってた。
考えてみたらシールドバリアって命の危険がある物を防ぐって設定してたから、そりゃゆっくり安全に投げたら防がれないよね。
それから全ての攻撃を防ぐ設定にしたんだよ。いやぁ、大変だった。
最初は何でもかんでも弾いちゃって一度電源をオフにしないと充電とかも出来なかったり、かと思えば逆に弱過ぎて石ころどころか砂つぶも通しちゃうし。
パワーアシストの実験じゃアシストし過ぎて秘密基地が吹っ飛びかけた。
「お“お“お“お“ぉ“ぉ“ぉ“ぉ“!?!?!タバネェェ!!」
「あ“あ“あ“ぁ“ぁ“ぁ“っぶなぁぁぁ!!」
「お、おま、お前!!死にかけた!私達死にかけた!」
おじさんもちーちゃんも私も冷や汗ダラダラ。
しかも一番シールドバリアが弱かった時だったから余計に。
珍しくあのちーちゃんもガクブルしてた。慌てて止めなかったら本当に死んでたかもしれない。
ってなわけで色々あってそりゃもう苦難の連続だったよ。
まぁ、でもすっごく楽しくて幸せだった。
因みに言うと、秘密基地は幾つか存在する。
一つ目は実家の敷地内にある。
これは一番最初に作ったものでここでISの開発を行ってた。
二つ目は海の中。
こっちを作った理由はISを開発するとかじゃなくて単純に海の中の秘密基地ってなんかカッコ良くない?ってのとくーちゃんを隠す為に。
三つ目は月面秘密基地。
これはISが完成して、白騎士事件が起こった後に作った。
って言うのも、ISを軍事利用しかしない連中に嫌気が差して、だったら私一人だけでも宇宙に行ってやる、って思ったから。
ISコアを作っていた時に、コソコソ隠れつつ自分用のISを作って資材を運んで作った。
いやぁ、あれはあれで楽しかった。
間違えてIS着込んでるからって慢心してそのまま与圧調整とか全くやらないで、パワーアシスト状態でガチャって扉開けて吹っ飛ばしたりしたけど。
これらの秘密基地は現在でも普通に稼働中。
月面基地以外は殆ど物置みたいになってるけどね。
元々実家にあるのは秘密基地じゃなかったんだけど結果的にそうなっちゃった。
あの時は特にISの開発も別に隠してたわけじゃないし。
ともかく、そんな毎日を中学高校時代は送ってた。
学校生活?おじさんのあの心に深々と突き刺さるようなアドバイスのお陰でそれなり。
結構告白されたりしたけど、私おじさん一筋だし。
まぁ?でも私ってば性格とかはさておき見た目は美人だもんねー。おじさんも私のこと美人って言ってくれるしそれがお世辞とかじゃなくて本心ってのもちゃーんと分かってる。
って事でこの頃にはおじさんを本格的に籠絡するためにあれやこれやといろんな方法手段を使ってるけどどーも反応が悪い。
おじさん、同性愛者ってわけでもないから単純に妹、って認識されてるからなんだと思う。
それはさておき、この頃はおじさんも仕事が忙しくなってきたりで土日以外は殆ど会えなくなってた。
寂しかったりしたけど、それは仕方ない。おじさんはちーちゃんといっちゃんを養わなきゃならないから。今までが良過ぎたのであってこれが普通。
まぁ、それでも土日はおじさん家に突撃したり、秘密基地に誘拐、もとい招待したりしてたけどね。
そして。
ようやく、ようやく完成した。
一番最初のIS、白騎士が。
今でこそ、馬鹿みたいに地上にへばり付いて戦うことが主目的にされちゃって全身装甲なんて見ないけど宇宙空間や他の星の過酷な状況での活動を想定してた。
宇宙線の影響とかを考えると、シールドバリアも遮ることは十分に出来るんだけどそれも万全じゃない。それなら物理的に覆って遮った方が確実性が高いからね。
そう言う理由で全身装甲を採用してた。
まぁ、そんなわけで学会に発表するべく持ち込んだんだけど。
「子供がそんな絵空事で態々時間を取らせるな」
「読むに値しない。SF作品としては上出来だがね」
散々な言われ方をした。
家に帰って部屋に閉じこもって、ベッドの上で膝を抱えてそれはもう泣いて泣いて泣きまくった。
どうして?なんで?
ずーっと考えてた。
悔しくて悲しくて仕方がなくて。
でも、そんな時もおじさんは私を支えてくれてた。
酷く当たって、イライラをぶつけたりして何を言ったのか覚えてないぐらい酷い事も沢山言った。
それでも、おじさんはなんて事ないように、いつも通り笑いつつ隣に居てくれた。
別に何かを言って欲しかったわけじゃない。
声を掛けて欲しかったわけじゃない。
でも凄く寂しかった。
誰かに、一緒にいて欲しかった。
その気持ちを察してか、おじさんはなーんにも言わなかったけど、私の側に座っててくれた。
くしゃくしゃ、っと優しくって訳じゃないけど頭を撫でてくれた。
いつもと同じやり方で、なんの代わり映えも無い慰め方だったけど、私の心を立ち直らせるには十分だった。
漸く私が話せるようになって。
「ごめんなさい、酷い事沢山言って……」
「まぁ、そう言う日もある。気にすんな」
ただそれだけ。
おじさんはそう言ってまた頭を撫でてくれた。
それからの私の行動は早かった。
馬鹿にした連中を、嘲笑った連中を絶対に見返してやるって、あの時私の話を聞かなかったことを死ぬほど後悔させてやるって誓った。まぁ、悪いことはしないよ?だってそんなことしたらおじさん達に迷惑掛けちゃうでしょ?
だから私は、動画投稿サイトにISを動かしているところを撮って投稿することにした。
「ちーちゃんもっと笑って笑って!!」
「顔を覆っているんだから笑うも何も無いだろう」
「いーからいーから!おじさんも!」
「俺は映りたくないの!ちょ、おい服引っ張んな!」
「それよりも、さっさとやるぞ」
休みの日、おじさんとちーちゃんと一緒に投稿用の動画を撮影して編集。
技術のこと?それがまーったく載せなかったんだよね。だってあの時からすると私が開発した技術ってわりかしオーバーテクノロジーだったし。
下手に載せたら碌なことにならないじゃん?
動画の反応は千差万別。
本物だって信じる人もいたし合成だって、CGだって言う人もいた。
でも、映像鑑定のプロに依頼して本物だって事を証明してからは早かった。
あちこちの研究所や会社、組織、国家から連絡があってもうしっちゃかめっちゃか。
学会で私を馬鹿にした奴らは、いっそ哀れにすら感じるぐらい馬鹿みたいにゴマスリし始めたしもう笑っちゃうよね。
で、動画投稿から三日後。
世界をたった一日で塗り替える事になる白騎士事件が起こった。
世間じゃ私のマッチポンプだとか言われたりするけどそんなことは無い。
世界中のICBMやら弾道ミサイルやら、とにかく日本を射程に収めてるミサイル全部が、ハッキングされて日本に向けて発射された。
正確な数を表せば、3014発。
日本の防空能力は高いけど、どうやったって捕捉数も迎撃可能数も遥かに超えていた。
目標は私の家である篠ノ之神社。
なんでかって?
そんなの分かりきってた。
ISの動画を見て、軍事的価値を見出した何者かがやったんだ。
今でこそ、その主犯格がラウラちゃんやくーちゃんの計画に加担してた亡国企業だって分かったけどその時はそれどころじゃなかった。
国も必死になってどうにかしようとしてたけど、どうにもならない。
核弾頭を搭載しているミサイルだってあったしもし日本に降り注げば関東一帯が焼け野原どころか地形そのものが変わって、日本は、周辺の国を巻き込んで居住不可能になる。
解決策は、無いようでたった一つだけあった。
それは、ISを使う事。
ISは、宇宙空間で作業するからその為にプラズマカッターとかを開発して装備していた。
でもそれはあくまでも作業用であって戦闘用じゃない。
刃渡りも小刀程度しかない。
隕石やスペースデブリが宇宙ステーションとかに直撃しないように、その対策に念のためビームライフルを装備していた。
いくら言っても変わらないだろうけど、この時既にISは兵器だとしか認識されていなかった。
唯一解決する方法は、可能性があるのはISだけだった。
一番最短距離で発射されたのは日本近海のアメリカ原子力潜水艦や艦艇からのミサイル。
その日は平日で、丁度お昼休み中だったから今すぐに家に帰れば、間に合う。
多分これも、計算の内だったんだと思う。
着弾まで一分もない。考える時間は、無かった。
「……良いのか?」
「そうだね……。これしか、方法が無いんだもん」
「だが……」
「皆がいなくなっちゃうほうが、私には辛い。私の夢は、いつでも再出発して叶えられる。だから……」
「……分かった。それじゃぁ、行ってくる」
「うん。ちーちゃん、ちゃんと帰ってきてね」
「当たり前だ」
ちーちゃんは、ISを纏って飛んでいった。
私がオペレーターになってミサイルの着弾が速い順に次々とちーちゃんはその有り余る身体能力で撃墜していった。
それからは、よく覚えてない。
国家重要人物保護法とか訳分かんない法律で家族離れ離れになるから、こっそり箒ちゃんと両親に私が作った連絡用携帯端末を渡したり。
あぁ、でもあれだけははっきり覚えてる。
家に来た政府の役人が私に向かって、
「ISは、素晴らしい兵器だ」
って言った時にそいつに向かって、
「巫山戯るな!テメェらの勝手な考え都合に束を巻き込むんじゃねぇ!!」
おじさんが怒鳴ったことははっきり覚えてる。
やっぱりこの人は私の味方だ、って泣きそうになってたけど堪えた。
今思えば、色々逃げ方もあった。
海の中に秘密基地あったし、皆を連れて隠れてそこで宇宙を目指せば、とか。
でも一杯一杯だったんだよ。
私だって人の子だからね。
いくら頭が良かろうとなんだろうと、心は消せないから。
覚えているのはこれぐらい。
あとはあれよあれよと、家族を体の良い人質に取られてISコアを作らされて技術を奪われて。
その過程で、どういう訳かISは女しか乗れないって分かった。
いや、これ本当になんでなのか分からないんだよね。
しかもおじさんだけは乗れるって言う……。
おじさんが乗れる理由は、多分私が原因だと思う。
私、おじさんLOVEだから乗れてもおかしくない。
ってのはマジのマジ。
多分、私がコアを作る過程で、何らかの要因で制限が掛かるんだと思う。
だけどおじさんの場合はそれに引っ掛からない。だから動かせるんだと思う。
まぁともかく、当然、私が黙って言う事聞く訳がない。こんなんで宇宙諦める訳無い。
ISコアを作らされてる傍ら、バレないように資材を集めて自分用のISを作って月面秘密基地を作ってた。
完成した瞬間に忍者もびっくりするぐらいの手際で逃げてやった。
そしたらまぁ、大騒ぎ。
まぁ開発者が居なくなるとか前代未聞だもんねぇ。
おじさん家には頻繁に遊びに行ってたけど。
お陰で世界には公式には467個しかコアが存在しないことになってるけど、んなもん知ったこっちゃない。
それを解決するために世界中が私を血眼になって探してるけど見つけられる訳ないよね。
だって地面ばっか見てんだもん、私はとっくの昔に地球を飛び出してますよーだ。
ついでに言っとくとコアって実は宇宙開発用に私が後々作ったやつ含めて532個存在する。
宇宙船の動力としても使えるし、それとは別に宇宙船の船内で農耕プラントを稼働させたりしなきゃならないから意外と数が必要だった。
しかも船外活動用にISも必要だしね。
正直言ってISコアの汎用性は高い。
それに目を向けず馬鹿みたいに兵器としてしか運用しないからいつまで経っても前に進めないんだよ?人類諸君。
ISの本来の用途を、本当に理解してくれてるのはこの世界で多分、おじさんとちーちゃんだけなんだろうなぁ。
ちーちゃんは私が最初にテストパイロットとして手伝って貰っちゃったから、それが足枷になって本来の使い方が出来ない。しかも今はISの扱い方を教える教師になっちゃったから余計に。
おじさんが専用機いらないって言ってるのは私がISを開発した理由が宇宙に行く為だってちゃんと知ってくれているから。
危ないからって私が専用機作ろうか?って言ったら即答で要らんって言われたし。
まぁ、あれはあれでなんか複雑だったけど。
まぁともかくこんな感じなわけで。
毎日月面秘密基地で宇宙開発のための技術を開発中。
今は、月以外の惑星に足を進めるべく居住施設とそれと一緒に併設される農耕施設やらなんやらと、大規模な物資の運搬とかに必要になってくる宇宙船を開発中。
宇宙船、あとは設計するだけなんだよねぇ。
こう、デザインをどうするか物凄く迷ってる。
おじさん好みにするんであれば宇宙戦艦ヤ○トとか、キャプテン・○ーロックとかにするのが良いんだけど。
私としても嫌いじゃないしね。アニメって。
アニメの中の技術を現実にするのってなんか楽しくない?
因みに白騎士っていう名前は、あくまでも後々から人々が勝手につけた名前で私が実際に付けた訳じゃない。
もう新しく名前考えるのも面倒だしわりかし綺麗に纏まってる感あるからそのままでいっか、ってことで白騎士って名前になったんだけど。
「お母様、今日の晩御飯は何にしますか?」
「んー?どーしよっか」
くーちゃんと一緒に、台所に並んで冷蔵庫の中を覗き見る。
今じゃ私入れて十四人の大所帯だからね。献立考えるのも一苦労だ。
私、こう見えても料理出来るんだよ?何せ娘が居ますからね!
小さい頃は私が作って食べさせてたし。
何よりも、おじさんのお嫁さんになるって言ってんだからそれぐらい出来なきゃ。
お仕事から帰ってきたおじさんに、
「お帰りなさい、ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し?」
ってやりたいじゃん!?
それで私が良いなんて言われちゃってー!キャー!おじさんのえっちー!!!
ちーちゃんも掃除洗濯は出来るんだけど料理が全くと言って良いほどできない。
食べられればなんでも良いってタイプだった昔の私ですら、目を背けたくなるような惨状だったし。
なんだかんだで今も幸せだ。
だって義理とはいえ娘はいるし私の夢を追いかける為の同士達も少ないけど出来た。
まぁ、おじさんを取り合いになってる時点で普段一緒に居られない私は若干不利だけどそこは私の有り余る魅力をおじさんに直接教え込んでですね。
まぁ、そんなわけで今日も今日とてこの広大な宇宙に旅立つ為の技術開発と、おじさんを如何に落とすかの脳内会議が毎日開かれてる。
本当に、おじさんに出会えてよかった。
出会えていなかったら私、今頃どうしちゃってたんだろう?
性格捻くれて、絶対に碌でもない大人になってたに違いない。
「お・じ・さ・ん!」
「なんすか束さん」
「もー、リアクション薄いなぁ」
「毎回毎回何も無いとこから現れてんのを見てたらビックリはすっけど慣れるわ」
「それもそっかー」
「で、今日は何の御用で?」
「えー?好きな人に何か用事無いと会いに来ちゃいけないの?」
「いや別にそうじゃねぇけど」
「じゃぁ良いでしょ?」
「はいはい」
「んふふ」
今日もまた、おじさんに会いに行って。
ぎゅーって抱きついて。
「ねぇ、おじさん」
「ん?」
「ぜーったいに一緒に宇宙に行こうね」
「俺で良ければ連れて行ってもらえると嬉しいね」
「約束だよ?」
「おう」
「それじゃぁ、約束忘れないためにちゅーを……」
「それとこれは話が別です」
「あーん、おじさんのいけずぅ」
「言ってろ言ってろ」
そう言うおじさんも、勿論私も、楽しそうに笑いあった。
長い!
いやこれは断じて束さん贔屓とかではなくてですね(狼狽)
……いやでも書いちゃったもんは仕方ないじゃん!?(開き直り)
予告してたR−18の方のセシリア編ですが今暫くお待ち下さい。
別に忘れてたとかじゃなくて単純にどうしようか悩んでるだけなんです。
ちゃんと投稿はするので……。
くーちゃんの、おじさんと出会ってからの話はくーちゃんの方で書きます。
だからあんな区切り方でも許して。
もしかしたら他の子との絡みの方が書きやすくてそっちが先になっちゃったりするかもしれないけど……(小声)
追記
久々にアクセス数がやたらめったら増えて何事?と思ってたらなるほど、日刊ランキングに載ってたんやな。
皆様、ありがとうございます。