おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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超久々。








時間が過ぎるのって早いよね。だってもう夏休み終わりだよ?おじさんもっと夏休み満喫したかった。

 

 

 

 

 

 

 

夏休みももう終わりに近付いて来てる。

残すところあと三日しかない。特に何もしないで家で何時も通りぐーたら過ごしてたらあっという間よ。

歳取るとマジで時間の流れが早く感じるんだがここ最近色々とあったからか余計にそう感じるようになってんだよね。

 

そんな訳で、さてあと三日どうすれば有意義に過ごせるかと頭を悩ませているんだわな。

一夏は代表候補生の強化合宿だか何だかに出掛けちまってて居ないし千冬は千冬で二学期の準備が忙しいから朝早くから学園でお仕事。

だから構ってくれる相手が居なかったんだけども。

 

五日前から毎日毎日、連日束がクロエとラウラを連れて預けてどっか行っちまうもんだからつまらない訳じゃないしなんなら騒がしいし楽しい。

 

因みにであるがマドカは亡国機業の、あの臨海学校で俺と殴り合った柄の悪いねーちゃん達が作戦失敗の上に、私まで奪われたとなったらどうなるか分からないと言って帰った。

 

どうやらあの二人は育ての親や姉みたいな存在らしい。

そりゃ当然束や千冬達と一緒に止めたさ。

 

だけどどうしても、帰らせてくれ、って言うモンだからが色々安全対策仕込んだ上で帰らせたのだ。

滅茶苦茶心配だけど。

 

 

 

 

 

「父よ!」

 

「どした?」

 

「夏祭り行きたい!」

 

「夏祭りぃ?どうしてまた、いきなり夏祭りに行きたいなんて思ったのさ」

 

まぁいつもの如く、ラウラが唐突にんな事言い始めた。

 

「箒がな、今度家で夏祭りするから時間があったらおいでって言ってたのだ」

 

「そうなの?俺聞いてないんだけど」

 

「やるって言ってたぞ」

 

束と箒の実家は皆も知っている通り結構有名な篠ノ之神社って言うとこなんだけど、何が有名かって言うと単純に歴史が古いってのもあるが、毎年神社の巫女が神樂を舞うってんで有名なんだよ。

しかも超が付く美人が、って事で有名なんだよな。まぁその超美人って束と箒の母親である華さんなんだけど。

 

ISが世の中に出る前の年が最後で、もう五、六年前の話だ。

正確に言うならばISが発表された後に夏祭りの準備は進めてたんだが国家重要人物保護法っていう面倒なもんのせいで中止になっちまったんだよ。

 

だからやるのは久々って事になる。

 

それまでは箒と束のお母さん、華さんが神樂を舞ってたんだが今年はどうするんだ?華さんも師範も当然来れる訳も無いしそうすると箒か束のどっちかがって事になるんだけど、神樂やらないで祭だけやんのかな?

 

「ラウラ、それは言っては駄目だった筈ですよ」

 

「あっ、そうだった!」

 

口を手で塞いであわあわしてるラウラは可愛い。

もうウチの娘可愛すぎ……。

 

 

 

「えっ、どゆこと?」

 

「箒叔母様は、お父様に内緒にしておいたのです。当日に呼んで、サプライズ、としたかった様ですよ」

 

「そーなのかー……」

 

「あわわわ、どうしよう?箒に怒られるかな!?」

 

「大丈夫だとは思いますよ」

 

何やら、箒は俺に秘密で準備を進めて当日になってサプライズしようとしていたらしい。

だがラウラがうっかり口に出しちまっておじゃん、と言う事だそうだ。

 

「まぁ、俺が知らないフリすれば良いだけの話だから気にすんな。でも束が居ないのはそれが理由か」

 

「はい。お母様はお手伝いをしているようです。本当は秘密基地にいても良いんですが、暇そうな顔してるしお父さんのとこに居よっか、と仰っていました」

 

「アイツ俺のこと暇人だと思ってんのか……。まぁ、二人が来る前は実際暇人だったけど」

 

実際暇人だったから別に良いけどさ。

しっかし夏祭りかぁー。懐かしいな。毎年の恒例行事で準備の手伝いしてる時に漸く今年も夏来たかー、って思ってたもんだ。

俺は仕事あったから土日ぐらいしか手伝い出来なかったけど、それでも夏祭り本番は必ず参加してた。

 

千冬達ちびっ子四人組の面倒見なきゃならなかったからな。

一夏と箒は目を離すと確実に迷子確定だし。

 

そっかー、今年やるのかー。

 

「明日当日なので、連絡来ると思いますよ」

 

「そっか、したら皆で行くか。クロエは篠ノ之神社見たことあるけどラウラは無いもんな」

 

「あるぞ!」

 

「あるの!?」

 

「うん。母様に連れられて何回か。ここがお母さんのお家なんだよー、って言ってた」

 

「ラウラは、ジャパニーズテンプルだ!と大はしゃぎしてました」

 

「む、姉様も久しぶりだってはしゃいでたぞ!」

 

「いえ、私はそんなはしゃいだりしません」

 

「しーてーたー!」

 

だそうで。

何やらラウラは俺の膝の上で文句を言い、クロエはそれを受け流しながらも反論。

なにこれめっちゃ仲良くない?うちの娘達仲良すぎじゃない?

あぁもう超可愛い。めっちゃ天使。

 

二人を見守りながら、んな親バカな考えをしていた訳でした。

 

 

 

 

 

翌日。

11時ぐらいに箒から電話が掛かって来る。

 

昨日聞いてた通り神社に来てくれ、との事。

そら勿論行きますとも。

 

んでもって、クロエとラウラを連れて篠ノ之神社へ。

二人は何時も通り突然何もないとこから現れた束が持ってきた浴衣を着てる。

いやもう超可愛い……。

 

え?なに?俺の娘ってやっぱり天使?いや天使だったわ。

 

クロエは白地に朝顔があしらわれている浴衣を着ている。

ラウラは紫の浴衣で何本かの薄紫の模様が描かれている。

 

クロエもラウラも楽しみにしていたらしく、クロエははしゃいじゃいないがそれでも楽しみだ、と言う雰囲気を身体全体で放っている。

ラウラははしゃいではしゃいで、下手すると勝手に一人でどっか行っちまいそうだ。

だから手を繋いでおかないとならない。あれだな、小さい頃の箒と一夏みたいだ。

 

ラウラはこの歳になるまで軍隊でしか生活してこなかったし、小さい頃から軍人として生きてきた。

だからその歳その歳での相応の生活とか、態度をしたことがないんだろう。だからだろうか、それを取り戻すように、幼児退行しているのだろう。

 

「ラウラ、ちっと落ち着けって。別に祭りは逃げやしないさ」

 

「父よ!あれは何してるんだ!?おぉ!あっちにも色々ある!」

 

「屋台ってんだよ。夜になったら色んな食い物とか売ってるから楽しみにしとけ」

 

「ヤタイ!」

 

一応、そう言っとくが日本の夏祭りを見るのが初めて、と言うか祭りを見るのが初めてだから仕方が無い。一応、迷子にならないようにちゃんと手を繋いどかないとな。

 

二人を連れて、篠ノ之神社の母屋、篠ノ之一家が住んでいた建物に向かう。

玄関の戸を開くと鍵は掛かっておらず、箒と束の物と思われる靴に加えて男物の靴が一束と女物の靴が一束。

 

んん?誰のだ?

 

誰の靴か分からないまま、取り敢えずお邪魔する。

 

「お邪魔しまーす」

 

「かーさまどこだー!」

 

「ラウラ、靴は揃えなさい」

 

「はーい」

 

ラウラはクロエに言われて靴を揃えた後、ドタドタッ、と奥に走って行った。

俺とクロエも靴を脱いで上がる。

 

すると、奥から久しく聞いていなかった懐かしい声が聞こえてくる。

いやいやまさか、だってあの声の主は……。

 

そう思いつつ、少しばかり早足で、ラウラが駆け込んだ部屋に入る。

そこは、何年も前に篠ノ之一家と俺、千冬、一夏の七人で季節のイベント事に騒いだりしたリビングの様な部屋。

 

「失礼しまー……」

 

「おぉ、久しぶりだね、洋介君」

 

「久しぶり、洋介君。元気だったかしら?」

 

恐る恐る障子が貼られた引き戸を開けると、さっき聞こえてきた懐かしい声の主である、俺の大恩人と言っても過言じゃない、いや足りないほどの人物が二人。

 

5年前と比べると少しだけ歳を取ったなと思うような、少しばかり皺が出来たかなと言う感じではあるが、それでもまだまだ若々しい。なんなら変わって無いかもしれない。

昔と同じ、優しい笑みを浮かべて迎えてくれる。

これで本当に24と15の娘が居るとは信じられない。

 

「師範と、華さん……?」

 

「それ以外に誰がいるのよ」

 

「いや、でもどうして此処に……?全国を転々としてる筈じゃぁ……」

 

「束が政府と交渉して、これからは此処にまた昔みたいに住む事が出来るようになったんだ」

 

「いっえーい、サプラーイズ!どうどう驚いた?おじさん驚いた?」

 

「いや、驚いたも何も、事態が飲み込めないっつーか……」

 

俺の後ろから飛びついて来た束が、そう俺に聞いてくるがまるで理解出来ていない。

そりゃぁ、これから一生本当に会えないもんだと思ってた人達が目の前にいて、元気な姿で昔みたいに平然と変らない感じで出迎えてくれたんだから、誰だって思考回路が停まっちまうのも仕方が無い。

 

「ほら、そんなとこで固まってないでこっちにいらっしゃい」

 

「え、あ、はい」

 

華さんに促されるまま、部屋に入って部屋に入って敷かれた座布団に腰掛ける。

自然と正座になってしまうが、そりゃ緊張してるんだもの仕方ないじゃない。

 

「正座なんてしてどうしたんだい?……まさか遂に束か箒のどっちかと!?」

 

「いやいや、師範何言ってるんですか!?」

 

「あれ、違うのかい?」

 

「違いますよ。久々に会ったもんだからどうすれば良いのか分からなくて正座になったんです」

 

いやほんとびっくりしたっつーか、なんつーか、本当に言葉が出てこないってのが一番正しい。

マジ一生会えないかと思ってたからその分衝撃がデカい。特大。隕石衝突。

 

さて、その本人である師範と華さんはと言うと5年前とそう変わらない態度で接して来るもんだから余計に混乱する。

 

「え、いや本当にどうして此処に……?」

 

「それはねー、後でちゃんとおじさんには説明するから。だから今は再会を喜んだ方が良いんじゃないかな?」

 

束にそう言われて、納得行かないが取り敢えず頷いておく。

 

「まぁ、色々と積もる話もあるけど取り敢えず皆が無事にまた、再会出来たことを喜ぼうじゃないか。ほら、お茶でも飲んで」

 

「……やたらと落ち着いてますね」

 

「私達夫婦も、これでもかなり色々と思う事はあるんだ。でも、またこうして箒や洋介君に会えたんだ。それで良いじゃないか」

 

師範は、そう言って優しい笑みを浮かべて笑う。

確かに師範の言う通りなのかもしれない。政府のやり方とか他にもまぁ、色々思うところとかあるけどそれでもこうしてまた無事に、師範と華さんに会えたんだ。 

 

因みにだが束は頻繁と言うほどでも無いが、会いに行ってたらしい。こいつマジなんでもアリだな。

 

そんでもって、さっきから華さんに手伝われて巫女服、それも夏祭りに神樂を舞う用のやつを着付けてもらっている箒なんだがどう言うことだ。

 

「あぁ、流石に私は奉納出来ないから今年は箒にやってもらう事にしたの。と言うよりは箒が自分からやらせてほしいって言って来たんだけどね」

 

「そうなんですか。すると、華さんはこれで引退?」

 

「どうかしら。身体が衰える前に機会があるなら、とは思うけれど立場的に少し難しいかもしれないわ。だから、今の内に受け継いでおいても問題無いでしょ?」

 

「そうですね。にしても随分とまぁ様変わりするもんだなぁ、箒」

 

「んっ、どうですか?似合っていますか?」

 

「似合ってる似合ってる。いやぁ、本当に昔と比べると見違えたなぁ」

 

箒は、巫女服を纏っている。

今はまだだが、化粧しなくても美人なのに本番ともなれば化粧も施してそりゃぁ、男共が放って置かないほどの美人さんになるだろう。

そうなったら悪い虫が付かないように気を付けないと。

 

因みに師範は後ろでクロエとラウラと言う、初孫とでも言うべき二人にデレッデレ。

あーあ、あれ完全に孫に甘いお祖父ちゃんだよ。

俺も人のこと言えないけどあそこまでじゃ無いと思うんだよなぁ……。

 

 

 

「神樂は七時開始ですから、それまでは屋台を回ったりしていては?」

 

「箒は?」

 

「最後に練習して、確認したいのと身を清めたりしないといけないので無理ですね。終わったらその後に花火があって、少しだけ時間があるから屋台回ろうかなと」

 

「そっか、んならそん時はお供させてもらうかね」

 

「良いんですか?」

 

神樂を舞って、漸く自由時間になるってのに野郎共に囲まれちゃぁ、あれだしな。

ボディガードぐらいにしかならんだろうが、箒が少しでも楽しめるように身体張っちゃりますよ。

 

「まー、少しぐらいなら構いやせんだろ」

 

「そうだよ箒ちゃん!それまでは私達がおじさんを連れ回すけどその後は頑張った箒がおじさん独占してもだーれも怒らないよ」

 

「後々一夏には参加したかったとかぶーぶー言われそうだけどな」

 

一夏、絶対言うだろうなぁ。

屋台回りたかったとか、箒の神樂見たかったとか、花火見たかったとか。

 

ちょっとばかりご機嫌取りの為と、合宿頑張ったご褒美っつたらあれだけど花火ぐらいなら買ってってやるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、五時頃を境に屋台が営業を始めて、それに伴って段々と客足が増えてくる。

屋台を出しているのは近所の顔見知りの宮大工やらなんやら色々な職業の爺さん達が主だ。この人達、夏祭りと年末年始になると必ず屋台屋台だしているから、今回も久々に開催するとあってもう80過ぎてるって人も多いのに屋台を引っ張り出して態々来てくれたんだそうだ。

その手伝いをしているのは、それぞれの弟子の若い人だったり跡を継ぐ息子や孫と様々だ。

 

全員、馴染みの人達でお世話になったもんだ。

 

 

 

それぞれ声を掛けられて、手を振ったりして応える。

 

「あれ食べたい!」

 

「あぁ、リンゴ飴な。ほら、これで買ってこい」

 

ラウラが食べたいと指差したリンゴ飴の代金400円をポケットから取り出して渡すと、一目散に飛んでいく。

……やっぱり精神年齢低くなってるよなぁ。まぁ、可愛いから良いけど。今まで出来なかったんだからああやって普通の子と同じ様にはしゃいだりしても構わんだろ。

 

 

「クロエはどうする?なんか食いたいもんとか欲しいもんとかあるか?」

 

「えっと……」

 

「遠慮はすんなよ。こう言う時は親がストップって言うまでおねだりするもんだ」

 

「分かりました。それでは、あのカタヌキ、と言うものをやってみたいです」

 

「おう。したらラウラがリンゴ飴買って戻ってきたら皆でやるか」

 

「はい」

 

クロエもクロエで夏祭りは初めてだから、初めて見るものが多い。

あんまり態度とかは変わらないが、表情は何時もの落ち着いていてクールなものとは大きく変わって、何か凄く良いものを見た小さい子供と同じ様に笑顔というか、幸せそうというか、とにかくそんな感じ。

ついでに金色の綺麗な瞳はそれはそれはきらきらと輝いている。

 

……なるほど、この自分の子供、特に娘の笑顔を見るためなら甘やかしてしまう父親の気持ちが今本当の意味で理解出来た気がする。

 

 

 

 

「甘くて美味しい!」

 

「良かったな。そしたらクロエが型抜きやりたいって言ってっからやりに行こう」

 

「分かった!」

 

リンゴ飴片手に、超ご機嫌で当たり前のように空いている手で俺の手を握って繋いでくる。

いやまぁ、良いけどなんかこそばゆい。

 

「俺も型抜き実はあんまし詳しくないんだよなぁ。確か、自分で好きな型を選んで、それを綺麗に型抜き出来たら賞金が貰えるんだっけか」

 

「おぉ、賞金!」

 

「難易度によって賞金の額が上がるから、まぁ最初は簡単なやつで慣らしてからやるのが普通だよな」

 

「あれがいい!」

 

と俺が説明したのにラウラは一番難易度が高い部類の飛行機を選びやがった。

 

「ラウラ、俺の話聞いてた?」

 

「大丈夫、私なら出来る!」

 

なーんか自信満々でフンス、と胸を張って応えるがうん、なんとなくオチが見えた気がする。

 

「まぁ、うん、そんじゃやってみな。ほれ、お金渡しとくから無駄遣いしちゃぁ、駄目だぞ」

 

「うん!!」

 

相変わらず、たったかたったか選んだ型を店の爺さんにお金渡して貰って、設置されてる椅子に座って机に向かい黙々と始めた。流石は元代表候補生、元軍人と言うべきか集中し始めたらそら凄い。

小学生ぐらいにしか見えない子が、真剣な表情で黙々とやってんだから周りも気になるらしい。

 

「クロエはどうする?」

 

「それでは、一番簡単そうなのから」

 

「おし、そんじゃ俺もそれにすっかな」

 

「皆で一緒にやりましょう」

 

「おうよ」

 

クロエも選んだ型を持って、始める。

俺?はっはー、意外とこう言うチマチマコマコマした作業大好きなのよ。だからと言って一番難しいやつが出来るわけじゃないんだけどね。

 

「あ!?クッソ折れやがった!」

 

「ああ"あぁ"ぁ"ぁ!!ここまで頑張ったのにィィ!?」

 

「ばっかやろ、なんでそこで欠けちまうんだよ!」

 

とまぁ、ラウラとクロエに挟まれて座ってる俺が一番熱くなってた。

いや瓢箪とか本当に無茶苦茶難しいんだって。

飛行機とかあんなん人間が出来るもんじゃねぇだろ。

 

とか思ってると隣でクロエとラウラが瓢箪やら飛行機やらをクリアして賞金貰いやがったので、そうするとクロエが人間じゃないみたいになるし父親としてなんとなーく負けた感じがしたので意地でクリアしてやった。

 

チクショウあのジジイ、クロエとラウラは可愛いからって顔デロデロにして甘く判定してんのに俺になると、二人を連れてるのが羨ましいのかなんなのかめちゃくそ厳しく判定しやがって。

もっと綺麗じゃないと駄目とかふざけんな!

 

最後の最後はもう頭来て針なんか使わないで束に連絡とってアートナイフとか色々持ち出してクリアしてやったわ。

別に禁止されてねぇもん。俺悪いことしてねぇし。

 

はっはー、ジジイザマミロ!

 

なんて心ん中で思いました、まる。

 

因みにこの型抜きの型、食べられる。

あんまし美味く無いけど。

 

 

 

今回の軍資金は束から支給されてる。

 

「私達の娘なんだから、おじさんばっかりにお金出して貰ったりはしないよ。私の貯金なんて幾ら使っても使い切れないんだからこう言う時に使わないと」

 

とのことで夏祭りでもらう小遣いにしちゃ随分と多い金額を渡されている。

まぁ、そう言う事ならと俺は甘える事にした。

 

一万円札だと使い勝手が悪いから、と千円札と五百円玉が殆どで俺の財布は見た事がないぐらい膨れ上がっている。就職して以来ずっと使い続けている少しばかり高めの革製の財布がパッツパツだ。

 

それでも入りきらなくて、札は財布だけど小銭、五百円玉、百円玉なんかは少ししか財布に入らなかったから殆どをズボンのポケットにダイレクトで突っ込んでるからな。

もう両方のポケットがズッシリと垂れ下がってジャラジャラ言ってんだもん。

 

 

 

さてさて。

たこ焼き、焼きそば、あんず飴、お好み焼き、かき氷、焼きイカなんかの食い物類だけじゃ無い、射的、ヨーヨー釣り、金魚掬い、輪投げなどの各種景品貰える系の屋台も粗方制覇して、買って食べてと祭りを楽しんでると、そろそろ神樂の時間だ。

 

「おーし、そろそろ時間だから行くぞー」

 

射程を夢中になって、元軍人の有り余る射撃の腕を周りに見せていたラウラと、その隣の金魚掬い、と言うより金魚にどハマりしたクロエに声を掛けて神樂をやる場所、正確に言うと神楽殿って言う神樂をやるためだけの場所に移動する。

 

つーかクロエ、お前金魚取り過ぎじゃね……?

二袋二十匹って、それどこで飼うんだ?いや、束ならなんとでもしてくれそうだから心配いらないんだろうけどさ。

 

因みにおじさんは子供の頃、金魚掬いはやらせてもらえなかった。

飼う場所も何もないし、どうせ世話なんてしないからって。

まぁおじさん、食い物ばっかに目が行って金魚掬いどころじゃなかったんですけどねー。

 

あんず飴とかジャンケンに勝てばもう一個好きなのタダで貰えたし。

ぜってぇ勝つ!って息巻いてたっけなぁ。

 

なんて思いながら、神楽殿まで二人を連れて歩く。

 

神楽殿に着くと、既に人でごった返している。いやぁ、何百人居んだろうな。

因みに俺達は最前列の一番見やすいど真ん中。席を取っといてくれたんだそうで張り紙が貼ってある。

いわゆる家族席ってやつだな。

 

そこに三人並んで座る。

 

「まだか?」

 

「もう少し待ってろって。そのうち始まっから」

 

ラウラはまだかまだかと催促し、クロエも表情は相変わらずだがそりゃもう楽しみだと全身から雰囲気を出してる。

 

そして、少し待っているといよいよ始まるであろうとなってきた。

箒が、そりゃもうびっくりするぐらい綺麗にめかし込んで、小道具を持って出てくる。

 

神樂を見る為に辺りに馬鹿みたいに集まってた群衆が、さぁっ、と静かになる。

そらそうだ。あんな美人前にしたら誰も言葉を発せなくなるだろうよ。

 

舞う前に、ちらりと明らかに俺を見て何やら伝えてくる。

なるほどなるほど、しっかり見てくれってことか。んな事せんでも俺はちゃんと見てるよ。

 

 

そして始まる神樂は、そりゃもう神秘的っつうの?見る者を圧倒させるような迫力と魅力があった。

華さんの神樂もそら凄かったし綺麗だったが、箒もまだまだ荒削りと言った感じはあるが多分、華さんを超えるって断言出来るぐらい凄かった。

 

終わって、箒が舞台袖に帰ってから少しして、観客達が騒ぎ始めた。

 

「箒凄く綺麗だった!!」

 

「箒叔母様、凄かったです!」

 

ラウラとクロエも、そら大興奮でぴょんぴょん跳ねる。

あのクロエですら声を大きくしてるんだからそんだけ凄かったって事だろう。

 

周りの男共は、美人だったとか騒いでるがオメェらみたいな連中には絶対に箒はやらんからな。

 

それに、TV局や新聞の取材とかも来てっからこりゃぁ話題になっちまうなぁ。

そこんとこどうなんだろ?危なくねぇんかな?

 

神楽殿から、徐々に興奮から冷めていった人が屋台やら花火を見るための場所取りに去ってまばらになり始めた頃。

 

「兄さん!」

 

母屋の方から箒が走ってくる。

巫女服から白地に桔梗の花があしらわれた浴衣に着替え巾着を持っていて、巫女服とはまた違った魅力がある。

しかも下駄を履いて、歩く度にカランコロンと心地良い音が鳴る。

 

 

「お疲れさん」

 

「お疲れ様です、箒叔母様」

 

「うーん、叔母様と言われるの慣れないな……」

 

「箒!箒!凄く綺麗で、凄くかっこよくて、えっととにかく凄かったぞ!」

 

「ありがとう、ラウラ」

 

飛び付くラウラを受け止めて、年の離れた妹や姪にするように優しく頭を撫でる。

 

「洋介兄さんは、どうでしたか?」

 

「いやぁ、美人になったなぁ、って。凄かった凄かった」

 

うんうん頷きながら言うと、嬉しそうに笑う。

 

「それじゃ次は箒が父と遊ぶ番だな!」

 

「叔母様、私達はお祖父様と一緒に回りますので、どうぞ楽しんで来て下さい」

 

「うん、ありがとう」

 

「ラウラ、師範に迷惑掛けちゃ駄目だぞ?」

 

「大丈夫だ!」

 

「あっ、走らない!」

 

一応、釘を刺しとくがあれじゃ意味無いなぁ。

クロエに走るなって言われてとっ捕まってる。

まぁ、周りに迷惑掛けたり悪さしなけりゃ生まれと育ちの境遇考えると、暫くはあれで良いんじゃないかなぁ。

VTシステムの一件以来、暫く笑わなくて、本当に心配したんだがそれが嘘みたいだ。

だけど、やっぱり心の奥底じゃまだトラウマに苦しんでる。

ISを見たりすると偶に怯えたりするんだ。どうにかしてやりたい気持ちがあるが、どうにも出来ていないのが実情だ。

 

あんまり、苦しんでいるところは見たく無いから何とかしてやりたい。

 

「ふふっ、父親の顔してますよ」

 

「マジ?」

 

「はい、それに凄く嬉しそう」

 

「まぁ、父親だって言われて嬉しく無い訳がねぇもんなぁ」

 

嬉しいもんよ?

義理とは言え、愛娘達を見る顔が父親だって周りに言われるのは。

自分じゃ分からないからなぁ、他の人に言われたって事は、少なからず父親として何かしてやれているって事だろう。

 

まぁ、やっぱり自分じゃ分からんけど。

 

「それじゃぁ、エスコートっつー程のもんでも無ェけど、行くか」

 

「はいっ」

 

嬉しそうに俺の腕に抱き着いてくる。

うん、周りの目が凄まじい。もう怨念レベルよ?

 

羨ましいのは分かる。

俺だってその立場だったら同じ様に睨むだろうよ。

 

まぁ、それはそれとして。

箒に腕を引かれながら屋台を周る。

 

「お、箒ちゃん!さっきの神樂見たぞ!お疲れ、これ持ってきな!」

 

「ありがとうございます。でも良いんですか?」

 

「良いんだって!」

 

歩くだけで屋台の爺さん達に焼きそばやらたこ焼きやら、両腕一杯になるほど色々と貰う箒は、嬉しそうに笑っている。

 

何せ5年ぶりだから俺も箒も含めて皆、もう二度と出来ないと思っていた祭りをまた開けて嬉しいんだろう。

 

両手に沢山の食い物が入ってるビニール袋を幾つか持って歩く。

 

「相変わらず、あの爺さん達は箒達、つーか美人と子供には甘いんだよなぁ」

 

「まぁまぁ、ほら、花火が良く見える、私達だけしか知らない場所、あったでしょ?あそこに行って沢山貰ったので一緒に食べましょう」

 

「そうだな、久々に行ってみっか」

 

その場所とは、篠ノ之神社敷地内にある山の山頂辺りにある展望台、ってほどじゃ無いんだけど少しばかり開けた場所の事。

 

箒と一夏が小さいによく行っていた、そして連れて行かれた場所だ。

小さな社があったから、師範に報告してみるとどうやら元々あそこに篠ノ之神社があったらしい。それを今の場所に移したんだとか。

 

だから神様は居ないけど、元々住んでいた場所だから悪い事をしないように、って言ってたんだよな。

 

そんな経緯がある、その場所に向かおう、と言う訳だ。

あそこ、春になると花が咲いて綺麗なんだが暫く足を踏み入れて無いからどうなってるか分からんなぁ。

それに、一応道はあるにはあるんだが、ここ何年も人が足を踏み入れてないから歩ける状況かどうか分からないんだよな。

靴ならまだ行けるだろうが、箒は下駄を履いているもんだから行けるか分からない。もし駄目そうだったら、仕方無い、こっちで群衆に紛れて花火を見るとしよう。

 

二人で、その場所に向かうべく歩き出す。

花火まではきっかり20分あるから、余裕で行く事が出来る。

 

「ふふっ、懐かしいなぁ」

 

「5年ぶりだよ、全く。時間が過ぎるのが早過ぎるぜ」

 

昔のように、山の中を並んで歩く。

虫除けシートとかでちゃんと対策してあるから蚊に刺される事も無い。

灯りは箒が持って来ていた小さな懐中電灯と俺のスマホ。

今日は一夏達は居ないけど、昔に戻った気分だ。

 

「手を繋げないのが、残念です」

 

「そりゃこんだけ色々持ってたら無理だろ」

 

俺達はそれぞれ、箒が貰った食い物と足元を照らすための懐中電灯、スマホを持っているから到底昔みたいに手を繋ぐなんて出来ない。

箒が走って行っちまうから、手を握ってないと危なっかしいんだ。昼間ならまだしも夜は流石に駄目。

 

その、そこらの男の子よりもずっと男の子っぽくてやんちゃだった箒がこんな淑やかな大和撫子になるなんてな。まぁ、母ちゃんの華さんがそうだから、予想は出来たけどここまで変わられると驚くばかりだよ、全く。

 

暫く歩いていると、目的地に到着する。

確かに少しばかり雑草が生えているが、土が大部分を占めているな。まぁこれなら問題無いだろう。

ただ、昔俺が作って設置した木製の長椅子は使えそうにない。大分汚れているしもしかすっと腐って居るかもしれない。

 

「椅子は使わない方が良いな。危ない」

 

「だろうと思って、小さいですけどシート持って来ました。一緒に座りましょう」

 

「流石箒、用意が良いな」

 

「でしょう?」

 

箒が持って来たシートを地面に広げたんだが。

 

「……思ったよりも、小さいですね」

 

「だな……」

 

結構小さかった。

と言うか、ギリギリ一人座れるぐらい、って感じで到底男女一人づつが座れるような大きさじゃない。

座ろうもんならはみ出ちまうだろう。

 

「箒、お前がシートに座れ。俺は地べたにそのまま座っから」

 

「……良い事を思い付きました」

 

「あれ、スルー?」

 

「洋介兄さん、座って下さい」

 

「えっ」

 

「良いから」

 

箒に言われるまま、シートに胡座をかいて座る。

すると、箒は極々当たり前かの様にその胡座の上に座ってきた。

 

「ホウキサン?ナニシテルンデスカ?」

 

「昔みたいに、こうやって座れば二人一緒に座れるでしょう?」

 

そうじゃない。

いや、確かに昔は箒と一夏だけじゃなくて千冬と束もよく膝の上に乗せたりしていた。

特に小さかった一夏と箒は俺に構って構ってと飛び付いて座って来たもんだ。

だがしかし、今はどうか?

 

今の箒は、好みは別として10人中10人が美人だと口を揃えて大きく頷くほどの美人さんだし、しかもスタイルは知人女性全員で考えてみてもトップクラス。

今も昔も剣道やってるからしっかり引き締められてる。

 

そんな箒が昔と同じ様に膝の上に座るって言うのはセシリアの言葉を借りるならば「淑女にあるまじき行為」と言うやつだろう。

 

あと、ふにふに柔らかい感触が凄くてですね。

 

「いや、流石に止めといた方がいいんじゃねぇかなぁ……」

 

「なんでですか?」

 

「理由は色々あっけど、俺こんなとこ師範に見られたら殺されんじゃねぇかな、って」

 

「大丈夫ですよ」

 

「何を以て大丈夫と?」

 

「父さん、洋介兄さんに私か姉さんを貰って欲しいそうですよ?なんなら二人とも、って言ってました」

 

「ごめん俺幻聴聞こえるようになったわ」

 

いやもう、やっぱ歳なんだな。

そりゃ四捨五入したらもう40歳だもんな、耳が悪くなるのも仕方がないな。

 

「兄さんの耳が悪くなった訳じゃないですよ。父さんが本当に言っていた事です」

 

「えぇ、師範何考えてんの……?本当に神主……?」

 

いやまぁ、束には告白されたけど。

だけど娘二人をどちらとも同じ男に嫁に出したいなんて、俺に勇気があれば頭沸いてんのか、と言ってやりたいんですが。

 

「はっきり言って、姉さんは私達以外の人間には改善されたとは言え、未だにコミュニケーション能力が欠けていますし、男性なんて洋介兄さん以外碌に接した事がありません。私だって兄さん以外にまともに関わった男性は1人もいない訳で。そんな娘2人をそこらの男に任せられないと」

 

「いや、でもよぅ」

 

「はっきり言って、私はまだしも姉さんを妻としていられる人間なんて兄さんしか居ませんよ?」

 

「あんまり言ってやるなよ……、あれでも初めて会った頃とは別人なんだ」

 

「分かってます」

 

やっぱり、実の妹から見ても束はコミュ障らしい。

でも本当に昔とは大違いなんだぜ?

 

「箒はどうすんだよ。俺みてぇなおっさんとくっつくなんて嫌だろ」

 

「え?全く嫌じゃないですよ?寧ろ洋介兄さんと結婚出来なかったらどうしよう……?ぐらいなんですが」

 

「ワッツ?」

 

「もうこの際ですから、言ってしまいますけど兄さんの事が嫌いならこうやってくっついたりなんてしません。自分を着飾って、気合入れて化粧までしません」

 

おっと、なんか見た事聞いた事あるような流れだぞ?

具体的に言うならつい先日、2回ほど。

 

「えー、っと?」

 

「……ここまで言って、分かりませんか?」

 

「いや、うん、うん?」

 

なんと答えれば良いやら、かなーり曖昧に返事をしつつ。

いや、実は分かっている。

こんだけ言われて気が付かない訳が無い。

 

正直、学園に通い始めて箒と再会してからと言うものやたらとくっ付いてくるし最後に会った時と比べると随分とまぁ、態度が変わったもんだなと感じていた。

 

昔は確かに、兄貴に接する感じだったけど今はどうだ?そう考えたって兄貴にする態度じゃぁ、無いだろう。

 

あんまり言いたく無いけど、皆も俺を見る目がどうも年長者とか、兄を見る感じじゃないんだよなぁ……。

 

まぁ、箒も例に漏れずって事で。

膝の上から退こうとはせず、俺の腕を腰に持って行って離さない。

 

少しだけ、下を向いて耳や首筋を真っ赤に染めながら、しかし声だけははっきりと。

 

 

「私は、貴方の事が昔から、大好きです。愛しています」

 

 

俺の腕をぎゅぅ、と抱きしめて、小さく縮こまってそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はてさて、そう言われたのだがどうすりゃ良いんだろう。

いやね?嬉しいよ?けど俺ってつい先日もセシリアに告白されたばっかなんだよなぁ。

 

……あれ、俺って絶賛クズ男の道を邁進してる?

 

いや、誰彼構わずって訳じゃないし、全員と付き合っている訳じゃ無いからセーフ、だと思いたい。

でもって、束とセシリアにも全くと言うほどでは無いが碌な返答もしていないのに、ここで箒の想いに応えるのは違うだろう。そもそも俺って、皆に好かれてはいるけど俺が皆をどう思っているのか、ってのが正直分かんねぇんだ。

多分、束とセシリアにも曖昧に応えてしまったのは、それが原因かもしれない。

 

もしこのまま、俺がどう思っているのかを俺自身が分からないまま付き合ってしまったら絶対に皆を傷付けてしまう。

 

「あー、うん……。はっきり言ってすげぇ嬉しいよ」

 

「!」

 

嬉しそうに、振り向く箒。

だけど。

 

「だけど、今はまだ応えられない。俺が、箒をどう思っているのか分からねぇんだ。妹として大切なのか、それとも一人の女として大切に思っているのか。だから、それが分かったらまたちゃんと返事をさせて欲しい。いや、なんなら俺から告白する」

 

しっかりと、目を見て宣言する。

箒はすぐには応えずに、俺の目をじぃー、と見つめ返して。

 

ふっ、と微笑んで言った。

 

「分かりました。そしたらその時を楽しみに待っていますね?」

 

「おう」

 

俺は、短く答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろですね」

 

「あぁ。いや、またここから花火を見ることが出来るなんて思ってなかったな」

 

「これからは、毎年見れますよ」

 

「そうだなぁ。そしたら、毎年見に来ないとなぁ」

 

箒を膝の上に乗せて、話す。

 

すると、ひゅるるるるる、と言う打ち上げ花火特有の音を響かせながら花火が打ち上げられる。

 

どーんっ!!

 

大きな音と共に、何種類かの色が混ざった花火が炸裂する。

いや、懐かしい。

 

昔は腰に携帯用の虫除けをぶら下げて箒と一夏の手を引いて、千冬と束を入れた5人で見に来たもんだ。

あれから早十年。

どんどん大きく成長していって、小学生に上がってからも一緒に来て。

 

中学生になっても一緒に来てくれるかな、と心配していたら色々と騒動があって箒は引っ越しちまった。

束はしょっちゅう家に来てたけども。

 

あれが最後かなぁ、なんて懐かしんでいたらまさかまさか、五年越しでまた見ることが出来るなんて。

それも、大きく立派に成長した箒と共にだ。

 

歳取ると涙脆くなるって言うけど、今初めて実感した気がする。

箒を抱えて花火見ているだけなのになんだか泣きそう。

 

それを紛らわせる為に花火と箒の顔を交互に見る。

連続して打ち上げられて花開く花火の灯りに照らされた箒の顔は、いっそ見たことがないぐらいってほどに綺麗だ。

 

……こんな美人が俺を好きだって、愛してるって言われても普通じゃ信じらんねぇよ。

 

どうすっかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花火が全て打ち上げ切られた後。

箒と手を繋いで二人並んで帰る。

 

母屋に着くと、手を繋いだまま入っていって。

 

「まぁ……!」

 

「おぉ、洋介君、遂に……」

 

「いや違いますって!と言うか普通心配しません!?娘が男と手を繋いでるんですよ!?しかも一回り以上年上のおっさんと!!」

 

なんて一幕もあったりしたけど。

 

とにかく、五年振りの再会は色々な喜ばしい感情がごちゃ混ぜだった、と言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 






お待たせしました。





R-18編よん。

https://syosetu.org/novel/227721/

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