おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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久しぶりの投稿にも関わらず、本編じゃないしバレンタインデーよりだいぶ遅れての投稿とか舐めてんのか。


閑話 バレンタインデー!!!

 

 

本日は二月十四日。

何を隠そうバレンタインデーだ。

 

勿論実質女子高みたいなIS学園は特に作ったりなんてことはしない俺を除いて大層楽しんでいる訳だ。

友チョコだとかウンタラカンタラできゃいきゃいと騒ぎ、料理部はそりゃもう手の込んだモンを作っていたり、スーパーマーケット並みの品揃えと数量を誇る学園の購買にもバレンタイン用の板チョコやらお高い既製品のチョコやらが大量に並べられ、甘いものに目が無いお嬢ちゃん達の手にどんどん取られて行くわけだ。

 

おじさん?俺ァ、確定演出で一夏から貰えるから良いんだよ。

まぁこれで貰えなかったらガチで凹むけど。

多分、向こう一年ぐらい、具体的には次のバレンタインデーにチョコを貰えるまで立ち直れない自信があるもんね。

 

俺はチョコを溶かしてなんか作ろうなんてなったら絶対に碌でもない結果になるのは目に見えてっからね、お外に出掛けてクラスの皆とかには普通ぐらいのチョコを買って渡しましたとも。

一夏達には勿論特別なわけだから良いヤツを渡したしな。

 

「おーじさん」

 

「はーい、なんでしょーか」

 

何時もの如くいきなり現れて、後ろから抱き着いてくる束のでっかくて重い何とは言わないけど、重量物を頭の上に乗せられる。

 

「今日が何の日か、分かってるでしょ?」

 

「皆さんが浮かれておりますので」

 

「おじさんは浮かれてないの?」

 

「そりゃ良い年したおっさんがなぁ」

 

「へぇー、じゃぁこれ、いらないんだ?」

 

「めっちゃ欲しいです」

 

「んもー、しょうがないんだからー!」

 

俺を抱き締めながらくねくねと身体を揺する。

お陰で柔らかくてあったかくてでっかいのが俺の頭の上と言うか、頭頂部から耳ぐらいのところまでを両脇から挟んできて、んもうとんでもない事になっておりますです、はい。

 

「はいっ、バレンタインチョコ!」

 

「おぉぅ……?うーん、なんとも斜め上の、これまた随分と凝ったモンが出て来たな……」

 

「そりゃ大本命も大本命に渡すってんだから束さんが持ち得る全力を叩き付けたに決まってんでしょう!」

 

渡されたのは四分の一サイズのとんでもなく精巧に作られた束像だった。

 

「これをおじさんが食べたら、私がおじさんの血肉になるってことでえへへへ」

 

「発想がおっかねぇよ」

 

「えー?私のこと、食べてくれないの……?」

 

「食べる(カニバリズム)は流石になぁ……」

 

俺にそんな癖は無いし、ここまで精巧に作られたのを食うってなるとなんかもったいないって言うか、物凄い罪悪感があって食えないだろ。

 

「まぁそう言うだろうと思ったけどねー」

 

そう言いながら、どういう訳か胸元から手のひらサイズの、丁寧にラッピングされてリボンまで巻かれている箱を取り出す。

 

「はい、こっちが本当のバレンタインチョコ」

 

「最初っからこっちを渡してくれれば良かったんでは?」

 

「えー?だって普通に渡したって芸が無くてつまらないし、それに印象に残りづらいでしょ?」

 

「んなこと考えなくてもちゃんと面白いし滅茶苦茶印象に残るべ」

 

ちょっと何を変な事を考えてんだか分かんねぇな。

まぁそれでも俺の為にこうして作ってくれたんだから嬉しいもんだよ。

 

「有難く頂きます」

 

「あとでちゃんと感想聞かせてね?」

 

「おう。で、こっちのフィギュアチョコはどうすりゃいい?」

 

「あぁ、それ、チョコの匂いを付けただけのフィギュアだから飾って飾って」

 

「んん?」

 

「だから、私のフィギュア。ちゃんと飾ってあげてね?」

 

「お前本当にやることなすこと斜め上だな」

 

「あっ、因みに着ている服も下着もちゃんと脱がしたり着せたりできるし、おっぱいの形とかぜーんぶ私と同じように作ってあるからね!」

 

「……恥ずかしいなら持って帰えりゃいいんじゃね?」

 

言いながら顔を真っ赤にして、もう何がしたいのか分かんないよ。

 

「で、でもでも、私の事知って欲しいし……。と言うかおじさんが私のフィギュアであんなことやそんなことしなきゃ良いだけのはなしだからね!?」

 

「作った本人が何言ってんだ」

 

結局例のフィギュアは束が持って帰らなかったから部屋に飾られることになったんだが、それを見た皆と一悶着あったのは言うまでもない。

 

ついでに言っとくと、俺は紳士なので下から覗いたりとか服を脱がせたりなんて言う事は勿論してない。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

束の来襲から少しして、一夏と千冬がやって来る。

 

「ハッピーバレンタイーン!」

 

「兄さん、チョコだ」

 

二人に手渡されたのはこれまた可愛らしい包装がされた握り拳ぐらいの大きさの小箱だ。

 

「相変わらず器用にやるなぁ」

 

「楽しまなきゃ損だよ!」

 

「私は既製品を買って来ただけだがな」

 

「それでも良いんだよ。貰えるだけで嬉しいもんなの」

 

イベントを全力で楽しむタイプの一夏はバレンタインも、そりゃ心底楽しむ。

中学の時もクラスメイトに部活、仲の良い面々全員にクッキーを配ってたし、弾や数馬、蘭達には手の込んだチョコを渡していた。

 

勿論毎年俺も貰ってたんだが、余りにも手が込んでいるというか、熱量が凄い一流パティシエも裸足で逃げ出すんじゃねぇかってぐらいのを作ってくれるもんだからどう食ったらいいのか分からないってのまでがセットだ。

ちゃんと食うけどね。

 

千冬は知っての通り、料理の「り」の字も分からんってぐらい料理が出来ない。

一応ベーコンを焼くぐらいなら出来るがそれだけだし、菓子作りなんて以ての外。

昔、高校生ぐらいの時にチャレンジした事があったんだが一夏に教えられながら失敗し、項垂れてたな。

それからと言うもの千冬に関しては作る代わりにめっちゃ高くて良いチョコをくれるのだ。

 

いやー、お兄ちゃん冥利に尽きますなぁ!

 

「もう本当にありがとうな」

 

「ホワイトデーのお返しを期待しておく」

 

「おうよ、任せとけ」

 

「それじゃ、皆もお兄ちゃんにチョコ渡したいだろうから退散するね」

 

「おう」

 

一夏と千冬が部屋から出て行く。

千冬は多分、これから仕事なんじゃねぇかな?

 

IS学園って本当に忙しくない時が無いってレベルで忙しいからな。

超忙しいか忙しいの二択しかない。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

少しすると鈴が来る。

 

「まぁ何時も通り無難に行くことにしたわ」

 

「ごま団子だァ!」

 

「話を聞きなさいよ!」

 

鈴はごま団子。

ごま団子って揚げ物だから結構手の込んでる菓子なんだよな。

 

しかも作り立てらしく、まだ温かい。

これは今食わなきゃ損するぞ。

 

「いつもありがとうな。鈴のごま団子大好きなんだよ」

 

「ん、感謝して食べなさい?」

 

「あったりめぇよ。で、もう食っていい?」

 

「あげたんだから好きにしなさいよ。まぁ、出来立てだから一番美味しいとは思うわ」

 

そう言いながら、勝手知ったる何とやらでお茶を入れて出してくれる。

鈴に限らず皆の方が俺よりも部屋の事知ってんじゃねぇかな。

 

「んまい!」

 

「それなら良かったわ」

 

お茶と一緒にごま団子を頬張る。

これがまたうめぇのよ。

 

ごまと風味とか味と、揚げたときに染みた?付いた?油がじゅわってなって、餅の触感と中に入ってる餡子の甘さが良い感じで、良い感じなのよ。

 

「美味かった。ご馳走様でした」

 

「お粗末様でした。じゃ、アタシは帰って後片付けしてくるから」

 

「本当にありがとうございます」

 

「良いのよ」

 

そう言って鈴は帰ってく。

まぁ何というか、本当にありがたい話ですなぁ。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

「佐々木さん、今良いですか?」

 

「おー、いいぞー」

 

ノックして入って来たのはシャルロット。

盆の上には見たことの無い菓子が。

 

「僕はね、カヌレを作って来たんだ。皆ならやっぱりチョコだったりするでしょ?だから一人二人ぐらい違っても良いかなって」

 

「かぬれってなんだ?」

 

「焼き菓子だよ。フランスのお菓子で、美味しいんだ」

 

「へぇ、初めてだ」

 

「チョコじゃないって言ったけど、実は中にチョコチップが少しだけ入ってるんだ。味見してみたけど、すっごく美味しく出来たと思うよ」

 

良い感じに焼き目と言うか、焦げ目が付いている。

甘い良い匂いが漂ってきて堪らん。

 

「頂きます」

 

「はいっ、召し上がれ」

 

一口食べてみると、外は固いんだけど中はしっとり柔らかい。

それにチョコとは違った優しい甘さがあるから、何というか、凄くほっとする味だ。

 

「初めて食ったけど、美味いな」

 

「ほんと?」

 

「ほんとほんと」

 

「えへへ」

 

嬉しそうに微笑むシャルロットのカヌレは、お世辞抜きで本当に美味い。

あんまり洋菓子に縁がある人生じゃぁ、無かったがこりゃ良い。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「小父様」

 

「ん」

 

「その、本当はカカオから厳選して小父様の為だけのチョコレートを作ろうとしましたのよ?ですけど、皆さんにそれだけは止めろと言われてしまって……」

 

「あー……」

 

しょんぼりと項垂れるセシリアを見ながら、申し訳ないけど仕方ないなと思っちゃう。

 

「ですから、市販の板チョコを溶かして型に流し込んだだけのものですけれど、どうか受け取ってくださいますか?」

 

「あったりめぇよ」

 

受け取った15cmほどの箱の中には、不器用ながらも頑張って作ったであろうハート形のチョコ、そしてホワイトチョコでドストレートにI love you、と書かれて入っていた。

それを見ただけで嬉しいもんだ。

 

「あの、小父様」

 

「うん?」

 

「勿論、本命ですわ。味は、美味しくないかもしれませんけれど、籠めた想いは本物ですから」

 

にっこりと微笑んでそんなことを言ってきやがるもんだから、顔が熱くなっちまったよ。

 

セシリアはお茶なら上手く淹れられるから、と言って紅茶を入れて帰って行った。

一口飲んでみると沢山練習したのか、前よりも随分と美味しいものだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「兄さん」

 

「おっ、来たな来たな?」

 

「はい、来ました。五年間渡せなかった分、沢山想いを込めましたから、受け取ってください」

 

「有難く頂戴致します」

 

箒は生チョコを入れた大福を作ってくれたらしい。

 

「おぉ、また腕を上げたなぁ」

 

「お菓子作りは、あんまりやったことが無いので自信は無かったですけど、お口にあったなら良かったです」

 

「美味い美味い」

 

「お茶、淹れますか?」

 

「頼む」

 

緑茶とチョコ大福は、合わないようでかなり良い感じに合う。

口の中の甘さを緑茶が流してくれて、またチョコ大福を食べたときに新鮮な感じで食える。

 

のんびりまったり、そんな感じで食べ終えた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「父よ!バレンタインチョコだー!」

 

「お父様、ハッピーバレンタイン、です」

 

勢いよくドアを開け放ち、だーっと駆け込んで飛び付いてくるラウラを受け止める。

 

「皆でな、父の為にチョコを作ったのだ!」

 

「そっかそっかー!」

 

「これがそのチョコだ!」

 

「んもう最高に嬉しいぜー!」

 

「ぅわはー!」

 

思いっ切り撫で繰り回してやるとそりゃもう、ニッコニコで嬉しそうに笑うもんだから可愛くて可愛くて……。

 

「お父様、私も作りました」

 

「クロエも撫でちゃるー!」

 

「きゃー」

 

クロエの頭も撫でまわすと、ぶっきらぼうな感じの、棒読みのような、それでも上擦っていて嬉しいのが分かる声を上げる。

ウチの娘達は世界で一番可愛くてよ!

 

その後、三人で仲良くチョコを食べましたとさ。

 

 

 

 

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