佐久間大学?え、学校ですか?   作:佐久間大学

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アポ本編が再びネタ詰まりを起こしたので番外編です













暗殺者とは(哲学)

 古今東西、数多の英霊が召喚され思い思いの時間を過ごし、特異点攻略、施設運営などを行っているカルデア。

 作家や芸術家のサーヴァントは別として、基本的に彼らの存在意義は戦う事に限定されている節がある。そもそもが聖杯戦争を行うために召喚されるのだから当然と言えば当然なのだが。

 

「おや?」

「うん?」

 

 機械的な印象が冷たさを与える廊下。相対したのは、二騎のサーヴァント。

 クラスはどちらもアサシン。しかし、その戦闘能力は暗殺よりも正面切っての斬った張ったが得意と言う異質さを兼ね備えた存在。

 

「これは、佐々木殿。どちらへ?」

「なに、ちょっとした散歩というもの。何分、こうして歩き回れる身として召喚されたのでな。それはそうと、佐久間よここであったのも何かの縁、少しやらんか?」

 

 群青の侍、佐々木小次郎は親指で壁を、正確にはシミュレーターを示して見せる。

 対するは黒い侍、佐久間盛重。

 

「シミュレーター、にございまするか………ふむ、確かに手合わせなどは最近はご無沙汰になっておりますな」

「であろう?では早速、ダ・ヴィンチ女史のもとへと参ろうか」

 

 トントン拍子に話は進み、二人はシミュレーター申請の為にダ・ヴィンチの元へ。

 いつもの盛重ならば止めたのかもしれないが、今日は何かと暇していたのだから致し方なし。

 カルデアでは戦闘狂なサーヴァントにも対応する為にシミュレータールームは開けられており、申請が必要になるが大抵は特に苦慮することなく手合わせ程度はできるようになる。流石に宝具ぶっ放すのは止められるだろうが。局地的インド戦争など笑い話にもならない。

 ほどなくして、二人の姿はシミュレータールームの中にあった。

 部屋の指定などは特にされておらず、真っ白な無機質な部屋だ。目がくらまない程度の光度の中、小次郎は既に得物である長刀・物干し竿を抜いている。

 対する盛重は鞘から刀を抜かず若干腰を落とした居合の構えだ。

 

『それじゃあ、二人とも準備は良いかな?』

「「………」」

『それじゃあ、手合わせ始め!』

 

 全サーヴァントの中でも、恐らく技量と言う一点に限れば上位に食い込む二人の手合わせ。

 期待してモニターを見つめるダ・ヴィンチだったが、彼女の思惑とは裏腹に静かな立ち上がりを見せていた。

 一切構えない小次郎に対して、盛重もまた刀を抜かない。

 技量に極振りした二人にしてみれば、戦闘と言うのは陣取りゲームに近い。如何に相手の得意をつぶして、自分の有利を押し付けるか。

 果たして、

 

「ッ!」

 

 仕掛けたのは小次郎。ノーモーションからの刺突。

 物干し竿は何も奇をてらっただけのゲテモノではない。その間合いは刀身によって槍と同程度には広いのだ。

 更に、盛重は見た。小次郎の突きは、刃を下にしたものではなく横にした平突きである、と。

 この突き、避け方を間違えるとそのまま横薙ぎに変化して、真っ二つにされてしまう。

 セオリー通りならば、刃とは反対。峰の方へと回避することが基本。だが、盛重は逆に突きを迎え入れるようにして前へと突っ込んでいた。

 限界まで目に集中力を集めて、今の彼には一瞬一瞬が限りなくゆっくりに見えていた。

 死に際の集中力とでも言うべきか、人間特殊な状況下では持ちうる能力の大半が鋭敏化、もしくは強化されている場合がある。

 戦場と言う死に場所ともいえる場所を駆け抜け続けた盛重もまた、それは体得していた。

 彼が突っ込んだのは、刃側。突っ込むと同時に抜刀し、己の刀と物干し竿をかみ合わせ即席のレールとしたのだ。

 そのまま、火花を散らして前へ。

 迫る盛重。小次郎は直ぐに刃を引いた。

 そこから始まったのは、極力刃を打ち合わせない接近戦。いや、刃はぶつかり合うときはぶつかり合っている。ただそれ以上に、空気が切れる音が響いている。

 異常な光景だった。

 間合いで勝るのは、小次郎。小回りで勝るのは、盛重。技量ではどちらも全力を出していないため五分といったところ。

 

「「……………………」」

 

 何より二人そろって無言を貫いている。

 派手さは無いが、それでもまるで一本の映画を見ているような惹きつける引力の様なものを放つ手合わせ。

 一瞬の鍔迫り合いから、放たれる長刀による斬り上げ、紙一重で躱し羽織の一部が飛ぶが気にすることなくそのまま相手の踏み込むであろう場所に踏み込むことでその動きを阻害。上体のみの突きを放てば当たる前に更に、踏み込んで手の甲で腕を弾くことで突きもろとも軌道を逸らしていた。

 振り抜かれそうになった右手の刀は、しかしその前に踏み込めなかった片足を持ち上げて膝が右前腕を押しとどめていた。

 

「やはり、良い。同じ日本のサーヴァントとして、胸が躍るというものだ!」

「ふっ、小生としてもここまで技を競うのは久方ぶりにございまする」

 

 互いが互いに密着状態。刀を振るうような間合いでもなく、どちらからともなくその距離を開いた。

 ゆっくりと歩くような足取りで。互いが互いに得物の間合いの外へ。

 一定の距離を持って離れた二人は示し合わせたように向き直った。

 

「戦い続けるのも芸がなかろう?」

 

 小次郎は、そこで初めて構えた。

 霞の構え。たったそれだけだが、何をするのか盛重にはわかる。

 右手に刀を、左手に鞘をそれぞれ順手と逆手に握り待ちの姿勢。

 

「行くぞ」

「参りまする」

 

 次に仕掛けたのは、盛重。彼は、あろうことか自ら死地へと飛び込んでいったのだ。

 小次郎は考える。目の前の男が破れかぶれの特攻を仕掛けるか、否か。

 

(ふっ…………)

 

 内心で笑みをこぼして、彼はその考えを否定する。目の前の男は絶望的な状況でも最後まで足掻き続ける、そんな男である、と。

 であるならば、この先に何が待つのか見たくなるのは剣士の性というもの。

 

「【秘剣・燕返し】………!」

 

 放たれるは、三つの斬撃を全く同時に放つ必殺の一撃。

 純粋な技量により多重屈折現象を引き起こしそれ即ち、魔法の領域に生身で手を掛けたということ。

 頭上から股下まで両断する一の太刀。一の太刀を回避する相手の逃げ道をふさぐ円軌道の二の太刀。左右への離脱を防ぐ三の太刀。

 これら三つが全く同時に相手に襲い掛かってくるのだ。振るう当人の技量も相まって、龍種であろうともその甲殻を切断しバラす事だろう。

 当然、サーヴァントであろうとも同じこと。特殊な宝具やスキルでも持っていない限りまず間違いなく惨殺される。

 そんな死の淵へと、盛重は何のためらいも無く飛び込んでいた。

 響くのは金属音と鈍い殴打の音。

 

「……………………よもや、この剣を抜けてくるか」

「ッ、完璧ではありませぬが」

 

 右大腿部と右わき腹に赤いシミを浮かび上がらせながら、それでも盛重は生存していた。

 小次郎も驚く。何せ彼の秘剣はある世界線ならば、かの騎士王ですら直感が間に合わずその場からの離脱をして猶、手傷を負うほどのものなのだから。

 それを、あまつさえ前に突っ込んで突き抜ける。

 

「良ければ、種を明かしてはくれぬか?」

「…………ふぅ………そもそも、小生は貴殿の剣が初見ではありませぬ。仮に、初見であったならば間違いなく、小生はこの場で躯を晒す事になっていたことをご理解くださいませ」

 

 一つ息をついて、姿勢を正した盛重は刀を鞘へと納めて語り始めた。

 

「貴殿の秘剣。三つの斬撃が一度に放たれるという恐るべきものにございまする。ですが同時に、三つの斬撃は常に同じ軌道を描くということ。貴殿が構えることがその証左。であるならば、話は簡単。三つの斬撃に対して、一度に対応してしまえば良いのです」

 

 事も無げに彼は語る。だが、そんな事は普通出来ないしそもそも試そうとすらも思わないだろう。

 何せ当たれば一撃必殺。練習なども出来ないし、イメトレが間違っていればその時点でアウト。

 分かっているのかいないのか、彼はさらに続ける。

 

「振り降ろしの一の太刀を前へと突っ込みつつ時計回りに錐揉み回転することで逸らし、二の太刀を逆手に持った鞘を打ち付ける事で空へ。三の太刀は空中に留まっている状態で躱しました。といっても、これはまだまだ未完成。こうして手傷を負った時点で小生の負けにございましょう」

 

 染みの広がる袴を示して、盛重は頭を掻いた。

 無論、突っ込んだ体勢のまま対人魔剣を発動することはできただろう。

 しかし、これは手合わせだ。やっていい限度などもあり、その辺は自重していた。

 

「さて、いかがいたしましょうか。もう一戦交えるならば、小生は構いませぬが」

「それは僥倖。こちらとしても願ってもない事」

 

 生身ならばともかく、サーヴァントにとってみれば最悪腕がもげても戦闘には支障をきたさない場合が多い。これは肉体が、血肉ではなく魔力の塊で構成されているから。

 二人の侍は、再び一定の距離をとって刀を構え、

 

「―――――ちょーっと、待ったァーーーーーーッ!」

 

 横合いからの乱入者。

 薄い色素のの髪に藍の着物。両の手には大小の刀を携えて、浮かべる笑みは好戦的。

 

「武蔵殿?何用にございまするか?」

「何用って、決まってるでしょう!?このカルデアで最強の剣士決定戦をするって言うなら、私も混ぜなさい!」

 

 彼女、宮本武蔵はそう言って目を爛々と輝かせる。

 訂正するが、そのような事実は全くない。盛重も小次郎も、単なる手合わせで戦っていたにすぎないのだから。

 

「武蔵よ、私も佐久間も手合わせをしていただけ。お前の望むようなことをしてなんだ」

「あら、そうなの?なら、私もその手合わせに混ぜてもらえる?小次郎さんもそうだけど、佐久間さんとも一度剣を交えてみたかったのよねぇ」

「小生にございまするか?」

「そっ。かの信長公の懐刀で、今は立香の特記戦力の一人!けれど、滅多に他の人たちと戦ってるところを見たことが無かったから、誘いにくかったのよね。だから、この機会に貴方の力を知りたいの!」

「は、はあ…………」

 

 かなりハイテンションな武蔵に対して、盛重は気のない返事。

 当然、というべきか彼はカルデア内での自分の評価をほとんど知らない。そもそも、その手の話題に関して興味が無く、何事も生真面目に全力を尽くすのが基本だからだ。

 因みに、彼の評価は基本的に悪くない。寧ろいい。かの気難しい人類最古のジャイアニズムを振りかざす英雄王ですらも認める男なのだから。相性がよろしくないのは、某青ヒゲや小悪魔系後輩などだろうか。どちらも相手方が一方的に苦手意識を持っているだけなのだが。

 そんな彼は、どうしたものかと考える。

 性別によって実力は変化しないことをよく知る盛重だが、気にしているのはそこではなく。

 

(夕餉の支度など………エミヤ殿達に任せきりで良いものか…………)

 

 夕飯の支度、およびその他雑事。朝昼夜の食事の支度や、掃除、洗濯。作家サーヴァントへの夜食提供に、医療関係サーヴァントとその他サーヴァントの折衝。子供系サーヴァントの面倒を見たり、カルデアスタッフへの気遣いをしたり。

 これらに加えて、戦闘も参加する。それも最前線だ。

 ぶっちゃけ、サーヴァントでなく生身ならばぶっ倒れている事だろう。

 

「佐久間さん?」

「ふっ、この顔は大方夕餉の支度について考えておる顔だな」

「あっ、そういえば佐久間さんも料理できるんだったわね…………この前のうどんは美味しかったわぁ……」

「はっはっは、かの剣豪・宮本武蔵も骨抜きか」

 

 そんな二人の会話がなされる中、その対面である盛重の方も進展があった。

 

『今日一日程度、羽を伸ばすぐらいなら良いんじゃないかな?というか、私たちも盛重君には頼りっぱなしだからね。もっと楽にしてくれても良いんだよ?』

「いえ、しかし……小生が言い出した手前…………投げ出すような気が…………」

『それは考えすぎさ。そもそも、サーヴァントの仕事は戦う事。家事その他はボランティアの様なものなのさ。ほら、ブーディカや頼光君も休みはもらっていただろう?』

「それは、まあ…………」

『だから気にしないでくれたまえ!立香君たちには私から知らせておくからね』

 

 ダ・ヴィンチにそこまで言われてしまえば、盛重の腹も決まるというもの。

 

「武蔵殿!」

「ん?決まった、佐久間さん?」

「ええ、決まりましてございまする」

「ほう、ならばこれよりは三つ巴か?態々、一対一の状況に持っていく必要もあるまい?」

「良いわね、ソレ!じゃ、やりましょうか!」

 

 ピリッと引き締まる空間。互いが互いに自然と距離をとって三角形の形で、それぞれが敵を見据える。

 長刀が、二刀が、打刀が、光を反射し妖しく煌めいた。

 かくして始まる、日本サーヴァント剣士最強決定戦(仮)

 

―――――to be continued…………?

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