林間学校最終日、つまり特別試験によってグループの優劣を決める日がやってきた。
各々の所属する大グループは指定された教室へ集められ、朝食が支給された後、特別試験の説明が始まる。
試験内容は『禅』『スピーチ』『駅伝』『筆記試験』の4つ。
それぞれ、この一週間で学んだことを生かす試験だ。
1年はまず、坐禅から。そして次に教室で筆記試験。それから駅伝、最後にスピーチという流れだ。
試験を円滑に進めるため、1年は既に座禅場に集まっている。
今朝は清掃も免除され、すぐに試験開始とハードなスケジュールと言えた。
「ではこれより、坐禅の試験を開始する。採点基準は2つ。道場へ入ってからの作法、動作。座禅中の乱れの有無だ。坐禅終了後は指示があるまで各教室で待機するように」
1年の男子生徒に説明を終えた教師はすぐに生徒を呼び出していく。
五十音順で呼ばれ、一度に複数人の試験を行うので、スムーズに試験は進んでいく。
そんな中、カムクラは早い段階で呼ばれた。
この一週間で無の極地にも慣れてしまい、感覚が研ぎ澄まされてしまったことに退屈を覚えながらも、彼は完璧に坐禅を行っていく。
(ツマラナイ。この状態で得られるのは極限の集中状態のみ。これ以上、僕の才能を研磨することに意味はあるのでしょうか)
目を瞑る前に自グループの生徒たちを観察していくが、大きな失敗をした者はおらず、みな練習通りに坐禅をこなせていた。
カムクラ唯一の懸念点である高円寺も問題ない。
実に綺麗な姿勢で、一糸乱れぬ完璧な坐禅を行っていた。
その後、流れ作業のようにどんどんと試験は進み、坐禅の試験は終了する。
担当教師の指示に従い、1年は筆記試験を行う指定教室に向かっていく。
「カムクラさん、俺かなり出来ましたよ!」
道中、石崎が上機嫌で話しかける。
「軽く見ましたが、十分綺麗な形でした。高得点を狙えると思いますよ」
「っしゃ! カムクラさんのお墨付きだぜ」
「その調子で次の筆記試験も取り組んでください。不安はありませんよね?」
「はい! カムクラさんの教えもある上に、俺や小宮は足引っ張らねえように自習してたんですから任せてください!」
純粋に言う石崎に嘘はなく、小宮の方を見てドヤ顔をしている。
カムクラの見えない所で2人は試験本番に向けて努力をしていた。
カムクラはそれをすぐに理解した。勉強法を確立させた甲斐があったと感想が浮かぶが、そこに満足感はない。
「筆記試験は全員が揃い次第、開始させてもらう。ルールは普段の中間、期末考査と同じだと思ってくれて構わない」
指定教室に到着すると、次の担当教師が試験の注意を説明していく。
最後まで疑問点はなく、普段の試験と同じだ。
全員が揃ったことを確認すれば、説明通り解答用紙が配られた。
「それでは、試験始め」
一斉に紙が捲られる音から文字が書き込まれる音へ。
カムクラは問題用紙に全て目を通す。
特筆すべきことはなく、要領を押さえていれば間違いなく満点が取れる内容だった。
このレベルならグループメンバーが9割を切ることはない。
そう予想立てながら、正答に鉛筆を動かした。
─────
1年男子が駅伝の試験に向かう中、3年女子はスピーチ、駅伝の順で試験を行っていた。
誰もが真剣に取り組んでいる特別試験。
3年にとって特別試験は残り数回。上のクラスを目指せる機会はもう片手で数えるしかないのだ。
そんな中、3年Aクラスの橘は誰よりも必死に取り組み、そして自グループの動きに違和感を覚えていた。
(……みんな、真剣にやってる)
責任者である猪狩を筆頭に、誰もが必死になって駅伝をこなしていた。
橘のグループの駅伝の順位は2位。1位こそ取れなかったが、十分すぎる高順位。
しかし、だからこそ奇妙な気分になる。
つい先日まで橘を蹴落とそうとしたメンバー達が、橘を陥れるのではなく、そっちのけで試験に取り組んでいる。
(堀北くん)
橘はタオルで汗を拭いながら、ついついニヤケてしまう顔を隠す。
これは堀北のおかげだ。
宣言通り、堀北が救ってくれた。そう信じていた。
(……集中しましょう。まだ、試験中。最後まで何が起きるか分かりません)
妄想に浸りたい気持ちを抑えながら、橘は気を取り直す。
残りは筆記試験と坐禅。
1年と違い、運動した後の坐禅は人によっては足にくるものがある。
だからこそ、油断出来ない。
気合を入れた橘は、自グループとともに移動を開始した。
─────
カムクラ率いるグループは駅伝、スピーチと順調に終え、特別試験を終了した。
長かった特別試験は幕を閉じ、全校生徒は体育館へと集められる。
駅伝の試験は無事一位を獲得。それも、1人1人が1.2kmを懸命に走り切り、好タイムをマークしてぶっちぎりのトップだ。
カムクラは一位を確信していた。
どの試験もミスはなく、1年内では圧倒的な完成度を誇るグループだった。
今回の試験は平均点勝負であるが、3年は堀北学が率いるグループ。2年が多少を足を引っ張ってもカバー出来る、それ程の余裕があった。
「林間学校での8日間、生徒の皆さんお疲れ様でした。試験内容は違えど、数年に1度開催される特別試験。前回行われた特別試験よりも全体的に評価の高い年となりました。ひとえに皆さんのチームワークが良かったことが要因でしょう」
この林間学校を取り仕切っている初老の男が、体育館の壇上にて笑顔でそう報告する。
「では早速、結果に触れさせてもらいます」
声色が落ちたことを全校生徒は感じ取る。
いよいよ、結果発表。泣いても笑っても、これが最後だ。
「今回の特別試験、男女共に全グループが学校側の用意したボーダーラインを越えていました」
初老の男はゆっくりと溜めてから切り出した。
そう発表されると、全校生徒からは安堵の声が漏れ聞こえてきた。
しかし中には、その結果に喜ばないものもいる。
その筆頭、3年Bクラスの生徒たちは不機嫌で険悪な雰囲気を纏っている。
「……雅」
「ああ、石倉先輩たちには謝らないとな」
生徒会長である南雲は何か言いたげな朝比奈に気軽な乗りで返す。
彼の表情は悔しそうな表情ではなく、スッキリとした表情が浮かんでいた。
負けた悔しさはある。しかしそれよりも堀北学が、自分より人気も実力もあった先輩が自分を認めて戦ってくれた。
その事実だけで、南雲個人はこれ以上ないくらいに嬉しかった。
「それでは、これより男子グループの総合1位から発表していきます。ここでは3年の責任者の名前のみを読み上げます。そのグループに属する1年生から3年生の生徒には、後日報酬としてポイントが配布されます」
説明後、初老の男はゆっくりと名前を読み上げた。
「3年Cクラス、二宮倉之助くんが責任者を務めるグループが1位です」
直後、3年生の一部から歓喜の声が上がった。
その中には、珍しく笑みを浮かべる堀北学の姿もあった。
その後、2位から最下位までのグループが発表されていく。
肝心の南雲雅のグループは3位。
これで南雲は大人しくなる、そう誰もが思った。
「続いて、女子グループの総合1位から発表していきます。1位のグループは3年Cクラス、綾瀬夏さんの所属するグループです」
発表が再開すると、今度は女子の一部から喜びの声が上がった。
3年綾瀬の大グループに所属する1年は堀北鈴音が責任者を務めるDクラスをメインとした小グループ。
彼女は宣言通り、櫛田の借金返済の目処を立てた。
男子同様、2位から最下位まで順に発表されていく。
椎名のグループは惜しくも2位、真鍋のグループは3位とCクラスは膨大なポイントを獲得した。
続けて4位にBクラスメインのグループ、5位にAクラスメインのグループ、最下位に余り物で構成されたグループだ。
「南雲」
順位発表が終われば、堀北が南雲に声を掛ける。
全ての発表が終わった訳ではなく、現在は携帯を返却する時間。
そして、今試験における重要な事務連絡の準備中だ。
「1位獲得、おめでとうございます堀北先輩」
南雲は心の底からの祝辞を述べる。
「お前の負けだ」
「ええ、俺の負けです」
南雲は清々しい表情で敗北を認める。
真っ直ぐな尊敬の視線を堀北に向ければ、堀北も南雲がこれ以上何かをするつもりがないと安心できた。
「よく、手を引いてくれた。これで、関係のない者たちにまで被害が広がらなくて済んだ」
「まぁ、今回の俺は敗者ですから。勝者の要求は素直に飲みますよ」
素直な南雲を見て堀北も薄く笑う。
「だが、今回のお前の戦略。終わったことだが色々と文句がある」
「あぁ~、分かってるっすよ。今度ちゃんと聞きますから、流石に今は傷心中なんで勘弁してください。
それに、俺と先輩はやっぱり根本的な考えが違う。互いの主張を理解できても、納得は出来ないっすよ」
「だろうな。だが、それでも文句の1つは言わせてもらいたい」
「ええ~、マジで勘弁してくださいよ。先輩だって、橘先輩と良い感じになれたんっすから」
「……それとこれは話が別だ」
2人は立場を忘れて友人のように話していた。
それを見た周囲は安心する。
南雲の野心が収まった事、そして2人の仲睦まじさに。
退学者が続出する特別試験で、この結果は損得を抜きに全校生徒を安堵させた。
「これで大量のクラスポイントは手に入った。俺の地位は大分下がったが、お前はこれからどうするつもりだ?」
場面は変わり、この結果の行く末を観察しているカムクラに龍園が問いかける。
今回の男子の順位は1位がCクラス中心のグループ。そこから2位がAクラス中心のグループ。3位が混合グループ。4位がBクラス中心のグループ。5位がDクラス中心グループ。最下位が混合グループだ。
結果、1年Cクラスの得られたポイントは108万ppと336cpを筆頭に、女子でも大量のポイントがある。
これによって、今回クラスを率いたカムクラの立場は龍園の右腕から有能なもう1人のリーダーという同位置の存在に変わっただろう。
「僕はこれ以上前に出ません。ほとぼりが冷めるまで大人しくした後、あなたにリーダーの座を返しますよ」
「いらねえよ。自分で奪い返す」
「なら、これからCクラスはリーダー不在ということになりますね」
「クク、それで特別試験を戦わせてみるのも面白そうだ。俺やお前なしであいつらがどこまで戦えるか、少し興味がある」
「時期が少し早い気がしますが、一つの試みとしてはありでしょう」
現状、リーダー不在のCクラスが特別試験に臨めば、敗北は確実だ。
敗北すれば、彼らはカムクラか龍園を求める。
そこからどちらに投票が集まるか。
カムクラはそんな分かりきった予想に砂粒の期待を込めていた。
「まぁ、その辺は後日話し合いましょう」
カムクラは龍園との会話を終わらせ、1年Cクラスの集団から離れる。
全校生徒が試験終了の喜びを噛み締めている中、カムクラは注目を浴びることを承知で堀北学と南雲雅の前に押し掛けた。
「随分と機嫌が良さそうですね、南雲雅」
抑揚のない声色に感情は読み取りづらく、2人の取り巻きは警戒心をつい上げる。
「要件は分かっていますね?」
「ああ、賭けの事だろ。携帯を出しな」
南雲雅は言い訳することもなく、潔く結末を受け入れていた。
既に、携帯は返却されている。
カムクラは手早く南雲から100万ppを受け取り、要件を済ます。
これでカムクラの手持ちポイントは約200万pp。多少の贅沢なら許される金額になった。
「なぁ、カムクラ。俺は強かったか?」
ポイントを眺めていると、ポツリと呟くように南雲雅が告げる。
「総合的な実力の高さを言うのならば、あなたは強いですよ。集団を率いる能力、カリスマ、機転の利く頭脳と高校生にしては高すぎるくらいです」
「……聞いといてなんだが、そりゃ嫌味か?」
「いいえ、これは正当な評価ですよ」
カムクラは携帯をポケットにしまい、南雲雅を真正面から見る。
燃え上がっていた自信は潜んだが、未だ強さのある眼光が見返す。
瞳の奥底にあるギラギラと輝く意思がカムクラを標的として捉えていた。
「前にも言ったが、堀北先輩の次はお前だ。今度はもう油断しない」
今回の試験、カムクラは堀北の手足となって動いていた。
そして南雲は再度知ったはずだ。カムクライズルの実力を。
だが、その実力差を見ても折れない胆力が南雲にはあった。
仮にも己の実力で生徒会長にまで上り詰めた男、その意思は並大抵ではない。
しかし、
「油断しない、ですか」
カムクラはどうでも良さそうに言葉を吐き出した。
この状況に退屈で仕方ない、そんな雰囲気が分かりやすく見受けられた。
「────これで終わりだと本当に思っているのですか?」
カムクラはどこまでも冷めた口調で告げる。
「……何?」
「なぜ、今回の試験がこんな大団円で終わると思っているのか、そう聞いているんですよ」
南雲はおろか、協力者であった堀北もカムクラが何を言っているのか理解できなかった。
カムクラは橘を救うために、妥協なく尽力していた。
にもかかわらず、まだ終わらない。
ノミでも見るかのような感情の籠っていない瞳が南雲を見ていた。
「カムクラ、お前……」
「あなたとの約束は守りましたよ、堀北学。ですが、ここからは僕個人の目的です」
「何を言っている。お前は南雲に何をするつもりだ」
カムクラは何も答えない。
その代わり、視線を体育館の壇上に持っていく。
すると、マイクを手に持った一人の男性が壇上に上がろうとしていた。
南雲は壇上に登る男性こと、この学校の校長を見る。
先程の初老の男性よりも権力のある人物は重たい雰囲気を纏っている。
体育館の舞台に立った校長の目付きは鋭く、何か重要な話がはじまると誰もが察していた。
「皆さん、特別試験お疲れさまでした。本来ならば準備が整い次第帰宅という流れでしたが、今回の試験について重要な連絡事項があるため、この場を借りて報告させて頂きます」
マイクを通した校長の声が体育館中に響く。
8日間という長い時間の特別試験に生徒は疲労しているため、文句の1つも言いたかっただろう。
しかし、校長の只ならぬ雰囲気から誰もが耳を傾けていた。
そんな中、南雲は言いようもない不安に襲われていた。
特別試験の敗北も相まって、不安を煽るには十分な演出。
そして、次の言葉でそれは現実に変わった。
「早速、皆さんにご報告させて頂きます。今回の試験、南雲生徒会長が虐めに関わっていることが分かりました」
衝撃の事実が報道される。
体育館には驚愕を隠せない生徒に溢れ、注目は生徒会長である南雲雅に集約する。
かく言う南雲も、驚きかえって放心していた。
「事件の発端は今回の特別試験、南雲生徒会長は3年Aクラスの橘茜さんを退学にするために、彼女に対して虐めを行っていた事が発覚しました。
この犯行は計画的であり、明確な悪意を持って実行されていました」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
校長が大衆に向けて演説を続ける最中、南雲は待ったをかける。
「これはどういうことですか、俺に────」
「────南雲生徒会長、虐めに関わっていた事実を認めますか?」
南雲が主張を終える前に校長は言葉を被せる。
強い言葉に南雲は一瞬戸惑ったが、すぐに反論が許されない状況を理解し、首を横に振る。
「南雲生徒会長、あなたは今回の試験で橘茜さんを試験のルールを利用して退学にしようとしましたね?」
「……はい」
これに関しては悪い事ではない。利益のために誰かを蹴落としているだけ。この学校ではお咎めはない。
しかし、虐めについては話は別だ。
「その際、3年Bクラスの生徒を中心に彼女へ虐めを指示した、これに間違いありませんね?」
「いいえ、俺は虐めの指示なんかしていません」
当然、南雲は惚ける。
しかし、その顔色は良くない。全校生徒がいる前で、まるで公開処刑のように自分の計画が暴露されようとしている。
それは立場を持つ人間としては非常に面白くない状況だった。
「なぜ、嘘をつくのですか?」
「嘘をついていません」
「そうですか。では、確認してみましょうか」
校長は体育館の端に立っている教員の1人に目配せをする。
すれば、一人の女性教師が壇上に上がる。
「先生、あなたは猪狩さんのグループが橘さんに虐めを働いている現場を目撃しましたね?」
「ええ。彼女達は我々教師の前では見えないところで虐めに妥当する行為をしていました。同グループの生徒の協力がなければ、学校側は目撃できなかったでしょう」
女性教師は冷静に答える。
学校側からの証拠提出。誰もその言葉に反論する余地は出来なかった。
南雲は壇上に上がった教師だけでなく、端に並ぶ他の教師を見る。
教師たちは誰も驚いた表情を見せず、この展開を知っていて見守るように状況を俯瞰していた。
南雲雅は馬鹿ではない。
この状況を察し、誰かが学校側を巻き込んでいることを理解した。
そしてその誰かにも見当はついていた。
「────カムクラ、お前の仕業か!!」
怒気を孕んだ声が体育館中に響く。
しかし、色のない瞳が返ってくるだけ。カムクラは南雲を見るだけで何も言わない。
「……何をしたんだ、カムクラ」
堀北が鋭い目付きでカムクラに問う。
「簡単な話です。彼の悪事となる証拠を用意して提出しました」
カムクラの用意した証拠とは、一之瀬に協力してもらって学校側に虐めの現場をいくつか見させただけ。
たったこれだけのシンプルなことだが、こと荒い手段に対しては強力な切り札になる。
悪事は日の目を浴びなければ晒されない。義賊でもない限り誰だって、隠して悪事を行うものだ。
なら、晒せばチェックメイト。
当然の弱点だ。
そして、それを誰にも言わず、悟らせずに試験を終えた。
結果、学校側に虐めが伝わった。わざわざ宣言する道理もないことだ。
「……お前は何が目的だったんだ」
堀北学は鋭い視線とともにカムクラへ問う。
「彼の権力を削ぎ落す。それが今回の試験の目的ですよ」
カムクラははっきりと目的を告げた。
その目的とは、南雲の持つ最大の力、権力を消すこと。
なぜ、それをするのか。その理由は大きく二つ。
一つはカムクラにとって信用を裏切る南雲はつまらなかった。
もう一つは、今後南雲からポイントを摂取する時に面倒な力を持たせないためだ。
つまり、8億ポイントを見据えての行動だ。
「話を続けさせてもらいます。南雲生徒会長、このような証拠が出ていますが、それでもあなたは虐めの指示を出していないというつもりですか?」
校長は追い打ちをかけるように南雲へ問い詰める。
しかし、南雲はやや苦しげな表情をするだけで言葉には詰まらない。
「……待ってください。そもそも何で俺が関与していることになっているのですか。今回は3年の間で起こった虐めなのでしょう? 2年の俺には関係のない話です。
それに証拠だって、虐めが起こったっていう証拠でそこから俺に繋がることはないと思います」
「確かに、この証拠だけではそうでしょう。しかし、学校は今試験におけるあなたが立てた策の全貌を掴んでいるため、この場であなたの名を挙げています。
これから、橘茜さんを除く猪狩桃子さんが責任者を務める小グループには事情聴取の後、処分を決めます。そこから彼女たちとあなたの関係性が浮かべばどうなるか。もしあなたが嘘をついていれば、余計重い処分が下されるでしょう」
「つまるところ、自首勧告ってわけですか」
南雲は悟った。この状況はひっくり返せないと。
学校は既に南雲の立てた策を掴んでいる。だから、南雲を容疑者として数えている。
処分を下された猪狩達からの事情聴取の後に嘘が発覚すれば、処分はより重くなる。余計な罪を増やすだけだ。
「……指示に従います」
笑みは消え、絶望したようなやつれた表情で南雲は告げる。
自信ある表情は既にどこにもなかった。
「分かりました。具体的な処分は猪狩さんたちから事情聴取後に決まるのでまだ言えませんが、先にすでに確定している処分を1つ発表しましょう」
校長はおもむろにその続きを吐き出した。
そしてそれは当然の処分で、全校生徒にとってはこれ以上ないほどの報告となる。
「────2年Aクラス、南雲雅。あなたから生徒会長の地位を剥奪します」
体育館中に静寂が広まっていく。
その衝撃の事実に誰もが声を出せなかった。
全校生徒がその事実を理解するのと同じくらい時間が経過した頃だろうか。
南雲はこの結末を引き起こした人物に恐る恐る首だけを動かした。
堀北と話していた時の笑みは消え失せ、野心を秘めた目は死んだ魚のようなものに変わっていた。
「ツマラナイ」
慈悲はなく、カムクラは背を向けた。
どちらが勝者で、どちらが敗北者か。
説明する必要はなかった。
混合試験における1年の獲得ポイント
〈報酬のルール〉
(1)平均点が1位~3位の大グループの生徒全員にプライベートポイント(以下pp)、クラスポイント(以下cp)が与えられる。
1位:1万pp、3cp
2位:5000pp、1cp
3位:3000pp
(2)平均点が4位~6位の大グループ全員にpp、cpが減点される。
4位:5000pp
5位:1万pp、3cp
6位:2万pp、5cp
(3)小グループ内におけるクラス数によって報酬倍率が変化する。(これは4位~6位には適用されないものとする)
2クラス構成のグループの場合:両ポイントともに1倍
3クラス構成のグループの場合:(以下略)2倍。
4クラス構成のグループの場合:3倍。
(4)小グループ内における総人数によって報酬倍率が変化する。(これは4位~6位には適用されないものとする)
10人:両ポイントともに1.0倍
11人:(以下略)1.1倍
12人:1.2倍
13人:1.3倍
14人:1.4倍
15人:1.5倍
(5)『責任者』と同じクラスの生徒は報酬が2倍となる。
“1年男子小グループ”
①Aクラス14人、Dクラス1人の計15人グループ。(責任者:Aクラス)
②Cクラス12人、その他クラス1人ずつの計15人グループ。(責任者:Cクラス)
③Bクラス12人、その他クラス1人ずつの計15人グループ。(責任者:Bクラス)
④Dクラス12人、その他クラス1人ずつの計15人グループ。(責任者:Dクラス)
⑤Aクラス2人、Bクラス3人、Cクラス2人、Dクラス3人の10人グループ。(責任者:Dクラス)
⑥Aクラス1人、Bクラス3人、Cクラス4人、Dクラス2人の10人グループ。(責任者:Dクラス)
〈結果発表〉
1位:小グループ② Cクラス108万pp、336cp獲得。その他クラス4.5万pp、13.5cp獲得。
4クラス15人構成の内、責任者のクラス12名⇒1万pp×1.5×3×2×12=108万pp、3cp×1.5×3×2×12=324cp
2位:小グループ① Aクラス21万pp、42cp獲得。Dクラス1.5万pp、1.5cp獲得。
2クラス15人構成の内、責任者のクラス14名⇒5000pp×1.5×1×2×14=21万pp、1cp×1.5×1×2×14=42cp
3位:小グループ⑤ Aクラス1.8万pp、Bクラス2.7万pp、Cクラス1.8万pp、Dクラス5.4万pp獲得。
4クラス10人構成の内、責任者のクラス3名⇒3000pp×1×3×2×3=5.4万pp
4位:小グループ③ 等しく5000pp減点。
5位:小グループ④ Dクラス12万pp、36cp減点。その他クラス1万pp、3cp減点。
6位:小グループ⑥ Aクラス2万pp、5cp減点。Bクラス6万pp、15cp減点。Cクラス8万pp、20cp減点。Dクラス4万pp、10cp減点。
〈男子cp推移〉
Aクラス⇒+47.5cp(42cp+13.5cp−3cp−5cp=47.5cp)
Bクラス⇒−4.5cp(13.5cp−3cp−15cp=−4.5cp)
Cクラス⇒+301cp(324cp−3cp−20cp=301cp)
Dクラス⇒−31cp(13.5cp+1.5cp−36cp−10cp=−28cp)
“1年女子小グループ”
①Aクラス9人、Cクラス、Dクラス1人ずつの計11人グループ。(責任者:Aクラス)
②Bクラス11人、その他クラス1人ずつの計14人グループ。(責任者:Bクラス)
③Cクラス12人、その他クラス1人ずつの計15人グループ。(責任者:Cクラス)
④Dクラス10人、Bクラス3人、Aクラス、Cクラス1人ずつの計15人グループ。(責任者:Dクラス)
⑤Aクラス4人、Bクラス1人、Cクラス5人、Dクラス2人の4クラス12人グループ。(責任者:Cクラス)
⑥Aクラス4人、Bクラス4人、Dクラス5人の3クラス13人グループ。(責任者:Bクラス)
〈結果発表〉
1位:小グループ④ Dクラス90万pp、270cp獲得。Bクラス13.5万pp、40.5cp獲得。その他クラス4.5万pp、13.5cp獲得。
4クラス15人構成の内、責任者のクラス10名⇒1万pp×1.5×3×2×10=90万pp、3cp×1.5×3×2×10=270cp
2位:小グループ③ Cクラス54万pp、108cp獲得。その他クラス2.25万pp、4.5cp獲得。
4クラス15人構成の内、責任者のクラス12名⇒5000pp×1.5×3×2×12=54万pp、1cp×1.5×3×2×12=108cp
3位:小グループ⑤ Aクラス4.32万pp、Bクラス1.08万pp、Cクラス10.8万pp、Dクラス2.16万pp獲得。
4クラス12人構成の内、責任者のクラス5名⇒3000pp×1.2×3×2×5=10.8万pp
4位:小グループ② 等しく5000pp減点。
5位:小グループ① Aクラス9万pp、27cp減点。Cクラス・Dクラス1万pp、3cp減点。
6位:小グループ⑥ Aクラス8万pp、20cp減点。Bクラス8万pp、20cp減点。Dクラス10万pp、25cp減点。
〈女子cp推移〉
Aクラス⇒−29cp(13.5cp+4.5cp−27cp−20cp=−29cp)
Bクラス⇒+7cp(40.5cp−20cp=20.5cp)
Cクラス⇒+118.5cp(108cp+13.5cp−3cp=118.5cp)
Dクラス⇒+244.5cp(270cp+4.5cp−3cp−25cp=244.5cp)
〈混合試験終了後の各クラスcp〉
Aクラス1368cp⇒1386.5cp(47.5cp−29cp=+18.5cp)
Bクラス945cp⇒961cp(−4.5cp+20.5cp=+16cp)
Cクラス630cp⇒1049.5cp(301cp+118.5cp=+419.5cp)
Dクラス85cp⇒298.5cp(−31cp+244.5cp=+213.5cp)
Chapter8終わり。
次はinterlude8で1話やってから、chapter9です。
chapter9は原作と展開めっちゃ変わると思うので、時間かかります。お許しを。
ポイント計算間違ってたらすみません。
登場人物と原作との相違点をまとめた投稿が必要かどうか
-
必要
-
必要ない