ネロ帝が女のわけないだろ!いい加減にしてくださいお願いしますから!!   作:オールドファッション

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今回は二部か、三部構成なので短め。


親方、空からルシウスが降ってくるわけないだろ!伝説は再び蘇るその一!!

 そこはかつて、『その者白き衣を纏いて金色の湯に降りたつべし』の伝説が始まった場所。群衆の中に盲目の老婆が孫たちに支えられながら何とか立っている。かつて老婆はまだ光の宿っていた眼で奇跡を目の当たりにし、それ以来その伝説を絶やすことなく口伝して来た。だがどうだ、英雄が死んでから湯は枯れ、伝説の荒野には英雄が愛した二人の王が命を賭した戦いに挑もうとしている。

 

 戦士、軍隊、浴場技師、作家、アイドル、医者、町娘、王族、老人。

 ありとあらゆる人種と年齢、役職の異なった多くの人々がその荒野に集まり、戦いの行く末を見届けようとしている。ほとんどの目には怒りの炎しか映らない。何億という人の目に燃ゆる炎を誰が消せるだろうか。この老いた老婆では言葉すら届きはしないだろう。

 

「大ババ様、泣いているの?」

 

「いいや、この枯れた眼は涙すら枯れ果ててしまったよ」

 

 群衆が円形に囲む中、二人は剣を構えている。

 ネロ帝は赤く燃ゆる長剣を、ブーディカは星の如き輝きを放つ片手剣と盾を携えていた。二人の戦士すらも超越した王の圧力ははるか後方まで届いている。人の意思の集合体、国家の縮図が王ならば、彼女たちは今この場にいる数億の人間の全てを背負っているだろう。それはもはや神の化身と相違ない。

 

 ネロが切っ先をブーディカに向けて宣言した。

 

「戦火による流血はルシウスも望まないだろう、流れるのは私たちの血だけでいい」

 

 ブーディカはその言葉に虚ろな目で答える。

 

「構わない。早く終わらせよう」

 

 戦う以外は興味がなさそうに呟いた。もう、ここが現実かどうかもわかっていない。別世界の人格に動かされた人形がそこに立っている。

 

 ネロが下段に、ブーディカは上段に構えを取り合う。誰もが沈黙し固唾を呑み込むその場で、荒野へ流れる一陣の風で砂つぶが擦れ合う。小さなその音が嫌に大きく響いたような気がした。

 

 その音が止んだ時、中央から発生した衝撃波が周りの群衆へと届く。およそ人の剣戟とは思えない神速の応酬。歴戦の戦士たちでさえ少しでも目を離せばその動きを再び捉えるのは困難なほどの高次元の戦いが繰り広げられる。

 

「な、なあ……ネロ様が押してないか?」

 

「い、いや、ブーディカ様だろ?」

 

 当初の予想ではネロ帝が真っ先に負けると考えられていた。オリンピック競技の試合と戦場にて繰り広げられる命のやり取りでは天と地の差がある。だが、目の前の少女はまるで戦の女神が憑依したように戦っているではないか。斬撃の一つ一つが必殺の一撃へと昇華されている。それに正面から打ち合えるブーディカもまた赤き頭髪を妖しく揺らめかせる冷徹な鬼神。片手剣と盾を使い分けた細やかな動きに加え無数の手数でネロの動きを牽制している。

 

 何よりこの戦いをより高次元へ導いているのは互いの武器である。

 

 ネロの長剣『原初の火(アエストゥス・エストゥス)』は本来はネロが自らの手で、自らのために作り上げた武器。その製作にルシウスも一役買ってしまっていた。ルシウスの手により宝具レベルがワンランク上昇し、どこから手に入れたかも分からない謎の鉱物を加えたおかげでより重く硬い業物となっている。その上空気を読める剣なのでいつもより燃えていた。この剣、ちゃっかりと大火の際に抑止力の炎を吸収してたりする。

 

 そしてブーディカの『約束されざる勝利の剣(ソード・オブ・ブディカ)』も代々イケニ族に伝わる宝剣であったが、最近は湯から溢れ出す星の息吹に当てられて星の聖剣と大差ないランクに上昇している。盾もアヴァロンには遠く及ばないが強固な守りを誇り、正面からネロの攻撃を受けなければ壊れることはない。

 

 衝撃波が空の雲を散らし、斬撃が大地に深く刻み込まれていく。神々すら震える圧力が世界へと拡散した。それは最早聖杯戦争と変わらない規模の戦いだ。

 

 接近戦では埒があかないと踏んだ二人は互いに大きく距離を取り、自身の魔力を剣へと集中させる。抑止力よりバックアップされた膨大な力が渦となって集まり、散り散りとなっていた雲が集まりとぐろを巻いた。もし、この膨大なエネルギーが衝突し合えば周囲一帯は消し飛ぶだろう。アラヤは道筋を外れた不確定要素を一掃するつもりだった。

 

国家を災いする業火(レグヌム・インフェルナーレ)!」

 

 ネロの高く掲げた原初の火が紅蓮の炎を巻き上げ、真紅に灯る色は白光色の閃光へと変わる。かつてローマを滅ぼさんとした地獄の炎を濃縮したイメージ。それは七つの龍の首へと変貌し、圧倒的な熱量で大地をガラス化した。

 

「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流……」

 

 ブーディカの掲げた剣に光の粒子が集まる。空、大地、人、すべての物質から流れる光の軌跡を纏う剣は黄金に輝いた。もはや勝利は約束されている。

 

 そう、輝けるかの剣こそは過去、現在、未来、を通じ、戦場に散っていく全ての強者たちが今際の際に抱く、悲しく、尊き夢。その意志を誇りと掲げ、その信義を貫けと正し、今、無勝不敗の王は世界からの約束を得た。

 

 高らかに手に取る奇蹟の真名を唱う。

 其は――

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!」

 

 天高く伸びた黄金の奔流がネロへと振り下ろされ、大地を穿ちながら突き進む。オリジナルの聖剣すら超えた光のフレアが圧倒的な破壊力をもって放たれた。

 

「おお、おお……」

 

 周囲は眩い閃光に包まれる。誰もが目を覆う中で、あの老婆だけが二つの光が衝突する地点に人影を見たのだ。老婆がその姿を見間違うはずがない。それはまだ目に光が宿っていた頃に憧れた英雄の姿。それは二人の王の目にも映り込んだ。

 

「ルシっ、くっ!」

 

 膨大なエネルギーが衝突し合った瞬間、その中心地から暴風が吹き荒れる。周囲の群衆らは腕を組み合って風圧で浮かび上がる体を繋ぎ止めていた。二人の王もあまりの風圧に片膝を突き、剣を大地に突き刺すことで体を繫ぎ止める。

 

 ――これは?

 

 アラヤは困惑した。本来なら大爆発後のキノコ雲が立ち昇っていてもおかしくない。この程度の被害で済むはずがないのだ。嫌な予感が思考を乱す。そう、あの男は何度も紙一重で危機を乗り越え、次には度肝を抜く展開をもってくるのだ。だが今回は違う。確実に瀕死の重傷を負わせた。たとえ別の時空へ逃れようと助かる見込みはゼロだ。

 

 綿密に仕組んだルシウス&ローマ滅亡作戦。だが、その終盤に差し掛かりアラヤは重大な見落としをしている。この時代に意識を集中していたアラヤは気づかなかった。彼がどこへ行き、何を連れて来たのか。そして彼の背後に何がいたのか。

 

 ――は、はあああああああ!?

 

 中心地のはるか上空、風で巻き上げられた二つの物体を見てアラヤは血反吐を吐く。自分をもっとも苦しめた男と傍に浮かぶ黒髪の女性。ルシウスに『伯爵』と呼ばれていたナニかがこちらに向かって中指を立てているのを目にして。




戦争を終結させるヒント。ナウ●カと芥川作品のランナー。
ガ●●さんもようやく重い腰をあげたようです。

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