普段無表情の彼女は十六夜のことをどう思っているのでしょうか?
麻子side
逆廻十六夜という人物の第一印象はなんだかんだ面倒見のいい男だった。
私があいつと初めてあったのは大洗学園に入学してからしばらくたった頃に気が付くと学校に付いていた時があった。どうやら道端でふらふらしていた私を運んでくれたらしいのだがその男が十六夜だった。
それからは、あいつが学園一位の成績を持つ生徒だと知ったりこの学園唯一の男だとしったり、少しずつあいつについての情報が耳に入った。
あいつも、なんだかんだ面倒だといいながら私を学校まで連れて行ってくれたりした。
本当、変な奴だ。
そんな奴だが、どうやら家族がたくさんいるらしく、少し羨ましいと思った。
私の両親は事故で死んだ。両親と最後に会話したとき、私は大嫌いといってしまった。
ちょっとした口げんかだったにも関わらず。私は両親にそんなことをいってしまった。
家に帰ったら謝ろうと思っていた。しかし、両親が帰ってくることはなかった。
後悔した。だから、私は十六夜のことを羨ましく思った。
私にはもうおばあしか家族が居ない。
しかし、あいつも私と一緒だった。
あいつも幼い頃に両親を事故で亡くしており、今の家族は親戚らしい。
そこから少し親近感が湧き、学力も同じ、いや、私以上のあいつと必要以上に関わることになった。
正直、あいつと過ごす時間は心地よかった。
そして、今日、おばあが倒れた。
沙織が一緒について来てくれたのだが、もう、沙織のことが見えなくなっているくらいに動揺していた。
結果的に、おばあは無事だった。良かった。ほんとうに良かった。
そこで、初めて沙織に気づいた。沙織が付いていてくれた。嬉しかった。
おばあが無事だとしり、一安心したころにあいつが来てくれた。
おかしい、学園艦は大洗港には来ていないはずだ。なのにあいつはここにいる。
沙織がどうやってきたのかと聞いたのだが海の上を走って来たそうだ。
ほんと、馬鹿だな。でも、やっぱり嬉しかった。
あいつが買ってきてくれたコンビニスイーツを食べたあと眠くなってしまい眠った私は珍しく、少ししたら目が覚めた。
あいつは沙織と話をしていた。
すぐに眠ろうと思ったが耳にした内容に興味深いものだったので盗み聞きのようになるが聞かせてもらった。
その内容というものは十六夜が私と仲良くなった理由だ。
仲良くなったのかは良く分からないがよく話す仲ではある。
そして、私は十六夜が漏らした言葉を聞いて少し思うことがあった。
「俺と似てるから」
やはり、あいつも家族のことを思っているのだろう。
しかし、そのあとの言葉で再び違うと感じた。
「俺にはたくさんの家族がいるし、戦車道の仲間、自動車部のみんな、お前も冷泉もいるんだ。何一つ寂しい事なんてねぇよ」
あいつは強いな。
私も寂しいことなんてない・・・とは、いえないな。夜一人で家にいるときなんかときどきだが苦しくなる。
家族のことを思い出したりしたときは特にだ。独り暮らし用の小さい家の中がただただ広く感じることもしばしばあった。
早く寝ようと思っても夜型の私はなかなか寝付くことができず。本を読むか勉強をしているかだった。
だから、十六夜が朝、迎えに来てくれうことが嬉しかった。
そして、またアイツの、彼の口からこぼれた言葉が胸を苦しめる。
「でも、冷泉はどう思っているかだな。冷泉の家族はばあさんしかいないんだろ。独りは寂しいもんな」
そういった彼は私の髪を撫でてこういった。
「サラサラしてるな」
昔よくこうして私の頭を撫でてくれたおとうの顔が脳裏を過る。そして、さらに胸が苦しくなる。でも、この苦しさは嫌じゃない。
なんというか、心が捕まえられているようだ。独りの私にとっては誰かに捕まえてもらえるのが嬉しくて仕方がないのかもしれない。
「そっか、十六夜君はみんなのことが好きなんだね」
今更気づいたが、沙織は十六夜のことを名前で呼んでいる。
私が眠っていた間になにかあったのだろうか?
「まぁ、そうだな。もし、お前らになにかあったら音速を越えて光速で駆けつけるからな」
この言葉は流石にたとえにしては大げさだと思ったが、実際にやりそうな彼がいるのも確かだ。
それから、十六夜は沙織と恋バナをし始めた。
私は身近にいる異性がどのような人物がタイプなのか少なからず興味を惹かれ聞き耳を立てる。
そんな彼はこういった。
「特にない」と・・・
そして、理由を聞いていくと普段の彼とは思えないほど真剣な返答が聞けた。
「女の子は全員、一つは自分自身にしかない魅力を持っている。そこに惹かれる」らしい。
私にもその魅力はあるのだろうか・・・それで彼をって何を考えているんだ私は。
急に頬に熱がこもる。
「じゃあ、私の魅力って何?」
沙織が空気を読まずに聞いた。よくもまぁ、正面から聞けるものだ。
最初は渋々とうねっていた十六夜は結局、沙織の声にした。
「話やすい」「家庭的」「面倒見が良い」の三つもある。
それを聞いた私は更に胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
「ふ~ん、じゃあ、麻子の魅力は何?」
色々と乙女な思考回路が暴走している沙織はとんでもないことを聞いた。
ま、まぁ多少は気になるのだが・・・
「冷泉の魅力か・・・どこかほっとけないところだな」
ほっとけない・・・か、そうか、そんな風に見られていたのか。
だから、あんな風に面倒だといいながらも迎えに来てくれたのか。
若干、申し訳ないと思ったがやはり、彼に迎えに来て欲しいと思っている自分がいるのも事実でありなんともいえない感覚に陥る。
「まぁ、そういうところだな。冷泉の魅力の一つは・・・」
「一つはってことは他にもあるの?」
私にも他に魅力があったのか・・・
「一番の魅力は」
しかも、一番ときた。なんなんだ・・・
「家族思いなところだな」
違うんだ。私は家族思いじゃない。私は両親に酷いことをいってしまったんだ。
「きっと、冷泉と結婚した奴は大事にされるんだろうな」
あぁ、きっと大切にするだろう。結婚できるかは知らんが。
「もし、そいつが冷泉のことを泣かしたら俺はすぐにそいつをしばきに行くかもな、ヤハハ」
十六夜はどうしてそこまで私のことを思ってくれるのだろうか。
そこからの会話は良く聞こえなかった。
様々な光景が脳裏をチラついたからだ。
彼が迎えに来てくれたときの光景、彼がプリンをくれたときの思い出、彼が私に弁当を分けてくれたときの笑顔、彼が私をからかったときの意地悪な笑顔、彼の戦車道に取り組む真剣な表情、彼が周りにいる人物を笑顔にしているときのみんなの顔、彼が、彼が、彼がと彼と出会って一年ちょっとしか経っていないにも関わらず、私の頭に浮かんでくるのは幼馴染の沙織ではなく彼だ。
彼が私の近くにいるとき、私は笑顔でいることが多い。いや、笑顔にはなっていないかもしれないが。
少なくとも寂しいなどは感じたことがない。
私はかつて読んだ小説のなかでこういう症状に陥った少女がいたことを覚えている。
その少女は「恋」だといった。
そうか、私は、私はアイツに恋をしているのか・・・
そう思うと自然に胸の締め付けが優しいものに変わり、暖かい気持ちに包まれた。
私が彼と家族になれたらいいなと思いながら・・・
気が付くと朝だった。
「早く起きんかいッ」
よく響く声が聞こえる。
「この馬鹿娘はッ早く起きなッ」
ズガンッと頭が激しい痛みに襲われる。
「なんなんだぁ・・・おばあッ」
昨夜まで意識が無かったおばあがいた。
「あんた学校はいいのかい?」
「いい、それよりおばあこそ大丈夫?」
「わたしゃ元気だよ。それで、なんであんたがここにいるんだ?」
おばあが指指す方向を見ると金髪でヘッドホンを付けた学ランを着て中に黄色いシャツを着こんでいる男がいた。
「十六夜」
「よう、寝坊助。なんだよばあさん、俺がここにいたら駄目なのか?」
「駄目なもんか。どうせ、この子を心配して来てくれたんだろ」
「はっ、たりめぇだ。冷泉は俺の中では大切な仲間でライバルで、ほっとけない奴で、ばあさんのことが大好きな奴だぞ。そんな冷泉のばあさんが倒れたって聞いて冷泉のこと心配しない訳ねぇだろ」
「私の心配はしないのかいッ」
「なにいってんだ。ばあさんがそんな事で死ぬ訳ねぇだろ。俺が知ってる年寄りでばあさんより元気な奴なんてしらねぇよ」
「そうかい、ほら、あんたも礼をいいな」
「う、うん、十六夜・・・その、ありがとう」
そのときは自然といえた。普段は恥ずかしいと思ったりするのだろう。しかし、このときばかりは私を心配してくれたありがとうだけではなく、彼と出会ってから今日までのすべてのありがとうをいえた。
まぁ、彼はそんなことしらないだろうが。
「気にすんなッ、よし、ばあさんも目覚めたことだし、朝食でも買いに行くか。沙織手伝ってくれ」
「うん、分かった」
「冷泉はばあさんと話でもしとけ」
そういって彼は病室から出て行った。
私の名前は冷泉麻子・・・逆廻十六夜に恋をした不愛想な少女である
なんと、麻子ちゃんまでもが十六夜に堕とされた。
色々とオリジナルな内容が入っていますがそこは気にしないで。
麻子ちゃん安心しろ。必ずIfルートでメインヒロインにしてあげるから。
感想くれてもいいんやで・・・
では、久々の次回もお会いしましょう
せーの!パンツァーフォー