「あ、あの…!好きです…!」
「俺もだよ!」
夕焼け映える屋上。互いの思いを確かめた春のあの日。俺は片時も忘れたことはない。
初めて行ったデート。遊園地だった。お化け屋敷で怖がって俺の腕にしがみついてきたひまり、可愛かったな。初めて握ったひまりの手、柔らかかったな。
初めてアフロのみんなに挨拶したあの日。
「ひまりに何かあったら許さないから。」
「ひまりをよろしくな!!」
「ひーちゃん幸せそー」
「ひまりちゃんをよろしくね。」
「うう〜みんな〜」
泣き出したひまり。俺は安心したよ。こんなにも思ってくれる友達がいるのだから。
初めて行ったライブ。ベース弾いてるひまり、かっこよかったよ。疲れて俺の肩にもたれかかってきたよね。正直、めっちゃ可愛かった。
夏になって海にも行ったよね。水着姿のひまり、可愛かったよ。まじで胸でかk…ゲフンゲフン。
「ずっと一緒にいような。」
「うん!約束だよ!」
あの日のひまりの唇、忘れられない。
そんなある日、俺は家で倒れた。病院に運ばれて、余命1ヶ月を宣告された。泣いた。もう、ひまりといられないなんて。ひまりとの約束を守れないなんて。
その日から、ひまりの前では元気を装った。ひまりに心配をかけないために。悲しませないために。
デートにも行った。デートじゃなくても、これまで以上に一緒にいるようにした。いつ最期になるか分からなかったから。
俺は日に日に痩せていった。ひまりも心配してくれた。それでも、「大丈夫だよ。疲れてるだけだから。」こう返すだけだった。
晴れたある日、俺はまた倒れた。今度は入院を余儀なくされた。余命はもう幾許もない、そう悟った。アフロのみんなにも、友達にももうすぐ死期が来ることを言っていた。でも、ひまりだけには言えなかった。悲しませないために。それくらいひまりのことが好きだった。
お迎えが来たようだ。薄れゆく意識の中で、涙声でこんな声が聞こえた。
「ねえなんでよ…!なんで…!ずっと一緒だよって約束したのに…!」
ごめんねひまり。ほんとのこと言えなくて。悲しませたくなかったんだ。最期まで、ひまりの中で楽しい思い出だけが残るように。
俺は愛するひまりに手を握られて旅立った。たった半年だけど、ほんとに楽しかったよ。
わたしは心から愛していた人を亡くした。お医者さんの死亡宣告の後、泣き崩れた。優しくて、かっこよくて、憧れたあの人ともう会えないなんて。デートできないなんて。あの人の手の温もりももうないなんて。
その日からわたしは家に引きこもった。食べるのは大好きなはずなのに何も食べられなくて、幼馴染でずっと一緒なアフロのみんながきても、「帰ってよ!!誰もわたしの悲しみなんて分からないよ!」
こんなのはわたしじゃない、わかってるのに。彼を失った悲しみと、こんなふうにしか振る舞えない自分への悲しみ。2つの悲しみがわたしをなんどもなんども襲った。
彼が亡くなって1週間。手紙が届いた。送り主は彼だった。中を開くとこう書いてあった。
「この手紙を読む時には俺はもういないでしょう。俺たちが初めて出会ったあの日、覚えてる?告白してくれたあの日、覚えてる?ずっとひまりが隣にいて、俺の毎日が輝いてた。ひまりのおかげだよ。ひまりは俺の彼女。優しくて、可愛くて、一生懸命。そんなひまりが大好き。最後に、お願いがある。ずっと俺を好きでいてなんて言わない。でも、俺の分まで生きてほしい。俺が体験できなかった景色がきっとある。よろしく頼むよ。
追伸 俺はずっと空からひまりを見てるよ。大丈夫、ひまりなら。」
いつ立ち直れるか分からない。でも、少しづつでも立ち直っていこう。彼との思い出を財布に入れて。まずはアフロのみんなに謝ろう。わたしは、ドアノブに手をかけた。
愛する人といつ別れなければならなくなるか、そんなことは誰にもわかりません。だからこそ、今一緒にいる時間を大切にしてほしい、そんな願いも込めました。
それでは次回の小説でお会いしましょう。ノモンハンでした。