仮面セイバーアルトリア ブリテンジェネレーションズ FOREVER   作:葉川柚介

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仮面セイバーアルトリア ブリテンジェネレーションズ FOREVER

――王の話をしよう。

 

 普通のブリテン人、アルトリア・ペンドラゴン。彼女には騎士王にして型月の王者、<オーマ獅子王>となる未来が待っていた。

 選定の剣を抜き、王となる。それは人として生きる未来を捨てることを意味していたが、彼女はそれを知ってなおブリテンのため、そこに生きる民のために王となることを選んだ。

 願わくは、最高最善の騎士王となるように。

 

 しかし、王道とは過酷。

 彼女に待ち受ける運命は……おっと。

 これから先は、実際に君たちにも見てもらうとしよう。

 

 

◇◆◇

 

 

「させるかーーーーーーーーーーー!!!」

「なにっ!?」

 

 岩に突き刺さった選定の剣。

 それを抜いたものはブリテンの王となる。この場に集った騎士たちがことごとく挑戦し、ことごとく失敗し、ならば武威を以て決すべしと見向きもしなくなったころ、年若い騎士が最後に挑戦するべく歩を進めた。

 

 少年としてもなお身の細いその手が聖剣を掴み、ブリテンの運命を大きく動かそうとしたその時。

 しかし、降り注いだのは祝福の光ではなく憎悪の雷だった。

 

 とっさに身を引く最後の騎士。

 その前に降り立つ顔すら見せない甲冑。赤雷を鎧から走らせるのが何者かは窺い知れない。だが紛れもなく、狙っている。最後に選定の剣を抜こうとした騎士を。……アルトリアを。

 

「見つけたぞ、オーマ獅子王。……とりあえず死ね!」

「くっ!?」

 

 理由がわからない襲撃に、アルトリアとて戸惑いを隠せず、周囲の騎士たちもまた同様。

 雷光を迸らせる甲冑は苛烈にアルトリアを斬り捨てんと迫り、暴威を振るう。

 

「貴様、何者だ! 名を名乗れ!」

「あぁ? 名乗れだと! ……まあそうか、この時代じゃあ知るわけないよな、父上も」

「父!? 私がか!?」

 

 

「そうだ。あんたは俺の父上。そして、今から先の未来で世界を滅ぼす魔王、オーマ獅子王になるブリテンの王だ」

 

 

◇◆◇

 

 

 当時のブリテンは貧しく、険しく、そして常に外敵の脅威にさらされていた。

 それでなお国として、民として、誇りをもって生きるためには力がいる。

 力を束ねる王がいる。

 そうなるためには、時に人ではいられず、魔王と称されることもあるだろう。

 王として、魔王として、君臨する宿命を持つ者が、生れ落ちることもある。

 

 

「さあ、アルトリア。王になりたまえ。――この剣の使い方は、知っているはず」

「私が、王に……」

 

 光り輝く聖剣は、吸い寄せられるようにアルトリアの手に収まった。

 眼前に掲げたその姿、まるで初めからそうあることを運命づけられていたかの如く、周囲の騎士たちは自然と膝をつき、首を垂れた。

 その様を見渡し、高らかに告げるのは王を王とした魔術師――マーリン。つまり私だ。

 

 

「祝え! 全アルトリアの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来をしろしめす偉大なる騎士の王者。その名もアーサー・ペンドラゴン! ここに誕生の瞬間である!!」

 

――ワーーーーーー!!!!!

 

 

 ブリテンに王が、誕生した。

 

 

◇◆◇

 

 

「というわけで、君には全アルトリアの力を集めてもらう。おそらく続々とアナザーアルトリアが現れるから、元となったアルトリアの力を借りてそいつらを倒してくれたまえ」

「何を言っているのです、マーリン」

 

 それからは、それはもう激しい闘いの日々だった。

 次々とブリテンに襲い掛かるアナザーアルトリア。海の上を滑って水鉄砲をぶっ放してくるアルトリアや、海の上をバイクで走るアルトリア、サンタのアルトリアにちょっと獅子王に近い槍を持ったアルトリア。それらとの戦いの果て、彼女らの力を受け継いでいくアルトリアは徐々に王として成長し――ブリテンとついでに世界が滅ぶことを止めるため未来からやってきた、仮面セイバーモーサンことモードレッドの危惧を強めていった。

 

「……父上、あんたやっぱりオーマ獅子王になるのか」

「……わかりません。ですが私は最高最善の王となる。必ずです」

 

 そして、悩むモードレッドの前に現れた――もう一人のマーリン。

 

 

「お会いできて光栄です、わが救世主。モードレッド」

「なんだ、マーリンが……二人!?」

 

 ちなみに、私は夏っぽくもゴージャスな黒めの服装だったから「黒マーリン」と呼ばれたのに対して、もう一人の私は普段の白いフードを被った姿だったので「白マーリン」と呼ばれていたね。

 

 

 あからさまにブリテン人ではないとわかる人種の、二刀を振るう少女剣士がふらりと現れたこともあった。

 

「その剣の腕前……! どこで身に着けたのかは知りませんが、なぜ私たちに敵対を!? あなたは一体何者です!」

「いやー、旅から旅でよくある成り行きと言いましょうか、西洋剣術と美少年っぽくさえある美少女の取り合わせに鍔カチャを我慢できなかったと言いましょうか。あ、自己紹介が遅れたわね。……通りすがりの二天一流よ、覚えておいて!」

 

 なんやかんやで受け継いだ彼女の力で、剣からビームを出せるようになった辺り、アルトリアも成長したね、うん。

 

 

 アルトリアそのものを恨み、憎み、滅せんと姿を現す、アナザーアルトリア。

 

「セイバー殺すべし。慈悲はない。この無銘勝利剣(えっくすかりばー)のサビとなれぇい!」

「…………あれが別次元の私と認めるのはすごくイヤなのですが」

「この程度で白目を剥いていたらメイドやバニーやサンタや宇宙刑事に耐えられないよ?」

「マーリンが例示した言葉の半数も意味がわからないのですが!?」

 

 

 ある時空からブリテンに襲来した<ギンガ>を名乗る謎の敵。

 そして、それと戦う際なぜか円卓を武器としてぶん回す騎士も現れたりしたのは、きっとアルトリアが生み出した新たな可能性だったのだろう。

 

「なぜ円卓で敵を殴るのですガラハッド!?」

「マーリンが言っていました! 『マンホールの蓋で大抵の攻撃を防げるのなら、円卓を使えば人類悪だってしばき倒せるんじゃない?』と!」

「そこに直りなさいマーリン!!!!!」

 

 だからそんなに怒らないでおくれよ、アルトリア。

 

 

◇◆◇

 

 

 そして、長い戦いの果てにアルトリアは未来の決断を迫られる。

 自信の未来か、ブリテンの未来か、オーマ獅子王となるか。

 

「さあ、どうするアルトリア。世界の命運は君に託された。君を守っていったモードレッド。サクソン人の半分くらいを道連れにした謎の少女リン。もう彼らはいない。あとはアルトリアが未来を決めるだけだ」

「…………」

 

 最後の戦い。

 迫りくる無数のサクソン人はその一人一人が無駄にブリテン滅殺の意思を宿した破壊の使徒。

 長い戦いで仲間が傷つき、アルトリア自身の力も高まってなお戦いは激しさを増すばかり。

 そしてついに、アルトリアの力は届こうとしていた。

 

 遥かな高み、究極絶対の力。

 その腰に輝く、オーマ獅子王ドライバー。

 

 荒野を進むアルトリア。

 それをうっすらと笑みを浮かべて眺める私。

 

 アルトリアの表情に、決意の色は、固い。

 交差して掲げた両手。強く握り締める拳の中に掴み取ろうと願うのは、いつも人々の幸せと明るい未来。

 

 

「――変身!!」

 

――祝福の刻!

――最高!

――最善!

――最大!

――最強王!!

 

――オーマ獅子王!!!!

 

 

 轟。

 

 吹きすさぶのは風にあらず。

 それは王の威そのもので、まさにアルトリアに襲い掛からんとしていたサクソン人が手あたり次第に塵と化す。

 

 破壊などという生ぬるいものではない、消滅の中心地。そこに佇むのはアルトリアにしてアルトリアにあらず。

 アルトリアという少女の持つあらゆる並行世界、剪定事象を含めた可能性の究極完成形。

 女神そのものにして、騎士王である。

 

――マーリン

「なんだい、アルトリア」

 

――祝え

「……」

 

 世界の中にただ二人だけのよう。

 オーマ獅子王は私に命じた。

 王として、神として。

 

――祝えと言っている

 

 そして、私は。

 

 

「……祝え! 時空を超え過去と未来をしろしめす究極の型月の王者! その名も<オーマ獅子王>。歴史の最終章へとたどり着いた瞬間である!!」

 

 

◇◆◇

 

 

『……ここまでたどり着きましたか、若き日の私よ』

「ええ。……教えてください。オーマ獅子王の力は、破壊の力なのですか」

 

 暗闇の中、わずかに光るアルトリアと玉座。

 オーマ獅子王との対面の時だ。

 戦いを終え、オーマ獅子王となったアルトリア。遥かな未来、あるいは別の次元の先にいるオーマ獅子王に彼女は問う。

 

『無論。――創造の前には、破壊が必要ですから』

「やはり、そうでしたか……」

 

 その答えに察しはついていた。だからこそオーマ獅子王となることを、「未来」を選んだのだから。

 

『行くのですか、若き日の私よ』

「はい。過去を理想化することは現在を貶め、未来を否定することですから」

 

 オーマ獅子王に背を向けるアルトリア。

 行くべき道は、決した。

 

 

『……あなたに会えてよかった。そう思います、若き日の私』

 

 

◇◆◇

 

 

逢魔獅子王必殺撃(ロンゴミニアド)!!!」

 

 

◇◆◇

 

 

「ん……」

「……お目覚めになりましたか、我が王」

 

 アルトリア――アーサー王は、まどろみから目を覚ました。

 木にもたれかかり、満身創痍。命を繋ぐ決定的な何かが途切れている自覚がある。

 

 そうだ、と思い出す。

 だからこそ、最後まで付き従ってくれた騎士、ベディヴィエールに聖剣の返還を命じた。

 

「……夢を見ていた。長い、長い夢だ」

「良い、夢でしたか?」

 

 夢は虚ろに消えていく。

 ともに戦った者に裏切られたような気がする。

 誰より愛せる人に出会ったような気がする。

 ……あと、水着とかメイドとか宇宙刑事とかの自分と殴り合ったような。

 

 だが、心はとても穏やかだ。

 モードレッドの反乱とカムランの戦い。ブリテンは終わりの時を迎えている。

 それなのに、「成し遂げた」という気がするのはなぜだろうか。

 確かに、滅びは心が締め付けられるほどに辛い。力が及ばなかったという悔いはある。

 

 しかしそれは、全ての人が生きる上で避けられないもの。それがあるからこそ、人の生命だ。

 次なる世代がそれを越えていくからこその、歴史だ。

 

 そう、たとえば彼も。

 

「――サー・ベディヴィエール」

「はっ、なんなりとお命じください、我が王」

 

 聖剣を泉に返すという命を翻すのか、という期待がベディヴィエールの顔に滲む。

 その期待に沿えないことは申し訳なく思う。だからこそ、これだけは伝えなければ。

 人の歴史とは、繋がっていくことこそが尊いのだと、夢の中でたくさんの人たちに教えられた気がするから。

 

「命を、果たせ」

「…………っ。仰せの、ままに」

 

 これで、命じること3度。

 アーサー王の命を終わらせる聖剣の返還をどうしても成し遂げられずに偽りを述べてまで帰ってきたベディヴィエールに重ねて命じる。

 王に背を向け、泉へ向かうその背は先ほどまでと少しも変わらず、迷いとためらいがかの騎士の足取りをかつてないほどに鈍らせている。

 

 だから届けなければならない。伝えなければならない。

 夢の中でアルトリアがたどり着いた思いを。

 

「嘆くことはない、サー・ベディヴィエール」

「……我が王?」

 

 

「人は、私たちは、これまで瞬間瞬間を必死に生きてきた。その歩みに、きっと間違いなどないはずだ。……だから、行け。これからの、未来を」

 

 

 最後に、ベディヴィエールがどんな顔をしていたのか、もう目蓋を開けておくことすらできないアルトリアはわからなかった。

 だが一つだけ確信がある。

 

 今度のベディヴィエールは、きっと間違えないだろうと。

 

 

◇◆◇

 

 

 ――王の話をしよう。

 

 普通のブリテン人、アルトリア・ペンドラゴン。彼女には騎士王にして型月の王者、<オーマ獅子王>となる未来が待っていた。

 ……だが、いまやその未来は変わった。

 今を生きる誇りを胸に聖剣を返しに行くベディヴィエールの背を見送って目を閉じるアーサー王の生涯はここに終わりをつげ、そして新たなブリテンの歴史が紡がれていく。

 

 

 ……生憎と、私の知っている王の話はこれで終わる。

 ここから先は、君たちの話だからね。

 

 私はいつまでもその歴史を見守っていよう。

 楽しみにしているよ。新たな時代を切り開く、世界と人理の担い手たちよ。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 キャラクターマテリアル

 

 オーマ獅子王

 

 アルトリア・ペンドラゴンの至る最高最善最大最強の姿。

 第六特異点にて目撃された女神ロンゴミニアドに近い姿をして、「セイバー」と書かれたアルトリアオルタの仮面をつけている。

 その力はあらゆる面においてサーヴァントの枠を超え、神にも匹敵する魔王のもの。

 必殺技である逢魔獅子王必殺撃(ロンゴミニアド)は世界を破壊し、新たな世界を創造するほどの力を持つ。

 オーマ獅子王に何度か対面したことを思い出した最期のとき、アルトリアは「オーマ獅子王の声、聖杯戦争で契約したマスターの一人の声と超似てる」と思ったとかなんとか。



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