ダンジョンにサーヴァント7騎のマスターがいるのは間違っている   作:ルーニー

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コソーリ


マスター、巨大モンスターを討つ

 それはまるで口のない緑色の蛇のようだった。遠くからでもわかるほどのその巨大さは、いまだに見たことはないがおそらく階層主のそれに近しいものがあるのだろう。

 

「……あんなもんまでダンジョンから出してんのかよ」

 

 どうやってあんな巨大なモンスターを運び出しているのかと思うが、今はそんなことを思っている暇はない。モンスターの近くでは慌てふためいているのが見える。早く住人の非難をさせないと被害が出てしまうだろう。

 

「ライダー!急ぐぞ!」

 

「承知いたしました!」

 

 屋根から屋根へ飛び跳ねるように移動し、巨大モンスターの近くまで移動する。移動する途中で蛇のような胴体が吹き飛ばされていくのが見えた。何事かと思ってよく見てみるとそこには褐色の少女が2人、蛇を相手に縦横無尽に立ち回っていた。

 2人でやっと立ち回れているというような状況の中、少し離れた場所で耳のとがった少女、見た感じエルフだろう、が杖を構えている。まだ見たことはないが、この場で無駄なことをすることはないだろうからあれはこの世界の魔法を唱えているのだろう。

 助太刀もあの蛇を抑えるだけでいいか、と思っていると、屋根から足に揺れを感じた。またかと思い警戒していると、目の前の詠唱していたエルフの脇腹にえぐりこむように地面から蛇が出現した。

 

「まずいっ」

 

 体重が軽かったのか、それともそれだけ威力が高かったのか、空中へと飛ばされたエルフを屋根から飛んでつかみ、衝撃に気を付けながら着地する。不幸中の幸いなのかはわからないが、そいつはそれなりに高いレベルの冒険者だったのか致命傷と言えるほどの重症ではない。口の端から血が流れ、痛みでうなっているエルフをゆっくりと地面へと下す。

 改めて蛇を見てみると、蛇だと思っていたものの中央にそびえ立っていたものから徐々に花が開くように花弁が出現し、その中央には気色の悪い口が開かれていた。

 

「これは、苦労しそうだな」

 

 気色の悪い花を咲かせた植物はまるで蛇のように花弁(くび)を振るう。獲物を探しているかのようにも見えるその様は、何の力を持たない住民が、レベルの低い冒険者が恐怖するのに十分だった。

 

「ライダー!住民を避難させるんだ!住民の安全最優先!」

 

「かしこまりました!」

 

 悲鳴が上がる街の中、ライダーの返事を聞いて全身に魔力を巡らせる。オラリオでは1度もなかった全力の身体強化の魔術は、久しぶりであったがために体が少し暴れるような感じがした。視界の端に薄緑の光の線が走っているのを確認し、強化された足で地面を砕きながら前進する。

 

「オラァ!」

 

 肉の詰まったゴムを殴ったような感触とともに蔓はくの字に曲がって吹き飛ばされていく。吹き飛ばされた蔓は建物に直撃して瓦礫と化した建物に埋まったが、大してダメージを与えられなかったのかすぐに瓦礫をはじいて動く。植物は俺を敵と見なしたのか次々と蔓を振り回したり地面から突き伸ばしたりするが、どれも拳や蹴り、杖で殴り飛ばすことができた。

 

「かってぇなぁこのやろう!」

 

 今の状態なら岩すらたやすく貫通させることができるが、固定されていないことと肉に弾性があるせいか穴をあけることはできなかった。次々と振り回される蔓に、持てる技術を以ってすべてを叩き落としていく。これがアサシンなら殴っていくだけでこの蔓を削っていくこともできるはずだろうに、今の俺では殴り飛ばしていくことが限界だった。

 

「面倒なモンスターだな、この植物は!」

 

 面倒だ。そう思う反面久しぶりとすら言える拮抗した戦いに思わず笑みが浮かぶ。不謹慎であるとは自覚があっても、サーヴァントたちに鍛えられ始めてから初めてモンスターと戦った時の高揚感がある。

 ダンジョンの雑魚共では得られない強敵と戦っているという感覚。圧倒的な差のあるサーヴァントとの鍛錬では感じられない、大きな怪我があるかもしれないという危機感と自分だけでもなんとかできるかもしれないという陶酔感。相反する感覚に身を委ねながら次々とくる蔓を殴り飛ばしていく。

 

「オラァッ!」

 

 水を多分に含んだ肉を叩く音がひたすらに響いた。時には家屋へと殴り飛ばし、時には地面へとぶつけ、時には本体へと蹴り飛ばす。手ごたえは確かにあったが、しかし肉でできている蔓に痛みすらないのか次々に襲い掛かってくる。

 

 どれぐらい殴り飛ばし続けていたのかはわからない。それなりに殴り続けていた蔓は、しかし何事もないかのように蠢いている。一部の隙も無く暴れまわる蔓を迎撃するように打ちのめす。

 埒が明かない。さっき投影した切れ味のいい刀を出すか、それともルーン魔術で焼き払うかをするしかなさそうだが、ここには冒険者らしい褐色の女性が2人とさっき蔓に攻撃されたエルフがいる。赤の他人の前で魔術を行使するのは気が引けるのだが、このままこの状況が続くようならばアンサズのようなルーン魔術を使うことも視野に入れないと不味いかもしれない。

 鞭打のごとく振るわれる蔓をさばきながらこのモンスターの倒し方を考えている中、不自然な風が体を撫でた。

 

「っと?」

 

気が付けばいつの間にか金髪の少女が剣を持ってモンスターへと飛んでいた。いや、少女がというよりさっきまで俺に向かってきていた蔓すらも少女の方へと向かっている。

 

「……なんだ?」

 

 急に襲い掛かる標的を変更してきたことに疑問を覚えながら数が少なくなった蔓をさばき続ける。周りを確認すると、倒れているエルフを介抱している担当受付をしてもらっているエイナさんが見えた。不幸中の幸いと言えるのか、エイナさんのところには蔦が向かっている様子はなかったが、しかしいつまでもそこに向かわないという保証はない。

 

「……さて、どうするか」

 

 数が少ないとはいえ、蔓を相手したままあそこに向かうのはまずい。相手するだけならまだしも、守りながらというのは骨が折れる。ライダーはまだ住民の避難に向かってもらっているが、ライダーの速さならば瞬時に対応できるかもしれないが、それも期待できるというだけ。一手が足りない。現状維持なら特に問題ないが、これ以上進展を希望するなら大きな一手がほしくなる。これ以上予想外の被害が出る前に何とかするべきではあるが、どうする。

 最悪ライダーの宝具を展開することを考えながら蔓を相手していると、突然負傷していたエルフが杖を片手にメインストリートの中央に立った。

 

「私はレフィーヤ・ウィリディス!ウィーシェの森のエルフ!神ロキと契りを交わしたこのオラリオで最も強く誇り高い偉大な眷族の一員!」

 

 その宣言は自身への戒めか、決意を新たにしたような表情を浮かべて杖を構えて詠唱を開始する。溢れ出るような何かの力を感じるとともに、その力に反応するように蔓たちはほとんどの蔓をエルフへと向けて伸ばしていく。

 

「ライダー!詠唱中のエルフを守れ!」

 

「承知いたしました!」

 

 ケガをしている中、狙われる可能性を考慮してでも前に出たことを考えれば、この状況を打破できる大きな一手を持っている可能性は十分にある。住民避難に向かわせていたライダーを呼び戻し、俺や冒険者たち以上の蔓を切り刻みながらエルフを守る。こっちに向かってきていないことを確認し、大きな隙を作るように大きく構えて地面をえぐりながらモンスターへと肉薄する。

 

「オラァ!」

 

 鈍い音が大きく響き、蔓はまるで車にはねられたかのように大きく歪んで弾き飛ばされていく。弾き飛ばされた蔓は他の蔓を巻き込んでもなおその威力を殺しきれなかったのか根元が千切れんばかりに張り詰めるほどだった。

 

「ッチ。貫通するまではいかないか」

 

 殴りつけた手を開き、そして握る。詠唱に集中しているエルフの元へと殺到する蔓を受け止め、握り止め、他の蔓へと叩きつけ、地面へ叩きつける。

 なんとか自分で処理できる範囲では押しのけている状況だが、詠唱をしているエルフの方を見ながら確認したが、聞くまでもなかった。エルフに向かっている蔓すべてをバターのように切り刻んでいる。正直俺が対峙しているときよりもはるかにダメージを与えていた。

 自分の実力不足を棚に上げるつもりはなかったが、しかしサーヴァントであるとはいえライダーの苦労のくの字も見せないような表情を見ているとあそこへの道のりはやはり遠いと思えて仕方ない。

 

 蔓をさばくことに集中し、気が付けば詠唱も終わったのかエルフの背後に大きな雪の結晶のようなものが現れた。大きな力が結晶へと集中し、本体に向かって吹雪のごとく力が放たれた。素人目から見てもわかるほどに強力な力にモンスターに防ぐすべはなく、その力を受けたモンスターは一瞬にして全身を凍てつかせた。

 

「芯まで凍ってんのなら、こっちのもんだってんだ!」

 

 地面をえぐるほどの踏み込みを以って本体へと肉薄し、地面にひびが入るほど踏み込む。魔術と震脚によって得たエネルギーをそのままモンスターへと伝え、凍り付いた体を砕いた。

 

「奥義、无二打。なんてな」

 

 肉を打つ感覚ではなく、硬質なものを砕いた感覚に満足し、同時に本体の上から氷が砕かれる音が響いたのを聞いた俺は、やっとこのモンスターの討伐が終わったのだと実感した。

 

 

 

オリ主の魔術は

  • サーヴァントから教えられそうなもののみ
  • 拡大解釈してもええんとちゃう?
  • 好きに魔術を使えてもいいじゃん!
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