ダンジョンにサーヴァント7騎のマスターがいるのは間違っている 作:ルーニー
「本当にこっちであってるのか?」
サーヴァントを呼び出すことに成功してはや、十何年ぐらい。キャスターに作ってもらった杖を片手に山の中を歩いていた。
そんな中霊体化せずに話しかけてくるアサシン。歩いているだけで暇なのかそこらへんで拾ったらしい石をお手玉にしながらのんびりとしている。
「さぁ。こんなのは勘でいいんだよ勘で」
まぁまるっきりの勘というわけでもなく、キャスターとアーチャーから学んだ身体強化の魔術とルーンを刻んで高いところから確認したところ、こっちの方向に道らしきものがあった何かを見つけたから歩いている。まぁ途中途中で木々を避けながら歩いているからもしかしたらずれていたりするかもしれないけど、まぁ何とかなるだろう。
「前から思っていたが、マスターのそのいい加減な部分はなんとかしなくてはならないぞ」
「んなことどうでもいいだろ。カッチリしすぎてつまらないマスターよりもずっといいぜ」
アーチャーのお小言にカラカラと笑うキャスター。俺の呼んだサーヴァントたちは俺の予想通り快く、とまではいわないが俺をマスターであることを認めてくれた、さらに俺を鍛えてくれた心優しいサーヴァントたちだ。こうやって軽口を言い合える程度には気を許しあえる仲になったのは我ながら素晴らしい努力の賜物だと自負できる。
「主殿!この先にいた物の怪の首を取ってまいりました!」
「お~助かるぞライダー。だけど俺の鍛錬のためにも取っておいてほしかったぞ~」
ひょっこりとどこから現れたのか顔に返り血を浴びたライダーが目を輝かせて報告をしてくる。それを落ち着いてくれないかなぁと思いつつ頭をなでると気持ちよさそうな表情を浮かべていた。
「そういえばランサーは?セイバーには周りの哨戒に行ってもらってるけど、ランサーには何も言ってなかったと思うんだけど」
「さぁ?その辺を適当にぶらついているんじゃないの?」
セイバーは念のためと言って周りを警戒してもらっている。こういう時の見回りはアーチャーの方が適正なんだろうけど、ぶっちゃけ当番で見回りしてもらっているだけだから特にここに意味はない。ライダーは勝手に哨戒してモンスターらしき化け物を狩ってくれている。その度に褒めているせいかまた勝手に出ていく。いやまぁどうせ暇だし強制できるようなことじゃないからいいんだけどさ。
「お、森を出るな」
木々が茂っているときにはなかった眩しさに、予想が当たっていたことに思わずにやけ顔にになる。そのまま眩しい方に歩いていくと、予想通りそこは人が行き来していたであろう道が見える広い場所に出た。
「ほら見ろアーチャー。何にも問題なかったじゃないか」
「そういう結果論を言っているのでは……。いや、マスターには何を言っても無駄か」
「おん?もしかしなくても俺バカにされてるな?」
なんて心温まるサーヴァントとのやり取りを終え、しかしこの道のどちらかを進まないといけなくなると、一発で大きな街に行ける道に進みたいと思うのが人情。大きな街ならば修行にいい場所とかの情報も多くあるだろうし、なにより俺の知らない何かがあるかもしれない。そういうものを見て回るのも旅の醍醐味というものだろう。
「マスター、この先から馬車がここに来る。御者に色々と聞いてみるのも手かもしれない」
「マジか。幸先いいねぇ。ありがとうランサー」
ランサーの言った方向を視力を強化して見ると、確かに遠くから荷台を引っ張った馬車がこちらの方に向かってきているのが見えた。というかランサー、どこに行ってたんだろうか。わざわざ先回りして馬車とかが来るのを見ててくれたんだろうか。まぁ、たぶん暇つぶしに化け物を倒していたら見えただけだろうけど、まぁ結果オーライってやつだ。うん。
「あ、とりあえず霊体化しておいて。俺1人だけならもしかしたら乗せてもらえるかもしれないし」
各々了解の言葉を告げ、次の瞬間にはその姿が見えなくなる。毎回思うが、霊体化したときは文字通り足がないような状態になっているんだろうか。それとも霊体化する前と同じように動かないといけないんだろうか。
「お~い!」
俺のちょっとした疑問はさておいて、ランサーに教えてもらった馬車に向かって駆け足で近づく。御者もこんなところで人に出会うとは思っていなかったのか、俺を見ると少し驚いたような表情を浮かべた。
「あぁ、止めてもらわなくても大丈夫。並走するから」
「いくら速度が出てないとはいえ、お前さん元気だなぁ」
「鍛えてるし、これぐらいできなきゃ師事してくれた人たちから殺されそうだからな」
実際これぐらいの速さなら問題なく並走できるし、できないような鍛え方もしていない。というかできなかったらキャスターやランサー辺りにまたキッツい修業が科されるかもしれない。
「それで、どうしたんだ?」
「いやぁ、この辺りにでかい街はないかなぁと思って。おっちゃん旅してそうだしなんか知ってそうだったし」
「おぉ、それならまだまだかかるがオラリオってところがいいんじゃないか?見たところ冒険者になりたそうだしな」
冒険者。なるほど。なんていい響き。セイバーたちから鍛えられた実力をさらに高めるにはちょうどいいかもしれないな。
「いいねぇ。おっちゃん、そこの行き方教えてくれない?というかそこに行くなら乗せてってくれない?道中の用心棒ならできると思うからさ」
「あぁ、別に構いやしないさ。ちょうどお前さんと同じ目的地の坊主を乗せているからな」
「マジで!?あんがと!」
さすがにずっと走りっぱなしというのも鍛えるという点ではいいのかもしれないけど、別に今楽しても罰は当たらないだろう。走る速さを緩め、荷台に乗り込む。
荷台に乗っていたのは、全体的に細く、ぱっと見白い子供にも見えなくはない少年だった。武器や防具などといったものは一切持っておらず、言っちゃ悪いけどとてもじゃないが荒事ができるとは思えなかった。
「えっと、話が聞こえてきてたんですけど、お兄さんも冒険者になりたくて?」
「冒険者というよりは、その先にある強さが欲しい、って感じかな?」
セイバーたちに鍛えてもらい、強くなっていくことに楽しさを感じていた。セイバーたちにずっと鍛えてもらっていてもよかったのだが、このままずっと山奥で鍛えていてもどれぐらい強くなったのかを実感できない。目標が打倒サーヴァントなんてとてもじゃないができないことを掲げ続けているのはさすがに気持ち的にできない。だから鍛えてもらいつつ、どこかで修行もできる場所を探すためにきたのだ。
とは言っても、冒険者なる者になれると聞いたはいいが、そこで何をするのかはよくわかっていない。そこで少年に冒険者のことだったりオラリオのことを聞いてみると、どうもオラリオという場所はダンジョンと呼ばれる地下へと続くモンスターの湧く洞窟を冒険する冒険者の街なのだとか。物語ではそこで活躍した人を英雄と呼んだり、きっとそうなればモテるんだと、どうも少年の煩悩も一緒に聞いていたのだが、まぁそこそこいい情報はもらえた。
「英雄、ねぇ」
正直、俺のすぐ近くに英雄と呼べる存在がいるから逆にそこで英雄と呼ばれている人たちがどんなものなのかが気になることは否定できない。もしかしてマジでサーヴァントたちと同等の力を持っているのかもしれないと思うとそれはそれで化け物染みた英雄だなと思わなくはない。いや、十何年も修行しても足元にも及ばないんだから、そんな存在がいるって聞くとそう思っても仕方ないだろう。
「まぁ、それは着いてからいろんな場所から聞いていくことにしよう」
サーヴァントを率いている身として、この世界の英雄について興味がないわけではない。書物でしか遺されていない情報や、俺の知らない英雄の情報を知るのは、とても楽しいことだろう。
「そういえば、お前さん名前はなんてんだ?俺は
長々と話をしていたが、そういえばお互いに自己紹介をしていなかった。俺は尊敬するサーヴァントたちのマスターから名前をもらい、
「すいません、名乗りもせず。ボクはベル。ベル・クラネルといいます。よろしくお願いしますね」
これが遠くない未来英雄となっていくベルくんと、俺との最初の出会いだった。