ダンジョンにサーヴァント7騎のマスターがいるのは間違っている   作:ルーニー

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マスター、酒場に行く

「ここ、でいいのか?」

 

 アーチャーに言われて着いたのは一軒の酒場だった。中は大きな空席があったが、それでも繁盛しているのが分かるほどに賑やかな雰囲気の店で本当にここであっているのか若干不安になるほどだった。

 ファミリアのみんなには前もって知り合いのところに食べにいくと話してはいる。俺に知り合いがいたことに驚かれたが、まぁそんなこともあって2人からも認可を得てこうして食べに来たのだ。

 

「いらっしゃいませ。1名様でよかったですか?」

 

「そうですけど、ここにアーチャーはいます?フジマルが来たって言えばわかると思うんですけど」

 

「アーチャーさん?わかりました、少々お待ちください」

 

 アーチャーで伝わったのかパタパタと中へ入っていく。少しの時間待っていると先程と同じ店員がこちらへ向かってくる。

 

「今調理中で手が離せないようなので、カウンター席でお待ちいただいてもよろしいですか?」

 

「忙しいのか。わかりました。適当に座ったらいいです?」

 

「えぇ、どうぞ」

 

 中に入ると酒場独特の酒精の匂いが鼻をつく。笑いながら酒を飲んでいる冒険者や料理に舌鼓を打っている冒険者など、様々な人たちの楽し気な雰囲気があった。

 

「よく来てくれたな、マスター」

 

 カウンターに座り何を食べようか考えているとアーチャーがエプロンをつけてカウンターまで来た。エプロン姿は修行していた時代に見てきていたが、やはりアーチャーにはエプロンが似合うんだなと再確認する。

 

「アーチャー、ここで働いてたの?」

 

「まぁな。ここの料理に色々と助言をしていたら店長から働かないか、と言われてね。こうして料理番をやらせてもらってる」

 

 やれやれ、と言わんばかりの表情をしているが、俺は知っている。俺の修行に付き合っているよりも料理をしている時の方が生き生きとしているのだ。たぶん昔みたいに制限がない分ここでも楽しく料理でもしているのだろう。

 しかし、そうか。アーチャーはここで働いているのか。いつかはサーヴァントのみんなでここに食べに来てもいいかもしれないな。まぁ、その前に儲けられるようにならないといけないんだけどなぁ。そのうち誰かに頼んで一緒にダンジョンで魔石狩りでもするか。

 

「アーチャー、適当にオススメを頼む。ついでだし料理に合うワインもよろしく」

 

「君はまだ二十歳を越えてないだろうに」

 

「いいんだよここじゃ合法なんだし。それに本当に二十歳越えてないのか自分でもわからんしな」

 

 一体何歳の時にあそこにいたのか。一体何年あそこで暮らしていたのか。その年数も分からないで生きてきたのに、今更酒の年齢確認でゴタゴタ言われても意味はないだろう。ここは日本じゃないし、ましてや地球でもない。場所が違えば法律も違うってことで飲ませてもらってもいいだろう。

 俺の言葉にそれもそうかと納得したのか注文を受けたアーチャーは厨房へと向かっていく。アーチャーの作る料理にはずれはないだろうし、どんなものが来るのか非常に楽しみだ。

 

「あれ、フジマルさん?」

 

 アーチャーの料理を待っていると後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。後ろを振り向くとそこには少し驚いたような表情を浮かべていたベルくんがいた。

 

「やぁベルくん。君もここで食事か?」

 

「えぇ、知っての通り神様もどこかへ出かけていきましたし、この人に食べに来てくださいって誘われたので」

 

 ベルくんの隣にいたのは俺にも対応してくれていた従業員の白い髪の少女。名前までは知らないし、どうやって知り合ったのかはわからないけど、これが悪徳店舗だったらどうするつもりだったのだろうと不安に思ったが、まぁ結果オーライではあったか。

 

「ま、偶然とはいえせっかく一緒の店で食べるんだ。せっかくだし神ヘスティア抜きで団長と団員で話し合いとでもしゃれこもうや」

 

 隣に座るように椅子を軽く叩き、ベルくんはそれもそうですねと言って隣に座る。ここに入るのもお互いに初めてだったこともあり、ベルくんもお任せで注文を終えて落ち着かないようにそわそわし始める。

 

「僕、こういうお店に来るの初めてなんです。フジマルさんはどうです?」

 

「俺も滅多に来ないな。お金があまりないのもあるから大体は本拠で食うか、出店である物を食うかの二択だしな」

 

 当たり障りのない会話を続けながら料理を待ち続けると、先に注文していたおかげか俺の前にナマズのようなものを揚げた魚料理と白ワインが置かれた。

 

「お、これがアーチャーのおすすめか?」

 

「あぁ。朝からじっくりと味を染み込ませた一品だ。その分料金も多少なりとも上がるが、まぁ君なら問題あるまい」

 

「まぁあの牛狩ったからいいお給金もらえたからな。多少の贅沢は問題ない」

 

 実際、あの牛の魔石はいい金額だった。上層に出てきてくれたおかげで今の自分の実力もわかったのは何よりのものだ。。身体強化の魔術を使わなければ勝てなかったのは悔しかったが、同時にお金と目標もできたから文句は言うまい。

 

「あの、あの人とはお知り合いなんです?」

 

「ん?あぁ、まぁ、そんなところだ」

 

 ベルくんたちファミリアのみんなを含め、誰にもサーヴァントたちのことは言っていない。ファミリア内には言ってもいいかもしれないが、サーヴァントは俺の出せる最後であり、そして最強の切り札だ。サーヴァントのことが広まればまず間違いなく騒ぎの中心になりそうだから、誰にも言う気はないし、これからも言う気はない。一部脊髄反射でマスターであることを言ってきそうなサーヴァントはいるが、全員と話し合った結果せいぜい知り合いということにしておこうと決まったのだ。

 

「先にいただいてるよ、ベルくん」

 

「あ、はい。どうぞ」

 

 まぁ、サーヴァントのことは今は置いておくとしよう。せっかくのアーチャーのおすすめであるし、冷めないうちに食べるとしよう。

 まずは魚を口にする。出来たてだということもあってかパリッとした食感とともに熱の通った魚のいい香りとちょうどいい塩梅の塩っけがたまらなくおいしい。口の中に魚の風味が残っているところにワインを口の中へ流し込む。酒場ということもあってかなかなかの度数のアルコールを感じたが、味はとてもさわやかだった。さすがアーチャーの選んだものだと感心するほどだった。

 

「あんたがシルの知り合いかい?冒険者なのにかわいい顔してるねぇ」

 

 ここの主人なのだろう。恰幅の良い女性が笑みを浮かべて山盛りに盛られたパスタの皿をベル君の前へと置いた。

 

「……ほっといてください」

 

「あっはははは!かわいい顔だってさベルくん!」

 

 かわいい顔と言われていい気分じゃないのかすねたような表情を浮かべるベルくん。白ワインとはいえ、ほろ酔い状態であったこともあってかそのやりとりがとても面白く感じる。先ほど置かれたパスタの山と飲み物、そして俺と同じ魚の揚げ物に支払う料金のことが頭によぎったのか少し表情を青ざめさせていた。

 

「結構量多いな。食べきれるのかい?」

 

「……頑張ります」

 

「まぁ、俺もそんなに注文してないし、無理そうだったら言いなよ?」

 

 お金の方も、牛を狩ったおかげでそれなり以上の分を持ってはいる。別に折半してもいいのだが、それを言うとベルくんは遠慮しそうだから本当に食べられそうにない時に言ったほうがいいのだろう。

 

「ご予約のお客様、ご来店ニャ!」

 

 そんな声が店内に響いた。繁盛しているのに結構な空白の席があったことに多少の疑問はあったが、どうやら予約席だったようだ。赤い髪の女性を先頭にぞろぞろと大勢の人が店内へと入ってくる。そんな予約のお客様が店内に入ると、店内にどよめきのようなものが広がった。

 

「お、おい、ありゃロキファミリアじゃねぇか」

 

 周りがざわざわと騒めきながら入ってきた一団について話し始める。遠くの席のはさすがに聞こえないが、たまたま近くにあった席から聞こえた話からすると入ってきたのがロキファミリアなのだろう。

 ロキファミリア。興味や必要のない他のファミリアのことは調べてないからよくは知らないが、確かダンジョンを攻略する一派のファミリアだったか。ベルくんとともにファミリアを探していた時に門前払いをくらった場所でもあったから大して興味も持たなかったけど、なるほど。ここまで大きいと門前払いもある程度しないと時間を取られるってことだったか。てっきり崇拝してる輩が勝手をしたのかと思っていた。

 

「……で、何してるのベルくん」

 

「…………」

 

 入ってきた一団を呆然と見ているベルくん。話しかけても口からパスタが垂れているにもかかわらずボウっとしている。はてさて、なんでまたこんな状態になっているのか。

 次々と料理が運ばれていき、まさに宴と呼べる騒ぎが始まっていた。あそこまで豪勢に料理を注文しているのを見ると、ぜひともサーヴァントたちとあぁ言ったことをしてみたいと思ってしまうものだ。

 宴も盛り上がってきたころ、犬の耳をつけた白い男が面白がるように思い出したかのように大声を上げる。

 

「そうだアイズ!あの話をしてやれよ!」

 

 声高々と言われていたそれは、簡潔に話せばモンスターに襲われていた冒険者が血塗れになって逃げたということを面白おかしくしようとした聞くも吐き気語るも苛立ちの胸糞悪いものだった。周りもやめるように言っていたのだが、酔っているのか話はエスカレートしていく。それを聞いていて気分悪いと思って店を出ようかとベルくんに告げようとすると、ベルくんはやにやら我慢しているような表情を浮かべている。どうしたんだろうかと思い聞いてみようかとすると、その男の言葉が店内に響いた。

 

「雑魚にアイズ・ヴァレンシュタインは似合わねぇ」

 

 この言葉がきっかけだったのか、ベルくんは悔しそうな表情を浮かべて見られることも構わずに店の外へと走っていった。

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