SEEDの世界で、ガンダムって本当に必要だったの?

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機動投機トレーダーSEED

 目覚めた時、俺はコーディネーターだった。名前はキラ・ヤマト。

「ガンダムSEEDかよ」

 そう叫ぼうとしたが、

「まむまむみー」

としか、声に出なかった。まだ赤ん坊だしな。

 ちゃんと覚えていないが、10代後半くらいで、戦争に巻き込まれて、ガンダムを操縦させられることになる。そして、訳の分からない不殺の攻撃とかやるイキッた奴になってしまう。

 馬鹿か、未来の俺。

 自分が殺さなくったって、武器を持たずに不具合のあるモビルスーツに乗ったパイロットは、敵から狙われて死んでしまうんだよ。キラ・ヤマトのやってることって、パイロットを長く苦しめて殺すだけの、役に立たない偽善だ。せめて、偽善をするなら、杉良太郎くらいの役に立つ偽善をしろよ。

 もちろん、俺は、そんな馬鹿なことはしない。敵は殺す。当然のことだ。

 たださあ、あの戦争って、本当に起こらなきゃならない戦争だったのか。あれって、コーディネーターが、無料でコロニー寄越せって無茶言うから、プラント理事国がアホ抜かせって怒ったんだろう。

 逆に言えば、十分な代償を支払えば、プラントを買い取ることだってできたんじゃ無いのか。それこそ、優秀(笑)なコーディネーターなら、そのくらいの金額、稼ぎ出してみろよ。

 転生前の俺は、一つの記事を読んでいた。天才トレーダーは遺伝子で決まるって記事だ。決断の早さと、失敗した時の素早い学習。これって、どう考えても、コーディネーターの得意分野だよな。

 5歳になった時、俺はオヤジのハルマ・ヤマトに株取引をしてみたいので、口座を作ってくれって頼んだ。オヤジは、少し躊躇ったみたいだけど、何事も経験だと言って、口座を作ってくれた。そして、練習だと言って、1000ドル口座に入れてくれたよ。オヤジには、感謝しか無い。

 ……、そしてそれから3年ほど経った。

 

 プラントの独立組織であるZAFTと、プラント理事国の間は、今にも戦争が起こりそうな緊張が続いていた。

 C.E.63年のある日、プラント評議会議員シーゲル・クラインに、一通のメールが届く。

 

「クライン議員殿

 プラントと理事国の間での問題、いつもご苦労様です。コーディネーターの一人として、いつも応援しております。

 プラントの問題は、上手くすれば、金の問題として解決できないでしょうか。プラント理事国が独立を認めないのは、その一番の理由は、プラント設立費用を回収できないからです。逆に言えば、プラントが自分でコロニーを買い取ることができれば、理事国も不満はあるでしょうが、納得してもらえるのでは無いでしょうか。

 ということで、まずは理事国と買い取り交渉を行ってもらえませんか。もちろん、その費用は莫大な者となりますが、当方としても、いくらか費用負担を行ってよいと考えております。

 それでも、理事国が納得しないという場合、数年待っていただけませんか。

 こちらで、新しい工業コロニーの建造を考えております。コーディネーターが費用を出す、理事国の紐付きで無いコロニー群です。

 これを建造すれば、プラントの独立が認められない場合、プラント在住のコーディネーターの皆さんは、全員退職届を出していただいて、こちらの新コロニーに移住していただくことを考えております。

 恐らく、プラント評議会では、ZAFTを使った戦争による独立も検討しておられるとは思います。しかし、戦争は可能ならば避けたい。最悪の場合、コーディネーターとナチュラルの種族間絶滅戦争へとつながりかねません。

 なにとぞ、ご検討をお願いします」

 

 シーゲルは何を馬鹿なと思ったが、手紙の出し主が大物だった。現在トップレベルの投資機関として名が知られる、ヤマトトレーダーからだ。資金の出所が秘密のベールに隠された投資機関で、その資金総額も知られていない。

 ものは試しと、一応理事国と交渉してみた。

 だが、理事国は強欲だった。

 92基の中古コロニーに、その倍のコロニーが新規に建設できるような費用を請求したのだ。

 シーゲルは、流石に呆れて、買い取り交渉は中断した。そして、ヤマトトレーダーにも、回答を転送し、不可能だったと答えた。

 

「クライン議員殿

 理事国の強欲さには、流石に呆れました。

 ですが、それならそれで、問題は明確になりました。プラント市民全員が住めるだけの新規コロニーが存在して、それがプラント市民の所有物であればよいという明快な解答です。

 10年ほど、怒りをこらえてお待ち下さい」

 

 一月ほどして、ヤマトトレーダーが、コロニー建設に投資するというニュースが聞こえてきた。

 プラントコロニーを設計した技術者を高給で引き抜き、新設計でコストダウンと性能アップを両立させたコロニーを建設し始めた。技術の進歩を取り入れ、プラントよりも大きいサイズで、倍以上の収容人数があるコロニーを、一度に50基も建設しようという、正気の沙汰とは思えない計画だ。

 誰もが、ヤマトトレーダーの破綻を予測した。

 だが、ヤマトトレーダーは破綻しなかった。どこから資金を得ているのか分からないが、コロニー建設資金を捻出しながらも、投資活動も続けていた。

 そして、10年に満たない期間、C.E.70年に、50基のコロニー、名称ヤマトコロニーは完成した。

 

 その頃、プラントと理事国の間は最悪となっていた、今にも戦争が始まるのでは無いかという予測が行われていたが、実際問題としてわずか人口6000万人のプラントが、理事国に勝利できるとは誰も考えていなかった。

 だが、戦争の予測は、意外な方法で回避された。

 理事国との交渉を打ち切ったプラント市民は、一斉に企業に退職届、理事国に転居届を提出する。

 そして、これまた一斉に、プラント宇宙港に着いたヤマトコロニーの宇宙船に乗って、次々と出て行った。プラントに残るコーディネーターは一人もいなかった。コーディネーターの家族であるナチュラルすら残っていなかった。

 

大西洋連邦大統領「どういうことだ。コーディネーターどもは、どこに行くつもりだ」

補佐官「は、全員、ヤマトコロニーの企業に引き抜かれて、再就職するとのことです。プラントを占拠するなら犯罪者として処罰できますが、勤め先を辞めて転居するだけですと、何の犯罪にもなりませんので」

大統領「なんとか、連中を捕まえるんだ。奴らがいなくては、せっかくのプラントも単なる空き家に過ぎん。何、連中をどうしようが、大多数のナチュラルは何も言わないだろうしな」

財務省長官「大統領、ヤマトトレーダーからのメッセージです」

大統領「なんだ。奴らが何を言おうと無視すれば良いだろう」

長官「いえ、無視できません。彼らは、職業選択の自由と転居の自由は、市民として当然の権利であり、それを破るような国家の国債は、とても保持できないと言っています」

大統領「何だと。それで彼らは、どれだけ持っているんだ」

長官「それが、現在発行残高の1割近くを直接間接に保有しているようです。もしも、彼らがそれを一斉に放出したら……」

大統領「したら?」

長官「我が国の国債は暴落し、紙切れになりかねません。国の経済が完全に破綻します」

大統領「忌々しい連中だ。奴らの国債だけを無効にできないか」

長官「そんなことをしようものなら、彼らは格安で国債を東アジア共和国あたりに売り飛ばすでしょう。もっと大変になります」

大統領「ではどうすれば良いのだ」

長官「我が国の破綻を避けるためには、彼らの退職と転居を認めるしかありません」

大統領「むむむ……」

 

 これと同じような会話が、ユーラシア連邦や東アジア共和国でも行われた。

 

 要するに、金を持ってる人間が一番偉いのよ。3年で、元での1000ドルを、1億倍に増やしたからな。そして、その後の7年で、1兆倍にした。これだけの金があれば、地球すら買える……というのは言い過ぎだけど、プラントくらいは余裕で買える。

 実は、理事国との交渉の後で増やした資金があれば、奴らの言い値だって平気で出せたんだけどね。人を馬鹿にした対応をした連中には、お仕置きをしなくちゃね。

 今頃、プラントはコーディネーターの管理人がいないので、崩壊直前なんじゃないか。あのタイプのコロニーは、コーディネーター並みの有能な管理人がいないと、破綻するんだから。それが、管理人が一人もいなくなって、半年持つのかね。

 まあ、頑張って維持してくれたまえ。

 ヤマトコロニーは、優秀な社員を抱えて、大発展をさせてもらうから。

 もちろん、社員には空気税とかろくでもない税金は取らないから、今までより遙かに安楽な生活ができるはずだ。

 そして、俺も、コロニー所有者として、悠々自適の生活が待っている。

 何だって、SEED?ガンダム?

 そんなもんは無かった。この物語のSEEDは、投資の種金としてのSEEDだからな。

 


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