ちょっと無理やり感がありますが、ご了承下さい。
「……センリさん、無理です。 俺達では1対1で貴方のケッキングには勝てない。」
「ソースケ!?」
ツツジが俺の言葉に驚くが、事実だ。
どう考えても、どんな戦術を構築しても、勝ちの目がまるで見えない。
「……私のケッキングを見て、力の差を感じたのかな?」
「はい。 ですので、俺とツツジの連戦って事で頼めませんか?」
「ほぅ、君達2人ががりなら私のケッキングに勝てると?」
「……可能性はあるかと。」
ほんの僅かな可能性だが。
「わかった! そこまで言うならやってみよう!」
センリは俺の提案を了承して、バトルコートへと移動する。
何とか提案が通った事にほっとして、俺もバトルコートへ向かおうとしたらツツジが話掛けて来た。
「……何故こんな提案を? 確かにあのケッキングが強いのはヒシヒシと伝わって来ましたが、だからと言って連戦なんて……。 あのケッキングはそこまでですの?」
「そこまでだ。……ダイゴさんのメタグロスを覚えているか?」
えぇ、とツツジは頷く。
だったらわかんねぇかな?
「あのケッキング、恐らくはあのメタグロス以上だぞ。」
最低でも絶対にあのメタグロス並みだ。
そもそも【ちからずく】と“いのちのたま”のコンボの時点で強力過ぎるんだ。
仮にケッキングの
メタグロスをメガシンカさせて、ようやく勝負になるかって所だろう。
タイマン性能は伝説に匹敵すると考えて良い。
……この世界の伝説がどこまでヤバいかわからないけど。
「……チャンピオンクラス、ですか。 願ったり叶ったりですわね。」
言葉こそ強気だが、ツツジの声は震えている。
しかしその顔には闘争心が現れているので、きっと武者震いって奴なんだろう。
そして俺達はセンリの待つバトルコートに着いた。
「最初は俺が行く。 俺のバトルを見ながら戦い方を考えておいてくれ。」
「……了解しましたわ。」
……もしも、1対1のバトルだったならば、俺はエルフーンにワンチャンを賭けていただろう。
アンコール縛りや睡眠嵌めの可能性に賭けて。
……望みは酷く薄いけどな。
“くさぶえ”は当たったとしても眠る可能性が高くはないし、“アンコール”はそもそも期待出来ない。
補助技を“アンコール”で縛るのは確かに強力だけど、そもそも補助技は自身を有利にする為に使うので、
ボーマンダを所持している時に、
……そんな必要ない。
適当に殴れば、それで一撃だ。
シュッキングとエルフーンの間にそこまでの差があるとは思わないが、補助技を使う必要が無い程度には差があるのは事実だ。
だから“アンコール”縛りには期待出来ない。
だからここは___ボソボソ
「___化け物退治だ。 やろうか、ロトム!」
「お前の出番だ、ケッキング!」
俺はロトムに賭ける。
「ケッキング、“ほのおのパンチ”!」
持っていたか、予想していたさ!
「頼むぞ、ロトム!」
俺は指示を出さない。
シュッキングがセンリの指示で拳に炎を宿し、ロトムとの距離を一瞬で詰めて“ほのおのパンチ”を繰り出す。
ロトムはそれを喰らいながらもシュッキングに対して“おにび”を当てる。
「良くやった!」
「倒れない!? それに火傷?……“おにび”か!?」
ロトムがシュッキングの超火力“ほのおのパンチ”を喰らっても戦闘不能にならない秘密は、俺が持たせておいた“オッカの実”にある。
この実は
フエンタウンの近くに生えていたのを確保しといて良かった!
そして俺は運が良い。
“ほのおのパンチ”だからロトムは耐える事が出来たが、これが“れいとうパンチ”なら一撃で沈んでいた。
この最初の指示に関しては本当に賭けだった。
「さぁ、逃げろロトム! 鬼ごっこだ! 捕まるなよ!」
「むっ!? 追えケッキング! “ほのおのパンチ”で今度こそ沈めろ!」
火傷になり物理攻撃力が半減になったとは言え、次に“ほのおのパンチ”を喰らえば今度こそロトムは沈むだろう。
だから逃げろ。
喰らうな。
お前にはまだ仕事が残っている!
「ロトム!」
「当てろ、ケッキング!」
迫るシュッキングに対して、ロトムが目をキランと光らせ逃げる。
そして僅かに、本当にギリギリで、“ほのおのパンチ”が掠る程度でロトムは逃げ切った。
「良いぞ! 最高だ!」
「む!?……ケッキング!? “いのちのたま”が___」
ロトムは逃げながらも“トリック”を成功させてくれた。
“トリック”はお互いの持ち物を交換する技だ。
奪わせて貰ったぞ、“いのちのたま”!
これにセンリは動揺している!
「今だロトム! “でんじは”!」
「しまっ___!?」
センリが動揺してシュッキングに指示を出す前に、ロトムはシュッキングに“でんじは”を当てて麻痺させる。
「くっ! そうか君は補助技使いか! ケッキング、“ちょうはつ”!」
くそ、やっぱり持ってたか!
……これでもう、補助技は使えない。
“ちょうはつ”を持っている可能性は考えていた。
この化け物シュッキングの弱点は、補助技くらいだからな。
それ以外ならほとんど真正面から全てを叩き潰せるのだ。
このシュッキングを育てたセンリが、そこを補わない訳がない。
だから俺は、前もってロトムに指示を出していた。
俺の言葉で補助技を使うのがばれない様に、先にロトムに技を出す順番を指示しておいた。
……だがそれもお仕舞い。
俺の戦い方はこれで何も出来なくなった。
「……でも悪あがきぐらいはするさ! ロトム、“イカサマ”!」
「ケッキング、“からげんき”!」
シュッキングが麻痺しているので、素早さ関係は逆転する。
先に動いたロトムが
“イカサマ”は相手が火傷でも関係ない。
相手の本来の攻撃力でダメージ計算される。
しかも今のロトムは“いのちのたま”を持っている。
それなりにダメージは入る。
……だが、当然シュッキングは倒れない。
体力も物理防御力も高いシュッキングだ。
いくら火傷ダメージを負っていても、“イカサマ”では倒れない。
それでも、体力の半分以上は持っていけたと思う。
シュッキングの高威力“からげんき”を喰らい、倒れるロトムに俺は感謝の念を送る。
……良くぞここまでやってくれた。
お前のおかげで、可能性は作れたぞ。
ポケモンには、“バトンタッチ”と言う技がある。
その技は簡単に言って、自身の状態を後続に託すという技だ。
例えば自身の上昇した能力を託す、とかな。
……俺はポケモンじゃないので“バトンタッチ”は使えないが、それでも、後続に有利な状況を作る事が出来る。
これがトレーナー同士の____
「“バトンタッチ”だ。 ツツジ、後は頼む。」
「任されましたわ!」
俺はツツジとハイタッチして後を託す。
火傷にはした。
麻痺もさせた。
道具も奪った。
体力だって削った。
シュッキングの戦力は確かに削れている筈だ。
起点は、確かに作ったぞ。
「……強い。 君は確かに強かったよソースケ君!」
「私達だって負けられませんわよ! 行きますわよメレシー!」
……これだけの状況を作っても、それでもなお戦況は五分五分と言って良い。
それだけ、あのシュッキングは化け物なのだ。
……ここからは何も出来ないのが歯がゆい。
「メレシー! “リフレクター”!」
「ケッキング、“からげんき”!」
メレシーとシュッキングの素早さはほぼ同速。
本来なら圧倒的にシュッキングが速いのだが、ここで麻痺が活きて来る。
シュッキングの素早さを抑えつつ、麻痺る可能性があるからな。
そして先手を制したのはメレシー。
“リフレクター”を張り、シュッキングの“からげんき”ダメージを半減に抑える。
そもそもシュッキングはメレシーに対して高い打点がないからな。
これは良いぞ。
「む、……仕方ない。 ここは一旦落ち着くとしよう。 “なまける”。」
持ってるよな~。
クソが。
体力を半分も回復する技だ。
そりゃ持ってない訳ないよな。
……でもさ、【なまけ】が無くなったんだから、その技は使えなくても良くないかな?
あぁ、ロトムの“イカサマ”ダメージが消えて行く。
「メレシー、“スキルスワップ”ですわ!」
“スキルスワップ”?
この期に及んで?
シュッキングには火傷をさせたので、普通の物理技はもう火力がそこまで出ないぞ?
実際“からげんき”が最大打点の筈だ。
今更【ちからずく】の特性と【クリアボディ】の特性を変えて何になる?
寧ろシュッキングの能力が落ちなくなるので、欠点だと思うが?
……何だ?
何がしたい?
何を狙っている?
「メレシー、“げんしのちから”!」
「ケッキング、“からげんき”だ!」
メレシーにもシュッキングにも大したダメージは入らない。
まぁ、シュッキングの方がダメージは大きいかな?
いや、それでも何故“げんしのちから”?
確かにシュッキングは特殊防御力が高くはないので、攻めるならそこが良いかも知れないが。
態々“スキルスワップ”する程か?
10%の能力上昇機会を捨ててまで、“げんしのちから”の火力を上げて攻める必要はあるのか?
……やっぱりおかしい。
ツツジはそこまで馬鹿じゃない。
「ここまで来たら我慢比べだな! 先に相手を落とすぞケッキング! “からげんき”!」
「っっっ、で___メレシー“げんしのちから”!」
再びメレシーが“げんしのちから”を叩きつけ、“からげんき”を喰らう。
……ツツジは何かに迷っている。
何かを躊躇っている。
しかしツツジが迷っている間にも、戦況は進んでいる。
シュッキングには確かにダメージが蓄積されているし、メレシーにもダメージが入っている。
いくら効果いまひとつで、物理ダメージ半減の“リフレクター”を張っているとしても、何度もシュッキングの馬鹿げた火力の“からげんき”を喰らえばそりゃダメージは溜まる。
……俺はつい、ツツジに声を掛けてしまう。
本来はバトル中に声を掛けるのはマナー違反なんだが、すまんセンリ。
「ツツジ! 何に迷っているのか知らないけど、とにかく全力でやれ! じゃないとあのシュ___ケッキングには勝てないぞ!」
「ソースケ、……そうですわね。 とにかく全力で行ってみなくては!」
ツツジは何かの覚悟を決めて、指示を出す。
「ははは! よし、全力で来い!」
「はい! 行きますわよ、メレシー___いえ、
はぁ!?
おまっ、そんなの狙ってたのか!
ツツジからそう指示を受けたメレシーは、グワッと光に包まれ、無理矢理、いや、【ちからずく】でディアンシーに変異し、“ダイヤストーム”を放つ。
「シィィィ!!!」
「出来ると思いましたわ! 元よりメレシーは既に条件を満たしていると思ってました! 宝石は既にダイヤになっておりましたし、強さも申し分ない。 後はきっかけさえ、それこそ【ちからずく】でならもしかしたらと!」
うっそだろお前!?
そんな、そんな屁理屈ありか!?
俺が口をあんぐり空けて驚いていると、“ダイヤストーム”で舞い上がった土煙の中から、シュッキングが現れる。
……マジっすか。
これに耐えるのかよ。
どう考えても“ダイヤストーム”で決まる空気だったじゃないか。
そんな事お構い無しにセンリは告げる。
「驚いた! それは進化かい!? いや変異?……どちらにしても、まさかバトル中に狙ってそんな事が出来るなんてな!」
……いや、驚いたのは俺とツツジ。
やっぱシュッキングって化け物だわ。
「くっ、まだですわ! ディアンシー! もう一度“ダイヤストーム”!」
ツツジの攻撃宣言に、センリはニッと笑う。
「ケッキング、“ふいうち”!」
俺は前世のポケモンバトルでの、ある言葉を思いだす。
『真の強者は、“ふいうち”を外さない。』
……成る程、これは強者だ。
終わったと思った。
折角メレシーからディアンシーに変異したけど、そのせいで、ディアンシーの体力は削れている。
変異するのに、体力を多少使っている。
“ふいうち”は耐えきれない。
が___
シュッキングは麻痺で動けなかった。
ロ、ロトムさーん!!!
アンタやっぱり良くやったよ!
シュッキングは動けない所に“ダイヤストーム”を喰らい、今度こそ沈んだ。
ちなみに、センリはちょっと手加減しています。
“あくび”使って来てないしね。
タイマンでは害悪技を使わないトレーナーの鑑。