モブ厳な世界で時の王者やってます。 作:あんこパンパンチマン
お久しぶりです皆さん、わたしです。生きてました。
遅れた理由といいますか言い訳といいますか、忙しかった就活や面接、大学の論文その他諸々はだいぶ前に片付いていたのですが。色々と激闘続きで状況が落ち着いてからはやり切った感といいますか燃え尽き症候群といいますか、それに近い状態になっており執筆に手が付けられませんでした、すいません。
久しぶりの執筆でも色々と手間取り難航してしまいました、感覚を戻しながら投稿再開していきたいと思います。
そして最後に一言、メタルクラスタホッパーかっこいいよね。
──けたたましく鳴り響く警報音が空気を震わせる。
市街地上空に六体の超大型の飛行ノイズが同時に出現。超大型ノイズの姿を確認した住民たちは悲鳴を上げながら先へ先へと一心不乱逃げ惑う。
東京スカイタワーを囲うようにゆっくりと飛行する超大型ノイズ、その超大型ノイズの背や腹に存在する排出口のような穴から次々と無数のノイズたちが降り注ぐ雨のように地上へと生み落とされていく。
「ふっ! たぁ!……もうっ! 数が、多いっ!」
住民たちを避難させ終え、シンフォギアを身に纏った響の攻撃がノイズを捉えて貫き炭素化させ消滅させるが響が一体、二体とノイズを倒す間に次々とノイズが生み出されていく。
市街地上空に出現した超大型ノイズ、その六体の内の一体は既に響が撃退している。二課の用意したヘリに乗り込み現場へと到着した際にヘリの高度を上げて超大型ノイズの頭上へと移動、ヘリから飛び降りながらシンフォギアを纏った響は強力な一撃を叩き込み超大型ノイズを消滅させた。
しかし消滅させられたのはその一体だけ。空中にいる敵への攻撃手段を持たない響は超大型ノイズに対して文字通り手が出せずにいた。自分が乗って来たヘリを利用して再び空へ飛び上がろうにも周囲のノイズがそれを許さない。
次々と生み出されていくノイズを素早く消滅させてどうにか数を減らしていると背後から低く唸るエンジン音が聞こえて来た。
「おーい、響!」
「遅れてすまない!」
「奏さん! 翼さん!」
バイクに乗って此方に向かってくる翼と奏が少し遅れて現場に到着した。バイクを運転する翼は勢いを弱めずに更に加速する、速度が増して突っ込んでくる翼のバイクを見て響はまさか、となんだか嫌な予感がして顔をが引き攣った。
「奏!」
「ああ!……ん、え?」
翼はバイクのハンドルから手を離すと勢いよく跳び上がる、それを見た奏が慌てた様子で翼に続くようにバイクから跳び降りた。二人はシンフォギアを起動させてギアを纏いながら滑るように地面に着地する。
運転手がいなくなり無人機となったまま更に加速してノイズに突っ込んで行く大型バイク。
「ちょ、ああー!……バイクゥ〜」
バイクはバランスを保ちながらノイズの集団に勢い良く衝突して爆発四散、爆炎を上げながら無残な姿へと形を変えてしまったバイクを目撃して思わず響は声が漏れた。
そしてなぜかやりきった感のある表情を浮かべている翼、そんな翼に奏は背後から容赦無く鋭い膝カックンを叩き込んだ。完全に不意を突かれた翼はそのまま膝から崩れ落ちる。
「き、急になにするの奏!?」
「いやそれこっちのセリフだから。飛び降りるなら前もって言っておいてくれないと普通に困るから。翼が飛び降りた時、一瞬どうすればいいかわからなかったぞあたし。というかなんで飛び降りたのさ」
「い、いやそれは前に叔父様からオススメされた映画ではこう……」
「原因は旦那かよ……」
捲し立てるような奏の様子に翼は少し戸惑う様に白状する。翼がバイクを大破させるのはこれが初めてでは無い、今まで何台ものバイクが犠牲になってきたがその元凶が翼の叔父であり特異災害対策機動部二課の司令官である弦十郎だと知り奏は呆れた様にため息を吐いた。
風鳴 弦十郎、響に戦闘技術を教え込んだ男。趣味は映画鑑賞、その中でもアクション映画を好んでおり彼が弟子の響だけではなく翼にまで変な影響を与えていた事に奏は頭を痛める。
「と、とりあえず。吹き飛んだ翼さんのバイクの事は一旦置いておきましょう! それよりも今は空にいるノイズを何とかしないと!」
「そ、そうだな立花!」
なんだか小さな子供が叱られているようでそれを見兼ねた響が話題を変える様にさり気なく助け船を出す。翼は響のフォローに感謝しつつアームドギアの刀を構えてノイズへと向き直った、ジッと突き刺す様な奏の視線に気がつかないフリをしながら。
そんな翼の様子にもう一度ため息を吐いてから奏もアームドギアを出現させて構えた。
合流した装者三人、しかし状況が大きく変化したとは言えなかった。響、翼、奏、この三人は接近戦闘を得意としている。響を除き翼と奏、ツヴァイウィングの二人は遠距離の敵に対しての攻撃手段がない訳でない。
「ハアッ!」
「フッ!」
刀の形状を大きく変化させた翼が放つ巨大な斬撃『蒼ノ一閃』、それに合わせるように奏が放投擲した槍を大量複製して広範囲の相手を貫く『STARDUST∞FOTON』。
超大型ノイズに向けて地上からは巨大な斬撃が迫り、空中からは大量の槍が降り注ぐ。どちらの技も超大型ノイズを消滅させるには十分な威力を持った強力な一撃。
「ッ……やり難い」
しかしその攻撃は防がれた。
奏が睨む先には無傷の超大型ノイズ。超大型ノイズから生み出された飛行型ノイズの大群が周囲を旋回して超大型ノイズを守るように壁となり二人の攻撃を防いだのだ。
「なら、もう一度……っ!」
翼は形状の変化した大きな刀を構えてもう一撃繰り出そうと構える。その行動を妨害するかのように散らばった瓦礫の影に潜んでいたノイズが翼の背後を狙い飛び出してくる。
空中の超大型ノイズに意識が向いていた翼は反応が遅れるがノイズが攻撃するよりも早く動き出した響がノイズを殴り飛ばして消滅させた。
「すまない立花っ!」
「翼さん! 数が多いですから、気をつけてください!」
三人は連携して隙を埋めるようにカバーし合いながら地上と空中から次々と現れるノイズを消滅させていくが次第に追い込まれていってしまう。
どれだけの数のノイズを蹴散らそうと空中に存在する超大型ノイズがノイズを生み出して減った数を直ぐ様補充していくのだ、超大型ノイズをどうにかしない限りは状況は変わらない。
自分たちを囲うようにノイズの数が増えていくジリ貧とも言える状況に響の焦りが募っていく。
その結果、大きな隙を生んでしまった。素早く動きながら拳と蹴りを駆使して立ち回っていた響だが募る焦りから次の攻撃に映る瞬間、脚を踏み外してしまったのだ。
体勢が崩れた。
ノイズが目前に迫る。
回避もカバーも間に合わないと判断した響はせめてもと防御体勢を整えようとするがそれも間に合わない。数秒後に訪れるであろう衝撃に備えて響は歯を食いしばり身体を強張らせた。
「……へっ?」
そして目の前のノイズが一瞬で穴だらけの蜂の巣と化して消滅した。
いきなりの状況で響は思わず変な声が出たが今の攻撃には見覚えがあった、というかありすぎた。ノイズを一瞬で蜂の巣にした攻撃が飛んできた方向には大きな銃と見なられた赤い鎧を身に纏った少女がいた。
「……クリスちゃん!?」
目の前に現れたクリスの存在に今の状況を理解するのに時間が掛かった響だが自分がクリスに助けられたと理解すると嬉しそうに表情を綻ばせた。
「変な勘違いはするなよ……別にお前たちを助けに来たわけじゃ…「クリスちゃーん!」うわぁ!? く、くっつくなこのバカ!」
不適な笑みを浮かべながらそう言ったクリスだが急に抱きついてきた響によってその表情は一瞬で崩された。グイグイと力を込めて抱きついてくる響を何とか引き剥がそうとするクリスだが思いのほか響の力が強く手こずっている。
「来てくれてありがとうクリスちゃん! 助かったよー!」
「話を、聞いて、なかったのかお前はッ! 偶々目的が同じだけでお前らの助っ人に来たわけじゃ!」
『いいや、彼女は助っ人だ』
「叔父様?……助っ人とは一体どういう事ですか?」
クリスの登場に警戒していた翼だがクリスの持つ通信機から流れてきた弦十郎の言葉に怪訝そうに眉を顰めた。
『彼女“たち”に協力を頼んだら快く承諾してくれてな、助っ人に来てもらったんだ』
「な!? ちが、別にアタシは快くなんか、通信機とアイツが喧しいから来ただけで別にそんなんじゃ……」
「……“たち”? “アイツ”?」
『ああ、もう一人。連絡が届いているのなら彼も到着している筈だ』
<フィニッシュタイム! タイムブレーク!>
クリスと弦十郎の言葉に奏が唸っていると空中の超大型ノイズの一体が弾けるように爆散して消滅した。爆発と共に発生した突風から身を守るようにしていると爆煙の中から飛び出してきた黒い影が響の横に勢い良く着地した。
「……え、えええ!? ジオウさん!?
「み、未確認!?」
「あ、どうも。助っ人です」
爆煙の中から現れた人物の姿を確認した響と翼は驚き、奏は二人程ではないにしろ小さく驚きジオウの登場の仕方にピューと口笛を鳴らしている。そしてジオウはそんな彼女たちに親しい友人に接するかのように片手を上げて挨拶をしていた。
そんなジオウの軽そうな態度にクリスは一人頭を抱えてため息をついていた。
クリスから離れた響はジオウに近づいていき話かけようとしたが、それをジオウが手を前に突き出して止めた。
「積もる話もあるかもしれないけど、それは後でにしよう。あっちはもう待てないみたいだし」
「え……なるほど。了解です! お話はまた後でにしましょう! あ、それまで勝手にどこか行ったりしないでくださいね!約束ですからね!」
ジオウの視線の先には超大型ノイズから生み出されたノイズの大群、その大群がゆっくりと波のように迫って来ていた。それに気がついた響も気持ちを切り替えて拳を構えた。響からちゃっかり釘を刺されたジオウは仮面の中で苦笑いする。
「……色々と問い詰めたい事はあるが、今は取り敢えず地上のノイズを殲滅しつつ連係しながら空中のノイズを」
「──それはアンタらで勝手にやってな。アタシはアタシで好きにやらせてもらう」
「ちょ、おい!」
お互いの動きの確認を取り作戦を立てようとした翼だがクリスがそれを中断させた。ボウガンを構えたクリスが飛行型ノイズを撃ち抜くとそのまま飛び出して行った。奏の制止の声も届かない。
クリスはアームドギアの形状をボウガン、サブマシンガン、ガトリングと様々な形状に変化させながら次々とノイズを消滅させていく。
「はあ……とりあえず、空中のノイズはあの子に任せて私たちは地上のノイズを片付けましょう」
ネフシュタンの鎧を纏った時のクリスとシンフォギアを纏った時のクリス、その両方と戦ったことのある翼は何かあれば動けるようにしながらもクリスの実力なら任せても問題はないと判断して戦闘を再開する。
「クリスちゃん……」
響は一人離れていくクリスの後ろ姿を心配そうに見つめていた。
「うーん。まずは上の奴を片付けないとダメだな」
自分の戦闘に巻き込まないようにと装者たちから少し離れた場所で戦っていたジオウは地上にいるノイズの相手をしながら上空を見上げてポツリと呟いた。
上空にはまだ五体の超大型ノイズが存在している。次から次へとノイズを生み出す超大型ノイズを先にどうにかしないとダメだと判断したジオウは鉤爪を構えて接近してきたノイズを蹴り飛ばしてから他のノイズとも距離を取った後、ライドウォッチホルダーから一つライドウォッチを取り外した。
「じゃあ……これで行こうかなっ!」
片手でベゼルを回転させてからスイッチを押し込み起動させる。
<ウィザード!>
起動させ光を放つライドウォッチをドライバー左側のスロット、『D'3スロット』に装填しベルト上部のスイッチを押し込みロックを解除して『ジクウサーキュラー』を勢い良く回転させる。
<ライダータイム! 仮面ライダー! ジオウ!>
<アーマータイム!>
ジオウの頭上に巨大な赤い魔方陣が浮かび上がり出現する。魔法陣がジオウに被さるようにゆっくりと近づいてくる。
高度を落としジオウに重なった魔法陣が赤い魔力の炎を迸らせながら開くように変形してゆきアーマーを形成していく。
<プリーズ! ウィザード!>
胸部には鋭く睨みつけるようなドラゴンの顔の意匠が施されたボディアーマー『ストライクブレスター』。両肩にはフレイムウィザードリングを模した装甲『フレイムリングショルダー』。
全身にアーマーが装着されると最後に形状を変えて開いた魔法陣が布に変化しマントのように背に垂れ、腰には黒いウィザードコートが形成された。
ジオウ頭部のライダーの文字を輝かせていたインジケーションアイがカタカナのウィザードへと変化して全身から火の粉を散らし変身が完了した。
「さあ、マジックショーの始まりだっ!」
手の甲を向けるように構えるジオウに鉤爪を構えたノイズが再び接近する。ジオウはその攻撃を少ない動作で華麗に回避すると徒手空拳で対応。
鉤爪の攻撃を素早く適格に捌いていき、ウィザードコートを靡かせながら回し蹴りを連続で叩き込みノイズを吹き飛ばし消滅させる。
<ジカンギレード! ジュウ!>
出現させた銃状態のジカンギレードを構えノイズに発射する。
ジカンギレードの銃口から放たれた“銀の銃弾”は意思を持つかのように縦横無尽に空を舞いながらノイズへと向かっていき炸裂する。
「じゃあ、お次はっと」
ジオウが右手に構えるジカンギレードに赤い魔法陣が展開され包み込むと左手に魔法陣が出現し“もう一つのジカンギレードが複製された“。
<ケン!>
「ふっ!せいっ!」
剣状態へと変化させた片方のジカンギレードを手元でクルクルと回転させノイズへと斬りかかり、冷気を纏った斬撃はノイズを瞬時に凍てつかせる。ジオウは氷塊とかしたノイズを撃ち砕きながらノイズの大群を蹴散らしていく。
上空から飛行型ノイズが隙を見せたジオウの背後を狙い特攻を仕掛けるがジオウはそれを振り返らず、落ち着いた様子で地面を爪先で叩くとジオウを守るかのように地面の一部が隆起して盾となった。
ノイズの攻撃を防いだジオウは岩の盾に埋まったノイズを盾諸共蹴り砕き消滅させる。
「フィナーレだ、上の奴にはご退場と願おうか」
複製したジカンギレードを無造作に放り投げる、剣は斜線を描きながら飛んで行き乾いた音を立てながら地面に転がり魔力の塵となって消えた。
ドライバーのスロットから引き抜いたウィザードライドウォッチをジカンギレードのスロットに装填。
ジカンギレードを掲げて振り回し回転させると瞬く間に刀身が伸びるように巨大化していき最終的には周囲の建築物を越えるほどの大きさまで巨大化した。
ジオウは巨大化したジカンギレードをその重さを感じさせないかのように軽々と扱うと空中で飛行している超大型ノイズ目掛けて振り下ろす。
<ウィザード! ギリギリスラッシュ!>
迫りくる巨大な刃に気がついた超大型ノイズは回避しようとノイズを生み出しながら加速して旋回する、が超大型ノイズの周りに出現した魔法陣がそれを許さない。
出現した魔法陣から伸びてきた何本もの鎖が超大型ノイズを拘束して動きを止める。超大型ノイズが鎖を振り解こうと捥がくが鎖は更にキツく締め上げるだっけだった。
「おおおっ!」
巨大な斬撃が超大型ノイズを両断する。
ジオウはノイズの撃破を確認すると巨大化した刃が地面に激突して何か被害が出る前に巨大化を解除して安堵のため息を吐いた。
「すごいな。まだそんな隠し玉があるのか、あんた」
「ふぅ。まあね……そっちはもう片付いたの?」
地上のノイズをあらかた片付け合流しようとした奏はジオウの今の攻撃を唖然としながら見上げていた。
ジオウは奏から一度視線を外すと銃撃音が鳴り響いている。方向を静かに見つめた。
「……雪音クリスが気になるのか?」
「……少しだけ。まあ彼女の事は響に任せてるし大丈夫だと思うけど、今は俺よりもあの子に任せた方がいい筈だからさ」
雪音クリスは苛立ちを感じていた。
その苛立ちは引き金を引き絞り、湧いて出てくるノイズの大群をを蜂の巣に変えようとも晴れる事はなかった。
寧ろ苛立ちは募って行くばかりだった。
「くそッ!」
自分自身にも理解できない苛立ちにクリスは小さく舌打ちする。
市街地の至る所に分散しているノイズを撃破しながら駆け回る。上空の超大型ノイズを狙い撃とうとも周囲に展開されているノイズが盾となりそれを阻む。
攻撃を防御されたクリスは襲いかかって来る地上のノイズの相手をしながら次の狙撃場所へと移動する。
「なっ!」
「……っ!」
建築物の屋上から屋上へと飛び移り移動していたクリスだが地上でノイズの相手をしていた翼が目の前に飛び出して来た。
それを直前まで気がつく事の出来なかったクリスと翼は空中で勢い良く激突、落下しながらも体勢を整えて何とか着地する。
「ぐっ、どこ見てやがる! 足を引っ張るならすっこんでな!」
「なっ!? そういう貴女こそいい加減にして! 一人で戦ってるつもり?」
状況確認を怠りクリスの接近に気が付けなかった自分にも非があると判断した翼は素直に謝罪しようとしたがクリスの相手に噛みつくような態度に表情は硬くなり言葉が強くなった。
「つもりも何も、こっちは最初っからお前らと馴れ合うつもりは無いって言ってるだろ」
「……貴女ね、今の状況を理解してるの?」
「理解してるさ、この状況下でアタシ達が争う理由は無いのかも知れないが争わない理由もないだろ。そもそも、アタシたちはついこの間まで敵対して争ってたんだ。そう簡単に切り替えられるかよ、アンタだってそうだろう?」
「……っ」
そう言って口元を歪ませて笑みを浮かべるクリス。翼はその言葉に僅かに顔を顰めた。彼女の言う通り先日まで敵対していた相手と協力しているこの状況に思うことがないわけではなかった。
「だいたい、そんな簡単に人と人がっ」
「そんな事ないよクリスちゃん」
分かり合えるものか、自分の中に募っていた苛立ちをぶつけるように声を荒げそうになるクリスの言葉をいつの間にか近くにいた響が遮った。
彼女はクリスに近付くと装甲に包まれたその手を取りギュッと握りしめた。いきなりの事にクリスは驚きながら響の手を弾くように振り解き距離を取る。
「人はみんな誰とだって仲良くなれるよ、私とクリスちゃんが仲良くなれたみたいに」
「な!? アタシとお前がいつ仲良くなったっていうんだよ! だいたいアタシはフィーネに命令されてお前を狙ってたんだ、お前の友達だって傷付けようとしたんだぞ! なのにっ!」
「でもクリスちゃんはあの時、私のことを助けてくれたよね?」
響が思い出すのは奏と翼のツヴァイウィングのライブがあった日のことだ。
あの時は響がライブを中止させる訳にはいかないと一人で出撃しノイズの撃退にあたっていた、訓練により最初の頃と比べて各段に力を付けた響だがノイズの数の多さから一瞬危機的状況に陥ったが先に現場に到着しノイズの対処をしていたクリスに助けられたのだ。
クリス自身もあの時なぜノイズに囲まれていた響を助けたのかは理解出来ていないが彼女を助けたのは紛れもない事実だった。
「それはっ……」
「だから今度は私がクリスちゃんを助けたい、力になりたいんだ。」
「助けなんて、アタシは……」
そう言って響はもう一度クリスの手を握り包み込む。クリスは響の言葉に反発するかのように声を荒げようとしたが彼女の暖かく優しい笑顔に言葉を詰まらせ何も言えなくなってしまう。
「……なんで、お前はそこまでっ」
「後悔したくないし目の前で困ってる人がいるなら手を伸ばしたい、それだけだよ」
まあ、受け売りなんだけどね。そう言いながら笑う響の姿にクリスは自分がよく知る人物の面影を感じていた。
そして理解する、自分の中に募っていた苛立ちの正体を。敵対していた自分とも手を取り協力しようとする彼女達とは違い、こんな状況でも意地を張り素直になることが出来ない自分自身に対する苛立ちだと。
誰かの為にと行動して笑顔を浮かべる響の真っ直ぐな姿に理解させられた、自分は何をしているのだろうと。
「街の人達も助けたい、けど私たちだけじゃダメなんだ。だからクリスちゃんの力を貸してくれないかな?」
「……っ」
真っ直ぐにこちらを見つめる曇りのない綺麗な瞳。その瞳から目を逸らすことができず気がつけばクリスは響の手をゆっくりと握り返していた。それに気が付いた響は嬉しそうに顔を綻ばせて二人のやりとりを眺めていた翼の方へと振り返り手を伸ばした。
向けられた視線に気が付いた翼は一瞬驚いたような表情を浮かべた後にアームドギアを解除、伸ばされた響の手を取りもう片方の手をクリスへと差し伸べた。
「な、なんだ。アンタまでこのバカに当てられたのかよ……」
「……そうだと思う、それに貴女もきっと」
クリスは微笑みながら差し出された手をおっかなびっくりといった様子でゆっくりとつかみ取ると翼は嬉しそうに笑いながら強く優しく握りしめた。今目の前で起きている出来事にクリスは顔をリンゴのように赤くして恥ずかしそうに俯いてしまう。
「あのー、なんだかいい空気感のところ申し訳ないんだけど……」
「うひゃあああ!? 」
突然背後からヌッと伸びてきた影にクリスは驚き悲鳴を上げながら跳び上がる。
振り返った先にはどこからともなく現れたジオウが申し訳なさそうな様子で立っていた。
「な~にあたし抜きで楽しそうなことしてるのさ二人共」
「ちょ、奏急にくっつかないで」
「わわ、奏さん苦しいですって! というかジオウさん、また見た目変わってる」
翼と響の背後から現れた奏が愉快そうに笑いながら二人に抱き着いている。クリスは奏の様子に酔っ払いのおっさんかよなんて思いながらわちゃわちゃしている三人を尻目に横にいるジオウに意識を向けた。
「あ、アンタいつからそこにいたんだよっ……」
「うーん、少し前ぐらいかな」
奏と共にノイズを殲滅していたジオウだが空中の超大型ノイズが三人のいるスカイタワー周辺に集まり始めたのを確認してとどうせなら一度合流してしまおうという結論に至り三人のもとへ向かったのだが何やら揉めていたので事の成り行きを見守っていったのだ。
見られてたのかよ。クリスは先ほどまでの光景をガッツリ見られていたことに内心舌打ちしながら恥ずかしそうに顔を赤らめていると何かを思いつたジオウがまるで内緒話をするように手を口元にもあてながら呟いた。
「それと、よかったね。響たちと友達になれて……色々と響たちの事気にしてたでしょ?」
「なっ!? いちいちそういうことは口に出さないでいいんだよ!」
「いだぁ!? 急に蹴ることないでしょ」
ジオウの言葉にクリスは更に顔を赤くする。ジオウの声音から自分が揶揄われている事に気がつき恥ずかしさを紛らわせるようにジオウに蹴りつけるとグルルと獣のように唸りながら赤い顔でジオウを睨みつけた。
そんな彼女の様子に思わず仮面の下で苦笑いを浮かべていると周辺が暗くなった、上空を見上げれば超大型ノイズがこちらを見下ろすように飛行している。この場にいる五人が会話してる最中にも隠れながら数を増やしていたノイズがいつの間に取り囲まれていた。
「うひゃー、また増えてやがる」
「親玉をどうにかしないとキリがないわね……」
数を増していくノイズの姿に奏は面倒くさそうにに溜息を吐き、翼は予想される連戦に気を引き締めてアームドギアを構え直した。睨みつける先には超大型ノイズ、あのノイズをどう手を打つべきか思考しているとクリスがそんな二人の前に出た。
「ならその仕事はアタシに任せてもらおうか」
「……確かにその厳つい銃の攻撃ならノイズに届かないことはないだろうが、出来るのか?」
クリスは奏が口にした疑問をフンと鼻で笑い不敵な笑みを浮かべた。
「出来るね。アタシのイチイバルの特性は長射程広域攻撃、派手にぶっ放してやるさ」
クリスの提案した作戦の内容はこうだ。ギアの出力を引き上げながらも放出を抑え込み行き場のなくなったエネルギーを臨界までため込み一気に解き放ち上空のノイズにぶつけるという作戦だった。だがこの作戦には一つ欠点があった、エネルギーのチャージ中は無防備になってしまいこれだけの数のノイズを相手にする状況では丸裸も当然だった
しかし、
「なら私たちでクリスちゃんを守ればいいだけのことですね! 」
響の場違いなくらいな明るいその一言で作戦が決まった。
そこからは速かった、ギアのエネルギーをチャージするクリスに何かを感じ取ったのか周囲のノイズが一斉に襲い掛かってくるがそれをジオウが魔法陣から出現させた鎖で拘束し動きを止めるとそこに響、翼、
奏が攻撃を叩き込み確実に消滅させていった。
上空に存在した超大型ノイズは爆発的なエネルギーを秘めたクリスのギアから放たれた爆撃に文字道理、木端微塵になって消滅した。
「やったー! 勝てたよクリスちゃん! クリスちゃんのおかげだよ!」
「このバカ! やめろ抱き着くなって!」
「お疲れ様、体は大丈夫?」
「全然大したことないって、翼こそお疲れさん」
周囲のノイズの殲滅を確認した響たちはギアを解除すると勝利の喜びを分かち合っていた。そんな四人の様子をジオウ、ソウゴは微笑ましそうに眺めていた。今のクリスなら響たちと一緒にいても大丈夫だろう、そう判断してこっそりとこの場を離れようとしたとき。
突然ピリリと響の所有する通信機から電子音が鳴り響いた。
「はい、もしもし?」
通信相手は未来からだった、その名前を確認した響は少しうれしそうにいつもの様に通信に出た。
『響! 大変なの、学校がリディアンがノイズに襲われ──!』
「え……未来?」
通信はそこでブツリと途切れてしまった、あまりにも突然のことに事態に理解が追い付かず硬直してしまう響。周りには今の通信が聞こえていなかったのか様子の可笑しくなった響に不思議そうにしていた、固まった口を必死に動かし事態を伝えようとする。
次の瞬間、轟音が響き渡った。
「ジオウ、さん……?」
その衝撃で硬直の解けた響が振り向いた先には先ほどまでそこにいたジオウの姿が見当たらず力強く踏み込んでひび割れた地面だけが残っていた。
途中保存していた話を執筆再開した結果、どういう展開にしようとしていたのかど忘れし文字数が予想以上に長くなった上に後半から失速感が否めないそれが今回の15話。
ペースアップして感覚と文章力を取り戻していきたい……、取り戻すほど持ってたかはわからないけど。
本当は28日までに投稿したかったんですよね、なぜなら我が魔王の誕生日だから。