この王国の誰しもが忘れていた。何故ファーガス神聖王国が成立したのかを。
建国の王ルーグは、アドラステア帝国より独立し国を勝ち取った。北の大地は実りが悪く、戦い続けてまで奪い返す事へのリターンがなかったこともある。
ディミトリがアラドヴァルを手にしてから半刻が過ぎ、王都フェルディアは半壊し、王城は崩壊した。
ただ一つの、戦いの余波によって。
戦技『無惨』。アラドヴァルによって振るわれるその一撃の余波によりフェルディアに嵐が生まれた。空が割れ、城壁は吹き飛び、家家はは千切れ飛ぶ。
「何事か⁉︎」
騎士たちは吠える。市民の避難を優先していなければ崩れ落ちる城に潰されて死んでいた。今城に残っていた者達は生きていないだろう。コルネリアに媚を売るが本人にすら蔑まれているクズの集まりだったが、彼らなりにファーガスの為に動いている事も今王国に残っている彼らは知っている。
「ふざけんな、化け物共だけでも手一杯だってのによ!」
騎士の中にも恐怖に震えて逃げ出す者が出る。その血に刻み込まれた恐怖から。勇気を出して立ち向かおうとする者が出る。この国を守る為に、命をかけて。
そんな中、ある年老いた騎士が言った。『アラドヴァル』と。
建国より王国と共にあり、王国の敵と
今生きている所持者は、獄中のディミトリのみ。
王国に縛られ、王国に利用され、王国に殺されるだけだった彼が、今『魔槍』を手にしている……!
「逃げろ」と叫んだのは誰だろうか? などと考える事はない。ファーガスの血が全力で『狂王』から逃げ出せと叫んでいた。
しかし眼前には竜人兵団。城から逃げる事は彼らに向かう事。やぶれかぶれに突っ込む奴は千切れて飛んでいく。こんな中にあるのに彼らの目には喜びすらあった。
「我らが、王よ」
そして、ダスカー竜人兵団は竜の感覚でその想いを抱いた。あらゆる過去からの声を無視してでも彼の下に居なければならないという想いを。
『竜』は遥か昔から、力に忠を誓っていた。
殺してやる
目の前のガラクタはアラドヴァルを躱し距離を取る。槍の間合いは長いとはいえ魔法よりも短い。余波で殺せる類でなし、直撃を狙う。
「殿下!」
ドゥドゥーの声がした。お前はもう自由だ。ファーガス神聖王国はフォドラの歴史から消えるのだから。
視界の端に男の腕が見える。あれはカインズの腕だ。
カインズは男爵家の次男坊で、騎士手としての実績を積んでいた。俺の監視をしている際、万が一にも対応できるようにしていた勤勉さを持っていた。直接の助けこそ今日までなかったが、ずっと気を揉んでくれたことを知っている。
殺してやる
崩れ落ちる瓦礫の隙間を抜け、足場にして地上に向かうガラクタを追って地上に出る。
瓦礫の上から風魔法が叩きつけられる。アラドヴァルで瓦礫を全て吹き飛ばすが、狙われていた。雷魔法『トロン』だ。
右目側の視界が潰れたが、まだ動ける。
戦技『無惨』。反撃される事を想定していなかったのか、奴の右腕がちぎれ飛んだ。
転がっていた死体から手槍を拾って投げる。ガラクタはそれを掴んで投げ返す。千切れた右腕には新しく腕が生えようとしていた。さほど早くはないので殺せば殺せる。
手槍を薙ぎ払いつつ距離を詰める。向こうは槍の間合いに入らぬように逃げ回っているが、片腕が使えなくなり速度は落ちた。
そこに、攻撃を置く。アラドヴァルの力は地面を伝い、空に爆ぜる。その衝撃を防げず、躱せず、あのガラクタは宙に囚われた。
「死ね」
迷わずにアラドヴァルを投げ込んだ。
アラドヴァルは奴の肉体を貫く。そしてその力を内部に流し込んで爆散させる。
肉片が弾け飛び、ガラクタの中にある『魔』も弾け飛んだように思えた。
だが恐らくは
殺した手応えが感じられなかったのだ。
次が、来る。
「殿下!」
上空から雷が放たれる。城砦の魔導砲台からだ。
前方に飛び込んで回避してアラドヴァルを拾う。遺体が穂先を離さない。
その遺体はあのガラクタのモノでなく、ファーガスの兵士。城内で見た覚えがある。
その重みが、鈍らせる。
重さの分振り遅れ、二射目への迎撃が遅れた。そして雷と共に降りてくる敵。動きも気配もあのガラクタだ。腕はなく、両足はズタズタで今にも死ぬ。
しかし、奴はズタボロの足を潰して加速する。俺の命を奪う為だけに。『その先』など一瞬すら考えずに。
理屈ではなく心が命じた。『殺せ』と。
穂先に感じた『重さ』が消え、身体は自然と動いていた。
気付けば戦いは終わっていた。
アラドヴァルはガラクタを切り裂いた。奴は息絶えており、その瞳は怨嗟の念に満ちている。
握ったアラドヴァルからも己を含む全てを殺せとの叫び声が聞こえてくるほど、奴の憎しみは染み付いていた。
しかし頭は冷えている。己の中で暴れていた邪心はそのままに、冷静に何をするべきかが見えていた。
「殿下!」
「ドゥドゥー……」
「
今フェルディアを灰にする事は容易い。しかしそれでは
「……ハッ!」
コルネリア含めファーガスを腐らせたゴミ共は根切りにする。その為に本当にするべきことが、見えはじめていた。
崩れ落ちる城内から逃げ延びた私達は、混乱もあってか咎めは受けなかった。
ダスカーの人達の奇襲から始まったこの戦いでフェルディア王城は崩れ去り、王都は陥落したかに思えた。けれど殿下は見当たらなくて混乱は増すばかり。
時が経って冷静になったことで、殿下には王都を壊滅させる事はできても
殿下に協力する臣民や兵士たちがどれだけいても、彼らをまとめる将や官が居ない。私の家とかフラルダリウス家とかに援助を求める事も不可能だ。
ダスカーの人達と殿下。その20数名では、殿下の味方が来るまでの数日すらどうにもならないのだから。
一応ではあるけれど、私や父さん、街の方にいてアラドヴァルに巻き込まれなかった騎士の人たちは色々頑張りはした。けれど翌朝にやってきた親帝国派の連合軍がやってきたので何もできなくなった。
これは私の行動の結果だ。と己を責める気持ちはゼロじゃない。
だけど、帝国派の人達も身を削って二次被害を防ぐ為に動いていた事や、ジョージさんの奥さんをはじめとした買われた人達を救出して治療してくれてた事。
そういう事から見える勇気や正義、笑顔だとかを思うと、もつと頑張ろうという心にはなれた。
今、ファーガスは嵐の中だ。
各地で、『血狂い王子』ディミトリの話が聞こえる。
殿下は色んな人たちを味方につけて戦っているらしい。ダスカー民族、スレンからの奴隷、その他魔獣などの化け物達を纏め、ファーガスを滅ぼす悪魔の軍勢を作っているのだとか。
学園で見た殿下の姿からは考えられないけれど、王城で見た殿下の姿からは順当に思える戦いの日々。
ドミニク家の次期党首(にさせられてしまった)の私は、他の家臣同様にファーガスを守る為に頑張らなくては。
そう思い、気合を入れる為に頬を叩く私だった。
アラドヴァルの憎しみの声はどこまでも響き渡り、紋章を通じてその位置は誰でも知ることができた。そんな彼を討つために彼の敵は手段を選ばずに攻撃を加えたが、その全てが灰燼に帰した。
その理由はただ一つ。ディミトリ=アレクサンドル=ブレーダッドはフォドラにて『最強の個』であり続けたからだった。
以下、完全なる雑記です。
スマホが壊れて萎えていた頃にガンヴォルトとゼノブレ3で完全にモチベーションか奪われてました。アイオニオン最強は倒してもスーパーユニークに心を惹かれ、ベリーハード、GVモードでの練習していたらもうすぐソウルハッカーズ2。
コンテンツの雪崩がヤバくてやばいです。執筆ペースが完全に崩れました。執筆のテンションがなかなか上がらないのもあって更新は相変わらず不定期かつ遅くなります。たすけて