全集中の呼吸で「最強」を目指すのは間違っているだろうか 作:V.IIIIIV³
幼稚園生の時に初めてバカ殿を見て、それから時々ある「バカ殿」や「だいじょうぶだぁ」とか、とても楽しく見させていただいていました。そうやって、いつまでも私を笑わせてくれると・・・、そう思っていました。本当に悲しいです。
ですが、この訃報を聞いて、執筆をしなければ、と思いました。今回のことで私を含め、多くの人が今回の事の重大さを理解したと思います。だから1人でも多くの人を、小説を読む僅かな時間であっても家に引き止め、そして少しでも家での退屈な時間を減らしたいと思い、今この小説を執筆しています。
なんともおこがましいセリフですし、私の作品の読者様たちを信頼していないような言い草ですが、どうか許してください笑
これ以上話すのも無粋ですので、そろそろ本編に入っていこうと思います。前回無一郎の登場で引きましたが、今回からモンスターフィリアあたりまではしばらく刃の登場はありません。正確に言うと、起きた刃の登場ですが。
「何ぼーっと座ってんのさ。さっさと構えなよ。鈍間だなあ」
そういって、両手に持っていた木刀のうちの一本を刃の近くに放り投げる。
それに対し刃は、立て続けに起こる驚愕にいまだ困惑して立つことすらできていない。そんな刃を見下しながら、時透無一郎は貧乏ゆすりを始める。
「と、時透……?は?え、は?ってか、ここなに?道場?ダンジョンで倒れて……いったいどうなって「ちょっと黙ってくれる?」うわっ!!」
覚醒直後にキャパシティを軽く振り切るレベルの衝撃を受けうろたえる刃。その姿からは、普段の冷静沈着な風貌はかけらも感じられなかった。
しかし、マイペースの頂点に立つともいえるこの男、時透はこの困惑を生み出した張本人であるにもかかわらず、気にせず刃の喉元に木刀を突き付けている。いや、正確に言うと困惑状態の刃のブツブツがうるさくて気に障ったからという余計に質の悪い行動なのだが。
「その辺のことは全部終わってから時間に余裕があったら聞くよ。一応外の体は僕の分身が守っているとはいえ、時間がないんだ」
「時間がない……?守ってるって、まさか、俺の体ダンジョンに置き去「これ以上俺の話切っちゃダメだよ」」
その瞬間、時透が発する雰囲気の質が変わった。先程までの、マイページで柔らかな雰囲気が、鋭く長く、喉元のただ一点が射抜かれるように刺さってくるものになった。
(これが鬼殺隊の……柱……!)
「俺が君に教えることは三つある。一つは根本的な剣術。一つはさっきも言った呼吸の根幹的なところのこと。最後に──────」
時透の言葉が耳に入った瞬間、刃の脳内から困惑は消え失せ、体には興奮が迸った。
右隣にある木刀を握りしめ、床にしっかりと足をついて立ち上がる。そして、対面する時透の顔をしっかりと見つめて一言発した。
「お願い、します!!!」
その表情は、無邪気な子供のような笑顔に満ちていた。
ここで、視点はまた別の主人公に切り替わる。
「ただいま戻りました!神様!」
教会から地下の住処へと繋がる階段を経て、【ヘスティア・ファミリア】最初の眷属、ベル・クラネルは帰還した。
そしてそれを察知していた主神、ヘスティアは、飛びつくようにベルを抱きしめる。
「おかえりベルくん!!!聞いてくれ!刃くんが目を覚ましたんだ!」
「はい!さっきダンジョンから戻っている時にばったり会いました!」
飛びついてきたヘスティアを離すことも忘れて、今はいないもう一人の家族が無事であった嬉しさを二人で共有する。
ここだけの話、もしかしたら自分が見た刃は幻覚で、本当はまだ起きていないのかも……などという可能性まで考えていたベルは、ひっそりと安堵していたりする。
「よし、ベルくん!お腹すいたろう?今スープをよそってくるからソファに座って待っててくれ!」
「そんな、いいですよ。僕がやりま「いいって言ってるだろ?ボクが君たちにできることはこれくらいしかないんだからさ!」分かりました。じゃあその分、しっかり稼いで来ますからね!」
張り切ってそう宣言した後、ベルは身につけていた防具を外し始めた。
そこでヘスティアは、一連の流れが刃が目を覚ました直後とほとんど一緒だったことに気付き、クスッと笑い声が零れた。
(……全く、ボクの子供たちは孝行息子すぎるよ)
満面の笑みで鼻歌混じりにスープ(お粥に水を足して味を整えたもの)を混ぜている途中、ベルの「アッ!!」という声響き渡った。
それに驚いてヘスティアがベルの方向を見ると、なにやらベルが見知らぬ包みを持ったまま硬直している。
「ベルくん?どうしたんだい?」
「すみません神様。スープはやっぱりいいので、ステイタス更新の方を先にお願いしていいですか?」
ベルが申し訳ないような笑みを浮かべ、ヘスティアにそう伝えた。
途端、陽気に歌っていた鼻歌は止まり、ヘスティアの
「……あれ?いいのかい?朝からダンジョンに行って、お腹が空いたと思っていたんだけど……」
「えっと、実は今朝『豊穣の女主人』って酒場の店員さんにお弁当を貰っちゃって、「その代わり今夜のお食事は是非当店で」って言われちゃったんですよね……。
半ば無理矢理だったとは言え、そんな風に言われて恩を返さないのは流石に男が廃ると思って、今夜はそこで食事を、と」
ピキっ、と、ヘスティアの心に亀裂が入る音がした。
「神様……?どうかしましたか……?」
「……なんでもないさ。ほら、ステイタス更新するなら、さっさとベッドへ行くよ」
ドライな雰囲気を醸し出しながらそう言ってスープをかき混ぜるのをやめ、ヘスティアはベルの方を見向きもしないままベッドへと向かう。
(まさかベルくんがその辺の女に釣られてボクを捨てるなんて……ボクはショックでたまらないよ、ベルくん!)
がしかし、その内面ではベルの発言に心で憤慨しながら大泣きし、その顔面にはベルを誘った女店員に対する悔しさと憎しみが滲み出ていた。
今更ながらではあるが、神ヘスティアは、自身の眷属であるベル・クラネルに恋心を抱いている。
例え禁忌とされるような愛であったとしても、その程度の障害で曲がるような半端なそれではなかった。
だからこそベルが、犬猿の仲とも言える神ロキの眷属、【剣姫】を好きになったことを憎みもするし、ベルを誑かした女店員にも今こうして憤慨している。
その様子を、何か自分の不手際で主神を怒らせてしまったと捉えた(実際そうとも言えるのだが)ベルはあたふたとしつつ、ヘスティアに言った。
「……すみません神様。本当は神様とも一緒に行きたいんですが……」
「いいさ!気を使わなくたって。呼ばれたのは君一人なんだから、ボクなんか置いて行っちゃえばいいさ!「あっ、いえ!そういうことではないんです!」じゃあどういうことなのさ!」
ベルのご機嫌伺いのような言葉にムカッときて、さっきまでのドライさを保つ気も無くなったヘスティアは、ベルに少々怒気を含んだ声で尋ねた。
その問いかけに、ベルは少し切ないような顔で俯き、小さな声で呟いた。
「……刃も、一緒がいいなって」
ベルがそういった時、ヘスティアはハッとして立ち止まった。
「確かに最近では、ヘスティア様に美味しいものをごちそうできるくらいに稼げるようにはなってきました。……でも、今日のダンジョン探索で分かったんです。それだけ稼げていたのは、刃のおかげだったって。僕一人の力はまだまだ未熟だって。
だから、僕だけの力で今と同じくらい稼げるようになったその時に、「僕の奢りだー」って言って、みんなで食べにましょう。だから、それまでは待っていただけませんか……?」
……ヘスティアがここで「そんなことないよ」というのは簡単だ。しかしヘスティアも、それが優しさではないことは理解している。
再び言うが、ヘスティアはベルのことを愛している。だからベルの願いにはできるだけ添いたいし、何より愛する子どもが精神的に大きく成長しようとしている。それを応援したいというのが親としての愛だ。
二つの愛情を天秤にかけて、私情をとるような神ヘスティアではなかった。
「……わかったよ。それならちょちょいとステイタス更新しちゃおっか!ベルくんを女の子を待たせるようなやつにはしたくないからね!」
「はい!神様!!」
その後ステイタス更新は恙無く終わり、ベルは申し訳なさそうに笑いながら酒場へと向かった。
ベルが居なくなり一人になったヘスティアは、ベッドに座って更新したベルのステイタスをジッと見つめている。
(……にしても、やっぱり異常な成長率だ)
熟練度上昇値トータル200オーバー。普通の新米冒険者の上昇値と比べれば異常であるという他ない。
それだけの上昇率の原因は、ベルに発現したスキルのせいであるとみて間違いないだろう。
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〔
・早熟する。
・
・
────────────────ー
今朝、ステイタス更新をした時に発現していたスキル。ベルが、自分を助けたアイズ・ヴァレンシュタインに見惚れ、憧れた結果得た「辿り着くため」のスキル。
…………一言で言うとしたら、謎。他のスキルとは、全く似つかない。
「全く、ボクの子供たちは異端すぎるよ……」
そう、こんなスキルが発現したのにさほど驚いていないのは、数日前にファミリアに訪れたとある
ヘスティアは、このスキルの存在をベルには伝えていない。
刃の全集中の呼吸はまだ発動条件が
効果が異常、発動条件が異端、細かいところは謎しかなく、深いところは底がしれない。娯楽に飢えた神々がそんなものを目の当たりにすれば、ベルに危険が襲いかかってもおかしくはない。
(ベルくんが、周囲から忍び寄る魔の手をたやすく振り払えるくらいになった時、このスキルのことを打ち明けよう)
ヘスティアは、そう心に決めたのだった。
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一方その頃、豊穣の女主人では。
「えーっと、これが300ヴァリス、飲み物が200ヴァリスで、持ち金は4400ヴァリスあるけどこの前ポーション爆買いして貯金ほぼ吹っ飛んじゃったから無駄遣いは出来ないし……「ほいっ!」ヒェッ!?」
「足りないだろう?今日のオススメだよ!」
「いや頼んでないですって!!」
「若いのに遠慮しなさんな!」
初めて訪れた酒場の雰囲気に、完全に圧倒されていた。
「いかがですか?ベルさん」
そんなオドオドとした挙動不審なベルに、一人の女性従業員が近づいて話しかけた。
彼女の名はシル・フローヴァ。この豊穣の女主人の従業員で、今朝ベルにお弁当を渡した張本人だ。
「シルさん……。正直、ダンジョンより活気があって怯えてます……」
「フフッ。皆さん一仕事終えたあとなのではしゃいでいらっしゃるんです。直に慣れますよ」
そう言って、シルは酒場の全体を見渡した。
「この店、いろんな人が来て面白いでしょう?沢山の人がいると、沢山の発見があって。私、つい目を輝かせちゃうんです。……知らない人と触れ合うのが趣味というか……こころが疼くというか……」
「割と凄いこと言ふんでふね」
遠い目でシルを見ながら、ベルは大盛りパスタをズルズルと口へ運ぶ。
「ニャー!ご予約のお客様、ご来店ニャー!」
すると突然、ある獣人の従業員が大手を振って、団体の客を招き入れた。
赤髪をポニーテールで纏めた糸目の女性を先頭に、十数人の冒険者が流れ込んできたその瞬間、活気付いた場の雰囲気が一瞬凍った。
「お?えっれぇ上玉じゃねぇか」
「やめとけって。あの目付き悪いのに絡まれたくねえっての」
「バカ、エンブレム見ろ!《ロキ・ファミリア》だよありゃあ!」
一部の冒険者がザワザワと騒ぎ出す中、パスタを咥えたままの間抜けな顔をしたベルの視線は、《ロキ・ファミリア》団員のただ一人に固定されていた。
「てこたぁ、あれが剣姫……」
アイズ・ヴァレンシュタイン。幼少の頃から《ロキ・ファミリア》の団員として戦い続け、ランクアップの最高記録をことごとく塗り替えたことにより、齢十六にしてオラリオに何万と存在する冒険者の中でも数少ないLv.5の冒険者としてファミリアの幹部を務める。
圧倒的戦闘センスと強さ、そして大衆が思わず釘付けになってしまうようなその美貌から、神々から名付けられた二つ名は「剣姫」。
これからの成長も鑑みれば、間違いなく最強候補の一角となりうる。
そんな第一級冒険者にベルは先日ミノタウロスに追われていたところを助けて貰ったことから、すっかり一目惚れしてしまったのだ。
「ベルさん?ベルさーん?」
シルがベルの名を呼んでも、ベルは依然顔を真っ赤にしたまま硬直している。
「みんな!ダンジョン遠征ごくろーさん!今夜は宴やぁ!!
思う存分…………飲めえええええぇぇぇぇ!!!!!!!!」
「「「「「「「「「お──う!!!!」」」」」」」」」
主神ロキの号令とともに、団員達はお互いのジョッキをかち合わせ、賑やかに飲み食いを始めた。
「《ロキ・ファミリア》さんは、うちのお得意様なんです。彼らの主神、ロキ様がここを甚く気に入られたみたいで……」
「へぇ……そうなんですか」
(じゃあ、ここに来ればアイズさんに…………)
ベルはアイズに思いを馳せ、密かにこの店に通いつめようと決めた瞬間だった。
……それからしばらく経って、ベルの食事が終わりかけ、《ロキ・ファミリア》の面々に酒が回ってきた頃。
「おい、アイズ!そろそろ例のあの話!みんなに披露してやろうぜ!!」
ロキの眷属の一人、獣人のベートがとっておきの笑い話がある、と語ったようなにやけ顔で話を切り出した。
「おいベート。貴様その話は「そっちじゃねーよ!」」
「あれだって!帰る途中で逃がしたミノタウロス、5階層で一匹お前が始末したろ!!?そんでほれ!あん時いたトマト野郎の!!」
ベートの話を聞いて、その「トマト野郎」が誰を指しているのか、ベルは瞬時に理解した。
「いかにも駆け出しって感じのヒョロくせえガキが、逃げたミノタウロスに追い詰められてよぉ。そいつ、アイズが細切れにしたくっせえ牛の血を浴びて、真っ赤なトマトみたいになっちまったんだぜぇ!!?」
「あはは……そうなんだ」
自分の憧れの人の前で辱めを受け、傍から聞いているベルの中で、恥ずかしさや苦しさや悔しさが駆け巡る。しかし、辛うじてこの耐え難い苦痛から逃げ出してはいない。
「それでよぉ、その後ちょいと離れたところにミノタウロス狩りにいって戻ってきて見りゃあ、そのガキアイズにビビって気絶しちまいやがってたんだ!!ハァッハハ!!なっさけねえったらねえぜぇ!!!」
「……あの状況では、仕方がなかったと思います」
「いい加減にしろ、ベート。そもそも17階層でミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。恥を知れ」
「アアン?雑魚を雑魚と言って何が悪い!?」
ズボンの裾を握って、ぐっと感情を抑え込む。今言われているのは事実だ。それに怒って反発したってそれが変わる訳でもない。今はまだ未熟なのだから。と劣等感を感じる自分に言い聞かせる。
そしてベートの矛先は、当事者であるアイズへと向けられた。
「アイズ、テメーはどう思ってんだよ!!例えばだ!俺とあのトマト野郎ならどっちを選ぶってんだ!?おい!!」
「ベート、君酔ってるね?」
団長フィンの言葉にも反応せず、ベートはアイズとの距離をさらに詰める。
「聞いてんだよアイズ!!お前はもし、あのガキに言い寄られたら受け入れんのか?そんなはずねぇよなァ!!!
自分より弱くて軟弱な雑魚野郎に、お前の隣に立つ資格なんてありゃしねぇ。他ならないお前自身がそれを認めねぇ!!」
ベルの頭の中で昨日の様子がフラッシュバックする。ミノタウロスを前にして無様に逃げ回るしか無かった自分の姿が。アイズに助けられたその時、憧れと共に確かに感じた劣等感が。
「雑魚じゃ釣り合わねんだ!!アイズ・ヴァレンシュタインにはなァ!!!」
「ッッッ!!!!」
「べ、ベルさん!?」
気付けば、走り出していた。
(畜生……畜生……!)
瞳からは涙がこぼれ、月明かりのみが照らす街道を一心不乱に駆け抜ける。
頭の中で気持ちの整理がついていないベルの胸にあったのは、ただ一つの衝動だった。
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
(強く……なりたい…………!)
ダンジョンに入ろうが、少年は止まらない。
「ハッハッ、ゼアァ!!」
ただひたすらに走り続け、視界に入った敵を。
「ガアッ!!」
屠る。
「アアァ!!」
屠る。
「ダアアァ!!!」
屠る。
(足りない……こんなもんじゃ、全然足りない!!!)
胸に宿るどうしようもない苛立ちを振り払うため、遅い来るモンスターを屠り続ける。
(僕は許せない……。何もしなくても、何か期待していた僕自身を!)
この世界には、明確な才能の差というものはない。冒険者の位を区別するレベル、ひいてはステイタスを上昇させるために必要なのは、才能ではなく地道な努力であるからだ。凡人だって、落ちこぼれだって英雄になれる。それが
しかしそれは、見方を変えればそれは
コボルト、ゴブリン、フロッグシューター、ダンジョン・リザード、ウォーシャドウ、キラーアント、パープル・モス、ブルー・パピリオ。
だがそれは既に過去の話。あの頃のベルはもう居ない。たった一人でかつての強敵達をなぎ倒してゆく。
そんなベルの目が、見たことも聞いたことも無い敵の姿を数体捉え、一旦岩陰に身を隠す。
黒いローブに身を包み仮面をつけるそのモンスター達は、まるで中心で何かを守っているような動きをしている。
ダンジョンを走り続けて傷だらけの体、未知の敵、本来なら即座に撤退しなければならない場面で、ベルの脳裏には、ある剣士の姿が浮かび上がっていた。
金色の髪を揺らし立つ女性から、目を逸らす。
(もう嫌なんだ……。憧れに見下されるのは……!!)
やらなければ、何もかもやらなければ、
「やるんだ……」
覚悟を決めて岩陰から飛び出し、高い敏捷を活かしたヒットアンドアウェイで攻撃を与え続ける。
「やるんだ、やるんだ!やるんだ!!やるんだ!!!」
思いを叫ぶことで己を鼓舞し、ボロボロになった体に鞭を打って、トップスピードの疾走と連撃を繰り出し続ける。
二人の剣士に当てた、たった一つの、願いのため。
「そこに、辿り着きたいのなら──!!!」
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「時透。時間が無いって言ってたのはどういうことなんだ?お前の分身が守ってくれてるなら危険なんてないだろ」
「無駄口叩いてる余裕あるんだ」
壮絶な剣戟が繰り広げられる中、時透が斬り合いの最中に話を始めた刃を咎めるように放った足払いを刃は出始めで止める。
初期には引っかかっていた攻撃にも対応可能になった教え子の成長にムスっとしながらも、時透は刃の質問に回答した。
「……こっちに意識がある分、分身の動きはからくり的な動きになっちゃうんだよ。複数体いるとはいえ耐久限界もあるし、さっさと誰かが救出してくれるのが一番いいんだけどね……」
その話を聞いて、刃は安堵し、ニヤリと笑った。
「何笑ってるの?下手したら君死ぬんだけど?」
「なんでって言われてもな…………ただ信じてるだけだから」
刃はあの、すばしっこい白兎の姿を思い浮かべた。
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オラリオの北西と西のメインストリートの間の区画に存在する小さな教会。その入口横で、小さな女神が俯きながら立ち尽くしていた。
(ベル君、刃君……二人とも、一体どこに行ってしまったんだ…………)
昨日の夕方、ダンジョンへ送り出した刃と酒場へ食事をしに行ったベルが翌日の朝になっても帰ってこなかったのだ。
彼らの神は心配して夜も眠ることが出来ず、寒気の漂う早朝から玄関先へ出て彼らの帰りを待っていたのだ。
そしてふとダンジョンからの帰り道の方向見てみると、ヘスティアの目に見慣れた白い髪が目に入り、ハッとした。
彼に近寄って注視すると、その少年は至る所から血を流し、フラフラの様子で歩いている。いや、フラ付き方からして、誰かを背負っているようだ。
「ベル君!!」
漸くヘスティアがベルに追いつき、それに気付いたベルが緊張を解いてヘスティアにもたれかかった。
ベルの顔がヘスティアの方に乗った事で、背負っていたものの正体が明らかになった。
「刃君……?」
「神、様……。お願いします……。刃、ダンジョンで倒れてて……大事はなさそう、だけど、早く寝かせてあげて……ください…………」
「それなら今は君の手当が先だ!相当な傷だぞ!?」
今のベルの出血量は尋常ではない。寧ろ止血無しでここまで動けていたことが不思議なレベルだ。
「神様……僕、助けられましたか……?刃のこと、助けてもらうんじゃなくて、助けられてますか……?」
「……!」
「神様…………」
朦朧とする意識の中で、ベルはヘスティアに向けて、願望を吐き捨てた。
「僕、強くなりたいです……」
それは血まみれで、泥まみれで、意地と駄々と衝動と、小さな苛立ちと大きな憧憬がごちゃ混ぜになった、最高に格好の悪い、英雄願望だった。
すっごい長くなった上難産で投稿までくっそ時間かかりました・・・。
皆さんほんと、暇な時は小説(出来ればこれ)読んで、コロナに負けないようにしましょう!!
あ、ついでに読み返したら刃がクソすぎだった前々回も改変したのでよかったらご覧下さい