全集中の呼吸で「最強」を目指すのは間違っているだろうか   作:V.IIIIIV³

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おまたせしましたあああああああーーーーーーー!!!!!!!!
受験が終わり、志望校に合格し、入学説明会も宿題も終わり!ようやく投稿することができましたああああああ!!!!!
ここまで待っていただき、時には応援メッセージもいただき、全く投稿していない間にもお気に入り数は400近く増え!ほんっとうに嬉しい限りです!!
これからは少しはゆっくりできる時間が増えるので、頑張って投稿しようと思います!!
しかしながら、志望校がなかなか留年する確率が高いところなので、投稿ペースはかなり遅くなると思います。それでも応援してくださるという方は、これからも末永く天道刃の冒険譚を見守りください!

それでは約半年ぶりの第九話、どうぞ!


幻惑の霞

「さて、様々な追求から逃れここまで辿りついたわけだけど……」

 

 と、一息つきながらも【全集中・常中】の力で目の前のキラーアントの首をひと突き。

 

 こちらの世界に来てからは呼吸の技やらステイタス更新での上がり幅の大きさが大きすぎて実感出来る場面が無かったが、やはり実戦の経験値とは中々侮れないものがある。

 

 実際に戦って得た知識は直接自分の力になるし、一度弱点を見つけ、そこをつけば、次に戦う時には潜在的に弱点箇所への最短ルート、すなわち隙の糸は見えてくる。そして何より、

 

(一度戦った相手の行動パターンは、簡単に読める)

 

 そうして、視界に入ってきたキラーアントが鎌を振り下ろす前にバックして軌道を外れ、首をまたひと突き。これで周辺にいた奴は一通り倒したので、刀を引き抜いて鞘に収める。

 

「……ダメだな。この辺の階層じゃ、これ以上のレベルアップは見込めなさそうだ」

 

 何度もここにきていることで、ここいらの敵は視界に入った瞬間に仕留められるようになってきた。

 

 もう少し高いレベルの敵とやりあいたいもんだけど……欲を言えばこの前のミノタウロスくらいの。

 

 

《なら楽しませてあげるよ》

 

 

 その声とともに、今までに感じたことのない悪寒が背筋を伝った。

 

(殺気!?しかも速い……!)

 

 背後に感じる殺気に応じてすぐさま刀に手を伸ばし、前に跳んで敵と向かい合うように体勢を変える。

 

 着地とともに抜刀するが、そこに殺気の主の姿はなかった。

 

(いない……いやっ、右!)

 

【水の呼吸 捌ノ型 滝壷】

 

 空ぶった刀をそのまま上段に構えなおし、気配を感じるポイントから攻撃が飛んできそうな範囲に、水の呼吸の中でも攻撃範囲がトップクラスの滝壷を繰り出し、それを逆に利用して防御する。

 

(……っいない!)

 

 しかし、流れる水流の奥にも敵はいない。そして、全力で刀を振り下ろした弊害に起こる硬直の間を狙われ、鈍器で殴打されたかのような強い衝撃に見舞われた。

 

「ガッッ!」

 

 壁に向かって勢いよくふっとばされ、地面を数回転がった後、タイミングを見計らって両手を地面につけ前転の勢いで起き上がり、気配の方向に目を向ける。

 

(気配の察知自体はできてた。二度の読み違いに動揺したか……?)

 

 そこにいたそいつは、黒いローブに身を包み、顔に当たる部分に仮面をかぶっていた。フードの中から少し顔を出すロップイヤーのような黒い髪のような毛の毛先だけが薄い水色に染まっている。

 

(外見だけで見れば同業っぽいが……俺がここまでの距離でないとでないと察知できないほどの気配の薄さからして、人型の亡霊的なモンスターってとこか……)

 

 なんだろう、こいつ……どっかで見たことあるような気が……。いや、多分ギルドにあったモンスターについての本かなんかで見たんだろう。

 

 集中のため、刀を下段に構え、一度大きく息を吐く。そして、吸う。

 

「ふっ!」

 

 地面を強く蹴り飛ばし、サイドステップで左右に意識を散らしながら一気に黒ローブ(仮)との距離を詰め、刀を下から上へ切り上げる。しかし黒ローブはそれに反応し、一歩下がってから刀の軌道に重なるように杖を振り下ろした。

 

 カアアアァァァン!!!

 

 ダンジョン内に無機質な音が鳴り響き、鍔迫り合いが始まる。

 

(切れない。見た目的には木製なのに、おかしな杖だな)

 

 呑気なことを考えているが、黒ローブが上から押し付ける体勢なのに対し下から押し上げる体勢で応じているこの状況は完全に不利だ。

 

(迎え撃つのはやめて、受け流して次の攻撃に繋げよう。川を流れる水のように、柔軟に)

 

【水の呼吸 参ノ型 流流舞い】

 

 刀を90度回転させてから斜めに傾け、刀身の上で杖をすべらせる。そこら辺のキラーアントやコボルドであればこれだけで体勢を崩してくれるが、こいつは受け流しに気付き、力の方向を僅かに変えて体勢の崩れを抑えている。

 

(だけど、いかに優れた使い手でも一瞬のブレはあるんだよな)

 

 黒ローブに対して正面に立っていた状態から右足を抜いて横に立ち、刀身の上の杖を弾き、その流れのまま刀を死角の背中側に持ってくる。そして、体勢の変換のために硬直した足へと狙いを定める。

 

 切っ先から銀色の糸がのび、黒ローブの足に刺さった瞬間ピンと張った。

 

(獲った……!)

 

《って、思ったよね》

 

 黒ローブはそう言うと同時に、張ったはずの隙の糸が切れ、姿を消した。

 

(いねえ、消えた!どこへ行った⁉︎)

 

 いや、違う。今重要なのはどこへいったかじゃない、どこを狙うかだ。

 

 今俺は後ろから足を狙おうとしたから大股開いた前傾姿勢になっている。全身の荷重を受け止めているこの前足を狙えば回避不可、当然狙ってくるはずだ。

 

 最も、防御無しならの話ではあるが。

 

(そんなガードしてくださいって言ってるようなとこに攻撃するわきゃねーよなぁ!!)

 

 となれば狙われるのはもう片方の足。今の攻撃を避けた箇所から最短、最速の攻撃方法は、バク転からの杖天空落とし。

 

 無理矢理刀を振りかぶり後ろを向くと、読み通りそこに奴はいた。しかし思考に時間を割いた分、奴の攻撃モーションはすでに終盤。この状態から間に合う技は一つだけ。

 

(まずは間合いの絶対的有利をとる。主力武器を潰す!!)

 

 ギリッギリまで刀を引き絞り、水の呼吸最速の突きを繰り出す。狙うのは、振り下ろされる軌道上のただ一点。

 

【水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き】

 

《流石だね、君なら読むと思ったよ》

 

 そう呟いた後、奇妙で不思議なことが起こった。突きは目算通り、杖の一点を貫いていたはずだった。しかし、杖が刀と重なるその瞬間に、杖が消えたのだ。

 

 瞬間、背中にまたもや鈍い衝撃が走る。

 

(っっ!!!ンだ今の、フェイント⁉︎あんな高精度見た事ねえぞ⁉︎?)

 

 ダメだ、先手からじゃ絶対返り討ちにされる。悔しいけど、技術的には完っ全にこいつが上だ。

 

(なら作戦変更。攻めがダメなら待ちの剣だ)

 

 黒ローブを前にして剣を鞘に収め、居合の体制をとる。

 

「おっもしれえ。この辺にいる奴は狩りつぶしたと思ったけど、まだこんな強いやつがいたとはな!」

 

 目を閉じて黒ローブの動きを待つ。呼吸で体内に入ってくる酸素をコントロールし、聴力を最大まで高める。

 

(気配が感じとりにくいってんなら、僅かな音の変化を聞き取れ……!)

 

 高められた聴力によって周囲の音が克明に浮かび上がってきた。

 

 俺の鼓動、呼吸音、空気の流れ。通常の状態での音を全てインプットする。

 

 そしてここから、違和感をすくい取るフェーズへ。

 

(ローブの擦れる音が複数の方向から聞こえる……。が、音と音の切れ目は存在してる。つまり同時じゃない)

 

 俺の間合いにはいることをためらっているのか、俺がしびれを切らすのを待っているのかは知らないが、黒ローブはまだ攻撃してこない。

 

(違う場所にいきなり現れたように見えても、空気は移動した座標の方向に流れている。よってこれはワープの類でもない)

 

 こいつの意味不明な挙動の原理は、限りなく速い状態と亀のように遅い状態を組み合わせ、位置を錯覚させているのだ。

 

 もし仮に俺がうっすら感じる気配に飛びついたとすれば、またこいつは躱した上で反撃してくるだろう。

 

 ただ、聞こえる限りではこいつのトップスピードは俺よりも遅い。一度でも間合いに入れば、霹靂一閃の餌食に出来る。

 

 とどのつまり、これは単純な心理戦だ。先に動いた方が負ける。

 

 僅かな風切り音の接近に、刀を強く握り直す。

 

 ………………ザッ

 

(入った)

 

 一歩も動かず敵を待ち構えたことは、同時に下半身に大きなタメを作った。酸素を一気に耳から腕に移動させ、山の如き不動の土台から、より強く、速い一閃を。

 

【雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・静】

 

 光速の刃は美しい弧を描き、切っ先の最長到達点にいた敵を貫いた。

 

「…………は?」

 

 突如俺の中に違和感が現れた。あまりにも切った時の抵抗が無さすぎる。たしかに胴体を切り裂いたはずの刃が、軽すぎたのだ。

 

(体まで亡霊だから通り抜けた……?いや、殴打は紛れもなく物理攻撃だ。となれば!)

 

「残像か!!」

《当たり》

 

 初めと全く同じ構図が出来上がっていた。反射的にステップで距離をとるが、先程とは違い俺の真正面に詰め寄ってきて、手に持った杖をメイスのように扱って攻撃を仕掛けてくる。

 

(くっそ、逐一呼吸で目を強化しないと反応すらできねえ……!!)

 

 上下左右の攻撃に加え、残像を作り出すほどの緩急を使って振り下ろした攻撃が目の前で消えるようにすら見えるフェイントを織り交ぜてくる。その上緩急で攻撃のリズムも一定でない。防戦一方になり、攻撃の圧でどんどん後退していく。

 

《なってないよ君。身体の使い方がまるでなってない》

 

 しかしこの黒ローブは息切れすらしておらず、みるみるうちに壁に追いやられ鍔迫り合いとなる。

 

《そんなんじゃ、せっかくの呼吸の力を殺してるだけだよ》

 

「!!なんでお前が呼吸を知ってる!?」

 

《さあ、自分で考えなよ》

 

 そう言った黒ローブはバックステップをして、また姿を消した。

 

「クソッ!!またかよ!!」

 

《君、才覚はあるんだよ。とてつもなく》

 

「そこか!!」

 

《だから呼吸も比較的速く習得できたし、応用もすぐに飲み込んだ》

 

「はっ!!」

 

《だけど、実戦経験がまるで足りない》

 

 バラバラの間隔を置いて、黒ローブが一瞬だけ現れて多方向から語りかけてくる。

 

 完全に弄ばれている。俺も冷静さが欠けてきているのが自分でわかるし、このままでは奴の思うつぼだ。

 

 となると、ここでふたつの択が生まれる。

 

 一時撤退か、撃退か。

 

 ここまでの戦いで俺は既に一度攻撃を受けているが、俺は思考を凝らした必殺の攻撃ですらやつには全くダメージが与えられていない。

 やつの攻撃に対しても防御で手一杯で、攻撃も容易くかわされてしまうため反撃の目処が立てられない。

 

 どう考えても撤退してギルドへ報告、そして他の冒険者への注意喚起が必要。ヘスティア様にも無理はすんなって言われたんだ。100%、これが正しい判断だ。

 

(……まあ、それは理屈で考えればの話だけどな)

 

 ここまでの戦闘で、俺は二発も背中に攻撃を食らっている。有名な漫画でも言ってたことだ。「背中の傷は剣士の恥だ」ってな。

 

 こんなにも強いやつに出会えたことに俺はワクワクしている。こいつを倒したい、という欲望が全身から溢れ出ているのがわかる。

 

 例え理屈が本当に守らなきゃいけない事だとしても。

 

 本当の望みに気づいてしまったから。

 

 そんな理屈は、捨てていこう。

 

(さて、それじゃあ始めるとするか)

 

 もう一度、深く、大きく、息を吐いた。心に残る不安、焦り、苛立ち、悪感情を全て置いてくために。

 

 そして、息を吸った。これから始まる本当の戦いに、心を着地させるために。

 

(俺の、冒険を)

 

 思考を戦闘モードに切り替える。耳と目の機能を研ぎ澄ませ、次に姿を現したところを捉えることに集中する。

 

「………………っ!!!」

 

【水の呼吸 肆ノ型 打ち潮】

 

 カアアアアァン!!!!!

 

《いい反応だね》

 

 黒ローブの言葉には反応せず、流れるような連撃を繰り出し、反撃の隙を与えない。

 

《攻撃は最大の防御か。でも打ち潮の攻撃力じゃ俺の防御は崩されな……》

 

 とここで、黒ローブは打ち込まれる連撃の違和感に気が付いた。

 

 カン!カキン!!ガキン!!!ガギン!!!!

 

《どんどん威力が増していく……!打ち潮じゃない……!!》

 

 その驚愕した声と表情に、思わずにやけ顔を浮かべながら、内心でその何百倍もほくそ笑んで呟く。

 

(当たりだ)

 

【水の呼吸 拾ノ型 生々流転】

 

 威力とともに強くなっていく衝撃によって、攻撃をさばくのがどんどん困難になっているようだ。

 

(となればここまでの傾向からして、奴は必ず……)

 

 消えた。読み通り。次は恐らく……。

 

「そこだろ!!」

 

 振り返り刀を薙いだ場所に、黒ローブはいた。振り返り様の一撃は生生流転によって強化され、ガードを吹っ飛ばし、黒ローブが初めて隙らしい隙を見せた。

 

 この隙を逃さず、ガラ空きの胴体に一撃を入れる。

 

《やらせないよ》

 

 しかしその一撃が入る前に、またもや黒ローブは姿を消した。そして、周りには無数の黒ローブの姿が出現する。

 

 そこから繰り出される攻撃はただでさえリズムが取りにくいのに、残像からのダミーの攻撃も混ざってより捌きづらくなっている。

 

 最初のうちは気配を読み取って本体の攻撃だけを避けていたが、攻撃の直前で残像と本体が入れ替わる攻撃によってどんどん翻弄されていく。

 

 そして次の瞬間本体を薙ぎ払ったと思った一撃が、無慈悲にも虚空を切った。

 

《これで終わり》

 

 背後からの声と共に、黒ローブが俺にトドメを刺す──────。

 

《……いない》

 

 ──とは、いかなかった。

 

「ハ!やられっぱなしは性にあわないからな!やり返させて貰ったぜ!」

 

 その声に反応して、黒ローブが周りを見渡し、驚愕した。

 

 そこには、黒ローブを轟音をかき鳴らしながら取り囲む光の五角形があった。

 

「俺の基本性能がほぼ全て負けてるのは分かってる……。だったら、唯一優っているトップスピードで勝負だ!!」

 

 霹靂一閃の超連続使用。光速で動く体は、煌めきながら落ちていく流れ星が光の尾を引く現象、流星痕を作り出して黒ローブの周りを周回、包囲する。

 

「さあ、勝利へのカウントダウンだ。もちろん光速だから、しっかり聞き取れよ!!」

 

 今一度刀の柄を握りしめる。黒ローブの姿は九つ。

 

「伍!」

 

 五角形の頂点の一つから発射し、今もなお残り続ける残像を四体かき消しながら二つ次の頂点へ移動する。

 

「肆!」

 

 二発目。さっきとは一つズレた場所から発射し、残像を二体破壊する。残りはあと三体。

 

「参!」

 

 今度はさっきから二つズレた場所から発射し、残りの残像を全てかき消す。

 

「弐!」

 

 四発目は、本体への攻撃となった。しかしこの攻撃は当てるつもりはない。防御用に構えた杖を吹っ飛ばし、完全に防御を不可能にする。

 

 これでこいつには、自分を守る術はない。ガラ空きの胴目掛けて、最後に残った頂点から全力で踏み切る。

 

「壱!!」

 

 打ち出された最後の一撃は、黒ローブの胴を横一文字に切り裂いた。

 

【雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・流星】

 

 たった一つの轟音から繰り出された五つの斬撃。それにより生じた流星痕は、五角形の中に五芒星を描き出す。

 

 刹那にも満たないほど一瞬の出来事だった。背後で、黒ローブが土に倒れ込んだ音が、決着を告げた。

 

 その音を聞いて、呼吸の過剰使用で疲労がピークに達したのか、足に力が入らず前のめりに倒れ込む。

 

「ッハア、ハア、ハア、ハア、さっ、流石にっ、無理があった、かなぁ。ハア、足がっ、信じられねえ、くらい、痙攣してる……」

 

 呼吸の酷使をしすぎて既に肺もイカれている。しかし、まだ辛うじて腕の疲労はそこまで蓄積していない。死亡確認をしなくてはまだ安心はできない。腕の力を使って、なんとか黒ローブの倒れた場所まで向かう。

 

 胴を半ばから真っ二つにされ倒れた黒ローブからは、生気が全く感じられなかった。それを確認して、ようやく気力を緩めることができた。

 

「ふぅ〜、安心したぁ〜。これでダメだったら、ほんとにどうしようもなかったぜ……」

 

《うん、今のは俺も一本取られたよ》

 

「ぇ…………」

 

 頭上から、聞き覚えのある声が聞こえた。そう、ついさっきまで真正面から切り結んでいて、たった今死を確認したはずの奴の無機質な声。

 

《これなら俺も認めてもいいかな。合格》

 

 そういうと同時に、辺りに深い霧が発生し、瞬く間に景色が見えないほどに辺りが包まれ、俺は意識を手放した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 

「…………ぁあ……」

 

 いつもとは違う硬い感触に、目が覚めた。大方寝ぼけてソファから落っこちてしまったのだろうと推測するが、寝起きで朦朧としていた意識が戻ってきて、先ほどまでの記憶を取り戻す。

 

「そうだ!!黒ローブのやつが生きてて、そんで霧が出てきて急に意識が遠のいて……」

 

 起き上がりながらそう推測して、辺りを見渡す。

 

 木の板が貼られたフローリングの床。壁も木の板を合わせて作られていて、所々にある窓は内側に細長い角材を付けて窓からの出入りができないようになっている。俺にとっては、見覚えのありすぎる場所だった。ここまで和風ではなかったが、全体の構造は、ずっと昔、()()()に剣の道を極めんと切磋琢磨した剣道場と同じ。

 

「な、なんだここ…………」

 

 道場の中を見渡していくと、俺に背中を向けている一人の人間の姿が目に入った。

 

 なぜすぐに人間と想像できたかは、その服装ゆえだろう。

 

 手が袖から出てこないほどサイズの合っていない黒い襟詰。ダボっとしたその服装と同調するかのように、その姿からは静かで、緩やかな気配が感じられる。

 

 そして極め付けは、背に描かれた“滅”の字。

 

「起きたみたいだね」

 

 毛先が水色に染まっている髪の毛を揺らし、そいつはこちらを振り返った。

 

 忘れるはずもない。転生前に俺が憧れた鬼殺の剣士、その中でも最も位の高い[柱]の剣士。

 

「さあ、始めようか。君に叩き込んであげるよ」

 

 鬼殺隊の中で最も剣技の才に秀で、初めて剣を触ってからたった二ヶ月で柱まで上り詰めた剣士。

 

「呼吸の使い方、真髄を」

 

 

 鬼殺隊 霞柱 時透無一郎

 




いや、ほんと戦闘シーンの描写は難しい・・・。今回かなり一個一個の描写を丁寧にしてみたのですが、読みづらいとかテンポが悪いと思ったら、感想でお伝えください。

次回がいつになるかはわかりませんが、どうか末長くお待ち下さい。

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