あの頃の冒険を思い出したいお前ら及び私の為の物語(仮) 作:長良 マムシ
今後は謝罪をしないということ自体が謝罪であるということにしておいて下さい。
これからの更新頻度は上がると思います。
「……スミアや。そんな目で見ずともあたしゃ止めないよ」
ずっと私と博士の話を聞いていたおばあちゃんが、私に発した言葉はそれだった。
博士から図鑑を手渡されて胸が踊ったのは確かである。ただし、その直後に祖父母への思いが私を襲った。カンナギを出ていく事への遠慮というか、おばあちゃん おじいちゃんを残して行くことへの正体不明なちょっとした罪悪感みたいなものが確かにあったのだ。
「……博士のお願いだから?」
「何言ってんだい、あんたを思ってのことに決まってるじゃないか。遠慮なんてするもんじゃないよ」
「で、でも……だって、私まだおばあちゃんにもおじいちゃんにも何も返せてないし……それに心配もかけちゃうし……だから……!」
「やれやれ困った子だね……いい子すぎるってのも問題ってことかい」
おばあちゃんは私の頭に手を乗せ、優しく撫でてくれた。暖かい手だ。小さい頃から、生まれた時から知っている手。昔からおばあちゃんがこうしてくれると何があっても無条件で安心できた。そんな不思議な手。
「いいかい、スミア。あんたに足りないのは自分を主張することだよ。人生はね、シロナくらい勝手気ままなくらいがちょうどいいのさ」
「……あれは度が過ぎてるよ」
「はは、確かにそうかもね。だがね、あたしも昔はポケモンを連れて旅したもんだからわかる。旅は色んなものをくれるよ。シロナはきっと、大切なものを沢山見つけたはずさ。あたしゃあんたにもそれを見つけて欲しいんだよ。『かわいい子には旅をさせろ』というじゃないか。遠慮せず行っておいで」
「おばあちゃん……」
おかげで踏ん切りがつきそうだ。
私は感謝の言葉を伝えるため口を開いた。
「ありが―」
―が。
「スミアやー! おるかー!? 爺ちゃんなー! トバリのゲーセンでボロ勝ちしちまったわい!! 13連チャンまで乗ってやった! だいばくはつのわざマシンもゲットじゃー!! あそこのゲーセンの破産も近いのー!! わーははは!!!」
ちょうどいいタイミングと言うべきか、トバリシティまで遊びに行っていたおじいちゃんが帰ってきた。
「おじいちゃん……」
「ったくしょうもない人だねぇ。ほらじーさん、さっさと客間まで来な! 客人だよ!」
「ぬ? なんじゃ珍しい。一体誰が……」
デカい足音で私達のいる客間まで歩いてきたおじいちゃんが戸を開いた。
やたらと沢山の紙袋を抱えていて、おじいちゃんのレントラーも荷物を咥えて後ろについている。いつも買い出しに出かけるとこんな感じで帰ってくるのだが、カンナギから隣町のトバリまではそれなりに険しい山道をゆかねばならない。もうそろそろかなりのジジイのはずなのに、やたらとアクティブかつ元気なおじいちゃんだ。ついでに声もでかい。
「おっ、スミア! デパートで土産も買ってきてやったぞー! ほれ、フエンせんべいじゃー!」
「あの、それよりおじいちゃん、お客さんが……」
「おお、そうじゃった! ご客人、ゆっくりとくつろいで…………って貴様ァァァァ!! ナナカマドではないかァァァァ!!」
おじいちゃんが唾を飛ばしながら博士を指さした。人を指差すな。
「……久しいな」
「え? 2人って知り合いなの?」
「……まあ、昔色々あってな」
「色々どころではなーいっ! こやつとは昔からライバルだったのじゃーっ! マサゴのナナカマド、カンナギのワシといえば、当時シンオウに名の知れたすーぱーるーきーじゃった! それはもうお互い切磋琢磨して―」
「大袈裟に語るな。お前は一度も私に勝っていないし、そもそもバトルをしたのは数回程度だ」
「孫の前でくらいカッコつけさせんか! 相変わらず堅い男じゃの!」
おじいちゃんが唾をまき散らす量を増やしているのは機嫌が良いか興奮している証拠なのだが、今がまさにそれだ。スロットのボロ勝ちに加え、久々に会った旧友への懐古の念がおじいちゃんのご機嫌メーター上昇にブーストをかけたらしい。
「じゃあ、おじいちゃんがよく言ってた最大にして最高のライバルって……」
「うむ! こやつのことじゃ! シロナがこやつの研究を手伝っておったのもその縁よ!!」
「あー……」
長年の謎が解けた。
どうして遺跡くらいしかない(その遺跡も大したものじゃない)このカンナギまで博士がやって来て、しかもお姉ちゃんを見出したのかが謎だったのだ。
つまりそういうことだったのですね。
「勘違いしてもらっては困るが、お前の孫だからシロナくんを選んだというわけではない。彼女に素晴らしいトレーナーとしての才能を見出したからだ」
「当たり前じゃワシの孫じゃぞ! 天才じゃないわけねーじゃろ! このスミアも一緒じゃ! ……いや、この子はいずれシロナも超えるやもしれんぞ! のう!?」
「おじいちゃん……」
おじいちゃんは昔から私を溺愛しているからこう言っているのだろうけれど、それでも私にはこの言葉が嬉しかった。今までこんなことを言われたことは無かったのだ。本当はお姉ちゃんの方が才能もあるし、頭もいいし、美人だし、それこそ完璧超人なのだから、まあ事実とは言えないけれど。
「……それは測り兼ねるが、少なくとも私はこの子に研究の助けになってもらいたくここへ来たのだ」
「で、どうだったのじゃ? 勿論お前の助けになると思ったのじゃろ?」
「ああ。それで、保護者であるお前とも話をつけておきたくてな」
「ふん! 可愛い子には旅をさせよと昔から言うじゃろ! ワシも婆さんもどうせ近いうちに旅に出させるつもりじゃったわい!」
そうならそうと言っといてよね……無駄に二人に遠慮しちゃってたのが馬鹿らしいわ。
「……まあ、この子がそうしたいと思っておればじゃが……というか、スミア。お前は了承したのか!? じいちゃんは無理やり追い出したりなんぞしたくないぞ! どうなのじゃー!? ええ!?」
「おじいちゃ……くるしっ……んもう、揺すらないで!」
ちょっと加減を知らないのはおじいちゃんの悪いところだ。
「おお、すまん……! で、どうなのじゃ!? 正直、ワシはお前がしたいようにすりゃええと思っとる! ここで暮らすもよし! ジムバッジを集めてチャンピオンを目指すもよし! ナナカマドの助手としてポケモンの研究をするもよし! 自分の道は自分で決めるんじゃ!」
奇しくも私がシロに抱いているのと同じ思いのようだ。それを思うと、おじいちゃんがどれほど私のことを考えてくれているのかが痛いほどわかる。
誰しもが恵まれた環境に生まれられるとは限らないけれど、私は幸運にもそんな環境に生まれる事が出来たのだと、そう思えた。
本当に私、おじいちゃんとおばあちゃんの孫でよかったよ。恥ずかしいから言わないけどね。
「あ、ありがとうおじいちゃん。あたしね、博士の手伝いをしながら、シロと一緒に強くなって、お姉ちゃんをぶっ倒したいの!!」
「……ふっふ、くっくっく」
おじいちゃんは一瞬面食らったような様子を見せたが、やがて肩を震わせ始めた。
「はっはっはっはっ!!! こりゃたまらんの! 『ぶっ倒す』か! うむ! 大いに結構じゃ!」
「あたし、なんか変な事言ったかな?」
「いーや、なんというか、お姉ちゃん大好きなお前がそのように言うのが面白うての! ……スミアよ、シロナを超えてみせい!! ワシはお前を応援するぞ!」
お姉ちゃん大好き、か。確かにそうかもしれない。世界で一番お姉ちゃんが好きなのは私だ。けれど、世界で一番逆恨みしてるのも私だ。
だからぶっ倒すのだ。ぶっ倒して、全部精算して、お姉ちゃんを好きなだけの私になりたいのだ。
「つーわけでのう、スミア。お前に餞別じゃ! 婆さん! アレは?」
「はいはい。スミアや、ちょっと待ってるんだよ」
おばあちゃんは物置の方へ何かを取りに行った。
「餞別?」
「なぁに大したもんじゃないがの。ワシが昔使っておったもんじゃ。きっとお前の冒険の役に立つじゃろ」
にやりと笑うおじいちゃん。
正直おじいちゃんの中古品ってなんだか怖いんだけど。理由は特にない。
「あったあった。スミアや、持っておいき」
おばあちゃんが物置から持ってきたもの。それは―
「………………ゴミかな?」
見たところ本のようなのだが、おじいちゃんよりしわくちゃである。田んぼに落ちてるエロ本でもこんなに汚くない。
「失礼なっ! タウンマップじゃあ!! ……まあモーモーミルクとか零したからぐちゃぐちゃじゃがのう……」
「受け取っときな、スミア。役に立つよ」
「おばあちゃんがそう言うなら貰っとこうかな」
「ひでーのう、この扱いの差。昔は『おじいちゃん大好き!』って抱きついてくれたのに。最近は全然じゃ……反抗期か……」
「ううん、あたし、おじいちゃんのこと好きよ。ヒウンアイスの次くらいには」
「……ワシはアイス以下か? おお、婆さん……」
冗談はさておき、開いてみると確かにタウンマップである(かなり古い版だが……)。まあ無いよりはマシだろう。
「ありがと、おじいちゃん。大事に使うよ」
「う、うむ。アイス以下のジジイの中古品じゃが大切に使っとくれ」
「やあね、冗談だってば。あたし、ちゃんとおじいちゃんのこと好きだし、尊敬もしてるのよ」
「……本当か?」
「ええ」
「おお、そうかそうか! うむ! そうだと思っとったよ! よしスミアよ、さっきゲーセンでゲットしたわざマシンもやろう! 『だいばくはつ』と『れいとうビーム』じゃー!」
チョロい爺さんだ。
……まあ、好きなのは本当よ。尊敬はしてないけど。
おばあちゃんはそんなおじいちゃんをゴミでも見るような目で見つめ、ナナカマド博士は小さくため息をついた。
「……爺さん、あんたまた金使い込んだんじゃないだろうね」
「…………そんなわけあるまい。決して、負けまくって5万円もコインに使ったなどとそんなことはない」
「まぁたあんたはしょうもない!! そこに直りな!! レントラー!! ジジイのケツにかみなりのキバじゃ!!」
「勘弁しとくれ婆さん!!」
おばあちゃんとレントラーに追われおじいちゃんは玄関から飛び出していった。
あの年で鬼ごっこなど元気もいいところだ。やはり田舎のジジババは気持ちが若いのだろうか。
「……いつもあんな様子なのかね」
「……ええ、まあ」
「変わらんな……」
博士は呆れながらもどこか懐かしそうに、僅かに微笑んだ。
いつになったら旅立つんだこいつ。
→たぶん次回。
どうでもいい話なのですが、作者が鬱っぽいのでメンタルケアの為に最近あいつの嫁動画ばっか見ています。
何回みてもあの愛のあるクソダサ編集は恥ずかしい。
2019-10-06 脱字修正しました
シロちゃんの進化先は?(唯一王とリーフィアは除外)
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☆グレイシア☆
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エーフィ
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ブラッキー
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シャワーズ
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サンダース