あの頃の冒険を思い出したいお前ら及び私の為の物語(仮)   作:長良 マムシ

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誤解を招きそうなので断っておきますが、作者はムックル好きです。


05 見せてもらおうか……

 

 

「ゴウカザル、オーバーヒートだ!」

 

 何故チャンピオンになったのかと問われることがよくある。それも無理もない話で、1年間の殆どの時間、ポケモンリーグを離れているからだ。

 やる気が無い訳ではないが、ぶっちゃけてしまえばリーグ内での書類手続き(おしごと)がかなり面倒くさい。面倒くさいので抜け出す。それだけの話である。私自身自覚はしているが、かなりズボラなところがあって、そんな私が部屋に缶詰めなど溜まったものではなく、チャンピオンとしての仕事のほとんどを四天王随一のインテリであるゴヨウに任せきりなのはごくごく一部のみ知る秘密だ。

 ちなみに、こんな性格のせいで未だに嫁の貰い手もない。

 自分で言うのもなのだが、見た目は悪くないと思うのだけれど……。私の妹があれだけ可愛らしいのだから、同じ血を引いている私だって悪くない容姿と言っていいのではなかろうか。……話が逸れた。

 

「ガブリアス、回避してじしん! そのままがんせきふうじを連発!」

 

 チャンピオンになった理由も実は大したことではなく、各地に残る神話についての資料や何かをチャンピオン特権でなんやかんやできて楽だからというのと、純粋に自分のトレーナーとしての実力を発揮する場が欲しいと思ったからである。シンオウリーグチャンピオンという肩書きがあるだけでまだ見ぬ強豪と戦える機会が増えるのならば願ったり叶ったり。

 

 ……前置きはともかく(話が長くなるのは私の悪い癖かもしれない)。そんないい加減な私なのだが、チャンピオンになって多少―というかかなり後悔したこともある。

 例えば妹のことだ。

 

「ちっ! いわくだきで全部ぶっ壊せ!」

 

 私の妹 スミアを一言で表すならば、それは「天使」だ。いや、天使ですら私の妹の前では霞むだろう。つまり私の妹はシンオウで、いや世界で、いや宇宙で一番かわいい。

 

「今よ! つるぎのまい!」

「甘いね隙ありだ! ゴウカザル! インファイトッ!!」

 

 だがそんな妹に私は会えない。全然会えない。

 ただのトレーナーだった時は気の向くままにカンナギタウンに帰って妹を愛でていられたが、チャンピオンになったせいで帰省する暇が無くなってしまった。

 これがシンプルに辛い。何故なら私の生き甲斐は「考古学」と「ポケモンバトル」と「美味しいスイーツ」と「妹」の四要素が主で、その中でも殊更「妹」が占める割合が多いからである。

 

「……! そこっ! ドラゴンダイブ!!」

「狙ってたのかよ!?」

 

 しかも。しかも、この間久々に家に帰ったら、妹がグレていた。私に対してだけやたらと素っ気ない上に、一緒にお風呂にも入ってくれないどころか添い寝すらしてくれなかった。常識的に考えられないことである。それもこれも私が長く家を開けていて、その事をあの子が恨んでいるからだろう。

 

「……」

「……あたしの勝ちよ、オーバ。燃え尽きてるところ悪いけれど、通してもらえるかしら?」

「……………………行きなよ。どうせ誰にもあんたは止められねえからさ」

 

 そんなこんなで一週間はヒウンアイスも喉を通らなかったが、なんとか持ち直した私はその後何ヶ月かどうにかして妹にもう一度好いてもらえるよう万全の策を練って、そしてようやく今数ヶ月ぶりにカンナギタウンに帰る権利を勝ち得たのであった」

 

「さっきから何呟いてんだい? 相変わらず変わった子だねえシロナちゃんは。家にはもう帰ったのかい?」

「いいえ、今からなの。それより久しぶりね、トキおばあちゃん。これお土産のフエンせんべいよ」

 

 何度帰ってきても、やはり故郷(カンナギ)はいい。

 私は歩きなれた田舎道を年甲斐もなくスキップしながら長老の家―実家のある方へ向かった。

 

 

 ○

 

 

 カンナギは田舎も田舎。ド田舎なので、物取りなど全くない。だから家に鍵もかかっていない。―が、インターホンは鳴らす。理由は特にないが、こうすれば(スミア)が出てきてくれるのではないかという淡い期待が無いわけでもなかった。

 とはいえ現実は無情である。中から聞こえたのは懐かしい柔らかな声だった。祖母だ。

 

「はいはい、どちらさんかね……って、シロナじゃないか。おかえり。仕事はいいのかい?」

「ええ、抜け出してきたの」

「そうかい。……まあ、茶でも淹れようかね。じーさん! シロナが帰ってきたよ!」

 

 懐かしい実家の匂い。木と畳と、それとおじいちゃんの大好物、モモンのみの匂いがほんのり漂う。

 

 ドタバタとした慌ただしい足音がした。―と思ったら、すぐにあの大音声が響いた。

 

「おおシロナ! 帰ったか──っ! 今回はゆっくりしてくのか!? ええ!?」

「ただいま。おじいちゃん、揺さぶるのはやめて」

「すまんな!! で、どうなんじゃ!? 何日おる!?」

「悪いけどあまり長居は出来ないの。2日ってところね」

「そーかそーか! まあゆっくりしていけ! ……あっ、そういやこの間、トバリデパートでヒウンアイス買ってきといたぞ!! 食うじゃろ!?」

 

 我が家は私とスミアのせいでアイスの消費が激しい。それで常に冷凍庫には必ず何箱かのストックがあるのだが、ヒウンアイスがあることは稀だ。

 いいタイミングで帰ってこられたのだろう。

 

「……それは食べるけど、スミアはどこ? 家にはいないみたいだけれど……」

 

 いつもは縁側で寝そべってアイスを食べているか、庭でシロと遊んでいるはずなので、外に出かけているのだろうか。早くスミアニウム(※そんな物質はない)を補給したいのだが。

 

「スミアなら昨日カンナギを出ていったぞ!!」

「………………………………はい?」

 

 お使いという線は薄い。おじいちゃんがそれにかこつけてゲームセンターで遊んでくるだろうから……。

 

「なんじゃその顔は。スミアはナナカマドに図鑑を貰って旅立ったのじゃ。昨日帰ってこりゃあ会えたのにのう、シロナよ。婆さんがお前に手紙を送っておったはずなんじゃが……まあ昨日の今日じゃし、手紙が届いとらんくて知らずとも仕方ないことよのう」

「……そ、ん、な…………」

 

 その話が本当ならば私はもうシンオウをくまなく歩き回らない限りはスミアに会えないということではないか。

 たまったものではない。

 と思ったのが顔に出たのか、おじいちゃんが少し困ったように言った。

 

「し、仕方ねーじゃろう……ナナカマドのやつ、突然来るんじゃもんなー。事前にお前に伝えようにも間に合わんし、チャンピオンの仕事も忙しいじゃろ?」

 

 おじいちゃんはそう言って口を尖らせた。

 だが考えてもみてほしい。仮にパン食い競走をしているとしよう。私は3日間何も食べていない。そうして、3日分の飢えを満たそうとパンに口を近づけた瞬間、それがムクバードに奪われてしまう。そんなことがあったら、誰だって落胆するか激昴するかの二択ではなかろうか。

 

 私の気分は一瞬で沈みに沈んだ。もうどうしようもないほど沈んだ。

 

「…………はぁ」

「……ま、まあそう気を落とすでない。スミアの事じゃ、かわいい子じゃし、すぐに有名になり噂も立つ。いずれどっかで会えるわい。ほれ、アイス食うか?」

 

 おじいちゃんに手渡されたヒウンアイスを口いっぱいに頬張るが、それでさえ私の心の乾きを満たすには至らない。

 やはり私にはスミアが必要なのだ。

 

「……そんな目で見られてものう……ば、婆さん。なんとか言ってくれんか」

「シロナ。あの子もそろそろ旅に出てもいい頃合いだよ。あんたもそうだったんだ。そういうもんだと思いな」

「うむ、そうじゃそうじゃ。……あっ、思い出したんじゃがな! スミアがのお、シロナ、お前のことを『ぶっ倒す』と宣言しおったぞ! お前を超えて最強のトレーナーになるんじゃと! わーははは! 将来が楽しみじゃのう! ワシが生きとればじゃが!!!」

 

 …………スミアが? 私を。倒す? 

 

 ふーん? 

 

「……面白いじゃない」

「おっ、目の色が変わったのおチャンピオン。……まあそういうわけじゃ。あの子と再会するのはポケモンリーグでってことにしてくれや!」

「ええ。各地のジムリーダーには前もって連絡しておこうかしら。『あたしの妹をよろしくね』ってね」

 

 最初に向かうのは距離的に恐らく……ハクタイシティかしら。ちょっと先回りしてみましょうか。

 

「ごめん、おじいちゃん、おばあちゃん。また帰ってくるわね。……ふふ、面白いことになりそう」

 

 私はトゲキッスに乗って、ハクタイシティへと向かう。だって、直接会わないにしても、あの子の様子は見ておきたいものね。

 

 

 

「……あやつ、もう少しここにおってもいいのにのう」

「なんだかんだでスミアが心配なんだろうさ。いつまでも妹離れのできない子だよ」

 

 

 ○

 

 

 旅に出る事を考え始めた私が最初に計画したのは、最初に向かう場所である。

 まず、カンナギタウンが位置するのはシンオウ地方を南北に切り分けるテンガン山の東側の麓で、加えて南北を高い山に囲まれた山間だ。

 

 西を塞いでいるテンガン山にはなんかちょうどいい感じの洞窟がトンネル状に形成されているので、一応通ることは出来る。洞窟入口までの道のりも、まあ他所と比べて比較的短いので楽チンだ。というか、シロちゃんとのお散歩なんかで度々歩いているので勝手知ったる庭という感じである。こちらに向かった場合に辿り着くのは、カンナギと似たような雰囲気の町、ハクタイシティ。おじいちゃんのタウンマップによれば、カンナギと同じようにここにもシンオウ神話の伝承が詳しく残っているらしい。テンガン山の麓にある町同士色々と似通う点があるみたい。私的には、東側よりはこっちに行きたい。

 

 一方、東側へ向かうとなるとそれなりに面倒くさい。……いや、それなりどころかかなり面倒くさい。というかそもそも危険なのである。

 おじいちゃんが平然と行ったり来たりしている道なので忘れがちなのだが、カンナギから東に伸びる道は険しい谷川の地形で、霧深く、修験者みたいなバトルジャンキートレーナーがうじゃうじゃいるらしい。当然危ない。何が危ないって、落ちたら危ない。まず死ぬ。トレーナーに勝負を挑まれるのも面倒くさい。目が合ったらポケモン勝負。これは暗黙のルールで、断りづらい。基本人と接するのは得意じゃないので、尚更キツい。

 何故かいつも濃霧の漂う谷を抜ければ、背の高い草むらが私を待ち構えている。地獄の虫ポケロードである。たまったものではない。抜けた先は分岐になっていて、南へ行けばズイタウン(何も無い)、さらに東へクソ長い道を行くとトバリシティ(都会だけど道中ずーっと雨が降っているらしい。却下)だ。

 つまり何が言いたいかといえば、私は東側には行きたくない。

 ……というか、ここを普通に行ったり来たりしてるおじいちゃんは何者なんだ……??? 今更だけど、もしかして凄腕トレーナーだったという法螺話は案外法螺じゃなかったのかもしれない。今まで信じてなくてごめん。

 

 ……よし、西へ、ハクタイシティへ向かおう。

 私がそう考えたのは自明の理で、実際今そうしている所である。

 

「シロ! スピードスター!」

「きゅ!」

 

 哀れなり。野生のムックルはシロちゃんのキレッキレのスピードスターをまともに食らって、目を回して気絶した。

 草むらからやたらと飛び出すムックルをスピードスターで撃退する。これは昔から毎日のようにやっている作業だ。ルーティンと言っていい。

 だが今回旅に出たにあたって、1つ違う点がある。それは―

 

「ゆけぇ! モンスターボーッ!!」

 

 これ。ポケモンの捕獲=図鑑埋めだ。

 正直ムックルは毎朝うるさいし、パンツを盗られたこともあってかなり嫌いなポケモンなのだが、これも博士のお手伝いである。やらねばなるまい。

 

 ボールが3回揺れ、カチッと小気味の良い音を立てた。

 

「ムックル、ゲットだぜ!」

 

 これ、一回やってみたかったのよね。だがムックル……ムックルか。記念すべき図鑑3匹目(1匹目はイーブイで2匹目はレントラーである)、初捕獲ポケモンは奇しくも因縁のムックル。

 もっと、なんかこう……かわいいポケモンが良かった。

 

 おじいちゃんが昔使っていた余りらしいモンスターボールがあったので倉庫からかっぱらってきたのだが、早速役に立っている。タウンマップもそうだが、おじいちゃん様々だ。

 

「…………なんかこう、育てる気にならない面してるのよねぇ。何がいけないのかしら」

 

 さっきムックルをかなり嫌いと言ったが、ぶっちゃけそこまでムックルが嫌いなわけではない。私が小さい頃から気付けばそこにいたし、シロちゃんが既にそれなりな実践経験を積んでいるのも、雑魚(ムックル)が度々襲いかかってきてくれたおかげだからだ。

 ただ、なんというか、どうもムックルは好きになれない。今までの仕打ち云々とかの理屈というより、これはもう、魂レベルの問題なのだ。ともかく私はムックルが…………あー、まあムックルの話はもういいわよね。

 

「登録完了ね。さてさて、見せてもらおうか。ポケモン研究者の化学力の粋を集めた、ハイテク図鑑の性能とやらを……!」

 

 早速登録されたムックルの情報を見てみる。もう待ちきれねえぜ! 限界だ! 押すねッ! 

 ポチッとな。

 

『【#010】【ムックル】【むくどりポケモン】』

 

 なんと音声付きとな!? やりますねぇ! 

 

『【むれを つくることで 1ぴきでの よわさを カバーしあっているが むれが おおきくなると もめだす】』

 

 これテキスト仮名文字統一なの……? なんでここだけファミコンクオリティ? 

 

 というか……なんか説明文の内容……群れてイキってる割に集団が大きくなると揉めるって……。ますます嫌いになりそうだわ。

 

「……あー、なんというか……ムックルって感じだね」

 

 私は無言でムックルを逃がした。何も聞くな。キャッチアンドリリースだ。

 だって図鑑登録完了したし……ムックルいらないし……。ごめんね、でもあなたがムックルなのが悪いの。

 

「……すまん」

 

 なんとなく声に出して謝った。

 

 

 

 気を取り直してテンガン山洞窟の入口を目指し歩く。

 さっきまでバッグに入って呑気に寝ていたシロちゃんも、私とつかず離れずの距離をご機嫌に歩いている。今日はぽかぽか陽気なので心地が良い。ムックルのせいで微妙になった空気もいつしかご機嫌ムードだ。ぶっちゃけピクニック気分。洞窟入口まではあまりかからないし、ここらでいっちょお弁当タイムと洒落こんでも良い。

 手頃な位置に手頃な木が一本突っ立っていたので、そこで弁当を頬張ることにする。

 

「あの木の下にしましょ!」

「きゅ♪」

 

 変な位置にある木よね。他の木から孤立して突っ立ってるし、なにより葉の色が他と違う。黄色い。めっちゃ黄色い。なんならピカチュウ並に黄色い。蜂蜜を頭からドバっとかけられたような見た目である。

 

 ……というか、今蜂蜜って言ったけど、本当に蜂蜜かかってない? 近づくにつれて甘い匂いが漂ってくる。

 

「……あれ、もしかしてこの木が噂の―」

 

 甘い蜜の木……? だとしたら……

 

「ロッス!! ロッスロッス!! (憤怒)」

「うおわあああああああ!!!!!??? ヘラクロスさん!!? まずいですよ!!! あたしなんてまずいですよ!!! ちょ、興奮するなあぁ──ーっ!!」

 

『【#062】【ヘラクロス】【1ぽんヅノポケモン】』

 

 うるせーーー!! しらねーーー!! 冷静に解説するな! 

 

 まずいまずい!! なにがまずいって色々まずい!! 

 なんかよくわからんが誰か助けてくれええ!!!! 

 

 

 




ヘラクロスってカッコイイですよね。作者は男の子なのでやっぱり甲虫王者に興奮します。金銀アニポケopの「OK!」でヘラクロスが登場するシーン、歌詞も相まって結構好きです。自慢のワザ、からげんき。

【アップデート情報】
シロナの会話中一人称が「あたし」ではなく「私」になっていた不具合を修正しました。(2019/10/11/17:06)

【不具合のお詫び】
上記不具合のお詫びとしてグリフィンドールに114514点。

【感謝】
まだ全然話進んでないのに、なんかそれなりに伸びてて驚いています。ご期待ありがとうございます。頑張って書きます。

【どうでもいい話】
ポケマスをアンインストールしようと考えていたところで公式謝罪文が公開されて、間一髪で思いとどまりました。マジでこれから頑張って欲しいところです。
なんでドロップ増加じゃなくて周回回数2倍なんですかね……。控えめに言ってキレそうになりました。
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シロちゃんの進化先は?(唯一王とリーフィアは除外)

  • ☆グレイシア☆
  • エーフィ
  • ブラッキー
  • シャワーズ
  • サンダース
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