初日からPKしたけどデスゲームだったキリトくん 作:〆鯖缶太郎
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このSAOの世界には、様々な武器種が存在する。
その中でも特に人気が高いのが片手持ちの武器だ。軽くて取り回しが良い。扱うイメージがしやすい。そして何よりも、盾を装備することができる。
デスゲームとなった今、ダメージを減らす手段が増えるというのは大きい。
中には盾すら装備せず、機動力を重視する者もいるが、やはり一般的には盾を装備するのが主な目的で使用する者が多い。
一方、両手持ちの武器で人気が高いのは槍といった射程の長い武器だ。
片手持ちに比べて取り回しは悪いが、敵の攻撃射程外から一方的に攻撃できるというのは大きい。
当然モンスターの種類にもよるが、実質的な嵌め技が可能ということもあって、ゲーム初心者や絶対に死にたくない者は取り敢えず槍を装備しろ、というのは割とよく聞く話だ。
ならば、両手持ちでそれらの条件に当てはまらない武器を使用するプレイヤーは、果たして存在するのか?
そんな疑問をもしリズベットが投げかけられたら、極少数ではあるが間違いなくいると答える。
何故なら今、まさにその条件に当てはまるプレイヤーの武器をメンテナンスしているのだから。
しかもその武器は、両手斧や両手剣ですらない。一体どうやって使うのか、皆目見当もつかない大鎌。
大鎌を使っているプレイヤーを、リズベットは目の前に立つ自分と同い年ぐらいの女性――ミト以外に知らなかった。
「最近はどう? 順調?」
大鎌の刃を研ぎながら、リズベットはミトと世間話をする。
装備のメンテナンスは手順があっていれば、どれだけいい加減にやろうと結果は変わらない……訳でもない。若干の光沢の違いが生まれたり、人によっては持ち手であるグリップの吸い付き具合が変わるという者もいる。
別に話しているから手を抜く訳ではないが、作業中の会話を好まない者も一定数存在するため、そういう相手をリズベットは慎重に選ぶようにしている。
その点、ミトはこのぐらいの会話であれば容認してくれるタイプだ。
「順調だよ。そろそろ三層に行こうかなって」
「おっ! じゃあ、ミトがボス戦で活躍する日も近いかな?」
現状の最前線である三層。そこで大鎌を振るって大立ち回りをする姿を想像したリズベットに、ミトは首を横に振った。
「いや、そこまでは行かないよ。多分、私がボス戦に参加することはよっぽどないかな」
「ありゃ。やっぱり、ソロだから?」
ミトが普段、ソロで活動していることをリズベットは知っている。
このデスゲームとなった世界で、ソロプレイを貫いているのはかなり珍しい。
モンスターを倒した時に経験値やアイテムを独り占めできる利点はあるが、それ以上に死ぬリスクが高いためだ。
仲間がいれば簡単に解決できて助けてくれる場面も、ソロであれば命取り。自分によっぽど自信がなければできない選択だ。
「それもあるけど、実は私もリズと同じで生産職になろうと思うんだ」
「いいじゃん! もう何を目指すとかは決まってるの?」
「リズが鍛冶屋でしょ? だから、《裁縫》を取って防具屋なんてどうかなって思ってる」
丁度そのタイミングで、装備のメンテナンスが終わった。
リズベットが大鎌をミトに手渡すと、彼女は軽く周囲を確認。付近にプレイヤーがいないと分かると、感触を確かめるように両手を巧みに使って器用に大鎌を回転させる。
そしてそのまま、慣れた手付きで背中にマウントさせた。
「ありがとう。やっぱ、リズがメンテした後は違うね」
「どういたしまして。……さっきの話、もし本当にやるんだったら支援するよ。手の空いてる子供たちに手伝いさせるのもいいし」
そう言われて、ミトはリズベットの隣で鍛冶屋を営む子供たちを見た。
幼いながらに接客も一生懸命で、見ていて微笑ましくなる。
「うん。その時は頼らせてもらおうかな。じゃあ、またよろしくね」
「またね、ミト」
リズベットに手を振り、転移門に向かおうと
先程まではいなかったので、鍛冶屋を利用するために丁度順番待ちで並んだのだろう。
ミトが軽く会釈をして横を通り過ぎようとすると、その男性プレイヤーが突然話を振ってきた。
「ミト……? 君、ちょっといいかな?」
「……はい」
無視をしようかとも考えたが、さすがに失礼すぎるかとミトは
そんな態度を思わず取ってしまったのは、普段から街でナンパまがいの勧誘を度々受けていたからだ。
いざとなったらリズに助けてもらおうと考えながら、相手の姿を確認する。
漆黒のロングコートをまとった片手剣使い。《アニールブレード》を使っているあたり、それなりに実力はあるのだろう。
特徴的な青い髪をした、整った顔立ち。そんな男が首を傾げながら、ミトをまじまじと見つめる。
「確かに
「……っ」
思わぬ質問に、ミトは言葉を詰まらせる。
デスゲームが始まった時、キャラの見た目はリアルと同じになった。
故に過去のアバターを聞いてくるということは、相手は高確率で知り合いの元βテスターであることを示唆している。
実際ミトはβテストの際、そして正式サービスが開始した直後も同じ男性アバターを使用していた。
そしてすぐさま否定しなかったということは、実質的に肯定しているようなものだ。
そんなミトの姿に、男は「意外だな」と呟くと、自身も名乗り出た。
「俺だよ、俺。ディアベルだよ」
「えっ、ディアベル!?」
思った以上に見知った名前が出てきたことに、ミトは声を上げた。
〆〆〆〆〆
ミトとディアベルは場所を移し、転移門広場に設置されたベンチに腰掛ける。
「まさか、こんな所で再会するとはね」
「それはこっちのセリフ」
旧友との再会に、ミトは悪い気はしていなかった。
かつて攻略を共にした仲間の一人。βテストの頃はお互いにガチ勢であり、
「聞いたよ。二層の階層ボスのレイドリーダーを務めたんだって? しかも、大活躍だったとか」
「運が良かっただけさ。何かが間違えば、俺はきっと戦犯となって晒されていた。次こそ、より完璧な勝利をしてみせる」
「……強いね、ディアベルは」
ミトもβ時代は階層ボスに嬉々として挑んでいたが、今同じことをしたいかと言われたら「したくない」というのが本音だ。
フィールドモンスターと戦うのとは訳が違う。死ぬリスクだって段違い。自分のミス一つで、仲間の命が失われる可能性もあるだろう。
そんな最前線でリーダーを務めているディアベルという存在を、ミトは素直に称賛した。
「でも、よかったよ。俺はてっきり、ミトは死んだものだと思っていたんだ。フレンド欄からいつの間にか消えていたからね」
「あー……それね。昔仲の良かったフレンドがログアウトしていくのを見てられなくて、全員切っちゃったんだ」
「そうか……」
「まぁ、今にして思えば短絡的だったって反省してるよ。……それに、私だって何もしてない訳じゃないよ? この世界で新しい目標も立てたんだ」
「目標?」
そこで一度、ミトは鍛冶屋を営むリズベットの方を見る。
笑顔で接客するその姿は、ミトからしてみれば酷く眩しく映った。
「生産職になって、防具屋を始めようと思うんだ。今はその準備中」
リズベットのように、多くのプレイヤーを支える立場になりたい。
防具屋を始めるなら素材を集めなければいけないし、《裁縫》の熟練度を上げて、せめてNPCより上等な装備を作れるようになる必要がある。
まだ時間はかかるだろうが、いつか必ず実現して見せる。
そんなミトの覚悟を感じ取ったのか、ディアベルは彼女にある提案をすることにした。
「なぁミト。よかったら、俺のギルドに来ないか?」
「えっ、ギルド?」
思わず問い返したミトに、ディアベルは頷く。
「先日三層が解放されて、やっと正式にギルドを結成できたんだ。メンバーは全員男だけど、気のいい奴ばかりだよ。圏外に出るのにも抵抗がない。俺のギルドに来てくれるなら、全面的に支援することを約束するよ」
それはミトにとって、とても魅力的な提案だった。
ディアベルのギルドは、今この世界で一番勢いがあると言っていいだろう。メンバーだって階層ボスに挑むような精鋭揃い。素材集めだって、一人でやるよりも複数人でやるほうが遥かに効率的で安全だ。
「本当にいいの? 言っとくけど私、生産職をやるのは今回が初めてだから、途中で投げ出すかもしれないわよ?」
「その時は、前線に立ってもらおうかな。ミトの戦闘センスは、間近に見てきて誰よりも知っているつもりだからね」
「随分と私のことを買ってくれてるのね」
「当然だ。ミトじゃなかったら勧誘なんてしていない。ミトだからこそ勧誘したいんだ」
「ふふ……。何それ?
「君が男だったとしても、俺は同じように言ったさ」
ミトの中でもう、迷いなんてなかった。
今までソロでやってきたから。そんなちっぽけなプライドですら、ディアベルの言葉に消し飛んでいた。
「分かった。これからよろしくね」
「こちらこそ、よろしく頼む」
互いに手を差し出し、固い握手を交わした。
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【後書き】
ディアベルのギルドの名前、どうしましょうね。
取り敢えずパッと思いついたのは《青の騎士団》。《血盟騎士団》と対になる存在で、ギルドの正装も青と黒を基調にした騎士服……とか?
エンブレムは幸せの青い鳥になぞらえて、そのまま青い鳥か青い翼か青い羽か……。
騎士服の作製にミトが携わってるとかもよさそう。
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