風見幽香と人間   作:コーラ好きぃ

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風見幽香と人間

ありとあらゆるものを受け入れるとされる幻想郷。風見幽香はその世界の南端に位置する太陽の畑にいた。日課である向日葵の世話を終わらせ、優雅に紅茶を飲む彼女の元に一人の客が訪れる。

 

「あら、また来たの」

 

客は大妖怪である風見幽香に対するものとは思えないほど気安く答えた。

 

「あぁ、今日こそお前を超えてみせるぜ」

 

最早慣れ親しんだセリフを客は言う。それを初めて聞いた時は、思わず笑ってしまった。脆弱な人間がなんてことを言うのかと。次に新鮮に感じた。かつて自らにこのような物言いをした者がいたであろうかと。しかし今の彼女にとっては新鮮さはなく驚きもまたない。そして嘲りも。

 

「いいわ、遊んであげる」

 

大妖怪風見幽香は優雅に、そして楽しげに答えた。

 

 

 

△▼△

 

 

 

「いやー負けた負けた。ファイナルスパークでも火力負けするとか反則過ぎるぜ」

 

笑いながらそう言う客に幽香は一つの疑問を持った。何故勝てるわけでもないのに戦いを挑むのかと。人間が放った最後の一撃は類稀なる才能と自らを苛め倒すような努力をしなければなし得ないものだった。その一撃を放つためにどれほどの時間をかけたのであろう。どれほどの努力をしたのであろう。恐らく短いその人生の大半は掛けたに違いない。しかし、大妖怪である風見幽香であるならば全力の半分も使わずに押し返せる程度であった。

 

「ねぇ。貴女はどうして私に挑むのかしら。今のだって、相当な時間をかけて会得した魔法でしょう?それでも私にはかすり傷一つつけられなかったわ。そうまでして、私に勝ちたいの?」

 

その質問を聞いた客はしばらくの間呆然としていた。そして、幽香を前にしてゲラゲラと笑い始めた。その様子が気に入らない幽香はまた尋ねた。

 

「何がおかしいのかしら」

 

冷え込んだ声を聞いてもなお人間の客は笑い続けた。まるでそうすることを義務付けられているように。しばらく後、客は苦笑しながら答えた。

 

「いや、何もおかしくはないぜ。ただ、あまりに的外れな疑問が飛んできたもんだからな。お前さんに勝ちたいかだって?勝ちたいに決まってるだろ!」

 

そう答えた客に、幽香は新たな疑問持った。何故限られた人生を棒に振るような真似をするのかと。人という生き物は儚く脆い。無限に等しい寿命を持つ妖怪と違い百年も経てば死んでしまうし、幽香からすれば虫ケラ同然である下級妖怪にさえ遅れを取って喰われてしまう。

 

そんな生き物が、大妖怪である風見幽香に勝とうなど、無理な話なのだ。どれだけの才能があろうとも、どれだけの努力をしようとも、幽香の全力の半分も引き出せない。それなのに勝とうとする人間のその言葉は、彼女からすれば限りある命を無駄にしているようにしか思えなかった。

 

「どうして無駄なことをするのかしら?貴女は人間で私は大妖怪。勝とうとして勝てる存在ではないのは、貴女もとっくの昔に分かっているでしょう?限られた命はもっと有効に________」

 

「分かってないなぁ」

 

言おうとしたことを遮られた幽香は人間を睨み、その人間の目を見て僅かに怯む。人間の目は煌々と輝き、触れれば火傷をするのではないかと思うほどの熱を放っていた。怯んだ幽香に対し人間は言った。

 

「限られた命だからこそ、私たちはやりたい事をやるんだぜ。たとえ他の人間やお前たちから見たら馬鹿げていても、どんなに下らないことでも、自分がやりたかったらやる。それが人間だぜ。そのやりたいことが、私にとってはお前さんに勝つことだったってだけの話だ」

 

その答えを聞いた幽香は困惑した。理性の無い獣でも限られた命の中で無駄なことなどせずに出来るだけ効率的に生き足掻く。理性があり、知恵も知識もある人間ならばそれは尚更のはずだ。しばらく考え込んだ後。

 

「....理解できないわね」

 

困惑した表情のまま幽香は言った。人間はカラコロと朗らかに笑いながら言う。

 

「そのうちわかるさ。私らと違って時間はたっぷりあるんだから」

 

「....まぁ、いいわ。時間はあるんだし。それより、新しい茶葉を作ってみたのよ。飲んでいくでしょ?」

 

「あぁ、ご馳走させてもらうぜ_________」

 

 

 

△▼△

 

 

 

あれからかなりの月日が経った。あの時の人間が言ったことは今でも理解できていない。しかし、わかったことが一つだけある。

 

それは、あの人間が言ったようにやりたいことをしている人間はとても眩しいということだ。妖怪と違い、脆く儚い人間。だからこそ短い一生は鮮烈に輝く。

 

「幽香!弾幕ごっこで勝負だぜ!今日こそお前を超えてみせる!」

 

 

今日もまた、輝きを纏う人間が一人やってきた

 

 

 




どうですかね


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