好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

11 / 48
意外と書いてるようで、だいたい3000字前後な気がする


赤毛の少年、再び虎猫亭へ

「お、お邪魔します……」

 

「あら、来たわね」

 

「おう、今日も連れ共々お世話になるぞ」

 

再びジルヴェスター同伴で虎猫亭へ来たルディ。

ジルヴェスターはいつものテーブル席に座り、ルディはカウンター席へ座る。

 

「ジルヴェスターはまあいつもの酒でいいとして……ルディ君は?」

 

「い、いつもの……!」

 

「はいはい、アップルジュースね」

 

ルディはカッコよく決めるつもりが、案の定空回りしたようだ。

 

(き、決まらなかった……)

 

がっくりと肩を落とすが、ふと厨房のほうから何かが聞こえてきた。

 

「よし、そんな感じでいいだろう」

 

「うん!ラティナ、うまくできたよ!」

 

「ははは、いつかは本当に追いつかれそうだな……」

 

(ラティナが厨房でケニスさんと……?)

 

「……あの、ラティナは今何を…」

 

「ああ、今はケニスの手伝いしてるのよ」

 

「へー……」

 

(そういえばいつもラティナが持ってくるランチ、手作りとかなんとか言ってたな…)

 

いつも皆でランチを取る時、皆が親に作ってもらったものやマルセルのところのパンなどであったが、ラティナだけは自分でほとんど作ったものであった。

この歳としてはかなり珍しい行動であろう。

 

(すげえなぁ、ラティナ……)

 

そのラティナがいる厨房の方へ耳を傾けているとそれに気づいたリタがこう提案してきた。

 

「……だったらルディ君も食べる?ラティナが作る料理」

 

「え!?べ、別に……」

 

「気にしなくてもいいわよ?ウチの名物料理だから」

 

そしてそれと同時に酔っ払っている常連達が声を荒げてルディへ色々と言い始める。

 

「おうよ!それを食べなきゃここに来た意味がねえ!」

 

「嬢ちゃん狙うならそれ食べとけよ!」

 

「そうだぞ!金は俺が出しとくから!」

 

声こそは荒げているものの、どこか優しさを感じるその勢いに押され、なんとか勇気を出してルディは声を出す。

 

「うっ……じゃあ、おねがい……します」

 

「はいはい。ラティナ、ルディ君に「マッシュポテト」お願いね!」

 

「ラティナ、出番だぞ」

 

「うん!」

 

そしてラティナは厨房でマッシュポテトを作り始める。

ケニスに教わり作り始めたこのマッシュポテトだがそれはいつの間にかここの看板メニューとなっていた。

だいたいの常連はこれをまず注文しているほどだ。

 

「……」

 

(ラティナの料理……どんなのだろう)

 

それを静かに待つルディ

 

そして数分ほど経った後、厨房からそのマッシュポテトを持ち、ラティナが出てきた。

 

「ルディ、持ってきたよ」

 

「お、おう……ありがとな、ラティナ」

 

ルディはマッシュポテトを受け取り、カウンターの上に置き、ラティナは厨房の手伝いもあり、戻っていった。

本来ならリタ経由で持ってくるものなのだが、最近はカウンターでもラティナが持つ時はそういう形となっている。

 

「……い、いただきます……」

 

スプーンを使い、パクっと一口食べる。

 

(…お、おいしい……)

 

何の変哲もないマッシュポテトであるが、「彼女」が作ったであるからか、数倍美味しく感じられた。

 

そして──

 

「おい、坊主!また「あーん」されなくていいのかよ!?」

 

「んぐっ!?」

 

常連客の茶化した声がルディに突き刺さり、思わずむせそうになる。

 

「な、な!?なんだよ!?」

 

ルディは顔も紅潮している。

 

それを見た常連たちは何かが琴線に響いたのか、立て続けに喋り始めた。

 

「おうおう、やはり若いって良いなぁ!よし、俺が一つ奢ってやる!何が良いか坊主!」

 

「ポテトだけじゃつまらんし大きくなれんぞ?肉だ肉!俺が出すから特上のやつをこいつに出せ!」

 

「おうよ、ジュースだけじゃ味気ないぞぉ!チェリーズパイも出してやれ~」

 

「こらこら、そんなにルディ君にあげても食べれないでしょ!」

 

「………」

 

(常連の人たち、なんかおかしくねえか……?)

 

当初来た時は敵意丸出しであった常連たちであったが、いつの間にかルディを歓迎する方向にシフトしていた。

どうやら彼らに本当に認められたらしい。

もちろん、当人には自覚はない。

 

(……そういえばいつものこの人達、確か「冒険者」の人たちが殆どだったっけ)

 

そう思ってるとルディにはある一つの疑問が生まれたようだ

「冒険者」「冒険者」とよく聞くものの、いまいちその中身を知らない。

冒険者をたまに取り締まる憲兵の仕事はよく見るゆえに、気になったようだ。

 

そしてルディはふと近くに居たその常連の冒険者に聞いてみようとする。

 

「あの……一つ聞きたいんですけど……」

 

「ああ、どした?」

 

「冒険者って…何をしてるんですか?」

 

「ああー冒険者ってのはなー依頼やってドガーっと魔獣狩ったりするんだよ」

 

「え?」

 

いまいちわからない答えを突きつけられて困惑するルディ。

そもそも酔っぱらいに真面目な質問をするのが間違いだったらしい。

そして別の酔っぱらいも話しかけてきた。

 

「おう!坊主、冒険者になりてえのか?」

 

「え、いや…そういうわけじゃ…」

 

「まあこの時期じゃ色々と悩むよな!冒険者はいいぞ……ロマンも追い求めれるしなぁ!」

 

「おいおい、ロマンだけじゃねえだろ、たまには臭い仕事もあんだぞぉ!」

 

「はははは!だが冒険者と言えば「あいつ」にはやっぱ敵わねえよ」

 

「……あいつ?」

 

ルディはその「あいつ」に引っかかった。

 

「おう!嬢ちゃんの保護者のデイルだ!あいつには絶対敵わねえ……」

 

「俺より一回りも小さいのによくやるよなぁ……うんうん」

 

「へー……」

 

(保護者のデイルは冒険者としては結構強いのかぁ……まあ確かにラティナからもそういうのよく聞くけど…)

 

実はルディはただ冒険者について聞きたかったわけではない。

将来の進路について考え始めているからだ。

彼の実家は鍛冶屋であるが、姉と兄がいて跡取りになる必要はないため、父曰く「好きにしろ」とのこと。

 

そのまま鍛冶屋で鍛冶師をしていてもいいし、または別の仕事をしても良い。

それだけにルディは色々と悩み始めているのである。

「彼女を守る」という目標のことも含めだが……

 

(……ま、今はやめとこ……それよりこれ食べちまわないと……)

 

そしてルディはそれについて考えるのを少し止めて再び「彼女」のマッシュポテトに手を付け、食べ始める。

するとリタは何かを思い出したのか、少し作業を止めて、ルディに話し始める。

 

「あ、そうそう。明日から暫くここに来ちゃダメよ?」

 

「え?どうして…ですか?」

 

「いやね……ついに「保護者」が帰ってくるのよ……だからもし君のことが知られたら大変なことになるから…ね?」

 

「あ…はい……わかりました」

 

(……通りでラティナの機嫌が良くなっていたわけだ、そういうことかよ……)

 

ルディはラティナにとってデイルの存在がとても大きいモノだと改めて考える。

 

自分はまだ「良い友達」としてしか認識されていないということもわかりきっている。

それだけに少し悔しい気持ちはあった。

 

(やっぱり「保護者」には敵わねえのかな……)

 

少し「保護者」について色々と考えながらも、残りのマッシュポテトを食べるルディであった。

 

――――――――

 

そして、マッシュポテトを完食し、時間も遅くなってきた為、ルディはジルヴェスターに送られ、鍛冶屋へと帰るところであった。

 

「じゃあね、ルディ。また学舎で」

 

「あぁ、またな」

 

「おやすみ」

 

「お、……おや…すみ」

 

これで何回目かになる虎猫亭だが、帰り際のラティナの「おやすみ」には未だにちゃんと返せないルディであった。

 

――――――――

 

その帰り道、ルディはジルヴェスターに先ほど冒険者にしたのと同じ質問をする。

 

「あの、ジルさん」

 

「なんだ坊主?」

 

「ジルさんも冒険者だったんですよね」

 

「あぁ、昔の話だがな」

 

「そのっ!冒険者って、どんな事をしてるんですか?…俺、進路で迷ってて……」

 

ジルヴェスターは少し悩んだ後、こう答えた。

 

「昔と今とで依頼内容も変わってきているからな……やはりこういうのは現職の冒険者に聞いた方がいいだろう」

 

「そうですか…」

 

ルディは一言、そう呟いた後、とある一人の冒険者の顔を思い浮かべていた。

 

(デイル・レキ……か)

 




ちなみに原作で虎猫亭の常連達で秘密裏に結成されたいわゆるラティナ親衛隊の「白金の妖精姫を見守る会」は健在ですが、この段階でかなり変化してきている…はず。
まあそれはおいおい……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。