好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。 作:うちのこ
デイルは相変わらず元気です。
「ラティナああああああああああああああ!ただいまあああああああああああああああああ!!」
ラティナの保護者であるデイルが虎猫亭へ帰ってきて、最初に言った言葉はこれであった。
大きな声過ぎて、通りの人達もびっくりしていたのは言うまでもない。
「デイル!お帰りなさい!」
ラティナもそのデイルを出迎える。
その表情は満面の笑みであった。
そしてデイルはラティナを見た瞬間、すぐに抱きついた。
「ラティナ……公爵のどうでもいい依頼を終えて戻ってきたぞ……」
「うん!デイル、無事で良かった!」
(全く……何回目かしらこれ)
(相変わらずの親バカっぷりだな……)
もはや見慣れたこの事に、心のなかでツッコミを入れるリタとケニス
そして常連たちもいつも通り、その親バカを冷やかす。
「おうよ、この親バカが帰ってきたようだな!」
「げっ、飯の味がまずくなっちまう」
「あーあー静かな酒場だったのによー」
「うるせえ!俺のことそんなに要らないのかよ!?」
「「「おう!」」」
「満場一致で返事すんな!!」
「デイル、いらなくないよ?大切だよ?」
「おう…やっぱ1番の癒しはラティナだ…」
いつもの常連たちをよそにぎゅーっとラティナを更に抱きしめるデイルであった。
――――――――
そしてラティナはケニスとともに厨房に入った後、デイルはリタに今回の任務やらについて話し始めた。
「ま、今回も変わらず魔王の眷属退治だった。ちょっと小癪な手を使われて手こずっちまったがなんとかはなった」
「そうね……最近やっぱり多いわけ?そういうの」
「いや、特に変わらないそうだ。七の魔王以外の魔王も今のところは特に変わんねえそうだし…」
「……これから先もなにもないと良いわね……」
リタは懸念する。
当然ながら平和というものは簡単にできるものではなく、様々な人の犠牲などもありながら積み重なってできている。
だがそれに反して平和を壊すのは簡単である。
実際ここ数年は平和であるものの、過去には様々な戦いがあったと伝わっている。
この今の平和が穢される可能性もゼロではないのだ。
「……なにもないようにして見せるさ、ラティナのためにもな」
「…ええ」
(やっぱり変わったわね……デイル)
「守るべき存在が出来た」というだけでここまで変わるものなのだとリタは改めて実感したようだ。
――――――――
そして少し時間が経ち、デイルは東区のほうにある用事を済ませに来ていた。
何故なら彼がいつも使っている剣がこの度の任務でついに「なまくら」と化していたので研いでもらうために鍛冶屋へ行くことにしたのだ。
なおそれを聞いた瞬間、夫婦は苦い笑いをしていたが、デイル自身は全く気づかなかったという。
「ええっと……確かここらへんの……ここか?」
目的の鍛冶屋を見つけ、入店する。
店内には店番が見当たらなかったので、デイルは人がいるかと呼びかける。
「おーい、誰かいるかー?」
そうすると店の奥から赤毛で壮年の男が出てきた。
いかにも無愛想な表情をしているがどうやらここの店主らしい。
そして無愛想なまま、応対をする。
「ケニスのところの……何の用だ?」
「この剣を鍛え直して欲しいんだ。なまくらになりかけてるこいつを」
「……」
デイルからその剣を受け取った店主はジーっと剣を見ている。
どうやら剣の状態を見極めているらしい。
「だいぶ使ったな……血の汚れもある…」
「まあ、色々とな……直せるか?」
「……少し待ってろ」
そう言って店主は店の奥の方に戻ろうとする。
だがデイルは何かを思い出したのか、彼を呼び止める。
「あ、そうだ。そいつを研ぐ所見てていいか?」
「……好きにしろ」
そう一言、店主が言った後
工房の方に戻っていった。
どうやら「OK」らしい。
(あんまり剣研ぐところとか見たことねえから……たまには良いよな)
そしてデイルも工房の中へと入っていった。
――――――――
工房の中ではその店主が集中し、無言で研いでいる中、その横では赤毛の少年がその作業を手伝っていた。
なお彼の姉は奥で売上の計算をしており、兄の方は別のところで刀を研いでいる。
(確かあいつは……ラティナの友達のルディってやつだっけ……少しいじわるだって聞いたことがあるが最近はそういう話も聞かねえからまあ大丈夫か……)
最近聞かないのはリタによる口止めもあるからではあるが、そんなことはデイル当人は当然知らない。
もちろん、いじわるなことも彼は最近していないようだが……。
「おい!あの機材取ってくれ」
「お、おう!」
テキパキと父親の手伝っているルディにデイルは珍しく感心している。
(あれくらいの歳でもあんなに真面目なんだなぁ……まあラティナには敵わねえけどな!)
彼を一応評価しながらも親バカを発揮しているデイルであるが、当のルディは──
(あ、あいつの保護者がいる……しゅ、集中しねえと…!)
自分が惚れている子の保護者がいるゆえにいつも以上に集中しているだけであった。
――――――――
「どうだ?」
「おう、いい感じだ。前よりエッジも良くなってる」
「そうか……また何か調節したくなったら言え」
そう言って再び工房のほうに戻っていく店主であるが、その横に居たルディはまだその場に居た。
どうやらデイルに何か用があるようだ。
「ん?どうした、なんか俺に用か?」
「いや…その……少し聞きたいことが」
「聞きたいこと?」
「その…デイルさんの職業の冒険者って……何をしているんですか?」
「……冒険者かぁ…」
デイルはルディに対して冒険者について自分が知っている限りのことをとりあえず話す。
街の人々から依頼を受け、その依頼をこなすのが基本的な冒険者だ。
その依頼は「踊る虎猫亭」などの
なお賞金首などもここに張り出されるため、それを狙って活動する賞金稼ぎの冒険者も存在している。
だが基本はルールやマナーこそあれど、縛られることはない。
いわば冒険者という存在は「自由」という言葉に相応しいであろう。
それに関してデイルの説明が終わるとルディは腕を組んで考え始めていた。
その様子にデイルが問いかける
「もしかして冒険者になりたいのか?」
「い、いえ……俺もまだ悩んでて……」
「うーむ……確かにお前のところは兄も姉も居るし、跡取りは十分だもんな……まあ俺からは進路についてはなんとも言えないが…色々と見てみたほうが良いんじゃないか?」
「……色々と?」
「ああ、ここの街は色々と職業も溢れてるからな。とにかく自分の目で確かめてみるが良いと思うぞ」
「……そう…ですか……ありがとうございます」
そう言ってルディは店の奥に戻っていった。
そしてデイルも虎猫亭へ帰るため、店を出て足を進め始める。
(……俺があんぐらいの時は悩むこともできなかったからなぁ……ま、今気にしたって仕方がないけど……それより早く帰ってラティナだ!)
途中から速歩きとなり、最終的にはほぼ走っていたのは言うまでもない。
――――――――
「デイル、あーん」
「あーん……んんんっ!ラティナにあーんされるとケニスの料理でも格別に美味いな!」
夜の虎猫亭では、相変わらず親バカを発揮しているデイルがあった。
そしてラティナもやはり久しぶりにデイルと一緒にご飯が食べられることも会ってか、とても楽しそうである。
一方のいつもの常連たちは「別にどこの料理でも変わらねえだろ…」とツッコミを入れたくなるがぐっと我慢しながらもデイルに色々と言葉を浴びせていた。
「……相変わらずうるさいなデイルの旦那…」
「はぁっ、親バカ声で耳にタコが出来ちまう」
「これもある意味名物だけどさぁ……はぁ……」
「なんとでも言え!俺がラティナにあーんされた時点で俺の勝ちだ!」
デイル自身はそう高らかに発言しているが、デイルを除く常連達はすでに先にあーんされた相手を知っており、それもツッコミたくなったがこちらもぐっと我慢している。
「デイル、口についちゃってるよ?」
「おっと、つい駆け込みすぎた…」
「ご飯は逃げないから、ゆっくり食べよ?」
そのラティナの言葉に思わず──
「…ああ!やっぱうちの娘は最高だああああああああ!」
酒場どころかその南区一体に響き渡るほどデイルの声が響いたのは言うまでもない。
多分EDに繋げられそう。