好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

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今回は原作での「閑話、雪の降ったある日。」をベースにしたものです。
でも当然ながら色々と変わっているのでご容赦を。


赤毛の少年と幼き少女の雪合戦

このクロイツは本来、雪が降ることは少ないのだが、ここ数年は大雪になることも多く、積もるということもないわけではない。

 

そして今回も秋から本格的に冬になった途端、クロイツは大雪になった。

大人たちはせっせと雪かきをする中、子供たちは雪のある意味鬱陶しさなんて気にせずに中央の広場で遊んでいた。

 

「~♪」

 

もちろんラティナも機嫌よく遊んでいた。

なおラティナの服装はピンクの毛糸の帽子と手袋、マフラーであり、雪の時では必須の服装である。

どうやら雪だるまを作っているらしい。

 

「やけに積もったなぁ……」

 

同じく雪用の帽子、手袋をしたルディも少し呟いた。

ルディはその雪の様子を眺めているが、この広い広場は殆ど真っ白であった。

前回の雪もそれなりに降ったが、今回はそれ以上であろうと思われる。

 

「……」

 

そして彼はいつの間にかラティナのほうに目線を向けていた。

 

(相変わらず雪好きだなぁラティナ……よく似合っているって…やつなのか……?)

 

ラティナは、はじめてクロイツに来た年の初雪でも、非常に大興奮だったらしい(ルディはジルヴェスターから聞いた)。

彼女の故郷は雪がほとんど降らない地域なのだという。

 

しかし、そのラティナ──白金の妖精姫とパラパラと降る雪は不思議とよく似合う。

 

それでルディも見惚れていたのは言うまでもない。

 

「?」

 

そしてラティナはその様子のルディにはてなを浮かべていた。

 

――――――――

 

その後、段々と広場に子供たちが集まり、自然と何かをやろうという流れとなった。

いろいろな意見が出たが、皆で遊ぶにはやはり「雪合戦」が1番ということになる。

ルールとしては簡単なもので広場の端には本陣として壁とフラッグが用意され、どちらかのチームが相手チームのフラッグを取ったら勝ちというものだ。

そして雪玉に当たったら失格である。

 

なおこの広場ではすでにあちらこちらに雪の壁のシェルターがあり、それに隠れながら敵本陣に進むという形だ。

 

 

「~♪」

 

(まさかのラティナと一緒か……これも「お膳立て」…?いや、偶然だろ……)

 

くじ引きの結果、いつもの面々のうちクロエ、マルセル、アントニーとは別のチームとなり、ルディはシルビアとラティナと一緒になった。

 

「じゃあ、ルディはラティナと一緒に本隊とは別行動ね」

 

「おう!」

 

「わかった。ラティナがんばる」

 

「二人きりにしてあげたんだから、わかってるわね」

 

「あ……あぁ」

 

リーダーとなったシルビアの指示を受け、ラティナとともに本隊とは別の別働隊として戦うこととなった。

 

ラティナと同じチームになったのは偶然のようだが、こちらは「お膳立て」のようだ。

 

――――――――

 

そして皆、一斉に準備を始める。

 

ラティナとルディはシェルターとなる雪壁の中で待機しながら雪玉を作っていた。

なおラティナのほうは機嫌よく鼻歌も混じりながら作っている。雪合戦はやってもやらなくてもいいスタンスをとっていたが、いざやるとなるとやはり気合が入ったようだ。

 

(………)

 

ラティナと一緒については別に悪くなく、むしろ本人にとっては良いものだが、やはり懸念事項があるようで──

 

(絶対あいつらラティナを狙ってくるだろ……はぁっ……)

 

彼女はこの子供たちの中でも小柄であり、言うまでもなく可愛いのだが

それゆえに男の子たちからは狙われやすい。

 

だから、シルビアもラティナを守れと意味を込めて、ルディとラティナを別働隊にしたのだろう。

 

可愛い子にはいじわるをしたくなる……

 

それは少し前の「自分」を思い出せば明白であった。

 

(今の考えるのもアレだけど前の俺って……)

 

もちろんその行いには後悔しており、今ではそれなりにアタックしていくルディなのだが、ラティナの鈍感さも相まって上手く行ってるとは言えないのは言うまでもない。

 

「はぁ……」

 

「どうしたのルディ?」

 

「いや……もうそろそろかな」

 

とりあえず悩むのを止め、審判の笛が鳴るのを待つ頃にするルディであった。

 

――――――――

 

一方のその広場の周りでは、子供達の雪合戦を見守る大人たちが集まりつつ会った。

そしてその大人達に「彼」も言うまでもなく混じっていた。

 

「ほうほう、雪合戦かぁ……懐かしいなぁ」

 

もはやクロイツの名物になりそうな親バカことデイルである。

我が娘が雪合戦に参戦すると聞きつけてやってきたのである。

 

(他のやつから聞く限り、ラティナ達のチームはこっちか……)

 

その方を見ると、ピンク色の毛糸の帽子がチラホラ見えた。

もちろんデイルはそれが一瞬でラティナとわかる。

 

「はぁ……帽子が少しはみ出てかわいいなぁ……」

 

「お前なんでも可愛いって言うよな…」

 

「うるせえ!かわいいものはかわいいんだよ!」

 

「相変わらずブレないな、デイルの旦那は……」

 

他の見物客も相変わらずの親バカっぷりに色々と呆れている。

 

(同じチームのやつら、ラティナを守れよ……そしてラティナも頑張れ!)

 

「……!!」

 

(な、なんだこの寒気……集中しねえと……ラティナを守らないと……!)

 

「?」

 

その保護者の思いにルディが無意識ながらも反応していたそうな。

 

――――――――

 

そしてその数分後、開始の笛が鳴り、子供たちは一斉に動き始めた。

それはもちろんルディとラティナも例外ではなく、早速投げ始めている。

 

「ちっ……やっぱりこっちか」

 

察知したのか配置を読まれたかは定かではないが、やはりこちらを狙う雪玉は少し多い。

 

「ルディ、どうする?」

 

「………うーむ…」

 

(この感じだと逆に打って出させようとするやつか……)

 

 

ルディがラティナを見ながらもそう考えているとあることが思いついた。

 

「……そういえばラティナって魔法使えるんだよな?」

 

「うん、ラティナ使えるよ?」

 

「じゃあ……」

 

――――――――

 

「なかなか出てこねえな……」

 

「一回休憩したら?雪玉なくなっちゃったし」

 

一方そのラティナを狙ってた相手チームの子供たちは流石に雪投げに疲れたのか、少し手を休めている。

そんな中、好機と見たルディは雪壁の横から飛び出した。

 

「おい、こっちだ!」

 

「あいつは!」

 

そしてその注意がルディに向いた後──

 

「ラティナ、今だ!」

 

「!?」

 

合図した瞬間、ラティナは詠唱した魔法を解き放ち、相手の雪壁を崩した。

ルディの提案によりラティナは雪の層の下に魔法の壁を展開し、それを一気に発動させ、雪を崩れさせたのだ。

何かに例えるならちゃぶ台返しに近いといえる。

 

「ま、魔法かよ!?」

 

そしてその小さい雪崩により、四人ほど埋まってしまった。

 

「よし、上手く言った!」

 

「うん!」

 

少し安心した二人だが、まだまだ雪合戦中であり、今度は別方向から雪玉が飛んでくる。

 

その雪玉はルディに当たりかけるが、なんとかそれを避ける。

 

「うわっ!?」

 

「まだまだだよ、二人共!」

 

「げ、アントニーかよ!」

 

アントニーが別の少し離れたところから雪玉を投げてきた。

どうやらこのことを想定していたらしい。

少し離れているのにギリギリ当たりそうな辺り、彼のフォームもそれなりのものらしい。

 

「くっ、一旦離れるぞラティナ!」

 

「う、うん!」

 

そしてルディはラティナの手をとっさに握り──

 

「!」

 

味方が居る方向のシェルターにとりあえず退避したのであった。

 

――――――――

 

「はぁはぁ……はぁ……なんとか……勝ったな……」

 

「う、うん……ラティナ達……勝ったね……」

 

かなりの激戦となった雪合戦は、ルディとラティナ達のシルビアチームが勝った。

ラティナ、ルディの二人が雪の壁を崩しつつ、シルビアの冷静な指示もあってか、なんとかフラッグを取ることができたのだ。

もっともクロエ達の勢いも凄まじく、最終的には双方とも10人くらいしか残っていなかったとか。

 

「あ、デイル来たからいかないと……」

 

「ああ、そっか……」

 

疲れて何も考えられないルディは大の字で雪に埋まりながら、ラティナを見送る。

 

「はぁはぁ……」

 

(俺…ラティナのこと守れたんだよな……)

 

以前の雪の日、自分の非力さに嘆いた彼は今度こそ彼女を守ることが出来たようだ。

 

そしてデイルは雪だらけのラティナを出迎える。

 

「ラティナ!勝ったんだってな!!」

 

「うん!ラティナ勝ったよ!」

 

「良かったなぁ!最後までラティナは失格にならなかったようだしな!」

 

「……うん!ラティナ、頑張ったよ!」

 

少しだけ言葉が詰まったが、ラティナはいつもどおりの表情で答えている。

どうやらルディのことを言おうとしたがリタから口止めされているのを思い出し、踏みとどまったようだ。

 

「そうか……やっぱラティナは最高だ……!よし、虎猫亭に帰ったら祝賀会だ!飲むぞぉ!」

 

「う、うん!」

 

そしてデイルとともにラティナは虎猫亭に戻っていくのだが、彼女はルディに握られた左手を確認する。

 

(やっぱり……手袋越しなのに……ラティナ、おかしくなったかな……)

 

どこか暖かさを感じた彼の手

前は彼の家のことで暖かいのだと考えたのが、今回はそう考えてもどこかモヤモヤが立ち込めていた。

 

そしてラティナは──

 

「ルディ……?」

 

デイルに気づかれないほど小さな声で彼の名を呟いたのであった。

 

 

 




その暖かさの真の意味を彼女が気づく時はいつか?
それはまだ先のお話……。



次回よりようやく旅のお話に入れます…が
暫く書き溜め作業に入るため、投稿がかなり遅れます。
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