好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。 作:うちのこ
「はぁ……」
ラティナが旅立ち、数日が経過した。
クロイツは特に変わっては居ないが、ルディの心の中にはやはり寂しさが生まれていた。
「おい、兄ちゃん、そんなため息ついてないで持ってきてくれ。気持ちはわかるが」
「わ、わかってるよ!」
今、ルディは人手が足りなくなった虎猫亭の手伝いをしている。
常連の声により現実に引き戻されて、我に返ったルディは再びせっせと働き始めた。
そんな彼の様子を見てリタはケニスにこう話しかける。
「彼が来てくれたのは良いし、助かってるけど……やっぱりラティナが居ないと花がないわね……」
「そうだな、ルディも元気がないしな……常連達も夏前まで持つと良いんだが」
その一部の常連達も覇気がなく、どこかやつれていた。
「ああ……嬢ちゃんと会えねえのが……」
「やっぱ保護者から引き離したほうが……いやいや…そういうわけにもいかんが…」
「相手がどこに居ても即座に会話とか出来る魔法とかねえの?」
「あるわけねえだろ……そんなのあったら今すぐ修行する……」
「全く……ちゃんと依頼はしてきなさいよ!」
「「「はーい……」」」
リタの声がけにも覇気なく返す客達であった。
そしてルディは首にかけた角のペンダントを見て彼女のことを気にしていた。
どんな旅をしているのだろう?
どんな風景を見ているのだろう?
傷や怪我などはおっていないだろうか?
今、想い人は一体どんなことをしているのだろうかとそんな不安と興味で彼の心の中は入り乱れていた。
「………はぁ」
(ラティナ、今何してんだろ……)
――――――
「~♪」
一方のラティナは鼻歌を歌いながらデイルとともに街道を直進していた。
ルディから貰った白いリボンで髪を結んで、彼が加工した角のネックレスを首にかけている。
「ラティナ、そろそろ港町クヴァレだぞ」
「港町!海があるんだよね?」
「ああ、その丘から見えるぞ」
「ほんと!?」
どうやらもうそろそろ港町に付くようである。
ラティナは初めて見る海に大喜びで歓声を上げた。
「海だぁーっ!デイル、デイルっ!海、海っ!行っても良いっ!?」
「落ち着けってラティナ。まだ港町まで距離あるし、宿を取って荷物も降ろさなきゃいけないだろ?」
苦笑しながらデイルはラティナにもう一匹の
「それに
「そうだった……ごめんね」
ラティナはそう言いながら、馬の鼻先を撫でる。
そしてデイルはラティナが身につけているものについて少し気になり、声をかける。
「そういや思ったが、そのリボンとペンダントって……」
「あ、うん!リボンは友達に貰って、これはラティナの角を皆で分けて「友情の証」?にしたの!」
「へー……」
(角をそうしてもいいのか……いやラティナが良いなら良いんだけどな………しかし、愛されてるなぁラティナ……かわいいなぁ……さっきの海にはしゃぐラティナももちろんかわいかったし……うんうん……)
またまた親バカを炸裂させているデイルである。
一方のラティナはそのペンダントを見ていると、やはり「モヤモヤ」が彼女の中に渦巻いてくるようで……
(……これ、ルディが削ったんだよね……うーん……ルディ……今どうしてるかな?…………って、あれ?ラティナ……最近ルディのことばかり考えてる……?)
旅の道中、どうやら所々で彼のことを無意識に思い出していたようでラティナはそのことを不思議に思っていた。
(うーん……クロイツから遠くなったからかな……。それより海っ!!)
ただ、その理由に気付けるはずもなく、気のせいと思いつつ、ラティナは無理矢理、頭の中をルディから初めて見る海へと切り替え、港町への道を進んでいくのであった。
――――――
港町クヴァレについた二人は、色々と観光を楽しんだ。
そしてあるレストランで見た女性がつけていた「腕輪」のことも気になりつつも、二人は宿屋へ戻ってきた。
空はとっくに暗くなり、子供は寝る時間になりつつある。
「ラティナ、まだ寝ないのか?ふあああっ……」
そんな中、ラティナは部屋の机に向かって、色々と書いているようでまだ起きているようだ。
デイルも心配して眠そうになりながらも声をかけたが、ラティナはこう答える
「うん、まだ日記書けてないから……書けたら寝るよ?」
「そっか……あんまり遅くならないように……な……」
そう言うとデイルは寝息をたてて、すぐにぐっすりと眠ってしまった。
そしてラティナは日記を書いているのだが──
「うーん…今日は……」
ラティナは日記に今日の出来事やらを書き出していっている。
この港町ではクロイツとは違う目新しいものが色々と見えたわけで、当然ながらそれを残していたいというのだが、ここでもどうやら「彼」がちらついているようで……
(……ルディは何してるんだろう………鍛冶屋で刀を研いでるのかな……虎猫亭で手伝いをしているのかな……?)
どうにも彼のことが頭から離れない。
港町の観光は楽しかったが、その間でもルディの事は頭の片隅から消えていなかった。
今までもこの事はあるにはあったが、その時以上であった。
「あ……手紙も書かないと……」
日記を書き終えたラティナは次に友達への手紙を書くこともしようとするが
ただでさえ書くことが多すぎるゆえ、彼へのモヤモヤが色々と邪魔をしてうまくかけないようだ。
「ど、どうしよう……」
(ラティナ……やっぱりへん……?うーん……)
リタからも言われている通り、デイルに彼のことを話せば何かしら良くないことが起きるとラティナは薄々わかっていた。
そのためラティナはデイルへこの悩みを話していない。
だがそれゆえにリタも居ないこの状況ではただただモヤモヤが詰まっていくばかりであった。
「ねたら……なおるかな……」
そう思い、手紙を書くのを切り上げて、火を消して、ベッドの中に入っていった。
「……る…でぃ………」
――――――
そして数日後
「………」
レストランで見た女性グラロスからつけていた「腕輪」のことや魔人族のことを聞いた後、クヴァレから旅立ち、デイルの故郷方面に歩き始めた二人だが、ラティナはここ暫く考えすぎていたのか、あまり元気はない
「ラティナ、やっぱ少し疲れたか?」
「あ、ううん!なんでもないよ?ぜんぜんへいきだよ!」
もちろんデイルの前では元気に振る舞ってはいるが、彼女の心の中のモヤモヤはこの旅に出てからの数日で溜まりに溜まって満杯になっている。
いつ決壊してもおかしくない状況だが、その「モヤモヤ」の理由自体を彼女はまだ理解していないがゆえ、決壊はしていない。
しかし、それはラティナにとってはあまり良い気持ちではなかった。
「……」
(ルディ………)
そして、彼女は再び彼の名前を心の中で呟いた。
おや?ラティナの様子が………
原作と同じになりそうなところはチョイチョイ飛ばしていきます。
ただそれでも彼女の感じは大分変わってます。