好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

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今回はリタとケニスの過去話も少し織り込みつつ………です

やはりラティナは……天使だ



幼き少女、赤毛の少年を避けてしまう

初夏を過ぎ季節が夏へと変わった頃

 

ラティナはクロイツに帰還し、「彼」のことを気に留めながらもいつもの日常に戻った。

少し様子が変わったこともあり、そして「ルディ」へ用意したお土産だけ何か違うことからケニスとリタからは察しられ、常連達も少しニヤついていたが、それ以外は特に変わらなかったそうな。

 

そして今日は旅から帰ってきてから初めての学舎の日である。

 

「ラティナ、おかえり!」

 

「うん!ただいまクロエ!」

 

「久しぶりーラティナ!」

 

「シルビアも!ただいま!」

 

まずは親しい二人に挨拶するラティナ。

変わっていない親友の様子に安心しているようだ。

 

「クロイツはいつも通りだったからね……それより旅の話聞かせて!クロエに聞いてだいたい移動したルートはわかったんだけど装備とか!食料とかはどのくらい揃えて行ったの!?」

 

「え?え?」

 

「やっぱり魔獣ってたくさん出た!?それに盗賊は!?」

 

「い、いっぺんには難しいよ……」

 

グイグイ来るシルビアにラティナはたじたじになってしまった。

緑の神(アクダル)の加護を持つシルビアは旅について興味が出ることが多い為、こうなってしまうのは致し方ない。

 

そしてクロエがシルビアを抑えながらもラティナは旅のことを順を追って噛み砕いて説明していく。

途中ラティナが察知してデイルが盗賊を退治した話の後、シルビアはこう話し始めた。

 

「盗賊に遭遇するなんて!旅の醍醐味よね~」

 

「だ、だいごみ……?」

 

「何言ってるのよ……」

 

もちろんその様子のシルビアにクロエとラティナは色々と苦笑いをしていた。

 

(………ルディは……まだかな……)

 

そう思いながらもラティナは二人に貝細工の小物入れのお土産を渡し、途中で登校してきたアントニーとマルセルにもお土産を渡す。

アントニーには貝殻が回りについている筆立て。マルセルにはクヴァレ名産のお菓子であった。

ラティナはラティナなりに友達のことをよく見ているためか、やはり各自に合うお土産を買ってきたらしい。

 

「ありがとう、ラティナ。僕たちにもお土産くれて」

 

「うん!すっごく良いよ!」

 

当然ながらアントニーとマルセルは喜んでいた。

だが同時にルディのことも思っていたようで、マルセルはアントニーに耳打ちをする。

 

(うーん……ルディはまだなのかな?)

 

(昨日会った時は別に普通だったから……多分寝坊かな?)

 

そう二人が思っていると──

 

「ふああああああっ……」

 

(またギリギリになっちまった……あぶねえあぶねえ)

 

大きなアクビをしながらも教室に入ってくるルディの姿があった。

 

「!」

 

その姿を見てラティナはドキッと反応する。

 

(る、ルディ……えっと……おみやげ渡さないと……!)

 

そしてラティナはその大あくびをしているルディにおみやげを持って近づいた。

 

「る、ルディ!」

 

「ん?…なっ!?」

 

(って、ラティナ帰ってきてたのかよ!?)

 

一方のルディはそう思いながらも平然を装っている。

毎回毎回でバレバレなはずだがラティナには気にされない辺り、彼女相手では一応上手く行っているらしい。

 

「な、なんだよ?」

 

「あ、え……あ……お、おみやげだよ!」

 

「お土産?」

 

「う、うん!じゃあっ…!」

 

そしてラティナは包まれた紙袋をルディに渡したあと、逃げるようにして自分の席に戻っていった。

いつもはむしろ礼儀が良いラティナであるが、なぜか今回は言葉足らずでまるで避けているかのようにも見える行動を取っていた。

はっきりいっていつものラティナから見れば異常なことであった

 

「……」

 

(な、なんなんだよ……?)

 

当然ながらルディ本人は頭にはてなを浮かべている。

唐突にお土産を渡されて、言葉らしい言葉を交わせずに逃げられたのだ。

浮かばないほうが変である。

何かあったのか?聞こうとしたルディであったが、直後に先生が来たことも有り、すぐに座った。

 

「………」

 

(ラティナ、変…………ルディのこと……みれない……?)

 

もちろん当のラティナ本人も先程の行動が変だと気づいていた。

恋を自覚し、彼のことを意識してしまった為か、今まで何とも思わなかった彼に関わる事へのハードルが急に高くなってしまったのだ。

そして更にその想いがかなり強いため、そのまま彼を見ることすらも恥ずかしく感じてしまったのだ。

 

(恋……って……こういうこと……?)

 

本人を目の前にして、改めて自分が恋したことを認識したのであった。

 

(ど、どうしよう……)

 

ラティナが悩む一方。ルディは先生の目を盗んで、ラティナから渡されたお土産の中身をこっそりと見た。

中身は綺麗な貝殻のペンダントであった。

それは少し土もついており、どうやらお店で買ったものではなくラティナが拾ったもののようであった。

気になったルディは隣とマルセルとアントニーに小声で話しかける。

 

「なあ、ラティナからの土産は何貰ったんだ?」

 

「あーうん、僕は港町のお菓子」

 

「僕は貝殻の筆立て…これだよ。あとクロエとシルビアは貝細工の小物入れだったと思う」

 

「……そっか」

 

(……なんで俺だけ売り物じゃない貝殻の……ラティナも様子おかしかったし………俺、なんかしたか……?)

 

これによりルディの中のはてなは更に拡大していた。

自分の非があったのか、旅の途中でなにかあったのか

それが気になっているようであった。

 

(まぁ、後で聞けばいいか……)

 

この時のルディは知るはずもなかった……

 

何故か彼女に避けられるこの状態が数週間に渡って続いてしまう事に……

 

――――――

 

「………はぁ……」

 

ラティナはいつもの皆のランチを断って、逃げるようにして虎猫亭へ帰ってきた。

 

(……リタに相談したら直る……かな……)

 

そう思いながらも、虎猫亭の中に入っていくと

 

「まさかここに投宿する気か!?」

 

「私には私の都合があるのよ」

 

「宿なら他にも!」

 

デイルの大きな声とある女性の声が聞こえてきた。

 

「?」

 

(デイルと……女の人?)

 

「ああ、ラティナ。おかえりなさい」

 

言い合い(というか声を張り上げているのはデイルだけだが)を遮るようにリタがラティナに声をかける。

 

「ああ、ラティナおかえり!」

 

続いて保護者が反応する。瞬時にいつもの声に変えれる辺り流石と言えよう。

 

「あら、この子が「魔法使いさん」ね……小さくて可愛い子ね……」

 

「……誰?」

 

ラティナは目の前の謎の美女を怪しいと思いながら、首を傾げていた。

初対面の人にでも挨拶する愛を振りまく天使であるラティナにしてはかなり珍しいことであった。

そしてそのような感じのラティナをクスクスと少し笑う彼女はこう話した。

 

「あら、はじめまして小さな可愛い魔法使いさん。私はヘルミネ……デイルとは昔色々とあったけど今は一応彼の顔を立てて「仕事仲間」ってことにしておくわ」

 

「仕事…ってお前な!」

 

デイルは横から頭を抱えそうになりながらも突っ込んでいた。

どうやらデイルとヘルミネの間には生半可ではないことが色々とあったらしい。

 

「………ラティナ、ちいさくないもん」

 

ラティナは不機嫌そうに頬を膨らませた。

ヘルミネは異性である男性から見れば魅力的な女性であるが、同性である女性からは反発を喰らいやすいという人物のようであり、いろいろな人と接して慣れたリタにとっては大丈夫であったが、ラティナはもちろんそうではなく、さらに彼女のコンプレックスである身長の低さについて触れてきたため不機嫌になったのである。

ヘルミネはそういうこともクスクスと笑いながらもこう言った。

 

「あらあら……そういうところも小さくてかわいい………まあそういうわけだから、よろしくね、デイル」

 

「くっ……くそ……!」

 

そう言いながらもヘルミネは荷物とともに虎猫亭の二階の客室に入っていった。

そしてデイルはカウンターに頭を埋めていた。

どうやら彼女が来ただけでかなりの体力を使ったらしい。

 

「………じゃあ、着替えてくる…」

 

そう言ってラティナはいつもの屋根裏部屋に学舎の荷物を持ってあがっていった。

どうやら先程の小さい発言もあり、いつもより元気も何もなかった。

 

「え、ええ……わかったわ」

 

その不機嫌さにリタも少し驚きつつ、返事を返す。

そしてラティナが虎猫亭へ入る前に思っていたリタへの相談ということはすっかり抜け落ちてしまった。

 

「はぁ……デイルはともかくラティナは大丈夫なのかしら?」

 

「どうだろうな…ルディのこともある……介入はできんが、暫くはよく見ておいたほうが良い…」

 

「そうね……」

 

――――――――――――

 

それから数週間、ラティナはルディを避けることばかりをして、更にヘルミネからは小さいだの言われたこともあり、ラティナ自身の心がすっかり疲れてしまった。

 

「はぁ……」

 

当然ながら考え事することも多くなり、ため息をつく回数が増えてしまったのである。

厨房に立ってる時もそんな感じであった。

そして今は午後の開店前の前準備の真っ最中であるのだが──

 

「ラティナ、焦げるぞ?」

 

「………あ!」

 

思わず目の前の材料を焦がしてしまうところであった。

幸いケニスが声をかけてたため、なんとかなったが……

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「うむ、別に良いんだが……」

 

(………やはり我慢しているのか……?)

 

ラティナでも失敗することは多々あるのだが、ここ最近はその悩み事などでその頻度が多くなっていた。

悩み事は言わずに溜め込んでしまう事が多いラティナであるがゆえに今までそれを見守ってきたケニスは心配し、彼女にこう言葉をかける。

 

「ラティナ……何か悩みごとがあるんじゃないか?」

 

「!」

 

ケニスにそう指摘されるとビクッと少し跳ねた。

本人としては一応平然を装っているためか、バレたと思ったラティナはドキッとしてしまったのであった。

ここらへん「友達」である「彼」とあまり変わらないように見える。

 

「リタに相談してみたらどうだ?」

 

「で、でも……」

 

「厨房のことは大丈夫だ、まだ忙しくはないしな……リタもそう忙しくはないはずだ」

 

「……う、うん……」

 

ケニスに促されて、ラティナはリタのところへ向かった。

 

「あらラティナ」

 

まだ午後の営業の開店前であるため、色々と準備をしていたリタ。

ラティナをみて、それを止める。

 

「リタ……相談して…いい?」

 

「……いいわよ、座りなさい」

 

ラティナはカウンターのイスに座り、リタも同じくイスを用意してラティナと対面するように座る。

なお彼女のお腹は既にかなり大きくなっており、体を休めるということも含めてであるが。

 

「……」

 

「……じゃあゆっくりでいいから……話してみて、ラティナ」

 

「あ、あのね……」

 

ラティナはリタに今の「恋」の悩みを伝える。

ルディへの好意を自覚したことと、言わないといけないのにずっと避けてしまうことなど

とにかく今の彼女の異常の原因であることをありったけ話した。

 

そしてそれを相槌を打ちながらも聞いたリタは少しだけ考えて、こう話し始める。

 

「そうね……恋の悩みって辛いことよ……どこか胸が締め付けられるのよね……」

 

「うん……ルディにはきちんと言ったほうが良いのかな……でも……」

 

ラティナがここ数日で悩みが大きくなった理由はやはり彼女自身が「魔人族」だからであろう。

人間族の寿命は長生きしてもせいぜい90年、最高100年が限界であるが、対する魔人族の寿命はそれを簡単に凌駕する。

これは覆すことができない「理」であり、これを覆せるのは「神」くらいしか居ないであろう。

 

ラティナが途中の旅で出会った魔人族「グラロス」もかつては人間族の夫が居たが、人間族としては長く生きてはいたが、最終的に彼女の前からは去っている。

そのことを深く考えた結果、そしてヘルミネからからかわれることもありラティナの中は色々とこんがらがってしまったのだ。

 

「そうね………確かに魔人族と人間族の寿命は覆せない……」

 

「………」

 

「……だけど、それでラティナはルディ君のことを諦めても良いの?」

 

「………!」

 

それはできないという表情であった。

彼女がした初めての恋の彼を諦めることなんてできるわけがなかった。

 

「………そう簡単じゃないことはわかる……けどその「寿命」のことを考えすぎるのも体に毒よ?」

 

「……そう……だけど………言って良いの…かな……ラティナが……」

 

(……まあ、彼の好意に気づいていないから……こうなるわよね……)

 

リタなどの大人から見ればルディがラティナに好意を持っているのは明白であり、これでもしラティナがアタックすれば一瞬で落ちるだろう。

ただしラティナから見ればそうは思わなかったようだ。むしろ自分のアタックが届かず玉砕する可能性を想像していた。

 

「……じゃあラティナにちょっと私の昔の話を聞いてもらおうかしら」

 

「リタの昔の話?」

 

「……そうね…私がまだ女将じゃなくて看板娘だった時……まあその時も色々と忙しかったのだけど……ある日ある客の男に突然プロポーズされたのよ」

 

「プロポーズ!?」

 

「そう……突然「ということで、結婚しよう」なんて言ってきて私が「馬鹿じゃないの? 一度死んでみる?」って返したらその男は「アンデットがリタの好みなら考える」なんて言って……ホントおかしいと思ったわ」

 

「う、うん……」

 

(そんなことがあるんだ……)

 

ラティナが頷きつつ、リタの話はヒートアップしていく。

 

「「運命を感じた」なんて言ってホントバカなことばかり言ってると思ったわ……だけど」

 

「だけど?」

 

「段々その言葉が気になってそれで……その男のことを気にして……そう、ラティナみたいな状態になったわね……」

 

「そ、そうなの?」

 

「ええ…でも私はあの時はそんなことは誤魔化して過ごしてたの……その男のことが気になって色々と調べたり、聞いたりしたときもあったけど……とにかく誤魔化して誤魔化して…次第にはその男に「バカじゃないの!一度死んでみなさいよ!」とまで言ったこともあるわね…」

 

「し、しんで……」

 

「そんな日が続いたのだけれど、突然ある情報が入ってきた」

 

「情報?」

 

「「大河に出現した大型魔獣を討伐に向かった冒険者一行が全滅した」って」

 

「………」

 

「ちょうどその男のパーティーがクロイツから出たタイミングと一致して……私はその男が「死んだ」と思ったの……それで私は一気に血の気がなくなったわ。今まで彼に言った言葉が急に自分に降り注いでね……」

 

「………降り注いで……」

 

「ホントあの時は後悔してもしきれなかった……でもその男は急にひょいっと帰ってきたのよ」

 

「え!?……も、もしかして……ゆうれい?」

 

ラティナが少し怖がるが、リタはそれをいやいやと振りながらこう話す。

 

「違う違う、たしかにそうも思ったけど……その男が行ってたのは大河じゃなくて森の調査のほうだったのよ」

 

「もりの?」

 

「ええ……私の早とちりが過ぎたってことになるけど……それが原因で私も「恋」を自覚した……といえば良いのかしらね…」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「それでその男のバカみたいなアプローチを徐々に受け入れて……2年くらい経って結婚して今に至る……ってのは私の昔話ね」

 

リタは厨房の方を向く、それは暗にその「バカみたいな男」が夫である「ケニス」のことを指し示していた。

そしてラティナもそこのことを察する。

 

「そう……なんだ……」

 

「だからね、ラティナ……自分のタイミング次第でいいけど自覚したならできるだけ早くにアタックしたほうが良いわよ。彼がこのクロイツにずっといると限らない……彼、冒険者に興味を抱いていたしね」

 

「冒険者に?」

 

「ええ、まだ色々と悩んでるみたいだけど。常連さん達に時々聞いていたはずよ」

 

「………」

 

(そうなんだ……ルディが……)

 

――――――――――――

 

そしてラティナは西区の方までおつかいに出て(本来はケニスが出ようとしたが、ラティナが引き受けたらしい)物を買いつつ、彼のことを考えていた。

 

(うーん……言うべき…でも……リタは自分のタイミング次第って言ってたけど……どんなタイミングがいいんだろう……)

 

他人にとってはどうでもいいことなのかもしれないが、ラティナにとってはかなり重要なことであった。

だが──そんな考えも急に引っ込んでしまうことが起きてしまう。

 

「る………え?」

 

彼が見えたと思いきやラティナは持ってきた買い物のカゴをその場に落とす。

そしてそのラティナの目に映っていたものは──

 

 

 

 

 

ルディとシルビアが親しげに話している風景であった。

 




こういう感じのラティナもとてもかわいい………
自覚してもそう簡単に話せないのが彼女である。



なお私は言うまでもなくハッピーエンド主義者です
恋愛ってやっぱこういうのが良い。
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