好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

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今回はT ogaさんによる本執筆です。
ルディとシルビアが楽しそうにしていた理由が明らかに……。


赤毛の少年、憲兵隊本部を見学する

ラティナが、ルディとシルビアの仲睦まじい(?)様子を目撃する数日前の学舎

 

そこでルディは机に伏して悩みに頭を抱えていた。

 

何故かラティナから避けられている事ももちろんなのだが、それ以外にもう一つ彼には悩みがある。

 

それは……

 

(進路……どうすっかな……)

 

そう、学舎卒業後の進路に対する悩みであった。

 

マルセルは実家のパン屋を、アントニーは高等学舎に進むと聞いているルディ。

 

彼は勉強は出来ない訳ではないが、好きという訳でもないので高等学舎に進むという選択肢は真っ先に除外した。

実家の鍛冶屋は兄と姉が継ぐ為、彼が継がなければいけない義務はない。

 

そして、色々と悩んだ結果、最終的に出た案は二つ。

 

(冒険者になるか……それとも憲兵になるか……)

 

虎猫亭の常連客やデイルに色々と聞いたおかげで冒険者については良く分かってきた。

 

しかし、デイルは

 

「ここの街は色々と職業も溢れてるからな。とにかく自分の目で確かめてみるのが良いと思うぞ」

 

と、そう言っていた。

 

そして色々な職業を考えてみた結果、浮かび上がったもう一つの案が憲兵になる事だった。

 

『冒険者』相手に、真っ向から立ち向かえるのは、この街では『憲兵』だけだ。

彼は武器と近しい場所で生まれ育ってはいるが、デイルのような加護など、特別な力は持っていない。

 

冒険者になって本当にやっていけるのだろうか?

憲兵隊に行って、訓練を受けた方が合理的ではないか?

 

と、彼は悩んでいたのだ。

 

 

「どうしたの、ルディ。お昼ご飯も食べないで」

 

そんな彼に声を掛けてきたのは、シルビアだった。

 

「シルビア……?あれ、ラティナとクロエ、マルセルとアントニーはどこ行ったんだ?」

 

「ラティナもクロエもマルセルもお家の手伝いがあるからって帰ったわよ。アントニーは黄の神(アスファル)の神殿で勉強だって」

 

「ふーん」

 

「私今日は特に用事もなくて暇なのよね。そういえば、私とルディの二人っきりってはじめてじゃない?」

 

「そうかもな」

 

ルディは進路の事に悩みながら空返事で暇らしいシルビアに答えていたが、そこでとある事に思い至る。

 

「あ、そういえばシルビアのお父さんって憲兵隊の副隊長さんだったよな」

 

「ええ、そうだけど……」

 

ルディは一度、憲兵隊の副隊長であるシルビアの父に会っている。

 

学舎に入学した年の雪の日、魔人族であるラティナを狙った男達から逃げる時、シルビアの父に助けてもらった事がある。

 

ルディは意を決して、シルビアにとある頼み事をした。

 

「あのさ……」

 

――――――

 

数日後、ルディとシルビアは西区にあるクロイツ憲兵隊の本部にやってきていた。

 

「ここがクロイツ憲兵隊の本部だよ。他の東区や南区、北区にあるのは憲兵隊の詰所でこの本部から選ばれた分隊長がその詰所の指揮を取ってる。隊長もそうだけど、東区の分隊長も良く虎猫亭(あの店)に行ってるみたいだね」

 

ルディとシルビアにそう説明するのは、シルビアの父であり言うまでもなく憲兵の副隊長である。

 

ルディは憲兵の事を詳しく知る為、憲兵隊本部の見学をシルビアの父にお願い出来ないかシルビアに聞いてほしいと依頼したのだ。

 

そして、シルビアが頼んでみた結果、こうして見学してもらえる事となった。

 

今、ルディとシルビアの目の前には大きな門がある。

その門の奥には貴族の住む屋敷と同じくらいの大きさの建物が三つほどコの字型に配置されているようだ。

 

「じゃあ、早速憲兵隊本部の案内をしていこうか」

 

「ありがとうございます」

 

「私もお父さんの仕事場見るのは初めてだし、ちょっと楽しみかも」

 

「二人とも離れずに着いてくるんだよ。特にシルビア!気になって勝手にどこか行ったりしないこと!いいね」

 

「はーい」

 

「ははは……」

 

この時、ルディはなんだかんだで仲のいい親子なんだな、と思った。

そして自分の無口な職人気質の父との違いに少し羨ましさも感じていた。

 

 

まず、見に来たのは中央棟。

 

中央棟の目の前には学舎の何十倍もの広さがあるグラウンドがあり、そこで憲兵達が走り込みをしていた。

 

中央棟の中に入ると、1階は緑の神(アクダル)の伝言板をまとめる事務所があった。

 

緑の神(アクダル)の神殿から主に街の犯罪関連の情報を優先的に回してもらい、それの調査を行うのが憲兵の一番の仕事だ。

 

この事務所で受け取った仕事を各分隊に割り振って街の治安維持に務めている。

 

また、赤の神(アフマル)の夜祭りなどの街のイベント情報などもこの事務所でまとめているらしい。

 

イベントの警備も憲兵の重要な仕事の一つだ。

 

この緑の神(アクダル)の伝言板にシルビアは大きな興味を示していた。

 

「話には聞いてたけど、これ凄い!!世界のトップニュースから迷子探しまで、この緑の神(アクダル)の伝言板で本当に何でも分かっちゃうのね!!」

 

虎猫亭などの緑の神(アクダル)の旗がある店にも同じ伝言板がある。

 

冒険者も憲兵も緑の神(アクダル)の神殿から依頼された仕事をこなすという点では同じらしい。

違いは成功報酬がすべて自分に入ってくるか、後に給金として配られるかの違いくらいであろう。

 

 

中央棟の2階には会議室があった。

 

フィル副隊長曰く──

 

「大きな犯罪が発生した場合はここで隊長と僕、そして各地区の分隊長が集まって対処法を検討したりするんだよ」

 

ということらしい。下っぱの憲兵は2階に入ることすら許されないこともあるそうだ。

 

そして、中央棟の地下は訓練所となっていた。

 

「ここで剣の稽古をしたり、組手をしたり、筋力トレーニングをしたりもしているね。今、外でランニングをしていたから、それが終わったらここでの訓練が始まるよ。どうする?訓練の見学もしたいかい?ルディくん」

 

「はい!」

 

もちろん、ルディは即答した。

 

「分かった。でもまだ訓練が始まるまで時間があるから先に別棟と宿舎の方も見に行こうか」

 

 

ということで、次に見に来たのは中央棟の左側に位置する別棟。

 

そこは剣の手入れをする簡易的な鍛冶場や中央棟の地下にあったものより少し小さな第二訓練所、また学舎と同じような教室や、訓練で使うのだろうか、プールのような施設もあった。

 

 

中央棟の右側の宿舎は、1階に食堂と風呂があり、2階以上は文字通り憲兵達の宿舎となっているらしい。

 

「憲兵になる前の予備隊は、ここで4年間集団生活を送るんだよ。外出する場合は中央棟の事務所で外出手当てを出して、それが教官に受理されないと外に出れないとか、寝る時間起きる時間の制約も多いけど、これは憲兵を目指すなら乗り越えて当然の壁になるね」

 

(4年か……その間ラティナに会えなくなるのはなんか嫌だな……)

 

フィル副隊長の話を聞いていて、そう感じていたルディであった。

 

 

その後は再び中央棟の地下の訓練所へ行き、憲兵の筋トレ、組手、剣の稽古と訓練メニューを一通り見学して、解散となった。

 

 

その帰り道、シルビアがルディにこう尋ねる。

 

「で、ルディ。憲兵になるの?」

 

「まだ迷ってる。確かに憲兵の訓練を受ければ、自分で鍛える冒険者よりも強くなれそうな気がする。でも予備隊にいる4年間ラティナに会えないのは……ちょっと……」

 

そうルディが気持ちを正直に話すと、シルビアはふふっ、と笑みを溢した。

 

「な、なんだよっ!」

 

「ふふふっ、いや……ルディも学舎に来たばかりの頃に比べて大分素直になったな~って思ってさ」

 

「あ、シルビア!お前、俺のこと子供扱いしてるだろ!!」

 

「実際、子供じゃない」

 

「なんだと!」

 

「あははは」

 

 

その様子を真っ青な顔で見ているラティナにシルビアが気づいたのはルディと別れた後だった。

 

シルビアは慌てて、ラティナのフォローをする。

 

「ら、ラティナ!!違うの、これは……」

 

「うん、分かってる。ラティナ分かってるよ。ルディとシルビアがそういう関係とかじゃないって。ラティナ分かってるよ……」

 

(絶対、わかってない!!)

 

シルビアは心の中でそう叫んで、無理矢理ラティナの手を引っ張る。

 

「ラティナ時間ある?ちょっとお話!!」

 

そう言ってシルビアはラティナを連れて、西区にある喫茶店へと入っていった。

 




この時のラティナは実はクソ教師の件の時のような虚ろな目になる寸前です。
ただでさえ彼について悩んでる時にそういう風なことを見てしまえば……まあ、そうなるな。




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