好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

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赤毛の少年、冒険者見習い始めました

デイルがヘルミネに引っ張られ、長期任務に駆り出されてる中

デイルの娘であるラティナの恋人についになれたルディはジルヴェスターにあることを頼む。

 

「俺を…弟子にしてください!」

 

そのルディの必死の懇願とは裏腹にジルヴェスターはあっさりとした答えを返した。

 

「おう、いいぞ」

 

「……え?」

 

拍子抜けしてしまうルディを見たジルヴェスターは彼にこう質問をした。

 

「なんだ?不満か?」

 

「いや……断られるかもと思ってたので…」

 

「まあ、元々俺は弟子を取らない主義だ。兄ちゃんじゃなきゃすぐに断って他の連中紹介してたけどな」

 

「……俺じゃなきゃ?」

 

ルディがそうはてなを浮かべていると、ジルヴェスターは酒を飲みながらこう話し始めた。

 

「兄ちゃんは嬢ちゃんが不在の間も色々と頑張ってくれたじゃねえか」

 

「…まあ、暇だったし……でも…それが…」

 

「だからその御礼というやつだ。それに……」

 

ジルヴェスターは配膳中のラティナの姿を見た。

デイルが居ないにも関わらず、彼女はとても元気な様子で、足取りも軽い。

それは間違いなく「彼」がいるからに違いない。

 

「嬢ちゃんを守りたいんだろう?……一応聞くが、ついてこれるか?」

 

「は、はい!」

 

ルディはもちろん即答した。

 

すでに知られているのかというツッコミをしたくもなったが……

「ついてこれるか」など彼にとっては愚問だ。

ついていかないと彼女を守れないのは明白である。だからこそ彼も決意したのだ。

 

そんな彼の決意にジルヴェスターはフッ、と笑みを溢し、気分良く酒を飲み干し、そしてこう言った。

 

「そうこなくちゃな」

 

 

そんなジルヴェスターとルディのやりとりを見ていた常連達もルディを色々と弄り始める。

 

「おう!嬢ちゃんにカッコイイ所見せてやれ!」

 

「生半可じゃねえぞぉ!俺もビシバシ鍛えるからな!」

 

「そうだぞーまず俺の雑用を──」

 

「お、おう!」

 

そんな感じのルディにラティナは声をかける。

 

「弟子入り、したの?」

 

「あ、ああ……」

 

「……頑張ってね、ルディ」

 

「……お、おう……」

 

そう言うとすぐにラティナは彼から離れるが、顔は少し赤くなっていた。

当然ながらルディも顔が赤い。

とてもシンプルなものであったが、それだけでもふたりはこんな感じであった。

 

「……いいな」

 

「ああ、いいな」

 

ジルヴェスターを除いた周辺の常連はそれだけでやられそうになり

その様子を見ていたリタはいつも通り呆れていたのは言うまでもない。

 

(全く…もはや新たな名物ね…ここの……)

 

 

――――――――――――――――

 

 

そして学舎卒業後、ルディはジルヴェスターのもとで冒険者修行を始めた。

 

まずは「習うより慣れろ」という言葉の通り、小さな依頼を受けることから始めることになった彼。

 

主に荷物運びやペット探しなどの本当に小さなものばかりではあるが、こうやってコツコツと小さなことを地道にやる事で次第に信用を得られていくというものである。

それに駆け出しの冒険者はだいたいこういうことをやるのが一般的だ。

 

「えっと……次は……西区のボードさんってところの……」

 

そしてその合間合間にジルヴェスターより冒険者としての基本を教えられる。

 

「いいか?いくら自由といえど、マナーはあるからな?兄ちゃん」

 

「はい!」

 

こういう形で当然ながら休日などを除いた毎日冒険者の修行は続いていく。

 

ルディはもちろん忙しくなり、覚えることを含め鍛冶屋での手伝い以上に大変であった。

 

ただし──

 

「ルディ、お疲れ様」

 

「き、今日も待ってたのかよ……」

 

「うん、待ってたよ。ルディの話聞きたいから」

 

彼女との時間は前より確保されることとなった。

多分大人たちの気遣いやらがあるのだが、当の本人達はあまり知らない。

 

「今日は何してたの?」

 

「別に……特に珍しいことなんてねえよ……ただ荷物とか雑用とかしてただけで…」

 

「でも……よく聞きたいから……」

 

「……じゃあ…」

 

ルディのその依頼やらが終わった後はこんな感じで虎猫亭の近くのベンチにてルディの話を相槌をうちながらも聞いているラティナ。

ちなみに最近の彼女はいつも彼から貰ったリボンを身に着け、皆で分けたペンダントをつけている。

そしてルディも角のペンダントに彼女から貰った貝殻を結び直して一緒にしたものをつけていた。

 

なお、このことは長期任務中で保護者がいないからできることであり、居た場合はできないもしくは頻度が下がることとなろう。

 

「あとは……そういえばさっきの帰りに久しぶりに猫に会ったんだ」

 

「猫!?」

 

ラティナはその猫の単語を聞いた瞬間に目を輝かせ、ルディのほうに身を乗り出した。

その仕草に再び赤面しながらも彼女へ答え始める。

 

「あ、ああ……たまに猫の相手する時があるからな」

 

「ルディ、猫と親しいの!?」

 

「お、おう……たまに腹空かせてる猫がいるからそれに餌あげてたら……なついてきて……次第に他の猫も寄ってくるようになったから自然と……」

 

「猫、良いなあ……ラティナ、猫とはあんまり仲良くなれてないから……」

 

ラティナは動物が好きで、特に猫が好きなのだが、本人は犬になつかれることはかなりあっても猫になつかれることはあまりない。

猫じゃらしをもって格闘してみたものの、一匹にこそ撫でれたが、それ以外はダメということもあった。

それゆえに猫と触れ合える彼のことを羨ましがっているようだ。

 

「ルディ、今度その猫しょうかいして!」

 

「しょ、紹介って……俺の猫ってわけじゃないんだけどな……」

 

「いいの!だから……ね?」

 

「……ひ、暇ができたらな……」

 

彼女の勢いに押され、それを断ることもできずに了承する。

 

(あの猫今どこにいるんだっけ……探さねえと……)

 

「~♪」

 

猫の居場所について考えているルディと猫に会えるかもしれないと思い、とても機嫌が良いラティナであった。

そんな風に過ごしている二人であるが、虎猫亭の中から開店準備をしているはずのケニスが飛び出してきた。

 

「ケニス?」

 

「ケニスさん…?」

 

「おう、ラティナとルディか!」

 

ケニスは二人が見るだけでもやけに慌てていた。

 

「ケニスさん、どうしたんですか?」

 

「た、大変だ!ついにリタがっ!」

 

「リタがどうしたの?」

 

「生まれるんだ!」

 

「……ふぇっ!?」

 

「え!?」

 

どうやらついにリタの陣痛が始まったらしい。

 

「ルディは先生を呼んできてくれ、頼んだぞ」

 

「は、はい!」

 

ルディは藍の神(ニーリー)の神殿の方向に一目散に走っていった。

 

「ラティナは少し手伝ってくれ。色々と準備をする必要があるんでな」

 

「う、うん!」

 

そしてケニスとラティナは速やかに虎猫亭の中に戻っていった。

 

 

――――――――――――――――

 

そして神官を連れてきた後、リタと神官と付添のケニスは二階の一室に入り、出産が始まるというところなのだが──

 

「…………」

 

「…………」

 

「「「………」」」

 

その一階ではルディやラティナはもちろんのこと、店がやっていないにも関わらず、常連達もリタの陣痛を聞きつけ、集まっていた。

誰一人騒ぐことなく皆、「母子ともに無事の出産」を願っている。

 

(リタ、大丈夫かな……?)

 

(大丈夫……なのか……?)

 

そう二人が心配していると──

 

「おんぎゃあ!おんぎゃあ!おんぎゃああ!!」

 

ある鳴き声がした。

 

「う、生まれた!?」

 

「あ、まてよラティナ!」

 

その瞬間、それを直接確認したかったラティナが部屋のほうへ駆けていき、ルディもそれについていく。

 

そしてラティナが出産が行われていた部屋のドアを開けるとそこには先生やリタ、ケニスの他に新たな生命が確かに居た。

 

「おんぎゃあ!おんぎゃあ!おんぎゃあ!」

 

「生まれたの?生まれたの!?」

 

「はい、元気な男の子ですよ」

 

先生がそう答えると、ラティナの表情はぱあっと明るくなる。

そしてルディも驚いている。

 

「ふあああっ!」

 

「お、おおっ」

 

「リタ、よくやったぞ!」

 

「はあっ……な、なんとかね………」

 

 

赤ん坊が泣き終わり、眠りにつく。

泣いている間はケニス→ラティナと赤ん坊を抱っこをしていたが──

 

「そうだ、ルディもこの子抱っこしてみるか?」

 

「え?」

 

「うん、ルディも赤ちゃん、抱っこしてみよ」

 

そうしてラティナよりゆっくりと赤ん坊が手渡される。

 

「おっとと……」

 

少しだけ揺れるが、なんとか起こさないように抑えて、静かに抱っこする。

ルディにとってはこのようなことは始めてである。

 

(……意外と軽いんだな……)

 

赤ん坊は引き続きスヤスヤと眠っている。

 

「……俺も最初はこんな感じだった…のか?」

 

「おう、そうだぞ、みんな最初はこんな感じだ」

 

「………」

 

親や兄、姉から自分が生まれた時のことなどは一応は聞いたことがあるものの、実感などはあるはずもない。

それゆえに赤ん坊を見て、こうなっていたのかと思う一方

 

彼女のことも気になっていた。

 

(……そういえば…ラティナって昔のこと何も言わないよな…)

 

当然ながらラティナがデイルに拾われたということはわかっている。

だがそれ以前のことはルディはもちろんよく知らない。

しかし昔、彼女が虹を見て何かの名前を言った事と、元から角が折れていた事から、何か訳ありであるとは察していた。

 

「リタ、どんな感じだったの?」

 

「もうとにかく無我夢中だったわ……物凄く痛くて……死ぬ!死ぬ!って感じで…」

 

「し…しぬ……」

 

一方のラティナはリタと話している。

その表情は言うまでもなく彼女らしい良い表情だった。

 

(ま、いちいち俺が知るようなことじゃない…か……言いたくないこともあるし……)

 

そして表情を見たルディは詮索するようなことじゃないと思い、再び赤ん坊の顔を覗く。

 

「………ぅっ……」

 

その赤ん坊はとても安らかな表情であった。

 

――――――――――――――――

 

「………」

 

そうして色々と騒ぎ的なのが終わり、ルディは家へ戻る所だ。

静かに帰っているものの、ルディはなにやら考えているようで……

 

(……俺も将来あんなふうになるのかな?)

 

リタとケニスのことを見ているうちに自分の将来について考え始めていたようだ。

 

(冒険者で結婚する人も居るって聞くし……ケニスさんも元冒険者だったらしいし……)

 

いろいろな可能性を彼は想像するが、その想像には無意識に彼女──ラティナの存在が入っていた。

 

(世帯を構える?いや、一緒に旅をするとか……店を構える……って!?)

 

そしてそこで彼女のことをかなり考えていたことに気づく。

 

(な、な!そ、そんな先の話で…な、なんで…ラティナのこと……いや、でも…え?)

 

ぶんぶんとそれを振り払おうにも、それはそう簡単に切れられない。

当然である、大切な「恋人」のことを振り切れるわけがなかった。

 

(い、いや……これから何があるかわかんねえし……と、ともかく!今は今だっての!……とにかく今はラティナを守る力をつけないと……!)

 

なんとか自分を空想から現実に戻し、今の目標について考えつつ、家へ帰っていくのであった。

 

 

 

 

 




少年が冒険者になった所で次回からは少しだけ時間が進みます。
まだまだ試練はあるので二人を見守っていただければ幸いです。

次回は少し感覚を開けて11月24日投稿予定です。2日間隔から3日間隔となります。
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