好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

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10歳編のときにやれなかった心残りを投下ァ……


赤毛の少年と幼き少女、悩み事と貸本屋

「~♪」

 

ラティナは機嫌よく鼻歌を歌いながらバスケットを持って東区の市場を歩いていた。

おつかいを頼まれ、市場を色々と見周っているのだ。

しかし、買い物に気を取られていたのか、正面の人に気付かず、ポン、と前から歩いてきた人にぶつかってしまった。

 

「あ、ご、ごめんなさい!」

 

「いえいえ、あなたこそお怪我は?」

 

その人は大人の女性であった。

黒いローブを羽織っている普通の人間族の女性である。

だが、ラティナの目に写ったのは、自分が思い浮かべる理想的な女性像そのものだった。

 

(……大人の女の人……やっぱり……ある……)

 

「ら、ラティナは大丈夫……」

 

「そう……よかったわ……おつかいかしら?頑張ってね」

 

「う、うん!」

 

そうするとその女性はラティナが来た方向へ歩いていった。

ラティナはそれを見ると同時に、自分の『とある部分』を確認し、ため息をついた。

 

「はぁ……」

 

(……やっぱり……ラティナには……ない……)

 

――――――――――――――――

 

その後、ラティナはおつかいから戻り、厨房に入ってじゃがいもの皮むき作業に入った。

なにやら考えている様子であったため、ケニスは彼女に声をかける。

 

「ラティナ、どうした?なにか悩み事か?……何かルディが…」

 

「ううん、ルディのことじゃないの……ラティナ…おっきくなれるかな?」

 

「うむ……人それぞれだが、身長は伸びる時は伸びるぞ?俺がラティナくらいの時はそうでもなかったが、段々とグーンと伸びて…」

 

「ううん「そう」じゃないの……」

 

「ん?」

 

ケニスが疑問に思っているとラティナは手を自分の胸に当て、深くため息を溢す。

 

「ラティナ、おとなになっても大きくならない……ラグ、ラティナはモヴに似てるってよくいってたから…」

 

「……モヴ?」

 

「うん、モヴ、小さいから…ラティナもちいさいまんまかもしれない……」

 

(……まさか…)

 

ケニスはその仕草と言葉である程度「悩んでいる事」の予想がついてしまった。

だが、ケニスはとりあえずその「なやんでる事」は置いておいて、ラティナの口から出た人の名前について質問をする。

 

「モヴって誰だ、ラティナ?」

 

「ラティナの女の親……おかーさん……だよ」

 

ここに来てラティナのお母さんのことが唐突に出された。

ケニスはもちろん驚いているが、表向きには平然としたままであり、ラティナも気づいていない。

 

「ラティナの母親はどんな人だったんだ?」

 

「ラティナのね、髪と角の色はラグとおんなじだけど角の形とか顔とかはね、モヴに似てるって言われてた」

 

そう答えた後、ラティナは再びため息をつく。そして自分の胸に手を置いた。

 

「モヴ、大人なのにちいさかったの…お客さんも言ってたよ、大きいほうが良いって……」

 

「……」

 

(これは……)

 

ケニスはかなり渋い顔をしつつ、恐る恐るこの質問をする。

 

「ラティナ、お前の母親が小さかったって……何の…ことだ?」

 

「……お胸」

 

それを聞いた瞬間、ケニスは予感的中と考えたと同時に更に渋い顔をする。

初めて聞かされたラティナの母親の情報が貧乳だった……ということも驚くことなのだが

女性の胸の悩みなど当然だが聞くことなんでほぼ無いがゆえに、ケニスも頭を抱えてしまった。

 

(何故……俺に…?)

 

「……リタに………相談してみたらどうだ?」

 

頭を抱えていたケニスが捻り出した言葉を聞いた瞬間、ラティナは少しだけ青くなりつつこう話す。

 

「リタ、おっきくないよ」

 

本人が聞いたら少し笑顔に影が入りそうな言葉であった。

リタはスレンダーな女性であるが、悪く言えばあまりない。

現在は母乳が出るため常に張って、大きくなっているのだが、平常時はそうではない。

 

「おっきくない人に聞いたらダメなんだよ?昔、ラティナがモヴに『なんで?』って聞いたらほっぺた取られちゃうところだったんだよ」

 

「そ、そうか……」

 

だからといって自分にその問題を出されても特に答えられないのだが……とケニスは思う。

そして続いてラティナはケニスにこう質問をした。

 

「ケニス、ルディは胸がおっきい方が良いって言うのかな……?」

 

「………そ、それは…」

 

それを聞いてケニスは更に渋い顔をする。

ラティナとしては彼の好みでありたいということらしいのだが、今のラティナでも彼にとっては十分すぎるのは明白であった。だが本人に自覚はまったくなかったのである。

そしてケニスはかなり考えた後こう返した。

 

「わからん…な、やはりそういうのは本人に聞いてみなければな……」

 

ケニスは「逃げる」という選択肢をとった。

どう答えてもラティナにとって良い答えにはならないと考えたからである。

かなりの苦渋の決断であった。

 

(すまない、ルディ……!なんとか答えてくれ…!俺には無理だ……!)

 

そしてケニスはこの場に居ないルディに謝りながらも残りの芋の皮を剥いていたのは言うまでもない。

 

――――――――――――――――

 

 

別の日、デイルが(ラティナと離れたくないから)行きたくないと言いながら大型魔獣共同討伐依頼に走る中

ルディとラティナは道の途中で会い、そしてそのまま西区の方へ行くことになった。

二人共貸本屋の本を借りに行くので一緒に行くことになったのだが──

 

「……」

 

(ラティナ、黙ったまんまだけど……どうしたんだ?)

 

先程会って以降、ラティナは何かを考えているからか、無言のままであった。

そしてある程度進んだ後、ラティナは足を止めて、ルディに話し始めた。

 

「ねえ、ルディ」

 

「ラティナ?急に止まって……なんだよ?」

 

「………ルディは……ラティナの胸……おっきいほうがいい?」

 

「…………へ?」

 

ラティナのその発言に一瞬思考停止するルディだったが、次の瞬間彼は顔を真っ赤に染める。

 

「な!?な、なんで」

 

「ケニスが本人に聞いたほうが良いって……」

 

(ケニスさん!?)

 

ケニス本人の苦労も知らないためそれについて驚きまくっている。

 

「どう……かな?」

 

ラティナのその問いに関してルディは良い答えが浮かんでいなかった。

ついラティナのほうをチラっと見てしまってもいる。

ラティナの服装は青色基調のワンピースで、髪はいつもの二つ結びで青のリボンでまとめてある。

言うまでもなく可愛く、綺麗であった。

 

(ラティナの……胸……って俺は何考えてんだよ!?)

 

そして思わず良からぬ想像をしてしまったため、心のなかで自分をぶん殴った。

年頃の男の子であるためそういう想像は仕方がないものだが、ラティナに対してそれをするのは物凄く不味いとルディは思ったからだ。

 

「ルディ……?」

 

数分ほど黙り続けたため、ラティナからは不審がられている。

考えて考えて……そしてついに言葉を捻り出した。

 

「べ、別に……俺はラティナがどうなっても…いいってか…」

 

「どうなっても?」

 

「な、なんつーか……大きくても小さくても俺はラティナのこと好きだからっ……!」

 

「……ふぇっ!?」

 

そのルディがなんとか捻り出した言葉に、ラティナは赤面する。

当然ルディも赤面していた。

「好き」ということはわかりきっているのだが、二人にとっては改めて言うとやはり紅潮しやすいものらしい。

 

「……だ、だから……いくぞ……目的の本なくなっちまうかもだし…」

 

「う、うん……」

 

そして再び歩くのを再開する二人、当然ながら暫くの間紅潮が続いていたのは言うまでもない。

 

――――――――――――――――

 

その後西区の貸本屋に到着した二人は各自で本選びをすることにした。

 

「うーん……続編のやつまだ借りられてる……いつになったら返ってくるんだよ…」

 

「……あ、あった。戻ってきてたんだ」

 

ルディは男の子らしく冒険物や戦い物などのいわゆるワクワクするような小説などの本を持ち、ラティナはいわゆる恋愛小説などの女の子らしい本を持っている。なお恋愛小説と言っても色々とあるが、ラティナは自分のことと重ねているかは定かではないが、いわゆる王道な同じ年同士の恋愛物が好きらしい。

そして二人はその各コーナーのところから図鑑のコーナーに向けて歩いている。

 

(そういえばあの図鑑まだあるかな……あれ一冊しか無いんだよなぁ……)

 

(あの図鑑あるといいな……いつも見ても借り出されたままだから……)

 

二人がそう思いつつ、そして双方に気づかずに本棚を見ていると──

 

 

「「あ、あった!」」

 

シンクロしたかのようにその本を見つけた。

 

「……へ?」

 

「……あれ?」

 

二人共どうやら同じ本……植物の図鑑がお目当てだったらしい。

そしてルディが先に話し始めた。

 

「……俺は後でいいから、ラティナが……」

 

「え?ルディが先で良いよ?ラティナは後で借りるから」

 

「いやこういうのは「レディーファースト」ってやつだからラティナが先で良いよ」

 

「でも植物の図鑑だから冒険者のこととかに必要でしょ?……ルディのほうが……」

 

二人でこういう流れが続いてしまい、もはや譲り合い合戦となっていたその時、二人のところに貸本屋の店員が声をかける。

 

「あらラティナちゃんとルドルフ君、二人とも本借りに来たの?」

 

店員の名前はゾフィ。

赤茶の髪のハーフエルフ族の女性である。

ハーフエルフ族は読書をとても好む。いわゆる本の虫であった。

 

「あ、ゾフィさん……でも……」

 

「まあ……たまたまダブって……」

 

二人共苦しい顔をする。

その二人の表情を見てゾフィはこう話す。

 

「ほう、二人共同じ本を……ならどちらかが借りて二人で読めば良いんじゃないかな?二人共親しいみたいだし」

 

「ま、まあそのほうがいいな。なあラティナ?」

 

「う、うん……そうだね」

 

一応この譲り合いは解決したようだ。

なお名義としてはラティナが借りることになった。

 

 

――――――――――――――――

 

 

そして広場のベンチに二人は座り、図鑑を一緒に見ることになった。

一応ラティナが借りて一人で観てルディに貸すという手段もできなくはないが、「二人で読めばいい」という言葉の通り、二人で並んでそして図鑑を広げてみることになった。

 

「へー……そんなのがあるんだ」

 

「そういえばこれのこと、デイル言ってたよ、強烈な毒があるって」

 

「確かになんかいかにも毒があるって感じの色だな……」

 

二人共真面目に学習しているが、やはりその分お互いの顔が近く──

 

(……ルディのとなり……)

 

(……ラティナ…とちかくで……いい…んだよ……な?)

 

再び紅潮していたのは言うまでもない。

 

 




胸のことは原作 WEB版題名「師匠、幼き少女の話に困惑する。」及びアニメ最終話からで
貸本屋の件はCHIROLU先生の活動報告の小SSからということにしておきます。

貸本屋はまた再び登場予定……かもしれない

次回は30日に投稿します
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