好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。 作:うちのこ
寂しい……
「………」
学舎では今日も授業が行われていた。
積極的に挙手をし、答えを発表する子もいれば、静かに先生の話を聞き、石板と呼ばれる小さな黒板に書き溜めている子もいる。
「………はぁ」
そんな中、その両方にも属さず、ただため息を付いているルディの姿があった。
もともと勉強はそれほどでもない彼であるが、今回の原因はその勉強とは別であった。
それは──
「……」
ルディの向けた視線の先に写る、熱心に先生の話を石板に書き留めている彼女──ラティナのことであった。
先日、ケニスとリタに相談した結果、ルディの中にあった「モヤモヤ」の正体がラティナへの「恋」であることが発覚した。
そしてリタからは「ラティナを気にかけてほしい」とも言われた。
言われた事を守ろうと朝から色々と関心を向けてみたものの。
当然、デイルがいる時の彼女はいつも通り元気であり、とてもじゃないがルディが入る隙間は存在せず、ただ時間が過ぎていくばかり
その上、恋と自覚したためか、彼女を思う回数が以前より多くなり、ぼーっとしてしまう事が多くなってしまった。
そんなルディが先生の話をちゃんと聞けているはずもなく……
「……で、この文字は……ルドルフさん?」
「うわっ、は、はい!えーっと……えっと…」
「ちゃんと話聞いてたの?」
「うっ……す、すみません……」
「全く…じゃあ──」
(はぁ……なにやってんだろ俺……)
ラティナに恥ずかしい姿を見せてしまった(と思ってる)ルディは再びダウンするのであった。
(ルディのやつ、最近余計におかしくなってる…やっぱりこれって)
その様子を見たクロエはある一つのことを改めて確信するのであった。
――――――――
「はぁ……」
全ての授業が終わり、一応の下校時間となった。
と言ってもまだ昼前なのだが、これには理由があり
あくまでもこの学舎は最低限度の教育しか行われておらず、また家によっては労働力として子供は重用されているため、なるべく拘束時間を減らしているのだ。
そして昼食については家で取る子供達が多いが、クロエ達のように集まってピクニックのように昼食を取る子達も居る。
そしてルディは気が進まないながらも、いつも通りにクロエ達のところへ行こうとする。
「ここで結局ラティナに会うんだよな……」
(って一体どうすりゃいいんだよ……!)
彼女へ想いを伝えたところで多分変わらない以上、余計にわからなくなる。
だが行かないわけにも行かない…とそう渋々と足を向けると……
「あれ?」
なんとその想いの相手が不在だったのである。
「あ、ルディ、ラティナなら先に帰るって」
そのことについて聞く前に、クロエから答えが出る。
「なんか、今日は酒場で手伝うことが多いんだって」
続いての疑問の答えもシルビアが出す。
「お、おう、そうなんだな」
なんか心が読まれている気がすると思ったルディだがとりあえず床に腰を下げて、持ってきたパンにかぶりつくのであった。
――――――――
そして他の4人が喋りながらも美味しく食べてる中、ルディだけはどうにもあまり進まず、やはり悩んでいるようであった。
(俺がラティナのことを好きなこと…こいつらに話しといたほうがいいよな……だけど絶対笑われるんだろうな……)
ルディは薄々その光景が目に浮かんでいるおり、下手すればバカにされるかもしれないと思っていた。
だが、今のこの詰み状態を打開できる策は全くなく、むしろクロエ達に話したほうがその打開策を見つけられるかもしれない。
クロエやシルビアはラティナと特に仲がよく、好物などがよくわかるかもしれない。
(くっ………仕方ねえ……)
ここは恥を偲んで、打ち明けるしか無い…とルディは結論づけた。
「皆」
「ん?」
ルディの声で会話が止まる4人。
「どうしたのルディ、急に呼んで」
「うん、なんかいつもより暗そうだし…」
マルセルとアントニーの疑問もごもっともだが、とりあえずルディは改めて話し始めた。
「あのさ俺……」
「ラティナのこと、好きみたいなんだ」
「………」
「………」
「………」
「………」
その発言に黙ったままの4人
「な、なんだよ……急に黙って…」
「いや……」
「そういうわけじゃないんだけど…」
「まあ……」
「うん……」
「あんた……やっと気づいたの?」
「え?」
まずクロエの発言がルディに着弾。
「うん、皆わかってたわよ?」
そして次にシルビアの発言が着弾。
「確かに……丸わかりだったよね…」
さらにマルセルの発言が着弾。
「まだ気づいてなかったんだ……」
そしてトドメのアントニーの発言が着弾する。
その4連打の着弾にルディは思わず
「………!!!?」
まさに火山が爆発したかのように、顔が赤くなっていった。
もし蒸気が放たれたらかなりのものだろう。
それくらいルディにとっては恥ずかしかったのだ。
――――――――
「はあっはあっ……」
顔の赤さは少し引いたが、ルディはある意味萎んだ
恥ずかしすぎて顔が上を向けられないほどである。
「はぁ……いつからそんな感じだったんだ俺……」
「確か…多分学舎に入った時くらいよ」
「いや違うよ、はじめて会った時からだよ」
「うん、あの時からルディはぐいぐい行ってたしね」
「へー、そうだったんだ……」
「な!?」
かなり仲間に見られていたことをわからされ、ルディはもはやなにがなんだかよくわからなくなっている。
「あ……ああ……」
「全く、自分の気持ちに鈍感すぎるんだから」
「し、仕方ねえだろ!そういうのよくわからなかったし…で、結局俺をからかいたいのかよ……」
そうルディが言うと、他の4人は顔を見合わせる。
そしてその中での中心人物だと思われるシルビアがこう話す。
「そうじゃない……私達がルディとラティナの「お膳立て」をするってことよ!」
「へ?」
――――――――
また別の日の学舎
すでに授業が終わり、一部の人が帰っている中であり、本来ならいつも通り集まって昼食を取る「はず」なんだが
「………え?」
何故だかクロエ、シルビア、マルセル、アントニーの姿が見えず
「あ、ルディ」
何故かその恋の元の張本人であるラティナだけが居た。
「ら、ラティナ……他の皆はどうしたんだ?」
「うーんとね……みんな用事があるからって先にかえるって」
「そ、そうか……よ……」
(あいつら……!)
間違いなくその「用事」は嘘であろうとルディは真っ先に気づいた。
だがラティナへつく嘘はこれでも十分すぎるものであった。
これがいわゆる「お膳立て」なのか…とルディは改めて認識する。
「……で、良いのか?」
「うん、いっしょに食べよ?」
まあここで自分まで帰ってしまうとお膳立てが無駄になり、なによりラティナが可哀想である。
仕方がないので、対面するような形で座り、ランチを広げた。
(そう、仕方ない……仕方なくだからなっ!それにラティナを一人にしちまったら可哀想だし……そう!そんだけだ!だから、大丈夫だ)
何に対しての大丈夫なのか?
誰に対しての言い訳なのか?
ルディのツンデレ具合はラティナへの恋を自覚した後も無論、健在であった。
――――――――
「………」
「~♪」
もぐもぐとランチを食べている二人
なおルディは持ってきたパンを、ラティナはケニスに手ほどきを受けながらも自分で作ってきた料理を持ってきている。
片方は機嫌よく食べているが、もう片方は緊張で味が全くわからないようである。
(俺は……何か話を……って)
ルディの中には鍛冶やらの話しか頭に浮かばず、同然ながらクロエやシルビアのような女の子のような話はできない。
そのため更に黙る選択肢しか取れていなかった。
「ルディ?」
「!?ど、どうしたんだよラティナ」
「ほっぺに、パンくずがついてるよ?」
「お、おう……わりぃ……」
ラティナに指摘され、そのゴミを取るルディ。
(……何してんだろ…俺)
自分で自分のことがわからなくなりそうだが、なんとか自分を保ち
ランチを食べているルディであった。
もちろん、味は全くわからなかった。
――――――――
「はぁ……」
「ごちそうさまでした」
ルディが先に食べ終わったようでため息をつく中、ラティナはいつも通りに食事を食べ終わる。
「……」
(これでやっと帰れ……る?)
と、ここでルディはあることに気づく。
基本帰るときは皆一緒に帰っている。
それでラティナ、クロエ、シルビアとルディ、マルセル、アントニーに分かれて喋りながら帰っているのだが、今回は他の4人が居ない。
つまり、ラティナと二人っきりで帰ることになるのだ。
「なっ……!」
「?」
ルディの試練はまだまだ続くのであった……。
ルディ君にはツンデレ成分がだいぶあると思うの……