好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。 作:うちのこ
そして前回の続きです
相変わらず初々しい
シヘスと別れた後、東区の市場でショッピングをするラティナとそれに付き添うルディ。
「えっと、リタに頼まれたものは買ったから……あとはケニスの…」
「……」
ルディはラティナの荷物も少し持っておいるのだが、脳内ではラティナの空いている左手を見つつ、葛藤していた。
(……こういうのってデート……みたいなものだよな………手とか…繋いで……)
ルディは彼女の手を握ろうと自分の手を伸ばしかけては、途中で断念し、手を戻す行動を繰り返して居た。
ラティナは気づいていないが。
彼女も彼女で──
(……ルディと一緒で……もっとできること……)
やはり同じように悩んでいた。
そしてルディが手を握るのを諦めたその後に今度は彼女のほうから手を握ろうと伸ばすが──
(……ん……)
肝心の彼の手はポケットに隠れてしまい、握ることが出来なかった。
それで少し不自然な状態になっていたラティナにルディはこう声をかける。
「ん?ど、どうしたラティナ?」
「ふぇ…な、なんでもないよ?…次の店いこ?」
「お、おう……」
こうして二人の時間はなんとも焦れったく過ぎていったのであった。
――――――――――――――――
「あとは大丈夫か?」
「うん、もう良いよ」
そのまま二人は手を繋げられずに、ラティナは買い物を終える。
そして後は帰るだけなのだが──
「……ん?」
ルディはいつも騒がしい市場の様子がさらに騒がしくなっているのに気づいた。
「どうしたの?ルディ」
「いや……なんか……」
ガヤガヤと騒いでいる人たちの中、ある一人の男が声を荒げて放った。
「暴れ馬が来るぞ!!避けろ!」
それと同時に馬の足音らしいのが急速に近づいてくる。
「ふぇ!?」
「ラティナっ!!」
道の中央に近かったラティナをルディは咄嗟にラティナの手を掴み、引っ張った。
「!?」
そして次の瞬間、馬は先ほどまでラティナがいた場所を駆けていった。
ルディがラティナの手を引かなかったらどうなっていたか……
その暴れ馬を追うように憲兵が捕獲用具か何かを持ち、同じく馬で駆けていった。
「す、凄い……」
「あ、ああ……」
市場の様子は暫く騒いでいたが、大丈夫だとわかったのか、いつの間にか活気を取り戻していた。
どうやらこういうことはたまにあることらしい。
(そういや前もこんなことあったような……あん時は家の中から見てて……って!)
ルディはそう思うと、ラティナと手を繋いでいることに気がついた。
当然ながらルディは少し顔が赤くなり、ラティナも同じように紅潮する。
「あ、うっ…」
「いや、こ、これ……は」
「う、ううん!……いいから…ね!」
「お、おう……?」
あまり会話になってない会話だが、とりあえず暫く手を繋いでいたいということらしい。
そして二人共そのまま虎猫亭への帰り道に行くとした。
「………」
「………」
暫く無言で歩く二人、手を繋いでいる分余計に思考停止してしまっているようだ。
(…え、えっと……えっと……!)
だが流石に不味いと思った二人
そして今回はラティナのほうから話し始める。
「る、ルディ!」
「な、なんだよ……?」
「あ、あのね……最初に手繋いだ時……あったよね?」
「手……あ…あれか?あの怪しい二人の時の……」
ラティナとルディが最初に手をつないだ時
それは雪の日の事、たまたま会った時に怪しい二人から逃げるためにルディが咄嗟に彼女の手を取った時だ。
「あれは……必死だったから…つか……夢中だった…し」
ラティナの方から目を逸らしながらそう途切れ途切れの言葉で答えるルディ。
やはり少し恥ずかしいらしい。
そんなルディに彼女はこう話す。
「……あのね、あの時からルディのこと…気になってたんだよ」
「あ、あの時から……?」
「うん、最初はよくわからなかったけど……」
「そう、か………」
(あの時から……)
「………」
その会話があった後、やはり静かになってしまっていた。
相手の手の感触がわかってしまうため、余計にそうなってしまったようである。
(ルディの手……やっぱり、あったかい……)
(ラティナの手、小さくて……柔らか…い……)
脳内ではこのような形になってしまっている。
二人の距離がもっと近くなるのはまだまだ先のようだ。
――――――――――――――――
「ただいま!」
「あらラティナ、おかえりなさい」
「おう!嬢ちゃんおかえり!」
「おかえりだな!がははは!」
リタ及び常連達はラティナに迎えの声をかける。
なおラティナはいつもどおりの調子にしているつもりだが、まだ微妙に顔を赤くしていた。
「うん!あれ?デイルは?」
「デイルならまだ帰ってきてないけど、もうそろそろじゃない?」
「ふーん…じゃあ着替えてくるね」
「ええ、頼んだわ」
ラティナはそのまま二階へ上がっていったが、常連達は終始ニヤニヤが止まらず
リタはその様子にまたため息を付いていたそうな。
――――――――――――――――
「……」
部屋に入ったラティナはベッドに座り、彼に握られた左手を確認していた。
(…………)
彼に握られたその手はまだ少し暖かい。
雪の日のあの時や雪合戦の時にも感じたその手。
これが心の暖かさというものだろう。
(…………ルディ…)
そして彼女はその暖かさを良いと思う一方、その暖かさを失うことを恐れつつあった。
魔人族と人間族の寿命差は言うまでもなく違いすぎる、だがそれに関しては「理」に逆らえない不変のものであるため、ラティナも今の所は割り切ってはいる。
だがそれとは別に彼の負傷やらを心配していたのだ。
今の所は修行や町中での小さな依頼をこなしており、危険な仕事はほぼない。
だがじきに外へ出て魔獣退治や護衛任務や薬草などの素材集めなどの本格的な仕事を行うことだろう。
しかし、デイルに連れられてクロイツの外を見てきた彼女は知っている。そのような任務にはもちろん危険が付き纏うということに……
このクロイツ周辺は平和であるため、森の奥地などに不用意で近づかない限りは大丈夫だが、それでも盗賊などが現れたり、凶暴な魔獣が比較的表に出てきたりで結果かなりの負傷することもある。
今回の暴れ馬の件もその予想外な出来事の一つにあたる。
幸いラティナが聞く限りでは死亡者はいない。だがかなりの大怪我をした人を聞いたことはある。
それ故に彼女は彼が大怪我をしてくるのではと心配し恐れても居た。
せっかく掴んだ彼との距離が離れるのは嫌だと思っていたからだ。
(……だいじょうぶ……だよね……ルディ……)
左手の暖かさを感じつつも、不安をかなり覚えていたラティナであった。
悩み多すぎるのよ、この二人
ちなみに手を繋ごうとして繋げられないところは少しだけ原作を意識してみました。
ラティナのほうからもなので、このIFらしくなってるはず……。
次回は少し間隔早めて8日に投稿します!
ラティナの悩みが現実に……?