好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。 作:うちのこ
原作web版の「閑話、クリスマス番外編。」が一応過去にあった設定です。
メイン執筆がご存知のT ogaさんのため、多分私よりまともだがキニシナイ()
大晦日の夜は、『聖夜』と呼ばれている。
『聖夜』は、親しいものや家族で宴を開き、家の中で一年間に思いを馳せながら新年を迎えるこの世界での伝統儀式だ。
虎猫亭でも勿論、いつもの常連達が食べて飲んで騒いでいた。
(家族のいる者はさすがに来ていないが)
そんな中で一人、『聖夜』を異常に怖がる少女がいた。
その少女──ラティナは足を震わせながら配膳をしており、両親や兄姉たちに「泊まってこい」と言われてここにいるルディはいつも頼んでいる果実ジュースを口に運びながら、彼女に声を掛けた。
「なあ、ラティナ。まだ
あの時とは、彼女らが学舎に通いはじめた年の聖夜の日のことだ。
こっそり家を出て、魔物を見てみよう。
誰が言い出したのか、学舎で夜遊びの話が出て……
結果、聖夜の日にのみ現れるアンデッド『ヘルブラックサンタース』に取り囲まれてしまったのだ。
その時はデイルの助けで事なきを得たが、今日はそのデイルが依頼で王都まで行ってしまっている。
デイルはラティナが聖夜を怖がっているのを良く知っているため、最初はその依頼を断ろうとしたのだが……
『ラティナ、だいじょうぶだから!デイルはお仕事がんばって』
『いや、でもなあ……聖夜の日に帰ってこれなくなっちゃうんだぞ』
『もう昔のこわがりなラティナじゃないよ。テオもいるのにいつまでも弱虫ラティナじゃだめなのっ!……だから、ね』
『……いや、でも……』
『デイルっ!』
『……わかった』
テオが生まれて自分も子供のままではいられないと思ったのだろう。
少し大人ぶったラティナはアンデッドへの恐怖心を隠し、娘を心配する
「ラティナ、だいじょうぶだよ。テオのお姉ちゃんだもん。こんなのでこわがってちゃお姉ちゃん失格だから」
そうラティナが言ってもルディからは彼女は少し震えていることが見えた。
(やっぱり怖いんじゃ……)
「……本当に大丈夫か?俺が店の手伝いしてもいいんだぞ?」
「ううん。ルディは冒険者のお仕事で疲れたでしょ?ラティナもお仕事がんばりたいの」
そう言って店内を動き回るラティナをルディと常連達は心配そうに見つめていた。
――――――――――――――――
数分後──
「あっ、しまった」
厨房で料理を作っていたケニスが何かに気付き、そう言葉を漏らす。
そして、料理の火を止め、テオの世話をしているリタの元へ行き、相談をした。
「リタ、今いいか?」
「あうー、あうー」
「ごめんね、テオ。……ちょっと待ってて……」
リタはテオに母乳をあげながら、ケニスの話に耳を傾ける。
「どうしたの?」
「実はな……バターが足らなくなってきたんだ……シェパーズパイが作れなくなるかもしれん」
「ラティナのシェパーズパイはこの店の看板メニューの一つだから……聖夜の日に材料不足で売れないってのはちょっとねえ……」
「だろう。だけどバターを買いにいこうにもこの時間だ。市場はもう店終いだろうし、どうしたものかと思ってな」
ケニスとリタが二人で首を捻る。
熟考の後、リタが一つの案を思い浮かべた。
「そうだ!確かラティナとルディ君の友達にパン屋の子がいたでしょ?その子のパン屋から借りて、後で買ったものを返すとか」
リタの案にケニスも大きな声で同意する。
「それだ!すまんリタ、助かった!!」
そう言うとケニスはすぐにラティナとルディの元へ駆けていく。
そんなケニスにリタは怒りの視線を向けた。
「あー!うー!!」
「ごめんね、テオー。うるさかったわねー。後でパパに怒っとくから、テオはおやすみ~」
テオの前で大声を出したケニスが後でリタにこっぴどく叱られたのは言うまでもない。
――――――――――――――――
「え?マルセルの家でバターを……ですか?」
「ラティナとルディがいくの?」
ケニスがマルセルの家でバターを貰ってきて欲しいと伝えると、二人は真逆の返答をした。
「ラティナを危険な目に合わせる訳にはいかないし、俺が一人で行ってきますよ」
「だめ!ルディは冒険者のお仕事で疲れてるからラティナ一人でいく!」
そのラティナの言葉に少しムッとなりつつも、あくまで優しくルディはこう言った。
「ラティナ。さっきから外のアンデッド怖がってるだろ?」
「こわくないもん」
ラティナは少しむーっと膨れながらもルディの言葉を否定する。
しかし、やはりラティナの手足は少し震えていて怖さを必死に隠そうとしていることは誰の目にも明らかだった。
「いや、怖がってる」
「こわくないもん!」
「怖がってるって」
「こわくないもん!!」
「絶対怖がってるって!」
「こわくないったらこわくないもん!!」
二人とも徐々に声が荒くなっていき、それを見たケニスや常連たちはなんとか彼らを止めようとする。
「ま、待て待て二人とも!」
「喧嘩するなって」
「二人で行けばいいだろ?な?」
喧嘩のようになり、止められた二人は黙り込んでしまった。
「………」
「………」
気まずい空気の流れる虎猫亭
二人が喧嘩することなどめったに無いが故に、常連達も驚いていた。
そんな中、ジルヴェスターが口を開く。
「……二人ともいいか?」
「……はい」
「………」
まずジルヴェスターはルディにこう確認を取る。
「兄ちゃんは嬢ちゃんを危険な目に合わせたくないから一人で行くと、そう言ったな」
「はい」
ジルヴェスターはルディの目をジッと見て、頷いた。
「うむ……兄ちゃんは言葉の通りのようだな。しかし、嬢ちゃんの方は
「え?」
ジルヴェスターの言葉にその場にいた全員が疑問を覚えた。
しかし、ラティナだけは何のことを言い当てられたのか理解したようで、少し驚いていた。
「ジルさん……なんでわかったの?」
「前に兄ちゃんが怪我して帰ってきた時から少しだが嬢ちゃん、様子おかしくなってただろ?今日のもそれだ」
「……」
ラティナは再び黙り込む。
「……?」
ルディとケニス、常連たちはまだ頭の上にはてなを浮かべたままだった。
ジルヴェスターはラティナの方を見てから、彼女がコクッと首を縦に振ったことを確認した後で、ルディたちにラティナがどう思っていたのかを喋り出した。
「嬢ちゃんは「冒険者の仕事で疲れてるから一人で行く」と言ったが、あれは少し違うんだ」
「だから、少し違うって何がだ?」
ケニスが疑問を口にする。
ジルヴェスターは慌てるなと手でジェスチャーしながら、こう続けた。
「先ほども言ったが、前に兄ちゃんが怪我して帰ってきたことがあっただろう。あの日から嬢ちゃんは……」
ジルヴェスターの言葉に被せるようにラティナは本音を口に出した。
「ルディにはもう怪我なんてしてほしくないのっ!」
「あ……」
ルディは合点がいった、とそう思った。
「ラティナ…あのな……」
ルディが言おうとする前にラティナが言葉を続けた。
「今日は街の外にアンデッドがいるんだもんっ!ルディが行ったらまた怪我して帰ってくるかもしれないもんっ!……だからっ!」
ラティナの目は、以前と同じように涙で潤んでいた。
ラティナはルディがまた怪我をして帰ってくる事を……もしかしたら、そのまま帰ってこなくなるかもしれない事を恐れて、アンデッドのいる街の外へルディを出す事を嫌がったのだった。
「ルディ」
「……」
ケニスからおしぼりを渡され、ルディはそれでラティナの涙を拭いながら、こう言った。
「前も言っただろ。もうラティナを泣かせないって……」
「……ごめん……でも……」
「ありがとな、ラティナ。心配してくれて。あれから必死に修行して、前よりは強くなってるんだぜ、俺。デイルさんやここにいる先輩たちに比べたらまだまだだけどさ……」
ラティナは俯いていた顔を上げ、ゆっくりルディの目を見つめる。
ルディは優しく微笑みながら、ラティナの手を取り、こう言った。
「ラティナ、一緒に行こう。俺が強くなってるってとこ。ラティナに見せてやる」
なんとも「彼」らしくないセリフであった
ぶっちゃけこの話をIFに組み込むことは全く考えてなかったのだ!
そして多分これ以降ないであろう2人のバチバチ
まあ、相手のことを想ってこうなってるので尊いけど。
私自身の骨折による故障により執筆が停滞してますが
案は整ってるので復帰次第全力全開します!ので今暫くお待ち下さい。
とりあえずこの番外編の次回は明日投稿です。
良いクリスマスを