好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。 作:うちのこ
しめて5ヶ月も充電してたとは……。
相変わらず二人の物語をお送りします。
ノベルアップ+の短編
相変わらずルドルフさんは……(遠い目)
「……おーい、そっちにあるかー!」
「いや、こっちにはないです。もうちょっと探してみます」
時は経ち、現在13歳のルドルフ・シュミット──ルディは他の虎猫亭の常連でもある冒険者とパーティを組んで森の中で依頼のものを探していた。
ルディが怪我をして帰ってきた日にラティナが流したあの涙は彼の心に火を付けたようで、努力に努力を重ねた結果、それなりの冒険者となったのだ。
剣術などもしっかり身につけ、父に作ってもらった剣を帯刀するなど装備もきちんと整えている。
もちろん「彼女」からのものである角と貝殻のペンダントも身につけている。
(なんとかの霊草を探せって……意外と無いもんなんだな……)
ルディが探している依頼のものというのはとある霊草のことであった。
頭をかきながらも彼は草むらをかき分けたり、木の根の所を注意深く見たりして、霊草を探している。
一応この森にはそれなりにあるものなのでそれほど希少なものではないのだが、探し物というのは欲しい時に限って見当たらないものだ。
目的のものを見つけるためにはいろいろな所を見る必要があった。
(……こっちか……か?)
「……あ、あった」
そして熱心に探しているうちに、目的の霊草が生えている場所を見つけた彼はそれなりの量を摘んだ後バッグの中へと入れる。
(こんくらいありゃ大丈夫のはず……そんな多くなくても良いって依頼主も言ってたし……)
「よし……」
霊草をしまった後、ふと辺りを見回すとある大きなものが目に入った。
「ん?」
(なんだあれ……岩の……塊……?)
それは純白の大きな岩であった。
この森は薄暗いが、ここだけはその石に集まるかのように光が差している。
自然なものではなく、誰かによって作られたものであるようだ。
(なんかの石碑か……?…なんも書かれてねえけど……)
石碑にしてもここらへんでそういう逸話は聞いたことがない。
そのためルディは他の可能性を考え、ある答えに辿り着いた。
(つまり……誰かのお墓……ってことか?)
おそらくはここで誰かが亡くなり、誰かが作ったのであろう。
(……でも誰が……)
そう考えていると少し遠くから聞き慣れた声が聞こえてくる。
「おーい!兄ちゃん!見つかったか!」
言うまでもなくパーティを組んでいる年上の冒険者の声だ。
少し心配しているような声色であり、結構離れてしまっていたのだとルディは気づいた。
「はい!見つかりました!」
「そうか、じゃあ戻るぞー!「嬢ちゃん」にも早く会いたいんだろー!」
「は……な!?」
冒険者よりそう声を掛けられて顔を少し赤くしつつ、ルディは森より出ることにした。
もちろんこの「墓」の存在を頭の片隅に入れておきながら……
――――――――――――――――
その後、ルディは依頼主の元へ行き、霊草を渡した後、虎猫亭の方へ向かった。
そしてその近くのベンチに「彼女」は居た。
「ルディ!おかえりなさい!」
「お、おう……今日も待ってたのかよ…」
その待ち人とはもちろんルディの恋人であるラティナのことである。
当然ながらルディが13歳であるなら、ラティナも同じく13歳だ。
2年前に比べて格段に成長しており、その容姿は「少女」から「乙女」のものへ変わっていた。
「うん、ケニスとリタが良いって、デイルも今日は物凄く遅くなるって言ってたし」
「そ、そうか……」
ラティナは相変わらず可愛く、綺麗であった。
身長もそれなりに伸び、「白金の妖精姫」としては間違いなく磨きがかかっている。
当然ながらあの保護者の監視の目は更にグレードアップしたのだが、それでも「見守る会」の努力などにより、今もこの関係が悟られることはなかった。
「でまあ、今回の依頼主は本当にマッドってやつか?なんかいつも素晴らしいとかどーのこーの言ってるし…」
「あ、私も聞いたことあるよ、東区に住んでるんだよね?」
そしてラティナの変化は外見だけではなく内面にも至っていた。
長らく一人称が「ラティナ」であったのだが、ここ最近では「私」となったのだ。
もともと気にしてはいたが、ルディの言葉もあり、そう考えることはなかったはずである。
しかし、やはり成長をすると自然と変わるようなもので、今では「私」という一人称をよく使っている。
「………」
そしてルディはそんな彼女を横から見ていた。
細かな仕草の一つ一つも可愛いと感じてしまう。
保護者が目を光らせるのも納得と言えよう。
そんな彼女を恋人にしている自分は本当に奇跡なのだとルディは改めて確認する。
(……って奇跡だろうとなんだろうと……俺はもっと強くならないと……ラティナのために…!)
そう思っているとやはりルディのことが気になるのか、今度はラティナのほうから質問をする。
「他にどんなことがあったの?」
「あ、えっと……あ!そういえば森の中で珍しいもん見たんだ」
「珍しいもの?」
「ああ、なんか森の開けたところにデカい岩があって……なんかの石碑かなんかのお墓か……」
「……!」
それを聞いたラティナは驚いた表情をする。
「ん…?どうした、ラティナ」
「あ、うん……そういえば……ルディにはまだ話してなかった…ね…」
「ん?話って……」
「その岩のところ……私の男の親…ラグのお墓だよ」
「……え!?ら、ラティナの!?」
それを聞いた瞬間、ルディはとても驚いた。
ラティナは少し顔を下に向けつつ、続けてこう話す。
「デイルが私のこと拾ってくれた時に作ってくれたの……ラグ、ずっと表であのままだったから……」
「あのまま……」
(つまり死んでたってことだよな……拾われたってことは知ってたけどつまり……その親とともに故郷を追放されてそして森の中で……前にどっかで「ラグ」って言ってたけど、そのことだったのか……)
ルディは驚きつつ、脳内でラティナのことを整理する。
それと同時に、彼女が想像以上に辛い経験をしてきたことを察した。
そしてラティナは続けてこう言った。
「私ね、あの時もう死んじゃうかと思ってた……でもデイルが拾ってくれて、皆と…ルディに出会えて……私、今すっごく幸せなの」
「そっ……か」
「……私、こんなに幸せで良いのかな……?」
ラティナの声は本人にとっては普通のつもりであったが、震えていた。
「自分がこんなに幸せでいいのか、この幸せが壊れないのか?」という不安が彼女の中にはあった。
ルディはハッとしてすぐにこう答える。
「…良いと思…いや絶対良いって!ラティナはもっと幸せになっていいと思うし!てか、俺が幸せを守ってやるってか……」
「ルディ……」
「と、ともかく……そんな湿っぽい声はやめろよ……俺は元気なラティナが…笑顔で元気なラティナが好きだし…」
「ふぇっ………う、うん……」
ルディの言葉にラティナは少し赤面し、ルディもまた少し顔を赤くしていた。
あの「涙」から2年ほど経ち、成長していた二人であるが、ここはまだあまり変わっていないようであった。
「……そうだ、ラティナ」
「…え?どうしたの?」
「いや、なんつーか……」
――――――――
別の日、ルディは再び魔獣退治で例の森に来ていた。
そしてラティナの父親の墓の前でなにかをしているようで──
(こんなんでいいのか…な?……殺風景のままだとアレだし……)
「おーいルドルフ!用事は済んだか?」
「は、はい!今行きます」
ルディが呼ばれてその墓に一礼して走っていった後、その墓の両隣にはきれいなお花が供えられていたそうな。
原作より結構変わりすぎ…と最近気づいた。