好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。 作:うちのこ
だいぶ引き伸ばしたな(?)
クロイツは街壁の補修が徹底されたことなどを除いて特に変わらず緩やかな平和である。
当然、虎猫亭も保護者がやけに「ラティナに近寄るな目線」を他の若手冒険者に向けたりしていることを除いて平和であった。
「…………ごくっ」
そんな保護者が留守の夜、ルディはあることに挑戦していた。
それは「お酒」であった。
「…………うえっ」
「ま、最初はそういうもんだな。ほら水」
他の常連客から差し出された水を飲むルディ
「ごくっ……はぁ……変な感じ……こういうものなのかよ、酒って」
そう言っていると、隣の席の別の常連客が話し始める。
「まあ最初は飲み慣れんものよ。俺もガキの頃はまずいって思ったし」
「そのガキが大人になると憲兵になって、こんな呑兵衛になるんだよ」
「そうそう、どこかで急に合うようになって…って誰が呑兵衛だよ!最近はまだセーブしてるっての!」
「よく言うわ、カミさんから制限しろってガミガミ言われたって聞いたぞ?憲兵だってのに模範的じゃないんだなぁ」
「憲兵だって人間なんだよぉ………くそ!こうなったらのむぞ!」
「やっぱり呑兵衛じゃねえか!」
「「「ガハハハハッ!!!」」」
通常、憲兵と冒険者というものはあまり相容れることはないが、酒場ではそんなことは関係なく楽しく飲む事が多い。
「酒はみんなで楽しむもんだ」と陽気な酔っぱらいは口先揃えて言うほどだ。
それ故にこんな感じになるのである。
そんな中、ひょこっと顔を出す看板娘のラティナ。
どうやら片付けられるものがあるかと聞きに来たらしい。
「お下げするお皿ありますか?」
その問いかけにルディは自分が飲んでいた酒の小さなコップと食べ物の皿をラティナに手渡した。
「ラティナ、これの代わりになんかジュース頼む……」
調子がよくなさそうなルディにラティナは心配してこう声をかける。
「ルディ大丈夫?」
「まあなんとかな…」
「不味かったの?」
「なんだろ……不味いっていうのか……美味いとも言えないってのか……よくわかんねえ味だった」
「ふーん……そうなんだ」
「ま、じきになれるようになるさ。嬢ちゃん、俺にはつまみ追加を頼む」
「わかったよ、ジルさん」
そしてラティナはお皿を洗い場まで持っていくが、その中でとある興味を抱いた。
(お酒ってどんなのだろう……?)
彼女はお酒を見ることはあっても当然ながら飲むことはない。
それ故に気になっていたのだ。
今までも気になる事は何度かあったが、今日ここまで興味を示したのはやはりルディが飲んでいたのが関係しているのだろう。
(……そういえばルディのこれ、まだ半分残ってる……)
ラティナはそれを流し場の台に置いたあと、周りをキョロキョロと見回す。
リタは二人目を妊娠中で、少し休みながらも忙しく働いており、ケニスもまた料理の真っ最中で忙しそうだ。
ヴィントやテオは2階ですでに夢の中であり、お客達も厨房を見る事なく酒を飲んでたりで賑やかだ。
「酒なんてラティナにはまだ早い」などと言いそうな保護者も今日は帰ってこれない任務に(泣きながら)行ったため、この彼女の好奇心を邪魔する存在はいない。
バレないように警戒しつつも彼女はコップに残っていたお酒を飲んでしまった。
「……ごくっ」
そして飲んだ後は微妙な表情になった。
「………ん?」
美味いわけでもなく、どちらかというと不味い。
ルディが残す気持ちもわかる。
(変な感じ……お客さんたちってこういうのを美味しく飲めるんだ……)
当然ながら、まだラティナにはよくわからないものであった。
「いつもは怒られることだけど……大丈夫だよね?」
自分にそう言い聞かせたラティナは洗い物をして、再び表へ戻っていくのであった。
――――――――――――
数分後──
「………ん?」
ルディは相変わらず残りのご飯を食べていたのだが、ラティナを見て違和感を覚えた。
「………」
一応仕事をこなしてはいるが、どこかフラっと…安定していないように見える。
(疲れてんのか……?でもそれにしては……)
気になった彼は席を立ち、彼女に駆け寄った。
「ラティナ、大丈夫か?」
「るでぃ?……だいじょうぶ…だよ……?」
「いや、でも……」
「だいじょう……」
ふらっとよろけて、それをルディはなんとか抑える。
(全然大丈夫じゃねえ!?)
「いったいどうしたんだ嬢ちゃん?なんか変なものでも食べたか?」
近くに居る常連の一人がラティナにそう問いかけると、ラティナはこう返した。
「う……るでぃの……のこりの……のんじゃった……」
「……へ?……それって……!?」
ルディは先程のことを思い出す。
確かお酒は飲みきれずそのままラティナに渡していた。
それとラティナの発言を照らし合わせると、どうやらラティナは「酔って」しまったらしい。
「ああ、飲んじゃったのね……」
「リタさん……やっぱりこれって…」
やれやれとした表情でリタはラティナの様子を見ながらこう話す。
「まあ仕方ないわね……ラティナは目新しいことは片っ端から試しちゃう事が多いし」
「た、確かに……」
ラティナはどっちかというと自ら新しいことに挑戦するタイプだ。
そのため、こうなるのも仕方ないのである。
「ういっ……うっ……」
「この調子じゃもう仕事は無理そうね…ルディ君、ラティナを上の部屋まで寝かせに行ってあげて。この場はなんとかしておくから」
「わ、わかりました。ラティナ、立てるか?」
「うっ……いいっ……」
そしてルディはなんとかラティナを肩で組んで支えつつ、ゆっくりと上のへと歩いていった。
――――――――――――
「……ううっ……ん……ぐっ……」
そしてルディはラティナの部屋に付いて、ラティナをゆっくりとベッドに寝かせるように下ろした。
ラティナはお酒のせいか、それとも疲れていたのか、横になった途端すぐに寝てしまった。
(やれやれ……)
少し落ち着いたあと、ルディはそんなラティナの様子を改めて見る。
赤くはなってはいるが、やはり安らかな寝顔であった。
(………ちょっとぐらい……は……良いよな?)
ルディは彼女の頭を優しく撫でてみる。
髪はどこかふわふわしており、撫で甲斐がある。鼻を
「………!」
(…って……はやく手伝わねえと……!)
少し赤面し、下のことを思い出したルディはそのまま逃げるかのように部屋を後にした。
その後、ぼーっとしまがら目が覚めたラティナが……
「………るでぃ……?」
もちろん「彼」のことを呟いていたのは言うまでもない。