好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

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引き続きでお送りします。



赤毛の少年と白金の乙女、薔薇色の姫君と会う

ラティナがクロエの店で赤の神の夜祭りに向けて準備をしているのと同じ頃、同じ場所でルディはため息をつきながら大通りを歩いていた。

 

「はぁ……お袋も過保護だっての……他の街に出るわけじゃないってのに……」

 

学舎通いの頃のルディはこの東区に住んでいたのだが、冒険者の仕事をやる為には緑の神(アクダル)の伝言板がある虎猫亭などのギルドで仕事を請け負う必要がある。

 

この広いクロイツの街で毎日東区と南区を行き来するのは流石に負担がかかり、時間のロスも生まれてしまうため、

今のルディは南区にある宿屋の一室を借りて、そこで一人暮らしをしているのだ。

 

なおその宿屋の主人はジルヴェスターの旧友であり、その宿屋は他の冒険者や虎猫亭の常連達も借り住んでいる。

 

多くの大人に囲まれての生活になる為、まだまだ半人前のルディでも特に問題なく一人暮らし生活を行えているのだが、ルディの母は南区の治安が悪いためか心配なようで、時々顔を見せにこいとルディにしつこく連絡をしているのだ。

 

今日ルディが東区を歩いているのも母に顔を見せに行っていたからである。

 

ちなみに母は当初、一人暮らしについても反対していたのだが、父の容認とジルヴェスターの説得もあったため、なんとか許してもらったそうな。

 

――――――――――――――――

 

「……あ」

 

「ん?」

 

母に会った帰り道、東区をなんとなく歩いていたルディはちょうどクロエの店から出てきたラティナと目があった。

 

「どうしたんだ?クロエのとこで」

 

「うん、ちょっと話してたの」

 

「そっか」

 

ラティナはまだ服のことは秘密したいようで、このように返した。

特に詳しく聞こうと思わなかったルディはすんなりとこれを受け入れる。

 

そしてそのラティナの近くには

 

「むーっ!」

 

ルディに少し威嚇しているヴィントの姿があった。

 

なおラティナに抑えられているため、これでもマシなほうである。

慣れない時期はルディに平気で噛みついてきた事もあったからだ。

ヴィントがルディに噛みついた時は流石のラティナも怒りを露にし、それ以降は威嚇こそすれど、そこまでなことにはならなくなった。

 

「もー、だからルディは大丈夫だって」

 

「むむむ……!」

 

(俺のこと嫌ってるんだろうなぁ……)

 

その後、二人(と一匹)は言うまでもなく、一緒に街を歩くことにしたのだが、歩いている途中、ラティナがある人物に気がついた。

 

「ねぇ、ルディ……あの人」

「ん?」

「わふっ?」

 

ラティナの視線の先には旅人姿で彷徨っている若い女性の姿があった。

 

「迷子かな?」

 

ラティナがそう呟いたのは、自分もこの職人街で迷子になった事があるからだ。

知らないと迷路のように迷い込んでしまうため、心細かったことも覚えている。

だがそのお陰で隣の彼や親友たちに出会えたため、決して悪いことではなかったと思っているのは言うまでもない。

 

「だよな……旅人がここに来ることなんてあんま見たことねえし」

 

ルディの言う通り、この東区の職人街において外からの旅人が来ることはそう多くはない。

何故ならそういう旅人達はだいたい表側の商店を利用するからだ。

 

その女性はキョロキョロと見回しつつも足を止めており、その仕草から見て「迷子」である事は確定と見て間違いない。

 

「あの……お困りですか?」

 

「え?」

 

ラティナがその女性に声をかけると、その栗色の髪を揺らしつつ、女性は振り返る。

そしてその彼女の顔を見た途端、ラティナは思わずぽかんと口を開いた。

 

(ふあっ…すごく綺麗な人……)

 

一方その女性もどこかラティナに驚いているのだが、ラティナ自身は気づいていないようだ。

 

(ふーん……こんな人が一人でここまで……?)

 

一方のルディは引き続きその女性の人を不思議に見ていた。

 

(あ、もしかして……)

 

ラティナがその女性をよく見たら何かを思い出したようで

 

「薔……」

 

と途中まで言いそうになったが

 

「まあ!妖精姫ね!」

 

その女性からの言葉で遮られた。

 

「ふえっ…?」

 

ラティナはビクっと飛び上がりつつ、情けない声をだして、目の前の女性を見た。

間違いなくラティナより年上で優しそうな顔達をしている美しい女性だ。

ある意味ラティナの理想とも言えよう。

 

何故ならこの女性は「姫様」だからだ。

 

ラティナが以前、デイルとともに旅に出た際の帰りの街にて見かけており、その時とは髪色こそ違うものの、間違いなく「薔薇姫」であったのだ。

 

そんな正真正銘のお姫様から「姫」と呼ばれたためか、ラティナはなんの冗談かと動揺した。

 

「は、恥ずかしいので……その言い方は、止めてください……」

 

結果、ラティナはなんとかこの一言を絞り出した。

顔はすっかり赤くなっている。

 

(……かわいいな…)

 

なおルディはそんなラティナの様子を見て、そんな感想を抱いていたのは言うまでもない。

 

「薔薇姫様……ですか…?」

 

「まあ、私の事ご存知ですか?」

 

にっこりと微笑む様子からして、間違いではないらしい。

そしてその姫様はルディのほうにも気づいた。

 

「ご一緒の貴方は……」

 

「あ、うん……冒険者の……」

 

なお二人の雰囲気についてはなんとなく察したようで……

 

「まあつまり妖精姫の騎士ということですね!」

 

「ぶふっ!?」

 

こんなことを言われて、思わずルディは吹き出した。

先程ラティナがやられたことが、自分にもきたということだ。

 

「ち、ちがっ…ただの冒険者だっての……!」

 

「そうですの?」

 

「あ、あの!どうしてお一人で……」

 

ラティナは話を戻すためにか、こう質問する。

姫様であるはずなのに、お付きの人も見えず、この姫ただ一人しかいなかった。

その事に関して、ラティナもルディも疑問に感じたからだ。

 

「ええ、不案内なもので…門を間違えてしまったようですの。あなたにお聞きするのが早いですわね…デイル・レキ様のところに案内してくださいませんか?」

 

不自然だと二人は思った。

何か良からぬ事があったのかもしれないとも考えられるが、断る理由もない。

そして無理やり笑顔を作りつつ、ラティナはこう話した。

 

「デイルは今、依頼の仕事で他出しているはずです。とりあえず、デイルの拠点にしているお店に案内しますね」

 

「ありがとうございます」

 

微笑みながら薔薇姫がそう返すと、ラティナは傍らにいるヴィントにこう囁いた。

 

「……ヴィント、ケニスにこの事伝えて…私は大丈夫だから」

 

「わふ?」

 

「その後に出来ればデイル探して来てくれる?いつもの南の森にいるはずだから」

 

「………」

 

ヴィントはどうやらラティナをルディと一緒にさせるのを嫌がってか、首を縦に振らない。

 

だが……

 

「言う事聞かないと……おやつ抜きだからね?」

 

「…!」

 

この言葉でヴィントは直様飛び出した。

 

クロイツの南の森はヴィントにとっては良い遊び場だ。

デイルから再三にわたって注意されつつも、奥地で遊んでいるのだ。

そして人間に頼むよりかは恐らく早いであろう。

 

「変わった獣ですね」

 

「とても賢い仔なんです」

 

(嫉妬深いけどな……)

 

ルディはそう思いながらも、周りを見回す。

不自然に怪しい人らしい人はいない。いつも通りの町並みだ。

とりあえずは大丈夫らしい。

 

(でも、警戒はゆるめないようにしないとな……)

 

 

そうして、ラティナとルディは彼女を虎猫亭に連れていくために歩き出した。

 

歩きながら、ラティナは薔薇姫にこう言う。

 

「東門から入って良かったのだと思います…南門だと、あんまり素行の良くないひとも多いですから…」

 

「ああ、南は乱暴な連中も多いからな……俺もその連中の一人かもしれないけど」

 

「ルディは違うよ。とっても優しいから……」

 

「そ、そうか……?」

 

「仲良しなのですね」

 

「「………」」

 

彼女のその言葉に再び少し顔を赤くする二人。

なんともわかりやすい二人である。

 

「と、とにかく!表通りで向かいますか?…それとも人目に付かない方がよろしいですか?」

 

進まないがゆえにラティナはなんとか話を進めた。

 

「まあ……追っ手は撒いて参りましたから、大丈夫だと思いますけれど。あまり人目につかない方が良いのかもしれません」

 

「そ、そうですか……」

 

案の定、良くない出来事のようだ。

ラティナとルディは顔が引きつりつつも、薔薇姫の先導をし、帰路につくのであった。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「買い物に行って、まさか予想外のお土産を持って帰ってきたな……」

 

ケニスは頭を抱えそうになりつつも、店先で待っていた。

どうやらヴィントは先触れの役割を果たしたらしい。

 

「ヴィント、行ってくれた?」

 

「ああ……いつもより足早に、まるですぐに事を終わらせたいかのごとくにな…」

 

ケニスもデイルを呼び戻すべきだと考えたらしく

ラティナの判断を否定しなかった。

 

「とりあえず中に入れ、奥が空いてる」

 

「わかった。どうぞこちらに……」

 

「ありがとうございます」

 

「ルディ、お前は……」

 

「わかってる、デイルさんが帰ってくるなら別の席に座っておくよ」

 

「ああ、すまないな……」

 

 

彼女とラティナが奥の席に行き、ルディはそこから遠くも近くもない席に座り

あくまでも一般客として装いつつ、聞く耳を立てることにした。

 

そしてその彼女はラティナと話し始める。

彼女の名は「ローゼ・コルネリウス」やはりと言ってなんだが、いわゆる貴族の家柄であった。

もっとも「薔薇姫」と言われどその家はあくまでも地方の領主でそれほどの家格はない。

そして当の本人は『藍の神(ニーリー)』の神殿において働く神官の一人なので、そこは気にしないでくれとのこと。

 

「高位の『加護』を持つ、稀代の神官として名高いとは聞いた事がある…」

 

「それほどの事はないのですけど…生まれつき『珍しいもの』を持っておりますので、良くも悪くも目立ってしまいますの……」

 

(いや、十分凄くないか……?)

 

心の中で突っ込んでいる通り、加護も何も持っていないルディにとってはそれだけで衝撃的であった。

 

「加護がありましても……できないことはございますから……」

 

そう言いつつ、ローゼは自分の髪を少し触っているが、よくよく見ればその髪はカツラであり、奥にはローズピンクの髪が隠れていた。

なおローゼのその髪の色は「魔力形質」と呼ばれる現象によるものであり、それによりこの髪の色になっているのだが、人間族ではとても珍しい現象であった。

それ故にこの髪色でひと目で誰かわかってしまう。

逆に言えば、隠してしまえばバレないのだ。

 

そしてやっと「本題」に入った。

 

「……デイルに何かのご用ですか?」

 

「託けをお願いしたいのです。私、この街の領主である伯とは、面識がございませんので……」

 

警戒心を隠しきれていないラティナにも、特に不快そうな表情を見せずローゼは答えていた。

 

「何故、わざわざデイルに……何があった?」

 

同じく警戒していたケニスの問いにローゼは静かにこう答えた。

 

 

 

 

「私……つい先日まで『二の魔王』の元におりましたの」

 




引き自体は原作通りですが、流石にその話は全部カットします。
無茶なので……。
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