好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

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赤毛の少年と白金の乙女、赤の神の夜祭りへ。参

マルセルと別れた4人は、色々な屋台を見ながら、街の中央広場へとやって来た。やはり普段よりも人の姿が多い。

途中食べさえ合いしていたことをクロエとシルビアから色々と言われたが、ルディとラティナは恥ずかしながらもそれをなんとか流していたらしい。

 

そしてメイン広場の領主館の近くまで来た。

そこではアントニーが他の大人へ挨拶をしている最中であった。

領主館の下級役人の職に就く彼の父親だが、当然ながら世襲というわけではなく、アントニーが同じ職につけるとは限らない。

だが、その可能性は少しはあるため、そのことをなんとかして確率を上げるために、父親について挨拶回りをしているのだった。

大人が周りにいるという状況は当然ながら子供達は声をかけづらいものだ。

 

ラティナはこう皆に問い掛ける。

それに対し、クロエとシルビアはいとも簡単だとでも言いたげにあっけらかんと答えた。

 

「どうする?」

 

「どうするって、何が?」

 

「ええ、ちゃっちゃと声をかければいいじゃない」

 

「まあそうだけどさ……あんなに大人がいるとなぁ……」

 

何かを渋るルディとラティナであったが、クロエとシルビアを2人の背中を押す。

 

「いいからいいから」

 

「クロエの言う通り、2人なら大丈夫…よっ」

 

「うわっ」

 

「お、おい……」

 

そして押し出された2人はアントニーに声をかけざるを得なくなった。

 

(しゃーない……)

 

そしてルディはアントニーに近づき、軽く肩をたたいた。

 

「よっ!」

 

「アントニーっ、久しぶりっ!」

 

アントニーはそれに気づいて振り向く。

当然ながら後ろにはクロエとシルビアも一緒にいる。

それと同時にラティナという「姫」とルディという「勇者」を見たからかアントニーの父を含む周囲の大人たちがぽかんと呆けた顔になっていた。

 

「父さん、黄の神(アスファル)の初等学舎で一緒だった友達だよ」

 

「え……?あっ…」

 

アントニーがそう言うと隣のルディと奥にいるクロエに気付いたようだ。

 

 

 

ルディとクロエ、マルセルとは家が近くであるから、学舎に通う前から遊んでいたため、アントニーの父もよく知っている。

 

だが、他の大人達はそうではないので、アントニーはルディとラティナには聞こえないように小さな声で大人達にこう教えた。

 

「『妖精姫』と『赤き勇者』ですよ」

 

噂となっていたその二つ名を口にした途端、大人達はざわめき出す。

 

「なっ……『あれ』が、噂のっ……」

 

「実在していたのか……」

 

どうやら、2人は珍獣かなにかと勘違いしているかのような扱いをされているようであった。

 

――――――――――――――――

 

そしてアントニーは改めて父に友達の紹介をする。

 

「改めて、紹介するよ。父さん。ルドルフとクロエは知ってるよね。それで、彼女はラティナ。緑の神(アクダル)の旗のあるお店で働きながら暮らしてる娘だよ」

 

「はじめまして、ラティナです。家名の無い地域の生まれなので、名前だけで失礼致します」

 

「それで、彼女はシルビア・ファル。憲兵隊のファル副隊長の娘さんだよ」

 

「はじめまして」

 

「よく来たね。今日の夜祭りはこの辺りで見ていくといいよ」

 

「「「「ありがとうございます」」」」

 

アントニーの父のおかげで、ルディ達は人混みに押され阻まれることのない、安全な場所を確保することに成功した。

しかし、夜祭りの本番にはまだまだ時間がある。

 

そのため、久しぶりの友達たちとの会話に花を咲かせていた。

 

「ここに来る前にマルセルのところに寄ったんだ」

 

「マルセルはまたパン屋の出店?」

 

「うん、忙しそうにしてたよ。でも、マルセル。私たちにパンをサービスしてくれたの」

 

「あのパン出来立てでおいしかったわよね~シルビア」

 

「ええ、とっても」

 

「それで?ルディとラティナは食べさせあいでもしたの?」

 

からかうようにそう言うと、ルディとラティナは顔を赤く染め、クロエはやれやれと表情を浮かべ、シルビアはクスクスと笑みを溢す。

どうやら当たりらしい。

 

「……んなことはどうでもいいんだよ!!…で、マルセルに聞いたらアントニーが領主館の近くにいるだろうから尋ねてみろって言ってたんだ」

 

そんなことをとりあえず断ち切るルディ。

流石に恥ずかしすぎたようで顔は赤くなっていた。

 

なお、先程までニコニコと笑いながら喋っていたラティナが急に静かになっていることもあり、シルビアとクロエもこれ以上はやめてあげてとでも言いたげにルディの話に乗ってきた。

 

「アントニーのお父さんが領主館の人だなんて私初めて知った」

 

「私とルディ、マルセルは近所に住んでるから知ってたけど、ラティナとシルビアには言ってなかったわね。そういえば」

 

「うん。びっくりした」

 

「あと、びっくりって言えば、ルディの時も思ったけど、アントニーも大きくなったわよね。なんか見下ろされてるみたいで腹立つ」

 

「美少女を見下ろせて僕は気分がいいよ」

 

シルビアのその言葉にアントニーはこう返す。

 

「うわ……」

 

クロエはもちろん呆れている。もともとキザっぽい傾向はあったとは言え、流石にこうくるとこんな反応もしたくなる。

 

「でも、確かにラティナは美少女よね。昔から可愛かったけど、成長して綺麗になったわ。ねぇ、ルディ?」

 

「美少女?」

 

「なっ…」

 

(なんで俺に振るんだよ!?)

 

シルビアからそう言われてラティナは首を傾げ、ルディは顔を赤くする。

そしてシルビアはラティナのあるところを見つつ、続けてこうも言った。

 

()()()は測定しないとわからない成長速度だったけど……」

 

「ねえ、シルビアっ!!」

 

その言葉でラティナは珍しく声を上げ、ルディも察したのかさらに顔を真っ赤にし、耳までも赤くした

 

(な、何言ってんだよ!?シルビア!?)

 

しばらく、ラティナは可愛く怒り、シルビアは笑みをこぼし、クロエは再びやれやれという仕草をしていたそうな。

 

 




おや?アントニーの様子が?
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