好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

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というわけで後編です。
ちなみに前の話の後書きは全くこの話には関係ございません。
アグ○カ・カイエルとかそういうのでもありません。
ご注意を。


高等学生と西区の少女 (後)

「綺麗なのは…『君』だよ。シルビア」

 

 

「……えっ?」

 

 

「僕は貴女の事が……好きです」

 

 

「…………っ!?!?」

 

 

アントニーの突然の告白に、私──シルビア・ファルは言葉を失った。

 

(えっ?何?嘘?アントニーが?私の事?好き?好きってつまり……そういうことなのよね?……えっ?でも今までそんな素振り……)

 

私は……混乱していた。

 

友達だと思っていた人からの急な告白。

 

今まで異性として見ていなかった人からの…告白。

 

……嬉しいとは思う。

 

でも私は正直、驚きと戸惑いを隠せなかった。

 

アントニーはそれから何も言う事はなく、ただ私達の間には時間だけが通りすぎていく。

 

一体、どれほどの時間が経ったのだろうか? 全くわからないが、やっと思考の沼から抜け出せた私は失った語彙力で何とか言葉を紡いだ。

 

「えっと……い、いつから?」

 

「…………」

 

アントニーは考える仕草をしている。

 

私はこう言葉を続けた。

 

「今日、久しぶりにあって……それで…って事なの……?」

 

「……違う」

 

アントニーは私の推測を否定した。

 

そして、こう口を開く。

 

「僕は学舎に通っていた頃から君を見てた」

 

「学舎って……もちろん初等学舎のことよね……」

 

「当たり前でしょ」

 

「全然……気付かなかった……」

 

「僕はルディほど単純じゃない」

 

「…………」

 

私は同年代の男の子はみんなルディみたいに分かりやすいものだと思っていた。

 

再び言葉を失った私にアントニーはとても優しい声でこう言ってくれる。

 

「返事とかはいいから。ただ僕が君の事を好きだってことを覚えててくれれば…それでいいよ」

 

「……でも」

 

「どうしたの?二人とも」

 

そんな時、クロエが戻ってきた。

 

私は平然を装ってクロエにこう言う。

 

「な、なんでもない……」

 

「…?そう。そろそろ行進の時間よ!急いで戻ってきたわ」

 

「ホントだ。ラティナとルディは戻ってこないね」

 

「あの二人もどっかで見てるでしょ」

 

「そうだね。あ、来たよ!」

 

隣に座るアントニーは、赤の神(アフマル)の神官兵達の行進を眺めていたが、私は彼の横顔が気になって、お祭りどころではなかった。

 

行進の後に上がった花火も、それを見上げる彼の顔が気になってちゃんと見る事は出来なかった。

 

告白されたせいだろう。

私はアントニーを『異性』として意識し始めていた。

 

そして、私はアントニーから告白されたという事を誰にも言えぬまま、家へと戻ってきた……。

 

帰り道で、クロエに相談する。という選択肢もあったはずだ。

 

しかし、私はそうしなかった。

 

この『答え』は自分で見つけるべき『答え』だと……そう感じたからだ。

 

 

――――――――――――――――

 

「はぁ……」

 

次の日、緑の神(アクダル)の神官の仕事の休憩中、私はため息をついていた。

 

もちろん、仕事は真面目にやっている。

 

今日の仕事はクロイツにある緑の神(アクダル)の神殿での事務仕事のみ。

フィールドワークに出かけるのはまだ当分先になる。

 

仕事に集中している間はあの事を忘れる事が出来たが、休憩中はどうしてもアントニーの事を考えてしまっていた。

 

(私もラティナの事、どうこう言えないわね……)

 

しかし、やはりちゃんと『答え』は出すべきだと私は思う。

 

アントニーは返事はいいと言っていたが、そういう訳にもいかないだろう。

 

またクロイツの外へ出掛ける前になんとかしなければ

 

その結論に至ったところで緑の神(アクダル)の神官の先輩から休憩の終わりを告げる声を掛けられた。

 

「シルビアさん、そろそろ休憩終わりよ。残りのお仕事も片付けちゃいましょう」

 

「は、はい!」

 

 

――――――――――――――――

 

神殿での仕事を終え、家へと戻る帰路の途中、私はやはりアントニーの事を考えていた。

 

(本当に、どうすればいいんだろう……)

 

考えた事がなかった。

アントニーが私の事を好きだなんて……

 

初等学舎の頃からアントニーは私を見ていたと言っていた。

 

私は昔のアントニーについて思い浮かべてみる。

 

 

まず、ルディが私たちに「ラティナを好きだ」と告白した時──

 

『あのさ俺……ラティナのこと、好きみたいなんだ』

 

『あんた……やっと気づいたの?』

 

『うん、皆わかってたわよ?』

 

『確かに……丸わかりだったよね…』

 

『まだ気づいてなかったんだ……』

 

あの時のアントニーはもう私への気持ちに気づいていたの?

 

 

いつもランチの時の座る位置も……

 

クロエ ラティナ 私

◯ ◯ ◯

◯ ◯ ◯

ルディ マルセル アントニー

 

絶対、私の目の前にはアントニーがいた。あれも私を好きだってことだったの?

 

他にも色々とアントニーの行動を思い出す。

 

しかし、何度思い出しても、彼が私を好きだとはっきりわかるような行動はなかった。

 

自分が鈍感なのかとも思ったが、そういう訳ではないのだろう。

 

彼が大人なのだ。

……それか、極度の恥ずかしがり屋だったのか。

 

家に着いた後も色々と彼について考えるが、彼が何故私を好きになったのか。その検討がまるでつかなかった。

 

 

「はぁ……」

 

家族で夕飯を食べながら、私がため息をつくと、お父さんが心配して声を掛けてきた。

 

「どうしたんだい、シルビア?」

 

「なんでもない。ごちそうさま……」

 

そう言って私は食卓から立ち上がる。

 

お父さんはあまり食べていない私を更に心配してこう言った。

 

「全然食べてないじゃないか……。本当になんでもないのか?何かあるんじゃないのか?」

 

「ダイエット中だから……」

 

私はそう言って部屋に戻った。

 

 

「本当に大丈夫なのか……シルビア」

 

「あなた、後で私が話聞いてみるわ」

 

「頼む…」

 

 

――――――――――――――――

 

 

部屋に戻った後、私は再び考え始める。

 

もちろんアントニーについてだ。

 

 

ラティナを好きになるなら分かる。

 

あの娘の可愛さは私とクロエと……ルディが一番知っている。

 

でもなんで彼女じゃなくて私を?

 

それが全く理解出来なかった。

 

 

色々と昔のアントニーを思い出しては、私への好意のヒントを探る。

 

しかし、全くわからなかった。

 

そんな時──

 

コンコン

 

「ちょっといい?シルビア」

 

私の部屋の扉をノックする音とともにお母さんの声が聞こえてきた。

 

おそらく、さっきの食卓での事だろう。

 

今思えば、不自然な行動だった。少し反省……

 

私は少し迷ったが、お母さんを部屋に入れる許可を出す。

 

「……うん。入っていいよ」

 

扉を開け、部屋に入ってきたお母さんは開口一番にこう言った。

 

「あなた、好きな人でも出来た?」

 

「はい?」

 

お母さんのその言葉に私は素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

 

――――――――――――――――

 

私はお母さんに昨日の赤の神の夜祭りで昔の学舎のクラスメイトであるアントニーに告白された事を話した。

 

それで、彼が私を好きになった理由が分からず困惑していることも。

 

私の話しを聞いたお母さんは静かにこう口を開いた。

 

「好きになった理由って、そんなに重要なこと?もっと大事なことがあるんじゃない?」

 

「えっ?」

 

「例えば、シルビア。あなたはそのアントニーくん?…彼の事をどう思ってるの?」

 

「だから今まで友達としか思ってなくて……」

 

「彼はどんな人なの?」

 

「どんな人……?高等学舎に通ってて、彼のお父さんは領主館で働いてて……」

 

「そういうプロフィールを聞いてるんじゃなくて、どういう容姿と性格をしてるのって聞いてるの」

 

「…?容姿はまあ…カッコいいと思うよ?同じクラスメイトのルドルフとマルセルを比べた3人の中では一番カッコいい……

体型もスラッとしてて、でもヒョロい訳じゃなくて運動もそれなりに出来るはず、雪合戦の時とか最後の方まで残ってたし……あと、高等学舎に通ってるからもちろん頭はいい……」

 

私は彼の事を頭に浮かべながら、言葉を続けた。

 

「学舎通いの頃から私やクロエと一緒にルドルフとラティナをからかってたけど、真面目な時はとことん真面目で……とにかく性格はそんな感じ……?ってこんな事聞いてなんなの?」

 

私がそう聞くと、お母さんはニヤニヤと笑っていた。

 

「ねえ、なんなの!?」

 

「ふふふっ、シルビア。その彼の事よく見てるじゃない。4年振りにあった人の事を話してるとは到底思えない」

 

「えっ?」

 

……言われて気付いた。

 

そういえば、告白されてから意識したのだと思ってたけれど、アントニーの事を思い出すのに苦労は全くしなかった。

 

どうやら、私は学舎に居た頃から無意識にアントニーを見ていたようだ。

 

「私って、アントニーの事好きなの?」

 

「好きじゃない男の子の事をそんなに覚えてるのは逆におかしいでしょ」

 

…………っ!?

 

自覚した途端、私は急に身体中が熱くなった。

 

何時からかはわからない。でも気付いたら私はアントニーの事を好きになっていたらしい。

 

昔、ラティナがルディを好きだと自覚した時、私自身が言ったではないか。

 

『どこかの時でルディが握ってくれた手が引っかかって……それで段々色々なことが引っかかって……積もって……って言うのかな?ラティナ、よくわからない……』

 

『まあ恋ってそういうものよね。明確な理由はないけど心が引っかかったみたいな

 

アントニーもきっとそうなんだろう。

 

人を好きになるというのはそういうことなのだ。

 

私がその真実にたどり着いたのを悟ったのか、お母さんは最後に

 

「そのアントニーくん。今度うちに連れていらっしゃい。歓迎してあげるから」

 

と、そう言い残して部屋を去っていった。

 

……ありがとう、お母さん。

 

 

――――――――――――――――

 

 

そして、また次の日。

 

今日の仕事はお休みだったので、私は一昨日行った領主館を訪ねた。

 

そして、アントニーのお父さんからアントニーの通う高等学舎の場所を聞き、そこへと向かった。

 

クロエかラティナ、ルディ、マルセルの誰かに聞こうかとも一瞬考えたが、彼女らがアントニーの高等学舎の場所を必ずしも知っているとは限らない。

また逆に彼女らからアントニーを探している理由などを聞かれるかもしれない。

それはさすがに恥ずかしすぎる。

 

高等学舎の正門で下校時間まで待っていると、少し時間が経った後、待ち人は現れた。

 

「シルビア……なんで高等学舎に?」

 

「アントニー、話があるの……その、一昨年の事で」

 

「…………わかった。ここじゃ人目につくし、場所変えようか」

 

「…………」

 

私は静かに頷いた。

 

 

――――――――――――――――

 

 

私とアントニーはクロイツの街を一望出来る場所へとやってきていた。

 

夕暮れ時で、空は綺麗な赤色をしている。

 

とても良い景色だが、ここには今、私とアントニーしかいない。

 

「いい景色でしょ。黄の神(アスファル)の神殿への道の途中で見つけたんだ。…………それで一昨年の事……だったよね」

 

「……うん」

 

「…………」

 

アントニーは私の次の言葉をジッと待っている。

 

私はドキドキと音を立てて止まらない胸の鼓動をなんとか押さえ込みながら……彼へとこう告げた。

 

私も!アントニーが……好き

 

最後の「好き」の台詞は小さな声になってしまった。

 

「……えっ?」

 

アントニーは驚いているようだ。

それから無言の時間が流れ、私はいたたまれなくなって、小さな声のままこう呟いた。

 

「…………かも」

 

「……ふふっ」

 

すると、アントニーは……笑った。

 

そんな彼の態度に私は少し怒りを覚える。

 

「なんで、笑うのよ!」

 

せっかく、勇気を出して告白したのに、その態度はなんなの?

 

まあ、さすがにそれを口に出す事はなかったが……

 

「いや、ごめん。でも知らなかったよ。シルビアも僕の事好きでいてくれてたんだ。……ありがとう」

 

「……っ!?」

 

屈託のない笑顔を向けられ、私は顔が真っ赤になる。

 

真っ赤になったまま固まっていると、アントニーは真剣な表情に変わり「じゃあ……」と口を開いた。

 

 

「僕と付き合ってくれませんか?」

 

 

「……もう」

 

本当にこの彼は心臓に悪い……

 

「こちらこそ、これからよろしくお願いします…///」

 

 




というわけでルディとラティナに続き、誕生したカップルのお話でした。
原作ではあまり絡みがない二人だけども。この作品ではやはりルディから影響受けた体と思います。
原作だとまあ……デイルさん……あんたという人は……奇跡だよ……。(遠い目)

ちなみに次回から本編に戻りますが、如何せん他作品多数抱えてるのでかなり遅くなります。
同作者の異世界オルガ作品である鉄血のプリンセスコネクトRe:Diveも絶賛投稿中なので、見ていただけると幸いです。
あとノクターン及びアルファポリス様で連載中の某R-18作品もぜひ……。(ダイレクトマーケティング)
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