好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

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少し大きくなりました。
だがまだまだ少年の戦いは続く……。


赤毛の少年、幼き少女と雨宿りする

「……ふーん、そんなやつもいるのか?冒険者の中に」

 

「うん、ちょっと怖い見た目だけど優しい人だったよ?」

 

「へーっ……」

 

(ラティナ相手だからだよな……それ…)

 

あの雪の日から数ヶ月経ち、もうそろそろ学舎へ通い始めて1年になりかけている。

ルディとラティナは……特に変わらず、いつも通りの関係であった。

ただ少しは前進したようで、ある帰り道の際にルディがとっさに放った「さ、酒場に来る冒険者ってどんなやつがいんだ!?」と言う言葉がきっかけでラティナからは虎猫亭の常連や雰囲気などをよく聞くようになり、最悪の窮地は脱したようだ。

 

まあただ、皆と一緒に帰るときは他のマルセルやアントニーと喋るほうに逃げるため、やはりお膳立ては不可欠のようである。

なお今回もまたお膳立てを使われて、ルディとラティナは二人っきりである。

 

「……」

 

「ん?どうした?」

 

「あ、うん、なんでもないよ?」

 

「……」

 

(やっぱりさっきからラティナの様子が変だな……もしかして保護者のデイルさんが居ないからか?)

 

ルディの予感は的中していた。

デイルは暫くの間王家より頼まれたある大きな依頼を達成するために数週間クロイツから居なくなっている。

その為、ラティナは表情に陰りを見せていたのだ。

 

(もしそうなら俺がなんとか気に……だけど)

 

リタに言われたことを思い出しているが、自分がデイルの代わりになれるはずもないのはわかっている。

なら自分にできることをするのがベストだが……。

 

(うーん……何が良いんだろうなぁ…)

 

そう悩んでると、ポツッと頬になにかの水滴のような感覚が走る。

 

「ん?」

 

「?」

 

気づいた二人が空を見上げると、徐々に水が降ってくるのを確認できた。

そして段々とその勢いが強くなり──

 

「うわっ!急に降り出した!?」

 

「ひゃっ!?」

 

急にバケツを引っくり返したような雨が二人に襲いかかった。

当然ながら二人はそのまま勢いで走り出す。

 

「どっか雨宿りは……!あそこだ!」

 

「う、うん!」

 

――――――――

 

「はぁはぁ……急にここで降ってくるのかよ…」

 

「うん……急に降ってきたね…天気良かったのに……」

 

なんとか雨宿りできそうな建物の軒下を見つけ、そこで少し待つことにした。

 

「まあこの調子だと通り雨みたいだから、多分すぐに止むと思うけどな」

 

「うん……」

 

そしてルディはラティナの様子を横目に見る。

髪が雨により大幅に乱れ、ベタベタになってしまっていた。

ラティナはその髪のリボンをといて持っているハンカチで一応拭いているものの、焼け石に水どころのものではなく、とてもじゃないがハンカチでは吸収できない。

 

そしてルディはあるものを思い出して、自分のカバンの中身からそれを取り出した。

 

「これ、やるよ」

 

「ん?それってタオル?」

 

「お、おう…今日はハンカチしか使ってねえし……濡れてもないから大丈夫だと…思う」

 

「うん、ありがとね、ルディ」

 

そしてラティナはそのタオルを使い、髪を拭き始めた。

一方のルディは天候の様子を引き続き見ている。

 

(通り雨つったけど……なんか雲が黒いような……まさか…)

 

「ん?どうし…」

 

ラティナがルディに声をかけたその時……

 

ピカッ!

 

 

 

 

ゴロゴロゴロゴロ…ドカーン!!

 

一筋の光が遠くに落ち、そしてその後、凄まじい雷鳴が聞こえてきた。

 

「ひゃっ!?」

 

「うおっ!?」

 

二人ともその一瞬でかなり驚く。

そしてその一瞬で二人は「カミナリが落ちた」と認識もしていた。

 

「か、かみなり……」

 

「ほ、ほんと……だね……」

 

二人共少し震えていた。

当然だが雷は子供二人にはとても刺激が強いものである。

ラティナに至っては半泣きしかけている。

 

「だ、大丈夫!こんなのすぐ止むって!あと建物の下なら雷が落ちることなんて…」

 

というルディの言葉を遮り

ピカッ!と再び光り、雷鳴が再び木霊する。

今度は近い所に落ちたらしく、雷鳴の音は先程より大きくなっていた。

 

「!?」

 

「っ!?」

 

そしてそれに驚いたラティナは思わずとっさにルディに抱きついた。

 

「………!?」

 

「こ、こわいよぉ……」

 

もちろんルディはそれで混乱するが、ラティナの声でそれは一時止まり、とっさにラティナの頭を撫でている。

 

「だ、大丈夫だっての……俺がラティナのことを守ってやるから!そりゃデイルさんみたいには上手く行かねえけど……」

 

「ううっ……」

 

ラティナは泣いていて、聞いているんだか聞いていないのかはルディからはよくわからなかった。

だが勢いでそのままルディは話していた。

 

「だから泣くなよ…な?」

 

「ううっ……ううっ……」

 

(でも………今の俺じゃ…な)

 

そしてルディはふと数ヶ月前の雪の日のことを思い出していた。

無我夢中で彼女の手を引き、逃げようとしたあの時。

だが結局は男たちにその手を読まれ、窮地に立たされてしまい、ジルヴェスターが居なければ間違いなく自分やラティナは恐ろしいことになっていただろう。

 

その時の後悔が今も少年の心の中に焼き付いていた。

今度は自分自身で守れるようになりたい…と。

 

(まあ今考えても仕方ないけどな………はぁっ…)

 

 

――――――――

 

 

そして数分ほど時がたった後、ラティナはルディに抱きつくのは止めて再び二人横並びで空の様子を見ていた。

雨はだいぶ弱まり、小雨となり、その小雨もだいぶ止みつつあった。

 

「そろそろ行くか……また雨がふらないうちにな」

 

「うん!」

 

そして二人は再び歩き始めている。

なおラティナは元気を取り戻していた。

先程ひと通り泣いたからだろうか、いつもの少し下手な鼻歌も歌い始めている。

 

(……そういえばラティナの髪……解くとあんな感じなんだなぁ…)

 

ラティナの髪はロングのストレートになっていて、雨で濡れた後ということで少し湿ってはいるが、髪質自体は柔らかそうである。

 

(………)

 

それに少し見惚れていたのは言うまでもない。

 

――――――――

 

「ただいま、リタ」

 

「あらおかえりなさい。雨は……大丈夫じゃなかったみたいね……」

 

先程まで降っていた雨と帰ってきたラティナの様子を重ね、やはりびしょぬれになったと思ったリタとケニス。

 

「雨具もたせておいたほうが…いやでもあんなに晴れていたんだがなぁ…」

 

「変な天気よね」

 

「ねえリタ………お風呂先入ってて良い?」

 

「ええ、良いわよ。服もきちんと出しとくから」

 

「うん、わかった」

 

そしてびしょ濡れの彼女は裏のお風呂場へ直行していった。

 

 

そしてそのびしょ濡れのを脱ごうとする彼女だが

 

「………」

 

先程の「彼」について何か引っかかっているようで

 

(ルディの…………デイルとは違うけど……やさしくて……なんだろう?)

 

どうやらラティナには今は言い表せない何かの「モヤ」がかかったようであった。

 

――――――――

 

そしてこちらは一人で帰っている途中のルディ

 

「……」

 

無言で帰っているのだが、ある時先程のことを思い出し、足を止める。

 

「……」

 

(さっき、抱きついてきたんだよな……俺に……俺に!?)

 

ラティナが抱きついてきたのを思い出し、そしてさらにその感覚やらも思い出して顔が急に真っ赤になっていた。

 

その時は何も思わないが、こういうものは後から急に思い出されるものである。

 

「なっ……!?」

 

(お、俺は……何考えてるんだよ……!?)

 

自分の好意についてわかってはいるが、いまいちその感覚には慣れていないようで、なんとかその時の記憶を振り切りながら、速歩きで自分の家に帰っていったのは言うまでもない。

 




ラティナに抱きつかれたらもうしんでもいいかもしれない……。

あとしばらくの間保護者はお休み(依頼中)です
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