好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。   作:うちのこ

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少年、ついに虎猫亭へ……



赤毛の少年、虎猫亭へ行く

「はぁっ……」

 

ルディは溜息をつきながら店前の通りを行ったり来たりとしていた。

ラティナに恋をして以上、悩み事など色々と増えてはいたが、どうやら今回はいつにも増して悩みのことが大きくなっていたようだ。

 

(どうすればラティナが手伝っているところ見れるんだろ……)

 

彼女が手伝っている「踊る虎猫亭」は言うまでもなく酒場であり、南区にある。

南区は言うまでもなく治安が悪いところであり、子供たちで行くには大人も許可してくれないであろう。

単純に送るなどなら短時間のため誤魔化しきれるが、虎猫亭に来店の場合は冒険者の人たちも大勢いる。

まあ、黙っていけばバレない…という単純な考えもよぎったが虎猫亭は憲兵・門番なども普通に常連として来店しており(ラティナより聞いた)下手すれば補導されかねないのだ。

 

「はぁっ……」

 

(もう開店時間だよな……だけど……どうすりゃいいんだろ……)

 

再び大きなため息を付きながらグルグルとそこらへんを回っていると、不意に誰かとぶつかった。

 

「うわっ!?」

 

思わず尻餅をつくルディ

 

「おっと大丈夫かね?……と思ったらこの前の……」

 

「あ、あなたは……」

 

その目の前にいる人物はラティナやそれに影響されたルディからは「ジルさん」と呼ばれるいわゆる「ひげもじゃ」で禿頭で初老の男のジルヴェスターであった。

ルディとラティナにとっては恩人でもある。

 

「なにか考え事をしていたのか?兄ちゃん」

 

ジルヴェスターは確かに見た目は怖く、最初会った時はラティナを除く子供たちが全員ビビっていた。

だが次第に慣れていき、そしてルディは彼に助けられたということもあり、ルディが思う「信頼できる大人」の中にジルヴェスターがカウントされるようになっていた。

 

そのジルヴェスターにたまたま会えたこのチャンス、逃すわけには行かないと思い自分の今の悩みを話し始めた。

 

「あ……実は……」

 

――――――――

 

「なるほど、兄ちゃんは嬢ちゃんが働いてる所を見たいってわけか」

 

「まあそんな感じで…どんな感じでやってるのか聞いてるだけじゃイマイチわからなくて……」

 

一部敬語に直している上に、口がごもごもしつつあるが、なんとか平然を装おうとしている。

もちろんジルヴェスターにバレバレなのは言うまでもない

 

「ほう、確かに兄ちゃんじゃ開いてる時間には行くことはあまりできないな……」

 

「ど、どうすればいいのかな…って思ってたん…です……」

 

「そうか……」

 

ジルヴェスターはルディの様子を見て少し考える仕草をした後、ある提案を話し始める。

 

「なら俺と一緒に虎猫亭へ来るか?それなら大人達も納得すると思うぞ」

 

「え?ジルさんと一緒に?」

 

確かにジルヴェスターと一緒に虎猫亭へ行けば安心だ。

たとえどんなやつが来てもジルヴェスターの前では何も出来ないだろう。

 

「え、でも……親父がどう言うか……」

 

「なに、俺と一緒って言えばすぐだ。親父さんはいるんだろう?」

 

「あ、うん……まだ刀打ってたと思います」

 

「じゃあ早速だ、いくぞ兄ちゃん」

 

――――――――

 

そしてルディは父に「虎猫亭へ行きたい」と直談判すると、隣についてたジルヴェスターもいた為か「…あまり遅くなるなよ」と一言言った後、再び刀を打ち始めていた。

 

どうやらOKということらしい。

そしてルディはジルヴェスターとともに、虎猫亭へ足を進める。

 

「………」

 

ルディは余計に緊張し始めたのか、無言になっている。

心臓もバクバクしているようで、今驚かされたら心臓が止まりそうな勢いである。

 

「なに、そんな硬い表情だと嬢ちゃんに変だと思われるぞ?」

 

「へ?」

 

「いつも通りの姿でいればいい、いつも通りの兄ちゃんなら嬢ちゃんも喜ぶと思うぞ」

 

「は、はい!」

 

(いつも通りの姿……いつも通り……って……なんだったっけ……)

 

ルディ緊張しすぎてど忘れしかけていたが、なんとか思い出していくのであった。

 

――――――――

 

所変わって虎猫亭では開店して少し経ち、徐々に冒険者などの常連客が来ていた。

 

「おい嬢ちゃん、こっちにも頼むな」

 

「はい!」

 

ラティナもテキパキと働いており、お酒や料理などを運んだりしている。

そして常連客はいつも通りその様子のラティナを見て、癒やしを得ていた。

 

「はぁ……やっぱり嬢ちゃんはいいなぁ…」

 

「ああ……デイルの野郎が居ない分静かだしよ」

 

「おう、親バカ見るよりずっと良い」

 

常連客の話が盛り上がっている所で、再び虎猫亭のドアが開く。

 

「いらっしゃ……あら、ジルヴェスター」

 

「おう、今日も世話になる……だが今日はな…ちょっと「連れ」がいるんだ」

 

「「連れ」?」

 

「お、お邪魔します……」

 

ジルヴェスターの後ろに居たのはもちろんルディである。

そしてそれを見たラティナがすぐに駆け寄った。

 

「あ、ルディ!」

 

「「「!」」」

 

ラティナのルディを呼ぶ声を聞いた常連客は一斉にその幼い二人へと視線を集中させる。

 

「来てくれたの?」

 

ラティナのその問いになんとか平然を装い、ルディはこう答える。

 

「お、おう!ちょっと気になってな」

 

 

そんな二人を見たリタはルディが「ここへ来た理由」を察する。

 

「あらあら……そういうことね」

 

「そういうことだ」

 

そしてリタはジルヴェスターとともに微笑ましい二人を見ていた。

 

――――――――

 

ラティナは配膳に戻り、ルディはカウンター席へ座り、出されたジュースを少し飲みながらも彼女の働く様子をちらちらと見ていた。

本人にバレないようにということだが、本人以外にバレているのは言うまでもない。

 

そして一方の常連客は逆にルディのことを監視(?)していた。

 

「あいつがラティナと同い年で同じ学舎に通ってるのか…」

 

「まさかあいつラティナを狙ってるのかよ?」

 

「だろうな、こんなところにわざわざ来る子供だ。間違いねえ」

 

色々な意味でマークされてしまったようだ。

一方のルディはそんな視線に気づかずに、ひたすら(一応ちらちらと)ラティナの様子を見ている。

 

「これ頼むわね」

 

「うん!」

 

「……」

 

その働いている様子は大変そうではあるが、それでも皆に笑顔やらを振りまいている。

 

(やっぱりかわいい……よな……ラティナ……)

 

その笑顔やらでルディも少し顔を赤くしている。

そしてそれに少し気を向けていたためか…

 

ガタッ!

 

「あっ!?」

 

不意にジュースのコップを倒し、こぼしてしまった。

 

「あらあら、こぼれちゃったわね…」

 

「あ、すみません…!」

 

(何やってんだよ…俺……!)

 

「はははは!嬢ちゃんに見惚れてたのかい?」

 

「まあ気持ちはわかるがよぉ!お前にはまだ100年速い!」

 

酔っ払っている常連がルディをからかい、リタはカウンターを拭いている中

配膳をしたラティナはカウンターのほうに戻ってきた。

 

「ルディ、大丈夫?こぼしちゃったの?」

 

「あ、うん……まあでも量少なかったし、これくらい……」

 

「リタ、タオルある?」

 

「ええ、あるわよ?」

 

リタはラティナにタオルを手渡す。

 

「ルディもちょっと濡れてるから、ラティナが拭くよ?」

 

「な!?」

 

「「「!?」」」

 

ルディの顔は当然赤くなり、常連も物凄く驚いている。

 

「あ、え……お、おう……」

 

断りきれず、そのままラティナはルディを(もちろん服越し)で軽く拭いていたのであった。

 

――――――――

 

「はい、いいよ」

 

「お、おう……あ、ありがとな……」

 

「うん!じゃあラティナはタオル洗ってくるね」

 

「え、ええ……」

 

(ち、ちかかった……)

 

ルディ本人は顔の赤さが限界を突破しており、もはや魂が出かけているほど放心しかけていた。

やはりラティナが近くに来ると耐性がないルディではこうなってしまうのである。

 

ただ何故か酒場は彼以外も静かになっていた。

それに関してリタは当然ながら不思議に思っている。

 

「まあ彼がこうなるのはわかるけど……どうしてあんた達まで静かなのよ…」

 

「だ、だってよ……」

 

「あの二人…いいな……」

 

「ああ……なんていうか……少年少女の……」

 

「俺もあん時にもっと押しとけばなぁ……」

 

「羨ましい……くそっ……」

 

「妖精姫とセットになれるやつっているんだな……」

 

色々と哀愁が漂ってしまっている。

そしてある一人の常連客がその哀愁をふっとばすかのように声を荒げ始めた。

 

「くそぉ……!もってけドロボー!やけ酒だ!!」

 

それと同時に他の客も色々と吹き出してきた。

 

「おう!こうなったらとことんまでやるぞ!」

 

「明日の依頼なんかクソったれだあ!!」

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 

いつもの酒場らしさが戻ってきたようだ。

まあやけ酒らしく、結局どこか哀愁が残ってしまったが……。

 

「はぁ……良いんだか悪いんだか……」

 

(まあルディ君にとっては良かったかもしれないけどね……)

 

この微笑ましいことにより(?)ルディはこの常連客達にある程度は認めてもらえたらしい。

ただまだまだ認めてくれてはいない人も多く、そこからはルディ本人次第であろう。

 

なお当の本人は未だに顔が赤いままであったのは言うまでもない。

 

(あ……あ………)

 

――――――――

 

一方のラティナはそのタオルを洗い、ぎゅっと絞って水を切っているところなのだが──

 

「……?」

 

再びラティナには何かのモヤがかかっているようだ。

ルディのことを考えてると急に引っかかるモノである。

 

(ルディ……なんだろう……?)

 

少しそれに関して考えようとしたが──

 

「ラティナ!ちょっといいか?」

 

「う、うん!今行くよ」

 

ケニスの呼び出しにより引っ込んでしまったようだ。

 




おや、常連客のようすが……?

ルディ君、原作よりかなり印象やら変わったかなーと思う今日この頃
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